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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.6(2003年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ コロニー増殖過程逐次観測による生菌数の計数法

仙台電波高専・竹茂 求,那須潜思,佐々木正明, 高田 稔,鹿股昭雄,マイクロバイオ・小川廣幸

 生菌数は,通常,混釈法で計数される.混釈法には,肉眼でコロニーを確認できるまで48時間の培養を要すること,および,コロニーどうしが重なって計数が困難になるという問題がある.さらに,人間が目視で数えるのは能率的でない.
 本研究では「生菌の培養過程を,培養開始時から逐次観測し,画像情報としてコンピュータに取り込み,増殖して大きくなったコロニーから順次検出する方法」を提案する.新たに検出されるコロニーがなくなったら,それまでに検出したコロニーの数を生菌の数とする.
 本方法ではコロニーの成長過程を継続して観測している.したがって,コロニーが重なっても,重なる以前の画像情報を利用して,重なったコロニーを分離識別することが可能であり,計数が正確である.
 本研究では,寒天培地中のいろいろな深度に分布する各コロニーに焦点を合わせる必要がない「CCDエリアセンサを用いた直視型投影光学系」を採用することにより,コロニー計測の自動化を可能にした.本方法を,大腸菌に適用して実験を行った結果,培養後6時間でコロニー数が確定され,本方法の有効性が確認された.


■ 複数の光源の輝度制御に基づく電気的走査式高速レンジファインダ

岡山大・馬場 充,広島工大・大谷幸三 フクダ電子・磯田祐輔

 本研究では高速化のための光源輝度制御に基づく電気的走査方式レンジファインダを提案した.機械的スリット光走査方式によるレンジファインダは実用システムとしてよく用いられているが,飛躍的な高速化が困難である.一方,電気的スリット光走査法は高速であるものの,空間分可能やテクスチャのある物体に適用できないなどの問題点があった.そこで本研究では,テクスチャのある拡散物体に対しても,高速・高分解能で3次元形状の測定を可能にしたレンジファインダを提案した.提案方式では,スリット光の走査は,複数の幅の広い縞状の光を合成して,単峰の放物線状の光パターンを生成させ,その合成光のピーク位置を移動させて,スリット光を機械的に走査させた場合と同じ効果をもたせたものである.本研究では1回の測定において,2種類の一様光を物体に投光して,物体のテクスチャの影響を取り除く方法を考案した.プロトタイプレンジファインダの実験によればテクスクチャのある物体に対してもテクスチャがない物体と同程度の精度で3次元形状測定が可能であった.本レンジファインダの特徴として(1)高速測定の実現,(2)高分解能測定が可能,(3)摩擦・摩耗の問題の回避による信頼性の向上といった点が挙げられる.


■ 運動中の多関節人腕粘弾性のロバスト推定法

NTT・Mingcong Deng,五味裕章

 人は腕の運動や外界とのインタラクションを行う際に,運動の軌道ばかりでなくその力学的特性を調整することにより滑らかで巧みな運動を実現していると考えられる.本論文では,腕の制御において重要な特性である運動中の多関節腕の粘弾性をオンラインでロバストに推定する手法を提案する.本手法では,腕を単純な剛体リンクダイナミクスとモデル化誤差などの不確定要素から構成されるとみなしてモデル化し,また運動中の腕に運動の随意成分とは区別できるような連続摂動を与え,バンドパスフィルタによりその摂動成分を抽出する.得られたデータとモデルを用いて,本手法で提案するロバストカルマンフィルタを用いて粘弾性推定を行う.ロバスト化のために,モデル化や計測の誤差の限界を事前知識としてパラメータ更新則に反映させるアルゴリズムを構成し,さらに推定誤差共分散行列を正定に保つようUD分解を用いる.提案手法の有効性を検討するため,2関節腕モデルを用いた腕運動中の粘弾性パラメータ推定のシミュレーション結果を示す.


■ 相互結合によるインプリシトシステムの安定化

広島大・増淵 泉

 インプリシト表現は,対象となるシステムをその変数間の動的・静的な拘束式によってそのまま表わすものであり,システムに対する最も自由な取扱いを可能にする.インプリシト表現の下では,相互結合という最も一般的なシステム結合を扱うことができ,正則性を指定した相互結合の設計が可能となれば,より一般的な枠組みで制御を考えることができる.本論文では,1階のインプリシト表現で表わされるシステムについて,相互結合の正則性を指定し,かつ結合系の内部安定化が可能であるための必要十分条件を導く.相互結合の正則性は,システムが許容する初期値の自由度(システムの動特性の自由度に対応)を保つこととして定義する.この目的のため,本論文では,状態空間システムにおける可安定性および可検出性をそれぞれインプリシトシステムに対して拡張する.そして,正則な相互結合による内部安定化可能である必要十分条件が,拡張された可安定性と可検出性が同時に成り立つことであることを示す.さらに,この2つの条件のおのおのが,ペンシルのクロネッカ標準形,一般化リアプノフ方程式・不等式(LMI),ペンシルのランクおよび可逆性の形で特徴付けられる.


