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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.38 No.1 (2002年1月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 筆記運動の3次元慣性計測による筆記パターンの再現

信州大・宮川 透,米沢義道,伊東一典,橋本昌巳

 現在,ペンを用いた手書き入力インタフェースは絵やイラストなどの描画,ポインティングデバイス,手書き文字認識,署名認証など広い分野で利用されている.広く普及している手書き入力インタフェースとしてタブレットやディジタイザなどがあるが,これらは専用の筆記面を用いており,特に携帯用の小型情報機器の場合,筆記面の小型化と書きやすさのバランスが問題となる.本論文では,小型で携帯性に優れた手書き入力インタフェースを目指し,ペンの運動を相対的に検出する装置を使わず,ペンの筆記運動そのものを計測することにより筆記パターン情報の獲得を試みた.

 筆記運動において,ペン外部の機器を使わずに取得できる情報として加速度や角速度がある.そこで,ペンの3次元加速度と角速度を計測可能な超小型の慣性計測システムを構成し,これらの信号を用いて筆記パターンを再現する.一般に慣性計測により移動軌跡を求める際には,時間経過に伴う積分による誤差の累積が問題となる.本論文では,筆記運動における計測誤差や積分誤差の影響を抑えながら筆記パターンを再現する方法について述べる.また,実験結果として複数の被験者を用いて実際に筆記文字を再現した結果を示す.


■ 離散システム安定性判別法の代数演算化とその2次元システム安定性判別への応用

岐阜高専・山田 実,秋田県立大・徐  粒,千葉大・斉藤制海

 本論文では,Bose によって提案された2D(2次元)安定性判別法を代数的に判別する方法について述べる.Bose はshusser の1D安定性判別法を2Dシステムの安定性判別法に拡張した.Bose の判別法では1変数多項式の根を求めるといった数値計算をしなければならないため,計算機上で判別するとき,数値計算誤差によって誤判別する場合がある.そこで,数値計算によらない代数演算化が必要である.

 提案する方法では判別の途中で現れる多項式や終結式が自己相反多項式であるという特徴を利用して,Bose の方法より多項式の次数を半分以下にしている.そして,Sturmの定理を用いて判別する方法に帰着させる.このため,代数的な方法によって,より効率的に2D安定性判別ができる.

 Bose の安定性判別条件の中にshusser の安定性判別法と同じ条件が含まれているため,まず,1D離散システムに対するshusser の安定性判別法の代数演算化について述べる.また,これは新たな1D安定性判別の代数的方法を提案するものである.つぎに,代数演算化した,Boseの2D安定性判別のアルゴリズムを提案する.そのアルゴリズムに基づきMATLAB上で開発した2D安定性判別関数を説明する.最後にその実行例を示す.


■ 相対次数が定義できない非線形系の追従制御

奈良先端大・山下 裕,大西規雄,西谷紘一

 本論文では,原点において相対次数が定義できない多入力多出力非線形系の追従制御則を設計する新しい方法を提案する.まず,制御対象を時間軸変換と座標変換とを用いて特異摂動系に変換し,つぎに,その特異摂動系の速い動特性と遅い動特性それぞれに対して制御則を構成することにより,外部システムの生成する出力の目標信号に厳密に追従する制御則が得られた.制御則を得るための偏微分方程式を厳密に解くことは一般に困難であるが,ε-修正法を用いることで,偏微分方程式の近似解を得ることができた.その際,制御則に含まれる外部システムの状態量は,出力の目標値,およびその時間に関する有限回の微分値で置き換えることができ,外部システムを陽に考えない設計が可能である.最後に,相対次数が定義できない系の典型的な例である坂の上を転がるボールの動きの制御に,本手法を適用して,その有効性を確認した.


