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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.10(2005年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 複数の光学マウスセンサを用いた移動ロボットのデッドレコニング

明石高専・関森大介,阪大・宮崎文夫

 本論文では,移動ロボットの精度の良い位置推定法を実現するために,光学マウスセンサを用いてロボットの移動量を床面から非接触で読み取り,その値を積算するデッドレコニングを提案する.光学マウスセンサ単体で2軸方向の移動量を計測できるため,ロボットの並進移動量と回転量を計算するには,2個の光学マウスセンサをロボットに取り付ける必要がある.しかしながら,床面の状態やロボットの揺れ等により,2つのセンサのみでは正しく移動量を読むことができないことが予想される.そこで,本論文では,ロボットに複数の光学マウスセンサを配置し,各センサ値を相互に照合し,最も信頼性の高いセンサ値のみを採用することで,精度の良いデッドレコニングを実現する方法を提案する.そして,実際のロボットを用いたいくつかの実験を行い,本手法の有効性を示す.


■ ロードセルの動的応答特性

東海大・近藤 博,木村修一,本間重雄

 一般に,ロードセルの動的応答特性は,ロードセルの載荷部を質点(m),受感部をバネ(k)と置き,振動学的見地から検討されている.したがって,入力荷の振動数が大きくなると共振現象が生じ出力値が過大になると言われている.
 そこで,ロードセルの動的応答特性について,円筒受感形のロードセルをモデル化した供試ロードセルを作製し,打撃試験と波動論に基づいたインピーダンス法を適用したシミュレーション計算により検討した.
 この検討から,ロードセルの動的応答特性は一次遅れ系モデルで表現できること,ならびにロードセルの周波数特性は,従来の常識とは逆で,入力荷重の振動数が大きくなると,荷重が過小に計測されることが明らかになった.


■ 球殻弾性層内金属球の位置計測に基づく三次元運動体の合成加速度検出

新潟大・岡田徳次,三洋電機・黒崎賢一,カールスルーエ大・バーンズ・カーステン,
ルディガー・ディルマン

 本稿は,球殻内弾性層上に閉じ込められた金属球中心位置を検出することによる運動と重力の三次元合成加速度検出法について述べる.シリコーンゴムを用いて異なる弾性層の構成法を紹介し,ヘルツの公式を用いて弾性層の圧力に対する変位を算出する.金属球は合成加速度に応じて自由に球殻内を転動して平衡状態を作るのでその中心位置を追跡する.球殻に同心状な弾性層は金属に作用する力の影響を受けて沈むことを利用し,3つの高周波発信型の近接センサからの出力を総合して作用力と沈みの関係を明らかにする.圧力対沈みの関係を利用して加速度の検出が可能なことを示し,また,実測結果を比較して加速度センサの設計に適した弾性層を吟味する.これらの結果は,球殻型加速度センサの仕様を決めるために重要である.提案する加速度検出法は,大きさで−0.032〜+0.097[m/s2]以内,方向で7.4[deg]以内,±4.9[deg]の不感帯であることを実証する.また,金属球の転がり振動は問題にならないことを確認する.


■ 等価入力外乱推定による外乱除去性能の向上

東京工科大・余 錦華,大山恭弘,小林裕之,岡山県立大・忻 欣

 本論文は,等価入力外乱を推定することによりサーボ系の外乱除去性能を向上させる新しい制御手法を提案する.まず,等価入力外乱を定義し,つぎに,等価入力外乱の推定値を融合した新しいサーボ系の構成を示し,それから,制御則の一設計法を提案した.提案した手法の有効性は二本指のロボットハンドの位置決め制御により検証された.


■ 非線形システムに対する出力フィードバック型リファレンスガバナの設計

京大・畑中健志,鷹羽浄嗣

 本論文では,観測不可能な状態を有する非線形拘束システムに対する新たなリファレンスガバナアルゴリズムを構築する.提案法は状態の代わりに,状態がその内部に存在することが保証されるような楕円体領域を用いる.そのような領域はScholte,Campbellの集合値オブザーバによって得ることができる.提案法は,効率良く解くことができるとは限らない最適化問題の解を必要とする.そこで実装を容易にするために,常に解くことができる緩和問題を導入する.またステップ目標値を考えて,外乱も雑音も存在しない場合に,提案法を適用した際,有限時間で修正目標値がその目標値に整定し,結果として状態が所望の平衡点に収束するための十分条件を導く.さらに外乱や雑音が加わる場合でも,修正目標値が目標値に有限時間整定し,かつ状態が平衡点のある近傍内部に収束するための十分条件を導出する.数値例で提案法の有効性を検証する.