■ 適応制御を利用したマニピュレータの衝突検出

東北大・小菅一弘,不二越・松本大志 東北大・盛永真也

 高齢化などの社会の変化に伴い,労働力や介護者の不足が懸念されている.これらの問題に対し,オフィスや家庭,また介護分野などで人間を支援する人間共存型ロボットの開発が行われている.このようなロボットにおいて,安全性は非常に重要な課題であり,特に,人間などとの衝突は人身事故などの重大な事故につながる恐れがある.
 本論文では,衝突に対する安全性という問題に対し,従来提案されてきたモデルベース衝突検出法を拡張し,マニピュレータのダイナミクスの推定をリアルタイムで行う適応制御系と組み合わせることで,外界センサを用いることなく高精度でマニピュレータと環境との衝突を検出するアルゴリズムを提案する.本アルゴリズムでは,マニピュレータの制御則によって計算される制御入力トルクと,推定されたダイナミクスに基づいて計算されるトルク参照値を比較することにより衝突の検出を行う.また,本論文では,適応制御によって推定されるダイナミクスの基底パラメータの真値への収束性について考察した.最後に,6自由度マニピュレータを用いて実験を行い,提案するアルゴリズムの有効性を確認した.


■ マルチモデルシステムのためのナッシュ戦略

広島大・向谷博明

 本論文では,ナッシュゲーム理論に基づくマルチモデルシステムに対する従来の結果を拡張する.まず,境界層システムの状態行列の非特異性を仮定しない条件の下,連立型リカッチ方程式の解の構造を明らかにする.つぎに,得られた連立型リカッチ方程式の解の構造式を利用することによって,準最適戦略の構築を提案する.最後に,提案された準最適戦略による評価関数の劣化の程度を明らかにする.本論文で提案される準最適戦略の特徴として,境界層システムの状態行列が特異かつ摂動項の値が未知であっても戦略対を構築することが可能である.さらに,従来法と同程度の代数計算で準最適戦略を設計することが可能である.したがって,マルチモデルシステムへの適用条件を緩和している意味で得られた結果は新規である.


■ Adaptive Digital Filtering Based on a Continuous-Time Performance Index

Kyoto Univ.・D. YASUFUKU, Yamaguchi Univ.・Yuji WAKASA, Kyoto Univ.・Y. YAMAMOTO

 ディジタル実装を前提とした適応フィルタリングでは,ナイキスト周波数以上の特性は,間接的に考慮されることはあるが,直接考慮されることはほとんどない.すなわち,サンプルされた離散時間信号上での離散時間特性が中心に議論される.しかし,対象が音声などの連続時間信号の場合,より精密な性能を追求するとき,高周波領域を含む連続時間特性が重要になる.そこで本論文では,連続時間性能の向上を目的とした適応ディジタルフィルタリングを提案する.具体的には,まず評価規範としてシステムの出力誤差の二乗積分,すなわち連続時間評価規範を採用する.そして,サンプル値制御理論で用いられるリフティングを適用することで,連続時間問題に対する等価な離散時間問題を導出し,逐次最小二乗法によって更新則を与える.また,ディジタル実装のための近似問題として,出力オーバーサンプリングの場合を考え,更新則を導出する.提案法は,従来の逐次最小二乗法と比べて連続時間出力誤差を軽減するだけでなく,適応フィルタの更新周期に対応するナイキスト周波数以上のダイナミクスを考慮することが可能となる.


■ 2台の車両型移動ロボットから構成される協調搬送システムの経路追従フィードバック制御法

武蔵工大・山口博明,東大・新井民夫

 本論文では,荷台を介して連結されている2台の車両型移動ロボットから構成される協調搬送システムの経路追従フィードバック制御法を提案した.具体的には,曲率が二階微分可能な経路とその接線に垂直な直線を2つの軸とする座標系において,本協調搬送システムの状態変数を定義し,この状態変数の時間微分を与える運動学的方程式を導き,微分幾何学に基づいて,この運動学的方程式を,正準系であるTwo-Chain,Single-Generator Chained Formへ変換可能であることを示した.この変換は,追従する経路を直交座標系におけるx軸とする場合,直交座標系における変換と等価となる.つまり,この変換は,直交座標系における変換も包含した,より一般化されたものであると言える.この正準系においては,状態変数の1つが,経路に沿った協調搬送システムの位置を表わしている.この状態変数を変化させる,つまり,協調搬送システムを走行させることで,他の状態変数を,目標値に収束させ,この経路追従動作を達成している.この制御法により,荷台が連結されている第1番目の車両型移動ロボットにおける後輪間の中点を経路に沿って移動させながら,この点における経路の接線の向きに応じて,荷台の姿勢を制御することができる.これらの変換と制御法の有効性は,シミュレーションにより検証されている.


