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 論文集抄録

論文集抄録

〈Vol.35 No.10 (1999年10月)〉

論 文 集 (定 価)(本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員)6,300円 (税込み)

  〃   (会員外)8,820円 (税込み)


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[論  文]


[論  文]

■ CCDカメラを用いたコンテナクレーン・スプレッダの低周波振れ計測

山口大・田中正吾,芥川周平,河野 進

 ハブポート等における大規模コンテナヤードにおいては,コンテナクレーンがよく使用される.この種のクレーンでは,コンテナを把持するための吊り具としてスプレッダが使われるが,クレーンの稼働率の向上や無人化のために高効率のスプレッダの振れ止め制御が必要である.

 この振れ止め制御のためにスプレッダの振れ計測が重要になるが,これまではスプレッダ上部にレーザ光源をおき,これをトロリー下部に設置した高感度カメラにより捉え,画像処理によりスプレッダの振れを計測する方式がよくとられていた.しかしながら,この計測方式では,トロリー下部を支点とする低周波振れだけでなく,高周波のリップル波形が合わせて観測される.

 このことから,この高周波のリップル波形を速やかに取り除くことができれば,コンテナクレーンの制御性能および稼働率を大幅に向上させることができる.この高周波成分を除去するだけなら,適切なローパスフィルタを適用することも考えられるが,この方法では,主要な低周波振れ信号についても位相を遅らせることになり,大幅に制御性能が低下する.

 そこで本論文では,低周波振れ計測をシステムダイナミクスを反映した形で捉えることとし,まず高周波振れを検討し,この振れを生じさせる原因がワイヤの伸縮にあると考え,このワイヤの伸縮量を状態変数としてシステムのモデル化を行った.そして,これに基づき,クレーン稼働時にはシステムの物理パラメータが往々にして未知であるということ,および適用に際してはオンライン性が重要であることを考慮し,物理パラメータが未知でも低周波振れが高精度に計測できる低次元計測システムを提案した.そして,その有効性を実験により示した.


■ 煙道・パイプを通過する煤塵・塵芥の質量流量の計測

法政大・渡辺嘉二郎,高橋雄一郎,関西オートメーション・萱原冨士生

 本論文は環境モニターに関するものであり,焼却炉やプラントから大気に放出される煤塵や塵埃の量を計測する方法を述べる.この方法は静電気学に基礎をおくものである.

 強い電界の中はイオン化した空気が存在し,その中を煤塵や塵埃が通過すると,イオン化した空気と接触し電荷を帯びる.この電荷を帯びた煤塵,塵埃が電極の近くを移動すると静電誘導により微少な電流が電極内で発生する.その電流は通過した煤塵,塵埃の電荷量に比例し,この電荷量は煤塵,塵埃の質量に比例する.したがって,煤塵,塵埃の質量は電流から推定できる.

 本論文では,センサで検出される電流(電圧)と煤煙,塵埃の質量流量の関係を示すモデルを構築し,このモデルを利用した煤塵,塵埃質量計測法を提案した.この方法の妥当性を実験的に検証した.また,この方法を他の流量計として応用した場合の可能性を示した.


■ 全方位視覚システムの最適設計

三菱電機・市川 晃,竹家章仁

 全周パノラマ像を一度に得ることのできる全方位視覚システムは,広視野を必要とする移動ロボットのナビゲーションや安全監視の分野への応用が期待されている.本報告では,筆者らが先に提案・開発した2枚の曲面反射鏡からなる全方位視覚システムの最適設計法と設計例について述べている.この設計法では,主鏡の内径・位置と副鏡曲面の形状関数に含まれる係数を設計パラメータに選んでおり,パノラマ像の鮮鋭度に関わる評価関数を最小化するように設計パラメータを調整することによって,結像性能の良好な視覚システムを得ようとするものである.副鏡の曲面には放物面など4種類の曲面を取り上げ,それぞれの曲面を用いた場合について反射光学系の最適設計を行い,副鏡上につくられる像の収差を評価・比較した.