■ 自動車運転における心理ストレスと運転操作モデル

法政大・川嶋 葵,小林一行,渡辺嘉二郎三菱自動車・沼田仲穂

 本論は,心理的人間―機械系の1つである運転者―自動車系のモデリングについて述べる.運転中に,外界環境の激しい変化に適応せざるをえない運転者は心理的ストレスを受けている.運転者は運転中に受ける多様な刺激の中から,害や脅威になるあるいはなんらかの対処努力が必要なものを選択し,それを有害なストレッサ―として受け止めている.そして,このストレッサ―となる有害要因を減少させるコーピングとよばれる行動をとりはじめる.これは1つの有力な心理学の仮説である.この仮説に基づき人間が自動車を運転するとすれば,運転者は害や脅威から遠ざけられ持続的なストレスから開放され自動車は安全に運転される.この仮説に基づき,運転者―自動車の一体系のモデルを作り,最小ストレス運転問題を定式化した.この問題の解として与えられる運転モードは人間の運転とよく似た特性をもつとともに,従来自動車工学の分野で知られていた前方誤差補正モデルと同じ運転操作構造をもつ.この最小ストレス運転操作モデルを作りシミュレーションするとともに機械的に実現し,自動走行させた.人間の運転とよく似た安全運転が確認できた.


■ 電圧制御型磁気浮上系の適応ロバスト非線形制御

九州大・楊 子江,九工大・宮崎大輔

 本研究は,非線形電気・機械システムへの(過渡特性,終局誤差バウンド,制御入力振幅などの点で)実用性を重視し,適応とロバスト制御を融合した非線形制御手法を開発することを目的とする.制御対象としては,不安定でかつ非線形性が強い磁気浮上系を選んでいる.過渡特性や制御誤差の上界などが保証されないと,不安定な浮上体が簡単に上下の部品にぶつかってしまうので,適応制御を適用した手法がほとんど報告されていないのがその理由である.バックステッピング設計手順の各ステップにおいて,まず,モデリング誤差が存在しても各サブ誤差システムの(過渡特性や制御誤差の上界に関係する)Input-to-state stable特性を保証できるように,非線形減衰項を用いたロバスト制御器を設計する.つぎに,各非線形減衰項のゲインを大きく設定しなくてもすむように,パラメータの適応機構を導入し,それが終局誤差バウンドを十分小さくできることを示す.このように,ロバスト制御機構によって制御系の有界性と過渡性能を保証し,パラメータの調整機構によって制御性能に寄与することは,適応制御の実用において,重要な意味をもつ.最後に,提案した制御システムが,物理パラメータ誤差が大きい場合でも,振幅が大きくかつ変化が速い目標値に無理なく追従できることを実機実験によって示す.


■ 計数器をもつ放射線リレーによる位置制御系の最適設計―最少到達時間問題として―

小柳孝巳

 放射線リレーは圧力容器内の液面,溶融金属面,などの位置を非接触で測定し制御できる特徴があり工業によく用いられる.

 この制御系は厚さ一定の制御対象が放射線が通過している窓を一端から一定速度で覆いそれにしたがって放射線の通過量を変化させる.この通過量を一定時間間隔で計数し,その値があらかじめ定めたしきい値に“初めて”到達したときリレーを動作して制御対象を停止する機構とする.

 最小の放射線量を用いるという条件で,対象の停止時刻の平均値と標準偏差を所定の値に設計するというのが与えられた問題であるが,計数器出力のこのような求め方では停止位置の標準偏差を小さくできず実用的でなかった.

 本研究ではシフトレジスタを利用して計数時間と計数値のサンプル時間間隔を独立した異なる値に選ぶことできる装置を提案し,さらにしきい値も調節することによって制御対象を所定の停止位置平均値に,最小の標準偏差で停止させる(必要放射線量を最小にする)ための計数時間,放射線強度およびしきい値等の最適値の集合を求めることができたのでここに報告する.


