SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.10(2003年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 擬似乱数M系列によるスペクトル拡散音波の距離計測への応用

創価大・山根章生,伊与田健敏,崔 龍雲,久保田 譲,渡辺一弘

 スペクトル拡散音波を用いた屋内の測位システムの構築を目的に,周波数特性の帯域が比較的広い可聴音波域帯(0.69,3.0,10kHz)の送受信源を用いて,位相変調によりスペクトル拡散した縦波弾性音波による測距実験を行い,測距精度の検討を行った.擬似乱数符号列として系列長127のM系列を用い位相変調した受信音波信号の逆拡散による測距実験では,搬送波周波数0.69,3.0kHzにおいてフルスケール誤差で1%以下の計測が可能であることが明らかとなった.特に,10kHzでは18mの距離範囲で0.037%(約7mm)の精度が実現された.また白色雑音の混入,異なる擬似乱数系列による符号多重分割送信の実験的検討も行い,雑音排除能力,多重送信信号識別性が位相変調縦波弾性波でも十分に確保できることを実証した.各周波数における測距実験では,周波数スペクトルの拡散時の搬送波周波数と擬似乱数系列による位相変調の1チップ距離が測距精度に与える影響についても,汎地球的測位システム(GPS: Global Positioning System)における擬似距離測定のアナロジーとして検討を行った.


■ ゴルフクラブスイング時のヘッドの三次元移動軌跡と姿勢の計測

法政大・瀬川友輔,穂苅真樹,渡辺嘉二郎

 スイング時のクラブヘッドの移動軌跡および姿勢はスイングの評価やゴルフ器具の開発のためにきわめて重要であるにもかかわらず,これらの簡易な計測法はなかった.そのおもな理由はゴルフスイングにおけるヘッドスピードは30〜50m/sと高速のためである.従来は,高速ビデオカメラにより得た画像を画像処理する大がかりな方法しかなかった.本論文では高速度カメラを用いる方法における問題点を解決し,スイング中のクラブヘッドの高速運動に追従でき,正確かつ簡易にその移動軌跡と姿勢を計測する新たな方法を提案し,つぎの結果を得た.
(1) ラインCCDカメラを使用し,安価でコンパクトなシステムおよび計測方法を確立した.
(2) 高速度カメラを使用したDLT法による結果との比較した,より短いサンプリング間隔で移動軌跡と姿勢が計測できることがわかった.


■ 音像定位のためのホルマント位相差に基づく移動音源追従

豊橋技科大・小幡賢三,野口健太郎,田所嘉昭

 音像定位のためのホルマント位相差に基づく移動音源追従コンサートホール等での音像定位操作を自動化するために,音源位置情報が必要である.音源位置情報を得るため,一受信点測位法を用い,3つのマイクロホンに入射する信号の位相差を基に,マイクロホンに達する信号の到来角度を得て音源位置を推定する実用的な観点でのアルゴリズムの提案を行った.受信した信号をバンドパスフィルタに通過させることでホルマントを得る.そして,ホルマント位相差を推定することで信号の到来角度を得る.しかし,実際にはホルマント周波数が変動するために推定誤差を生じる.そこで,高速フーリエ変換により最大スペクトルを与える周波数成分を利用する手法と,零交差から推定したホルマント周波数とフーリエ変換による手法を提案した.また,これら2つの位相差推定手法と組み合わせるエコー回避法を検討した.シミュレーションにより,変動するホルマント周波数に対する位相差推定性能とエコー回避の効果を示した.そして,実際のシステムによる実験から,静止音源では0.6m以内の位置推定精度を得た.さらに,音源移動に対しては,音源の追尾がなされていることを明らかにした.


■ Realization of Wave Control for Uniformly Varying Damped Mass-Spring Systems by Active Mass Dampers