■ 精度を保証した線形離散時間システムの状態可到達集合推定

阪大・平田研二,太田快人

 本稿では,大きさの制限された外部入力を有する線形離散時間システムの状態が,原点より到達可能である領域,すなわち状態可到達集合の推定法を考える.状態可到達集合は,一般にその厳密な構成が困難である.このため,その近似値を求める手法が提案されている.ただし,推定の精度に関する保証を与えるのは,困難なのが現状である.本稿では,線形離散時間システムを対象とし,この場合,精度を保証したうえでの状態可到達集合の推定が可能であることを示す.このため,状態可到達集合の上界を直接的に与えようとする,提案されているいくつかの手法とは異なり,その下界となる集合の列を順次構築する.さらに,要求される推定精度に依存し,この下界となる集合を拡大すると,状態可到達集合の上界が併せてえられることを示す.また,この構成手順の停止条件を,線形離散時間システムの動特性に関する不変集合に着目し与える.


■ Q学習に基づいた自動スリープシステムの最適制御

広島大・岡村寛之,日立情報システム・石倉 武 広島大・土肥 正

 動的電源管理(DPM)は電力消費を低減する効果的な方法の1つである.特に,自動スリープ機能は最も単純であるが消費電力を抑えるのに効果的である.本論文では自動スリープ機能において,どのタイミングでスリープへ移行するのが最適であるかという問題を取り扱う.問題解決のアプローチとして,ここでは強化学習の1つであるQ学習を用いる.Q学習とは強化学習の1つであり,本来セミマルコフ決定過程と密接な関係がある.そこで,本論文では従来提案された自動スリープに対する確立モデルを新たにセミマルコフ決定過程によって定式化した後に,Q学習を適用し動的電源管理の実現を目指す.最終的に数値例においてQ学習による電源管理の利点を定量的に検証する.


■ 同時リカレントネットワークによる不連続な非線形関数の統計的近似学習法

東北大・酒井正夫,本間経康,阿部健一

 同時リカレントネットワーク(SRN)は,構成ニューロンの状態量の時間発展が状態空間上に形成するベイスン構造を利用することで,不連続な非線形関数に対する高い近似精度を期待できる神経回路網モデルである.
 SRNの学習法は誤差逆伝搬法を基にしたものがほとんどであり,フィードバックの回数だけ誤差逆伝搬の計算を繰り返す時間展開型誤差逆伝搬法と,最後の1回だけ誤差の逆伝搬を行う打ち切り型誤差逆伝搬法が一般的である.しかし,これらの従来法を用いた場合は,そのネットワークダイナミクスによっては計算コストの増大や学習精度の低下といった問題が生じ,学習に失敗する可能性がある.
 本稿では,SRNの新しい学習法として統計的近似学習法を提案する.提案法では,ネットワークダイナミクスの統計的解析手法を用いることで,誤差逆伝搬の計算を近似的に求めることが可能である.
 シミュレーション結果より,従来の階層型ニューラルネットワークを用いた場合には近似が困難な不連続な非線形関数を,提案法を用いてSRNを学習させることで,ほぼ打ち切り型誤差逆伝搬法と変わらない計算コストで,より安定的な学習が初期値に依存せず実現可能であることを示す.


■ クラス内分散最小化による遺伝子発現データのクラスタリング

神戸大・杉山昭暢,小谷 学

 近年,DNA塩基配列の意味のある部分(遺伝子)の機能の解明がますます重要になってきている.いくつかの遺伝子の機能は明らかにされているが,大半の遺伝子の機能は未知である.そこで,遺伝子発現パターンをクラスタリングすることによって,遺伝子の機能を推定する研究が活発に行われている.しかし,これまでは明確なクラス分類境界は得られていなかった.そこで,本論文では,DNAマイクロアレイによって得られるイースト菌遺伝子発現データを分類することを目的として,自己組織化マップのユニットのクラス分類境界を明確にするクラスタリング方法とその評価を行う.そのために,クラス内分散の最小化に基づくクラスタリング方法の適用可能性を評価する.得られた結果より,カーネルを使った高次元の特徴空間では,各グループを正確に分類できることが示された.また,カーネル行列の固有値の累積寄与率をもとにクラス数を推定できる可能性があるということなどが明らかとなった.これらの結果より,本論文で適用したクラスタリング方法によって,学習後の自己組織化マップのユニット間のクラス分類境界を明確にできることがわかった.


 
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