■ 物理的意味を理解しやすくした誘導電動機の新しい状態方程式

大阪府立高専・川畑良尚,立命館大・川上知之,川畑隆夫

 ベクトル制御の制御系を設計する場合,誘導電動機の状態方程式は不可欠である.ベクトル制御では励磁分とトルク分の電流を独立して個別に制御するが,励磁軸とトルク軸の間に干渉が存在するため,高性能な電流制御系を実現するには状態方程式に含まれる干渉項を分離し,非干渉化を行う必要がある.しかし,通常の状態方程式では干渉項を分離することが難しく,物理的にどのような成分を非干渉化しているかがわからないという問題がある.また,電流制御器の設計には非干渉化制御後の電動機の伝達関数が用いられるが,二次回路定数を含んだ二次系となるため,制御器の設計が困難で,二次抵抗の温度変化により伝達関数が変化するなどの問題がある.これらの問題を解決するため,この論文では加算点が電圧信号となるようにした新しい状態方程式を提案する.この式では,マトリクス表現を用いているので各項の物理的な意味がわかりやすく,また励磁軸とトルク軸の干渉もしくは一次と二次の干渉成分を容易に知ることができる.

 その状態方程式を用いて励磁電流とトルク電流,および一次と二次の干渉成分の非干渉化を行うと,二次回路定数を含まない伝達関数が得られ電流制御系が容易に設計できる.さらに,設計した制御器を実機に適用し検証試験を行っている.


■ 逐次線形化に基づく非線形モデル予測制御―化学反応器への応用―

三菱化学・関 宏也,大山 敏,小河守正

 本論文では,逐次線形化に基づく非線形モデル予測制御手法を提案し,化学反応器への応用例を通して,その有用性を示す.

 非線形最適化問題を解く必要のある一般の非線形モデル予測制御は,計算時間の問題から実用化が困難である.逐次線形化に基づく方法では,サンプリング時刻ごとに非線形プロセスモデルを局所線形化して得られる線形モデルに対して最適化問題を適用することから,計算時間の大幅な低減ができ,現実に適用可能である.

 本論文で提案する方法では,局所線形化モデルに対して無限時間区間のLQ制御問題を適用する.LQ制御問題の定式化において,定常ゲイン行列が正則でない場合にも対応できるように考慮する.本手法を入力または出力多重性を示す化学反応器に適用したシミュレーションを行い,これら非線形性の強いプロセスを安定に制御できることを示す.

 さらに,実プラントへの適用例として,高密度ポリエチレン重合反応器の銘柄切り替え操作を実現した例について述べ,本手法の有用性を示す.


■ 左既約分解に基づいたアンチワインドアップ制御系の一般構造

東大・鈴木文泰,堀 洋一

 本論文では,制御器の左既約分解に基づいたアンチワインドアップ制御系の一般構造を明らかにした.アクチュエータの小型化などにより操作量が飽和すると,出力がオーバシュートなどのワインドアップ現象が生ずる.フィードバック制御系ではサーボ系を構成する積分器が制御偏差を過剰に積算することが原因である.一方,2自由度制御系では,目標値応答を適切に設計することにより操作量飽和を回避することが可能である.しかし,外乱などが存在する場合には,それを抑圧する制御入力が加わるため操作量飽和を生ずることもある.このような背景の下で,1自由度および2自由度制御系に対するアンチワインドアップ制御系の設計手法を提案した.まず,操作量飽和を入力端の外乱とみなすことにより,目標値,外乱応答が定式化されることを示し,これに基づいたワインドアップ抑圧のための条件を導出した.つぎにこの条件を状態空間で表現することにより,1自由度制御系ではオブザーバが適切な状態推定値を得られる構造を有し,2自由度制御系ではノミナルモデルの状態フィードバックに操作量飽和のモデルを挿入した構造を有することを明らかにした.また,DCサーボモータの位置制御系に適用したシミュレーションおよび実験結果により,提案手法の有効性を確認した.


■ Observer-Based Loop Control of Bullblock Drawing Machines

Sumitomo Light Metal・Hiroshi YAMANASHI, Ikuya HOSHINO,Yoshihide OKAMURA, Haruo TANAKA

 This paper describes the application result of the observer-based design method for the loop control of bullblock drawing machines. The salient features of this design method are that the disturbance observer is constructed as a constitutive control loop without a conventional PI control loop and the system design is accomplished in a more consistent way than the method which uses the disturbance observer in addition to the conventional control.