Nagoya Univ.・Kenji NAGASE, Hitotaka OJIMA,Yoshikazu HAYAKAWA

 本論文では,一定比で変化するマス・ばね・ダンパ系に対する波動制御を動吸振器により実現することを考えた.進行波による解析から得られるインピーダンスマッチングコントローラは速度を観測し力が直接入力できるものとして導かれているので,現実のアクチュエータを用いてインピーダンスマッチングコントローラの特性を実現するためのコントローラ設計法を考えることは重要である.この実現において,高層建築物の振動制御でよく用いられる動吸振器を用いた場合,インピーダンスマッチングの実現に加えて,動吸振器のドリフトの抑制を考慮する必要がある.はじめに,動吸振器のドリフトを考慮しない理想的な状況で,厳密にインピーダンスマッチングを実現することを考え,内部安定性を確保するためにシステムの物理パラメータが満たすべき条件(必要十分)を導く.この条件は現実のシステムにおいて非常に厳しく,また,現実には動吸振器のドリフトの抑制を考慮する必要があるので,つぎに,インピーダンスマッチングの実現とドリフトの抑制を同時に考慮した,周波数分離の考えに基づく現実的なコントローラ設計法を提案する.提案する設計法を多層構造物の振動制御に適用し,数値シミュレーションならびに実験によりその有効性を検証する.


■ パラメータを外乱と見なした非線形適応H∞制御系の構成法

統数研・宮里義彦

 適応制御の研究においてこれまでの議論は適応系の安定性に関するものが大部分であり,過渡特性を含む制御性能については多く論じられてこなかった.これに対して近年,逆最適化の観点に立って,漸近安定だけでなく特定の評価関数に対して最適あるいは準最適となる非線形制御系や適応制御系の構成法の研究が行われている.これは非線形制御や適応制御の安定解析に用いるリアプノフ関数とHamilton-Jacobi方程式の解を部分的に関連づけることで可能となる.本稿ではそれに関連する話題として,逆最適性の考え方に基づいて,制御対象のパラメータ(の変動部分)を未知外乱と見なして,未知外乱(パラメータ)から一般化出力までのL2ゲインを規定する非線形適応H∞制御系の構成法とその性質について述べる.この制御系は制御対象が線形系または非線形系いずれの場合も非線形H∞制御問題から導かれる非線形制御方式であり,適応パラメータの調整則に依存せずに制御系の有界性が保証され,システムパラメータが時変(任意の有界な変動)の場合にも適用できる.さらにシステムパラメータが時不変または一定値に収束するときには,制御誤差のゼロへの収束も達成される.特に高調波利得が時不変の場合,得られた制御入力は特定のH∞制御問題の準最適解であることが示される.


■ Iterative feedback tuningのプロセス制御への応用

東芝・中本政志

 本論文はIterative Feedback Tuning(IFT)の実用上の観点からの改造と,熱流体を扱うプロセスのPIDコントローラの調整への適用結果を示す.
 IFTは固定した構造のコントローラをもつ閉ループシステムに対して,設定値応答などの試験を繰り返し行い,プラントの入出力データから与えられた評価関数Jを最小にする制御パラメータを求める方法である.
 従来の研究においては,評価関数はプラント出力と目標値の偏差eの2乗とコントローラ出力uの2乗の和をあるサンプル期間加算するようにとられている.
 定位系のシステムでは,定常値をもつ設定値変化や外乱に対して,定常時には偏差eとコントローラ出力uは同時に0にはならない.このため,プロセス制御などに多い,定常特性を重視する定位系の制御対象では,この評価関数は妥当でなくなる.
 このため,本論文では,IFTをプロセス制御の調整に適するよう,評価関数や試験方法の変更を行った.PI,PIDパラメータの調整について具体的な方法を示し,実機試験により効果を確かめた.


■ サンプル値区分的アファインシステムの最適制御とCPUの高速・省電力化制御への応用

東工大・東 俊一,井村順一

 近年,ハイブリッドシステムの最適制御に関する研究が多くなされているが,代表的な解法として,混合論理動的システムを混合整数計画問題に帰着させるものがある.これは,適用範囲が広く,最適制御則が初期状態の関数として陽に得られるという特長があるが,連続時間システムを扱おうとすると,サンプリング周期を小さくせざるをえないことから,計算量が爆発的に増大するという問題を抱えている.また,サンプル点間における状態と制御入力の応答を考慮できないため,所望の制御性能が得られるとは言い難い.一方,サンプル点間における状態と制御入力の応答を考慮できる解法として,サンプル値区分的アファインシステムを扱ったものがあるが,そこでは,すべてのモードに割当てられた状態方程式が可制御というきわめて限られた条件のもとでの解が得られているだけであった.
 本論文では,すべてのモードに割当てられた状態方程式が可制御とは限らないサンプル値区分的アファインシステムを扱い,サンプル点間の状態と制御入力の応答を考慮に入れた有限時間の最適制御問題の一般解を与える.また,CPUの高速・省電力化制御問題をハイブリッドシステムの制御問題として定式化し,本論文の手法の有効性を示す.