■ 姿勢変化の経路を考慮した2ホイール衛星の姿勢制御

東大・下田真吾,JAXA・久保田 孝,中谷一郎

 衛星が姿勢マヌーバを行う場合,地球との通信状況や,探査対象との位置関係により,衛星が経由することのできる姿勢は限られる.そのため,2個のホイールを利用して衛星の姿勢制御を行う場合も,目標姿勢にたどり着くための経路は制限され,その範囲内で姿勢制御を行う必要がある.本論文では,2個のホイールを利用して姿勢変化を行う衛星の姿勢を単位球面上に射影することで,リーマン幾何学空間中で衛星の姿勢制御を行う手法を提案する.衛星姿勢を単位球面上に射影することで,衛星姿勢の力学的拘束と,リーマン幾何学空間内の幾何学的拘束を一致させることができるため,射影した空間内で制御を行うことが可能となる.さらに,射影された姿勢が,幾何学空間内に描く面積が,ホイールをもたない軸回りの回転角を表わすため,その面積を利用して姿勢変化の制限範囲内で目標姿勢にたどり着く経路を計画する手法を提案する.さらに,設計した経路と実際の経路との面積差を制御量とすることで,Brockettの定理を回避したフィードバック則を提案する.面積を利用した経路計画法とフィードバック則を組み合わせることで,2ホイールをもつ衛星の姿勢を経路を指定して目標姿勢に収束させることが可能であることをシミュレーションにより示す.


■ 分布定数ポートハミルトン系における外乱の構造分解

東工大・西田 豪,山北昌毅

 本稿では,Stokes-Dirac 構造を用いて表現された分布定数ポートハミルトン系が,外乱を含む場合の構造について考察する.まず最初に,可縮な領域上の系に与えられた任意の外乱は,境界制御が可能な境界エネルギー構造と,そうでない分布エネルギー構造に唯一に分解できることを示す.可縮な多様体上のk形式全体の空間は,k>0 において,完全形式,双対完全形式の直和によって表わされることになる.分解された完全形式は境界制御が可能な境界エネルギー構造に,双対完全形式が境界上の積分によって評価が不可能な分布エネルギー構造にそれぞれ対応している.つぎに,この構造分解を用いて,系の具体的な表現を与える.一般の場合を考えると,系は複数のエネルギー対を含む多変数の表現となる.多変数系においてStokes-Dirac 構造は,対応するポートに関して標準のStokes-Dirac 構造に分解して考えることができる.よって,最小の構造である標準のStokes-Dirac 構造に関して任意の外乱を考えた場合,前述の境界エネルギー構造を表わす行列は常に非対角となり,分布エネルギー構造は対角行列によって表わされることを示す.



■ 線形システムに対する1ステップバックステッピングによる適応出力フィードバック制御系設計

熊本大・水本郁朗,道野隆二,公文 誠,岩井善太

 ASPR(概強正実)なシステムに対して,SAC(単純適応制御)に代表されるように構造が簡単で有界外乱や寄生要素に対してロバストなハイゲイン出力フィードバックに基づく適応制御系が構成できることが知られている.しかし,実際の多くのシステムはこのASPR性を満足しないことから,このような制御手法の実用化においては,非ASPRなシステムに対するなんらかの対策が必要とされている.このようなことから,これまでにASPR条件の緩和手法として,PFC(並列フィードフォワード補償器)を導入する手法や仮想フィルタを導入しバックステッピング法を用いて制御系を構成する手法が提案されている.しかしながら,PFCを導入する手法ではPFC出力の影響によるバイアス効果により制御性能が劣化する問題があり,また仮想フィルタを導入する手法ではバックステッピングの回数がシステムの相対次数に依存することから,高次相対次数を有するシステムにおいては制御系構造の複雑化を招いていた.
 本報告では,高次の相対次数をもつシステムに対しても1回のバックステッピングで制御系が構成できる新しい制御系構成法,1ステップバックステッピング法を提案する.提案手法は,仮想フィルタにPFCを導入することで,これまでのPFCを用いた手法の問題およびバックステッピング法の問題点を同時に解決する手法となっている.


