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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.6(2005年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 自由度が制限された2指ハンドによる転がり接触を用いた対象物の把握・操りと接触点の同時制御

名古屋大・中島 明,長瀬賢二,早川義一,三田将貴

 本論文では,指先の自由度が6自由度よりも制限される場合での2指ハンドロボットによる純粋転がり接触での対象物の把握・操りについて議論し,システムの自由度の解析を行い,その自由度のすべてを制御する手法を提案した.はじめに,転がり速度と指・対象物の速度の関係を導出し,速度レベルと位置レベルの自由度を解析した.そこでは,転がり速度が自由に発生できる場合に,位置レベルの自由度が最大となることに注目した.つぎに,制御系設計において,位置レベルの自由度すべての制御を行うために,指と対象物の速度を,転がり速度と,転がり速度に寄与しない指と対象物の速度に分解して表現した.また,この転がり速度と指と対象物の速度および内力に関する線形化補償器を導出した.この転がり速度を適切に制御することで,接触座標のすべてのレギュレーションが可能となり,転がり運動に寄与しない指・対象物の運動と合わせて位置レベルのすべての自由度が制御できる.なお,接触状態にある位置レベルの変数は互いに関連しているので,その関係式を用いてほかの変数をレギュレーションの目標値とすることも可能である.以上の手法の有効性を数値例により確認した.


■ H2レベル制御器集合を用いたH2最適制御系設計法と混合H2/D-stability制御問題への応用

九工大・上 泰,延山英沢

 本論文では,まず,定ゲイン状態フィードバックを用いたH2制御問題の大域的最適解を求めるための変数交互固定型の繰り返しアルゴリズムを提案する.本アルゴリズムは,制御器変数を固定したLyapunov方程式とLyapunov変数を固定したLMIを繰り返し解くアルゴリズムであり,特別な場合としてKleinmanの方法を含む.本アルゴリズムの特徴は,Lyapunov変数を固定したLMIを満たす制御器の集合が,与えられた制御器よりも閉ループ系のH2ノルムを小さくする制御器の集合(H2レベル制御器集合)となることを利用することである.さらに,H2レベル制御器集合の定義と同様に他の制御目的を満足するような制御器の集合を定義し,これらの結合集合を考えると,これに含まれる制御器は与えられた制御目的を満足するなかでH2ノルムを小さくする制御器となる.このことを利用し,つぎに,領域極配置条件(D-stability)を満足するなかでH2ノルムをできるだけ小さくする制御問題(混合H2/D-stability制御問題)を考え,繰り返し型の混合H2/D-stability制御系設計法を提案する.最後に,数値例を用いて提案手法の有効性を示す.


■ ステアリングを持つ3叉移動機構の制御

武蔵工大・山口博明

 本論文では,4つのステアリングを持つ3叉移動機構,ならびに,そのフィードバック制御法を提案した.この3叉移動機構は,3つの関節の駆動と4つのステアリングの操舵により,波動歩行(undulatory locomotion)を行うものである.この3叉移動機構における第1番目のリンクの先端に,仮想的な関節を介して連結される仮想的なリンクを想定した.この仮想的なリンクの中点には,仮想的な車軸が,そして,その先端には,仮想的なステアリングが取り付けられている.これらの仮想的な機械要素を想定することにより,この3叉移動機構の運動学的方程式が,微分幾何学に基づいて,Five-Chain, Single-Generator Chained Formへ変換可能となることを示した.また,このChained Formに基づいて,この3叉移動機構の直線経路への追従を可能にするフィードバック制御法を提案した.特に,この3叉移動機構の直線経路への滑らかな追従が実現されている.この3叉移動機構の設計,その運動学的方程式のChained Formへの変換,ならびに,直線経路への追従を可能にするフィードバック制御法の有効性は,シミュレーションにより検証されている.


■ H2制御コントローラの低次元化設計―走行クレーンの振れ止め制御への適用―

東海大・小谷斉之,大内茂人,穴吹雅敏,千葉大・劉 康志

 外乱から制御出力までの伝達関数のH2ノルムを最小とするような制御則を求める手法としてH2制御が知られている.H2制御はLQ制御やLQG制御における定係数重み行列に対して動的な重みを許したものであるが,これまでのH2制御では制御対象の全状態のうちその一部が観測できる場合でも,同一次元オブザーバで推定した全状態変数を用いて制御則を求めていたため,コントローラの次数は制御対象と重み関数の次数をそれぞれ加えたものとなり,冗長なコントローラとなっていた.
 われわれは観測できない状態変数のみを最小次元オブザーバを使って推定することにより,コントローラの低次元化を図ることができることに着目し,低次元H2制御コントローラを導出した.提案する低次元H2制御系と従来のH2制御系のノルムを比較した結果,単純な比較においては従来のH2制御系のノルムよりも小さくできることがわかった.
 走行クレーンの振れ止め制御に対して,われわれが提案する低次元H2制御コントローラを適用し,顕著な振れ止め制御の効果を実験で確認した.さらに,従来のH2制御コントローラとの比較実験を行い,われわれの提案する低次元H2制御コントローラは従来方式よりも優れた制御性能を有していることを確認した.