 その結果,光軸方向における像点の較差を最小化するには楕円面を用い,非点収差を最小化するには双曲面を用いるのが最良であること,4次曲面を用いるといずれの最小化に対しても効果的である上に,設計結果は最良曲面の結果と非常に良く一致することがわかった.また,最適設計での収差の程度は評価関数に含まれる重み係数の値に強く依存することがわかり,注目する収差を低減するための重み係数の決定法を明らかにした.


■ Nonlinear Receding-Horizon State Estimation with Unknown Disturbances

Tsukuba Univ.・Toshiyuki OHTSUKA

 Algorithms are proposed for real-time state estimation of nonlinear systems with unknown disturbances. An optimal estimate of the state is determined so as to minimize a receding-horizon performance index that includes estimate of unknown disturbances. Application of the stabilized continuation method results in algorithms that do not involve any successive approximation methods. One of the proposed algorithms is examined in numerical simulation of a two-wheeled mobile robot. Simulation results clarify characteristics of the algorithm. The performance of the present algorithm is compared with that of an algorithm that does not take disturbances into account.


■ 低次元化によるモデル誤差の評価について

都立大・池田富士雄,渡辺 敦,川田誠一

 本論文の目的は,システム同定の際に生ずるモデル化誤差とモデルの低次元化との関係を明らかにすることである.

 一般にパラメータ推定法などを用いて動的システムを同定する場合には,対象システムに対して低次元のモデルを求めることが多い.したがって,対象システムと低次元化モデルとの間には,次元縮小によるモデル化誤差が存在する.このようなモデル化誤差の評価規範として式誤差と出力誤差がある.パラメータ推定法の多くが式誤差規範による同定であるが,そのとき求めたモデルが出力誤差規範においても良好な評価を得るという保証はなく,またどの程度出力誤差が大きくなるかといった定量的な考察もなされていない.

 そこで本論文では,零点のない線形システムに対する低次元のARXモデルによる同定の際,同定対象の特性がモデル誤差に与える影響を明らかにすると共に,両誤差規範の相違を明確にすることを目的とした.

 得られた結果は,1)モデルの任意の極が単位円に近づくとき,出力誤差と式誤差の共分散の比が無限大に近づく.2)モデルの低次元化によりモデルの極の平均の絶対値は1に近づく.1),2)より,低次元化によって両誤差の共分散の比が無限大に近づくことが分かった.


■ メモリーレスフィードバックによる入力にむだ時間を含む系の最適レギュレータ

徳島大・久保智裕

 最適レギュレータをむだ時間を含む系に対して適用しようという研究は数多く行われてきた.そして理論的には有限次元系に対するものとほぼ同様に構成可能であることがわかっている.しかしこれらはいずれも制御則のなかに過去の状態変数あるいは入力変数のメモリーと実時間での積分演算を含んでいるため,これをプラントに実装するのは容易ではない.

 そこで最近,もっと簡単な制御則でむだ時間を含む系に対し最適レギュレータを構成する方法が研究されるようになってきた.屋敷・松本は,遅れ形,中立形,入力遅れ形むだ時間を含む系をRoesser形状態ベクトル微分差分方程式によって統一的に表現し,メモリーは含むものの積分演算を含まないフィードバックで最適レギュレータを構成できることを示した.他方著者らは,状態にむだ時間を含む系に対してメモリーも積分演算も含まないフィードバックにより最適レギュレータが構成できることを示した.

 本稿では,入力にむだ時間を含む線形系に対してメモリーも積分演算も含まない(メモリーレス)フィードバック則の一構成法を提案している.そしてこの方法にしたがって構成される閉ループ系は,結果としてある評価関数に対する最適レギュレータになっていることを示している.このことは,適当な評価関数を選択すれば最適制御則がメモリーレスフィードバックの形になることを意味している.さらに本方法によって構成された最適レギュレータがあるクラスの非線形静的摂動またはあるクラスの線形動的摂動に対しロバスト性を有することも示している.そして最後に数値例を示している.