■ 床反力に基づいた一定外力場での起立姿勢に対する制御法

岐阜大・伊藤 聡,西垣智啓,川崎晴久

 本研究では,一定な外力をうける状況下での起立姿勢の維持について考える.われわれ人間は,一定な外力をうけるとき,外力とは抗する方向に上体を倒して起立した姿勢を維持する.これを位置制御で行おうとすると,作用する外力が与えられないと目標姿勢が決まらないという問題が生じる.そのため,本研究では平衡の制御に重要であるとされている床反力に着目し,それを制御することによって,外力に対して適応的に姿勢を変化させうる制御方法を提案する.その制御の平衡状態に対する局所的な安定性を解析し,構造が簡単なロボットによりそれを実験的に検証する.また,定常状態で実現される姿勢について考察し,その制御法の有効性,拡張性について議論する.


■ 進化型多目的最適化の一手法―Multiple Coding GA―

立命館大・西川郁子,トヨタ自動車・西出恵介

 多目的最適化にGAを適用するにあたり,複数のデコーディングを用いるMultiple Codingを提案する.提案手法は,個体ごとに特定の目的に特化させ,目的ごとに異なるデコーディングを行うものであり,広範なパレート解が獲得できることが期待される.シミュレーションにより,提案法を従来の並列選択法と比較評価した.性能検証用の問題作成には,データの統計性を系統的に設定するために,目的間の相関を随意に与える方法を,データがGauss分布と一様分布に従う場合の具体的表式として示した.また,複数のパレート解集合の定量的な相対評価のために,3つの指標を用いた.シミュレーションは,2目的ナップザック問題および2目的フローショップ問題で行った.ナップザック問題では,2つの価値間の相関値に応じて,パレート解集合の分布形状が変わり,探索手法の性能が変わることがわかった.フローショップ問題では,デコーディングにヒューリスティクスを組み込む方法を示した.シミュレーションの結果,並列選択法は中央部分で密,MCGAは周辺でより有効な探索を行うことを,解の分布形状および定量化指標により確認した.それゆえ,データの統計性により広いパレート解分布をもつ問題や大規模な問題で,特にMCGAが優れていることがわかった.


■ 各レベルにS-モデル定常環境をもつ階層構造学習オートマトンに対するLR-I型学習アルゴリズム

徳島大・最上義夫,大教大・馬場則夫徳島大・塩尻 晃,阿南高専・田上隆徳

 1981年,P-モデル環境に対して,学習オートマトンを木構造に組み合わせた階層構造学習オートマトンがThathachar and Ramakrishnanによって提案された.そして,LR-I型学習アルゴリズムが与えられ,その学習アルゴリズムが良好な学習特性をもつことが示された.以後,主にP-モデル環境を対象として階層構造学習オートマトンの研究は進められてきたが,そのより広範囲な問題への適用を考えるとき,最も一般的な未知環境であるS-モデル環境を対象とすることが必要であろう.

 ここで問題となるのは,最適パスの定義の仕方である.P-モデル環境においては,最適パスはパス上の各動作に対応している報酬確率(その動作が成功の報酬をもらう確率)の積が最大のパスとして定義される.すなわち,成功の報酬をもらう確率が最大のパスが最適パスとなる.一方,S-モデル環境においては,各動作が受け取る報酬の平均値を平均報酬と呼ぶことにすると,各動作に対する報酬は平均報酬を平均値とする確率分布に従って与えられる.よって,P-モデル環境と同様の定義を行うならば平均報酬の積が最大のパスが最適パスとなる.これはP-モデル環境における定義の拡張として受け入れることのできるものではあるが,しかし,報酬の積が最大ということの意味がわかりづらいと言う側面が存在する.そこでここでは,最適パスをパス上の各動作に対応する平均報酬の算術平均が最大のパスとして定義することにする.言い換えるならば,最適パスはパスが得るであろう報酬が平均値の意味で最大となるパスということになって,その意味するところがわかりやすくなると考えられる.