■ シナジェティクスのオーダパラメータ方程式に関する一考察

九工大・前田 博,日立製作所・村上智仁,九工大・入江 徹

 筆者らは,隠れや順序逆転を含んだ2眼ステレオ画像の対応点探索の精度を向上させる目的で,新たにシナジェティクスを用いたステレオマッチングアルゴリズムを提案した.この方法は,左右画像の対応を見出すためにオーダパラメータ方程式と呼ばれる非線形連立微分方程式を数値的に解かなければならなかった.そのために,対応点候補を多く有する複雑な画像では多くの計算コストを必要とした.
 これに対処するために,オーダパラメータ方程式を数値的に解かずに定常解を見出す,すなわち初期値のみを用いて定常解を判定できる高速アルゴリズムの開発を目指している.本論文は,オーダパラメータ方程式の特異点を理論的に解析し,高速化のための知見を見出した.まず,2次元,3次元の場合のオーダパラメータ方程式の特異点の性質とそれらの間の関係を明らかにし,つぎに,n次元の場合の一般的性質を見出している.それによると,オーダパラメータ方程式の特異点は,不安定焦点,安定焦点,下位鞍点,最上位鞍点の4種類に分類され,安定焦点がオーダパラメータ方程式の定常解候補となる.ある安定焦点が定常解となるための初期値の存在領域を,安定焦点,不安定焦点,下位鞍点,最上位鞍点などを用いて近似的に構成するための知見が得られた.


■ 同期タッピング課題における予測的挙動の時系列データ解析

東工大・小松知章,三宅美博

 感覚運動連関に関して,周期的な音や光などの刺激に対する身体反応が数10msほど先行する,負の非同期現象(Nagative Asynchrony)が知られている.この現象を簡易に測定できる実験系としてスイッチ押し下げ運動を用いる同期タッピング課題が存在する.それを用い,Mates,Po¨ppelらによる刺激周期に対するNegative Asynchronyの出現分布など,知見が集められてきた.しかしそうした結果は基本的に時系列性を失わせる統計手法によるもので,非同期量のダイナミクスについては,自己相関C(1)の解析以外手つかずであった.
 そこで本研究は,タッピング実験系における試行時間軸と負の非同期量との対応を時系列データとして捉え,パワースペクトルを求めてそのパターンを検討した.結果,非同期量変異にまったく異なった2つの動的特性が現れることを見出した.一方は入力周波数依存,他方は特定周波数非依存でパワー-周波数が反比例対応するものであった.またおのおののダイナミクスがもつ,対刺激周期の応答特性を明らかにし,両者が独立であることを見出した.


■ ツール伝達関数の安定性に基づく人間―機械協調作業系の制御系に関する一考察

東海大・稲葉 毅,東工大・松尾芳樹

 本研究では制御された動力機械を人間が物理的に直接操作し,対象物に搬送や加工などを行うシステム:人間−機械協調作業系の,操作性を重視した制御系設計について検討する.まず,制御機械が対象から離れている場合の操作力から操作点の運動までの伝達関数:ツール伝達関数の安定性を前提とした人間―機械協調作業系の制御系の一般構造とその設計自由度が2であることをYJBKパラメトリゼーションに基づいて導き,制御系の主要伝達関数間の関連性などを明らかにする.
 さらに,筆者らが手動制御系において明らかにしている操作者の動特性自己整形特性と操作性との関連性が人間―機械協調作業系においても成り立ち,望ましい操作伝達関数の決定に活用できることを実験で確認する.そして,この自己整形の性質を利用して操作伝達関数を明示的に指定し,それとは独立に,対象の特性変化を操作者に伝える感度:対象変化伝達関数を作業内容に応じて適切に調整する手法を提案する.最後に,対象の特性変化境界面のならい作業を想定した人間―機械協調作業系を例題として本手法を適用し,望ましい操作伝達特性に整形した上で,対象特性変化を認識しやすくするように対象変化伝達関数を整形する補償器設計および実験を行い,本手法の有効性を検証する.