■ 切換に起因する外乱応答を抑制する制御系の設計

阪大・浅井 徹

 動作中の制御系に切換が発生すると,切換直後に応答が大きく乱れることがある.このような応答は制御系の制御性能を損なうだけでなく,制御対象に物理的な損傷を与えるなどの危険を伴うこともあるため望ましくない.これに対し,従来より望ましくない応答を抑制するためのさまざまな手法が提案されている.しかしながら,そうした手法は設計指標や補償の手法が間接的であったり,あるいは,切換時刻以降の応答が完全に予測できることを仮定しており,その効果や適用範囲は限定的である.本論文では,切換前の外乱から切換後の応答へのゲインを評価指標とすることで,より直接的に切換前後の振舞いを扱う設計問題を考える.提案する設計問題は切換時に設定する状態,切換後に印加するフィードフォワード入力,切換前に付加するフィルタを同時に設計するための一般的な枠組を与えている.また,得られる設計条件は線形行列不等式条件となっており,効率的な求解が可能である.さらに,数値例を用いて有効性の検証も行い,従来よりも優れた抑制性能が得られることを示す.


■ むだ時間制御系のロバスト安定領域拡大化

山形大・呉 守利,渡部慶二,村松鋭一,有我祐一,遠藤 茂

 本稿では,入力あるいは出力にむだ時間を含む系の非予測制御,スミス法,状態予測制御に対し,高い開ループゲインを維持しながらむだ時間誤差に対するロバスト安定領域を拡大する統一的な方法を提案する.始めに,非予測制御,スミス法,状態予測制御系を,安定性解析のための統一的な形で記述する.つぎに,統一形に,包.荒木の方法を応用してロバスト安定性を解析し,安定範囲が狭い構造的な原因を解明する.構造的な欠陥を取り去り,安定範囲を広げるために,予測器のむだ時間を Padeの1次近似する必要性を述べる.さらに,Pade1次近似系のロバスト安定性の十分条件と設計法を与える.また,予測制御器のむだ時間をPadeの1次近似することと,制御対象のむだ時間をPadeの1次近似した非予測制御は,ロバスト安定性に関して同等な構造を有することを明らかするとともに,従来の設計に比べ,提案方法は保守性のすくない設計になっていることを示す.最後に,数値例で,提案方法の有効性を示す.


■ 受動速度場制御を用いた劣駆動メカニカルシステムの制御−Snakeboardと剛体システムへの応用−

豊田工大・成清辰生,三佐尾和呂,松田 淳

 従来,明確なフィードバック制御が提案されていなかったsnakeboardと3入力6自由度の剛体システムに対して,受動速度場制御に基づくフィードバック制御系を適用し,任意の目標位置・姿勢を実現できることを示した.受動速度制御系を構成する際,これらのシステムの運動方程式をアフィン接続やEuler-Poincare方程式および座標変換によって,慣性行列を単位行列とする運動方程式へ変換し,decoupling vector fieldを見出した.このとき,decoupling vector field は必ず入力ベクトル場と直交するため,decoupling vect-or field を用いた理想速度場による受動速度場制御系が必ず構成できることを示した.提案する制御系の有効性を,snakeboard,平面剛体システムおよび3次元剛体システムに対するシミュレーションによって確認した.


■ 音楽コミュニケーションに基づく歩行介助システム

東工大・栗塚義人,三宅美博,小林洋平

 音楽運動療法を用いた歩行介助では,患者の歩行運動と療法士の音楽演奏が相互に適応する過程によって歩行機能の改善が行われる.一方,現在一般的な歩行介助装置はバイオフィードバックのように,歩行をある目標状態に収束させる一方向型のものが主流であり,音楽運動療法のような介助過程を実現することは困難であった.そこでわれわれは,これまで提案してきた相互適応型の介助装置Walk-Mateを拡張し,音楽提示型Walk-Mateとして新たに構築することで,音楽運動療法を支援できる介助装置を実現した.片足の膝関節を固定した擬似歩行障害における評価実験を行ったところ,従来型のステップ音提示のWalk-Mateによる歩行の円滑性の改善だけでなく,音楽提示をすることによってその持続時間が長くなり,歩行の自然さについても改善がみられた.一方,一定テンポのリズムに合わせるバイオフィードバック型の歩行介助では,音楽提示,ステップ音提示のいずれにおいても改善はみられなかった.これらのことから,われわれの提案する音楽提示型Walk-Mateシステムによって,高い介助効果とリハビリ効果が得られる可能性が示された.



[ショート・ペーパー]

■ 出力の伝送遅延を補償するモデルベース推定に基づく制御系の構成

阪大・小塚智之,山本 茂

 通信ネットワークを介して対象を制御するネットワーク化制御系では,通信遅延の補償が重要な課題である.Montestruqueらの研究では,通信遅延が既知であるときに,サンプル周期ごとに受信できる対象の状態と対象のモデルを用いて,サンプル点間の状態を推定するPropagation Unitを提案し,その推定値をもとに制御系を安定化する手法を提案している.本稿では,Propagation Unitを出力フィードバック問題が扱えるように拡張すると共に,より簡単なコントローラの構造を用いても同様の結果が得られることを示す.


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