■ 出力フィードバックを利用した非標準特異摂動システムのためのロバストH∞制御問題

広島市立大・向谷博明,小林康秀,沖田 豪

 本論文では,近年研究された不確定要素を含む標準特異摂動システムに対するロバストH∞制御問題をA22が非特異と仮定しない非標準特異摂動システムに拡張する.さらに,本論文で扱う非標準特異摂動システムは,状態行列のすべてにノルム有界型時変不確定要素が存在するので,より現実的なシステムに対して制御則が設計可能である.その他に,本論文では,ロバストH∞制御則が存在するための十分条件を摂動項εに無関係に導出する.εに依存しない低次元化された4つのリカッチ方程式がすべて準正定対称安定化解をもてば動的フィードバック制御則によってロバストH∞制御可能である.最後に,本論文では動的フィードバック制御則を構築するために解かなければならない摂動項εを含むリカッチ方程式に対して,再帰的アルゴリズムに代わる新たなアルゴリズムを提案する.


■ 電子線型加速器のビームエネルギーの統計的解析とその制御

原研・榊 泰直,吉川 博,SPring-8・堀 利彦,京大・十河拓也,足立紀彦

 放射光専用利用施設である大型放射光施設(SPring-8)の線型加速器(Linac)は,当初の設計性能を十分に満足した運転が行われている.しかし,このLinacには次世代計画として,ビーム性能をさらに1桁以上向上させる要求があり,これに向けて現在の設計性能では問題視する必要のないレベルの性能劣化要因も究明される必要がある.設計当初から考えられていた物理モデルを利用して,解析的に性能劣化要因を究明しようとしても,外乱因子の変動レベルが小さい上に,外乱因子が相互に寄与をもち,性能劣化の物理現象が特定できるものではなかった.このような場合の解析は,物理モデルからの解析より,統計的解析のほうが有効であり,その結果を物理モデルに反映させ性能向上をはかる方法が最も効率的であると考えた.

 本論文では,Linacの次世代計画で性能向上が求められているものの1つでビーム性能に最も影響を与える加速電子のエネルギー変動を,多変量ARモデルを利用した統計的手法で解析し,次世代計画に対する基礎データが得られることを明らかにした.さらに,得られた知見を活かして,実験的にエネルギー変動モデルを指数重み付きの拡大最小2乗法でオンライン同定し,得られたパラメータから予測的な制御が実現でき,次世代計画に必要なエネルギー変動レベル以下にまで制御できることを確認した.


■ 遺伝的プログラミングにおける階層モジュール獲得と段階的進化

名大・苗村高義,名古屋産業科学研・橋山智訓,名大・大熊 繁

 遺伝的プログラミング(Genetic Programming: GP)は,関数ノード・終端ノードから構成される木構造を染色体とする進化的解探索手法の1つである.GPは構造的な染色体を利用することにより,論理回路自動生成問題等の構造生成問題に数多く適用されてきた.しかしながら,木構造を構成する基本関数ノードの設定は設計者の知識に大きく依存する.関数ノードの設定により解の収束性が大きく左右されるが,有効な関数ノードは試行錯誤により決定する必要がある.

 本論文では,有効な関数ノードの自動獲得を目指し,解探索を行っている個体中の部分構造から,階層的モジュールを自動的に生成するシステムを提案する.GPの部分構造を関数ノードモジュールとして利用することで,解探索の効率化を目指す.また,生成したモジュールを自動的に階層化する手法についても検討した.

 獲得した部分構造の再利用性を検証するために,段階的進化のシミュレーションを行った.段階的進化は問題を段階的に難しくすることで,大規模な問題を解決することができる.同様の手法である,自動関数定義(ADF)やCOASTとの比較により,提案手法の有用性を検証した.


■ インピーダンス・トレーニング:人間は手先インピーダンスを訓練により調節できるのか?

広島大・辻 敏夫,神字芳彦,加藤荘志,金子 真,川村貞夫

 本論文では,人間の手先インピーダンス調節能力を訓練する新しいトレーニング法を提案する.この方法は,訓練者が自らの手先インピーダンスを積極的に調節し目標とする手先インピーダンスを実現するように行うもので,訓練中には上肢の筋電位,手先力,実現した手先インピーダンスなどの情報が訓練者にフィードバックされる.本論文では,インピーダンス・トレーニング装置のプロトタイプを開発するとともに,人間の手先インピーダンス調節能力の特徴を調べた.その結果,

 (1)人間のインピーダンス調節能力をある程度訓練できること,

 (2)人間は筋の収縮レベルを調節して手先の速応性を調節できること,

 (3)粘性はスティフネスより調節が難しいこと,

 (4)姿勢を変えることにより手先の減衰性を調節できること

などが明らかになった.