■ 同期タッピング課題における非同期量の時間発展

東工大・小松知章,三宅美博

 これまでわれわれは,人間のもつ時間軸上の予測性に範をとった新たなインタフェースを追求してきた.人間は,実時間と必ずしも同一の時間流れをとらない“主観”時間上でのタイミング同期を行っているが,そのダイナミクスは十分には明らかにされてこなかった.そこで本研究では同期タッピング課題を用い,その非同期量時系列の時間発展を解析し,上記の問題へアプローチした.Detrended Fracuation AnalysisとWavelet解析より,自己相似性とそのスペクトル指数の刺激周期応答を明らかにした.また自己相似性が成立する時間尺度の範囲内でShort Time Fourier Transformのスペクトルパターンを累乗近似するという手法を提案した.そこから残差として現れる安定した固有周期は時間軸上で局在化しており,同様の時間発展はWavelet変換によっても認められた.またこの,上述した時系列における「履歴性の高低」と「周期性の多寡」という2つの変動間で,関係性の存在を示唆する解析を行った.これらの結果は,これまで本実験課題を解析する際に用いられてきた統計手法や,定常波形を仮定した周波数解析からは得られないもので,本研究で始めて明らかにされたものである.


■ 走行クレーンの視覚フィードバック制御

中部大・吉田靖夫,ダイフク・平野正樹,中央製作所・冨田隆之,小島プレス・手嶋博文

 本研究は試作のステレオビジョン装置を用いた巻上げ機構を有する走行クレーンの視覚フィードバック制御システムの開発であり,実験によってその有効性を明らかにすることを目的とした.試作の視覚センサは2台のCCDカメラを有する4自由度ステレオビジョン装置であり,走行クレーンはトロリー走行変位・巻き上げロープ長・吊り荷揺れ角の3自由度モデルである.走行クレーンの吊り荷を注視追跡するように視覚センサを制御し,さらに視覚センサにより計測した吊り荷3次元位置から吊り荷の振れ角を求め,これらの情報をもとに走行クレーンに関して連続時間系の極指定レギュレータコントローラをディジタル再設計で離散化して求めた可変ディジタルゲインを用い,トロリー走行とロープ巻上げのモータ速度指令方式による吊り荷の位置決めと揺れ振動防止制御を行った結果を報告する.


■ 非線形力学系のアトラクタ設計によるヒューマノイドロボットの運動創発

東工大・岡田昌史,東大・大里健太,中村仁彦

 一般に,ロボットの運動はロボットを安定化するコントローラと目標運動パターンによって実現されてきた.しかし,運動パターンの設計において環境の情報が必要であり,決まった場所での精密なタスクの実行が要求される産業用ロボットに対して有効であるものの,ヒューマノイドロボットのように異なる環境の中を動くロボットに対しては,必ずしも有効な手法とは言い難い.一方,人間の運動では身体の力学・情報処理系の力学・環境の力学の相互作用によって引き込み現象が起こり,安定な運動が生成されていると考えられる.すなわち,運動パターンは先に存在するのではなく,引き込み現象の結果として現れると考えられる.本論文では,これまでに提案した力学的情報処理を基礎として,これにロボットの身体の力学を埋め込むことで,引き込み現象として表現されたロボットの運動創発システムの設計を行う.ここでは,目標の運動パターンを創発の種として与え,これをもとにして引き込み現象をもつ力学系を設計するものであり,非線形状態フィードバックによって力学系を平衡軌道へ安定化させるものである.提案手法の有効性を倒立振子モデルを用いたシミュレーションによって示し,さらに,ヒューマノイドロボットのスクワット運動を実現する.


[ショート・ペーパー]

■ 減衰係数を考慮した多重反射波モデルによる超音波非破壊検査システムについて

山口大・盛重 肇,田中正吾

 トンネル,橋梁など多くのコンクリート構造物に対し,コンクリート剥離による事故がしばしば見受けられる.これらのコンクリート構造物に対する非破壊検査手法としては,これまで熟練者がハンマーで衝撃を与え,そのときの反力や音などにより異常を検知・診断する方法がよく採用されてきたが,この手法は信頼性が低いのに加え,個人差が大きい欠点をもつ.このようなことから,打音検査に代わる手法の1つとして超音波センサを用いた手法が考えられてきた.
 この観点から,著者らは先に多重反射波モデルに基づくパターンマッチング法による非破壊検査手法を提案したが,超音波センサ出力には,表面からの反射波が大きく加わるため,超音波センサ出力に直接この方式を適用することは望ましくないことがわかってきた.
 そこで本論文では,まず前処理として超音波センサ出力をバンドパスフィルタにかけ,このような外乱をできるだけ取り除き,つぎに超音波がコンクリート中を伝播する際の減衰を考慮に入れたモデル波形とフィルタ出力とのパターンマッチング法を採用することによりクラックまでの往復伝播時間を求めやすくした.


■ あるクラスの非線形システムに対する最大出力許容集合の構成手順

阪大・平田研二

 本稿では,制御入力および動作状態に関する拘束条件を有する非線形システムが,その拘束条件を破ることなく“安全に”動作するための必要十分条件を明らかにする.このために,非線形システムの表現として多項式システムを考え,これに対する最大出力許容集合の概念を提案する.そのうえで,この最大出力許容集合の厳密な構成が,多項式最適化を利用することで,可能なことを明らかにする.結果として,拘束条件達成のための必要十分条件を,陽にあらわすことが可能となる.非線形システムに対する最大出力許容集合の性質,構成手順の停止性などの詳細に関する議論は,今後の研究課題となっている.


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