 本論文では,上記のような最適パスの定義の下で,各レベルにS-モデル定常環境をもつ各レベル入出力階層構造学習オートマトンについて考察する.そして,単体の学習オートマトンに対する学習アルゴリズムとして最もよく用いられるLR-I型学習アルゴリズムの中のSLR-Iアルゴリズムを修正して,新しい最適パスの定義のもとでの階層構造学習アルゴリズムを構築する.さらに,その学習特性についても検討する.


■ 容量制限を有する3−バッファ切り替え・サーバシステムの周期解解析と制御

早稲田大・佐藤洋平,久村富持

 ハイブリッド・システムは,連続時間ダイナミクスと離散事象の混在するシステムであり,コンピュータ,通信,生産などの各分野に広い応用範囲をもつ.その興味ある一例に,1つのサーバから複数のバッファに逐次仕事を供給する問題と,複数のバッファの仕事を1つのサーバで逐次処理する問題があり,バッファ数が3の場合,前者では状態のカオス的なふるまい,後者では漸近周期的なふるまいが存在することが知られている.本論文は後者のSwitched Server Systems(SSS)でバッファ数3,かつ,すべてのバッファの容量に上限値がある場合に生起する周期解を対象とする.まず,このシステムに生起する特定周期解P3(各バッファを巡回し,1周期中の切り替え数が3)に着目し,その解のモードと解法,ならびにシステム・パラメータや初期値との関係を求めた.つぎに,この周期解P3のそれぞれに対し,状態をその解から微小変化させた後に元の解に戻るか否かの安定問題を解析し,その安定判別法ならびに判別結果を述べた.さらに,バッファの上限値を制御変数(制御の操作量)と考えたときの,任意初期状態から上記の安定周期解への制御方策を示した.他の周期解の存在も可能な中で,この周期解P3に限定した理由は,各バッファの仕事処理の公平性を考慮したことによる.


■ 超音波センサの距離と感度情報を用いたニューラル型対象物判別システム

茨城大・青島伸一,NTTネットワーク研・吉澤信幸横国大・薮田哲郎,NTTアドバンステクノ・羽成賢一

 本論文では超音波センサの距離と感度情報をニューラルネットワークに入力することを特徴とした対象物判別システムを提案し,対象物として海砂(細粒),海砂(粗粒),土,小石の4種類を用いたニューラルネットワークの学習および判別実験により有効性を確認した.提案する対象物判別システムは以下の3つの要素によって構成されている.(1)超音波を送受信する超音波センサ,(2)センサの出力を,センサから対象物までの距離と対象物からの反射波の強度を表わす受信感度に変換する変換装置,(3)センサの距離と感度情報を入力とし,判別信号を出力とする対象物判別用ニューラルネットワーク.提案する判別システムを用いれば,容器に堆積され常に高さが変化するような砂の粒径や粉の粗さの判別,形状が変化する金属表面の粗さ判別が行えるため,各種工業プロセスの計測システムとして応用できる可能性がある.


■ 固定トレースアルゴリズムの問題点とその対策

防衛大・鈴木良昭,鈴木 隆,板宮敬悦

 適応同定器や適応制御系などの適応システムにおけるパラメータ調整則の1つに固定トレースアルゴリズムがある.このアルゴリズムは収束が速いという利点はあるものの,各時点で適応ゲイン行列の複雑な計算が必要となるので,十分な計算時間が確保できる離散時間形式の適応システムにおいてよく用いられている.本論文では,適応システム内の信号の持続励振(PE)性がいえない場合には,固定トレースアルゴリズムの適応ゲインの行列式が零に収束してその逆行列が存在しなくなることを指摘すると共に,これを回避するための一方法を提案する.提案の方法は,適応ゲイン行列の更新則に同定誤差と共に0に収束する関数を付加するもので,固定トレースアルゴリズムが有する本来の長所を損なうことなしに容易に実現することができる.また,提案の方法の有用性は簡単な1次のモデル規範形適応制御系を対象としたシミュレーション実験により検証されている.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会