■ 河川出水現象の入出力関係の高次ボルテラ級数モデルにおける測定誤差の影響の低減の研究

東北電力・畠山 隆

 河川出水現象の入出力特性のボルテラ級数モデルにおいて,非線形次数を2次以上,ボルテラ核を近似するラゲール正規直交関数を3個以上用いる構成にすると,モデル化が不可能になり,障害となっていた.

 本研究では,その原因を,モデルを決定する際の最小二乗法の正規方程式の係数行列の悪条件化と推測し,M-P一般逆行列を階数を低下させて求める方法の適用を試みた.その際,河川出水現象のインパルス応答に関する拘束条件を定式化し,拘束条件つき最小二乗法を構成し,M-P一般逆行列を階数を低下させてモデルを求める方法の適用を試みた.

 この結果,この拘束条件は,対象の忠実なモデルを得るために不可欠な条件であることが判明し,また,提案する手順を踏むことにより,入出力データの誤差の影響をさけて,河川出水現象の忠実な入出力モデルを得られることが判明した.


■ 設計支援のための自然法則知識の研究―自然法則間の関係に注目した体系化―

東大・村越修平,神戸大・田浦俊春,学術情報センター・小山照夫,成蹊大・川口忠雄

 本論文では,自然法則に関する知識の体系化手法について述べる.自然現象を支配する原理/原則のうち数式などで記述されたものを「自然法則」とし,自然に加えられた状況あるいは人工物や自然物をとらえるための視点を記述したものを「制約」とすると,自然法則は「制約」と「振舞い」によって記述でき,自然法則間の関係は「制約」と「振舞い」の枠組みをを用いて記述できる.また人工物と自然物は「制約」の異なる2つの「自然法則」の「関係」としてとらえることができる.

 本研究では,自然法則の「制約」と自然法則間の「関係」に注目した体系化を行い,自然法則は自然法則記述モデルとして,自然法則関係知識は自然法則関係モデル・辞書・自然法則の操作手順として,それぞれ形式化することができた.

 さらに過去の事例を自然法則記述モデルなどにより記述し,その設計行為を自然法則の操作としてとらえることができ,本研究の仮説の妥当性と今後の設計支援の可能性を確認した.


[ショート・ペーパー]

■ 定常流式二重管気体粘度計

東洋大・小林良二

 二重管気体粘度計の測定原理はHagen-Poiseuilliの法則に基づいている.したがって,粘度の測定は定常状態で行うことが望ましい.

 定常流式二重管気体粘度計は測定が定常状態で行われるものである.気体の粘度は液体の一定体積流量と差圧の測定から得られる.

 その特長は細管の場合に比べて大きな流量を流せることである.それゆえ,定流量装置を使用すれば,差圧1量のみの測定で粘度が知られる.


■ 複数の評価構造の統合について

北陸先端大・平石邦彦,沖北陸システム開発・清水美保子

 階層分析法(AHP)をグループ意思決定に適用する場合,グループ内のメンバ間で合意された共通の評価構造を作る必要がある.評価構造を作成する方法としては,ISM等の構造モデリングを用いる手法,あるいは,KJ 法を用いる手法等が提案されているが,これらはブレーン・ストーミング等を通じてグループ内で合意された1つの評価構造を作ることを目的としたものである.これらに対し,本論文では,大内らが提案したのFISMの手法を利用し,木構造をもつ複数の評価構造を構造モデリングの考えに基づいて統合する方法を提案する.サブグループで作られた複数の木構造の評価構造を与え,まずそれらの可到達行列から差異を求める.そして,不一致要素についてはサブグループ間の議論により合意値を決定する.提案手法はそれらの不一致要素の合意値に対し一意に定まる木構造を求める.

 
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