■ インピーダンス知覚を用いた円柱状曲表面の認識

名工大・菊植 亮,京大・吉川恒夫

 本論文では,ロボットの手先効果器が円柱状曲面の上で動摩状態にある状況下で,位置と力の観測値からその曲面の局所的な主方向と法線方向,摩擦係数,剛性係数,曲率を推定する方法を提案する.筆者らが既報で提案した「インピーダンス知覚」では,任意の動作中のロボットから得られる位置と力のセンサ情報から,全方向のインピーダンスパラメータが実時間で推定され,それらの推定値の不確定性も見積もられる.表面属性の情報は,「インピーダンス知覚」で得られる剛性行列から抽出される.本手法は推定のための特殊な制御方式や動作計画を前提としない,センサ情報の受動的な監視手法であるので,制御方式から切り離された独立性の高い知覚機能として実装することが可能である.これにより,自律ロボットと遠隔操作ロボットの両方に応用でき,また,人間の動作の直接監視にも応用できる可能性がある.本論文では対象とする形状を凸な円柱曲面に限定したが,このクラスの曲面はパイプや瓶や缶など,日常の広範囲の物体にあてはまるものであり,少ない接触でその情報を得られるようになることが期待できる.基礎実験の結果についても報告する.



[ショート・ペーパー]

■ The Improvement of the Shift Error in GPS Standard Positioning Service

Keio Univ.・Kazuki SHIMIZU, Junichi TAKAMURA,Toshiyuki TANAKA

 GPS(Global Positioning System)は最新の人工衛星による3次元測位システムである.GPSを利用した測位手法にはいくつか種類があるが,本論文ではその中で単独測位に着目した.単独測位はGPS測位の中で最も簡単な測位方法であり,簡易・安価な装置のみで誰でも利用できる.他の測位手法に比べると精度は落ちるものの,それに増す利便性の高さからさらなる精度向上が期待されている手法である.著者らは単独測位による測位実験を同じ条件で複数回行った.その結果から単独測位の測位結果は測定ごとに真の位置から異なったずれを生じることがわかった(これをシフト誤差と呼ぶことにする).一般にGPSの測位精度を評価する場合に測位結果の分散に着目することが多く,このシフト誤差はほとんど注目されていない.そこで,本研究ではこのシフト誤差を予測し軽減する手法を提案した.本手法では計算機内に実際の受信環境と同じモデルを作り出し,そのときの衛星配置から計算機内でシフト誤差を予測し補正を行った.本手法は一般的なGPS受信機からの出力のみを利用するため受信機以外の機器を必要とせず,ほとんどの受信機に対して簡単に補正を行うことができる.さらに,計算も簡易で済むため受信機に負荷をかけることなくリアルタイムで補正を行うことが可能である.2種類の受信機に対して実験とシミュレーションを行い,全体の8割のデータに対して精度を上げることができ,1点あたり平均で最初に測定されたシフト量の3割の測位精度を改善することができた.また,補正に失敗したデータの多くがシフト誤差の予測値が1m以内に集中していたことから,予測値が1mより小さいものは補正を行わないことにより8割のデータというのはそのままに1点あたり平均で4割の測位精度を改善することができた.


■ 非最小位相特性をループ外に追い出した制御系の設計方法

新日鉄・小林孝一,阪大・木山 健,法政大・北森俊行

 本論文では,非最小位相特性を有する制御対象に対し,部分的モデルマッチング法の枠組で非最小位相特性部分を制御ループから追い出す新たな制御系設計方法,設計公式を提案する.むだ時間を有する制御対象に対する従来の代表的制御系設計方法としてSmith補償法が知られている.しかし,制御対象のむだ時間を制御ループから追い出すために,むだ時間を含む簡単な補償要素をPID制御装置へ付加する必要があり,制御系の構造が複雑になってしまう問題点をもつ.また,従来の部分的モデルマッチング法による非最小位相特性を有する制御対象への制御系設計という観点では,応答の速応性を十分に改善できない問題点が存在する.本論文ではこの2つの問題点を解決するものである.まず,制御対象を非最小位相特性部分とそれ以外の部分に分離することを考察し,右既約分解およびインナ・アウタ分解の利用により分離可能なことを明らかにする.そして,得られた非最小位相特性部分を参照モデルに持たせることを提案し,この参照モデルを基にI-PDおよびPID方式の設計公式を導出する.Smith補償法と比較し,特別な付加的補償要素を必要としないこの手法は簡便であるという利点をもつ.最後に数値例により提案した設計方法の有効性を示す.


 
copyright © 2004 (社)計測自動制御学会