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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.42 No.5(2006年5月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 気体用連続非定常流量発生装置の開発

東工大・舩木達也,川嶋健嗣,香川利春

 気体の非定常流量計測は燃料電池の流量制御や半導体製造装置の不活性ガス制御などで重要である.しかしながら,測定対象が気体の場合,密度が圧力と温度の関数となり,その取り扱いが容易でなく,気体用流量計の周波数応答測定への適用には課題があった.本論文では,気体用連続非定常流量発生装置を提案・開発し,その発生性能を理論と実験から明らかにした.まず,装置構成として長時間発生を実現するため,等温化圧力容器への気体の流入と流出を同時に行う方法を提案した.また,容器自体の損失や容器内温度変化による影響について考察し,流量制御系への問題がないことを確認した.本装置を用いての非定常流量発生試験を行い,30[Hz]までの非定常流量を不確かさ5[%]以内で30分以上安定して発生可能であることを確認し,本装置の有用性を示した.


■ 面法線計測センサの性能改善に向けたビームシフト光学系の誤差解析

新潟県工技研・長谷川直樹,新潟大・岡田徳次,清水年美

 2枚の楔形プリズムを用いて光伝搬時間または変調光の位相差計測を原理とするレーザ距離計の照射光を本来の光軸と平行にシフトさせ,さらに回転させることで照射位置を可変とし,円周上の複数点の距離から対象面の法線を計算する面法線計測法を以前提案した.その目的は,移動ロボット用の外界認識手段,たとえば壁や階段の位置,姿勢の認識を想定し,至近距離にある小領域面の法線方向を簡単な構成で入力することにある.しかし,平行に出射すべきビームが少しでも傾くと,距離の増加とともに測定精度を低下させることが実験により判明した.シフト量を距離に応じ補正することで改善できるが,この問題は,事前のキャリブレーションを必要とし,法線計算処理を複雑にする.また,画一的な補正で解決できるとは限らないなどから,補正を不要にすることが望ましい.このため,ビームの傾きをなくすことが重要である.本稿は,楔形プリズムを保持して回転させるビームシフト光学系に,加工時および組立時の誤差が存在することを想定して光ビームの光線追跡を行い,シフト量増加現象を含めたビームシフトの挙動を解明する.そして,配置誤差が距離計測および法線計測誤差に及ぼす影響を調べ,センサの性能向上のための設計指針を示す.


■ 高周波化制御による漸近的な特性乗数配置

名大・軸屋一郎,穂高一条

 本論文では,筆者らにより提案された,高周波化制御則に対して定量的な評価を行った.このためにまずいくつかの補題を定量的に評価しなおした.特に,線形周期係数システムに対する平均法を定量的に評価しなおし,平均システムが不安定な場合でも適用可能な一般的な記述を与えた.これらを用いて,以下の結果を得た.第1に,高周波化制御則を設計する際に,安定性が保証される設計パラメータの具体的な見積もりを行った.第2に,高周波化制御則を実装後の閉ループシステムの初期値応答と,平均システムの初期値応答の近似誤差を定量的に見積もった.第3に,設計パラメータを大きくするにつれ,高周波化制御則を実装後の閉ループシステムの特性乗数が,平均システムの特性乗数に収束することを示した.第四に,システムが可制御ならば,高周波化制御により特性乗数を漸近的に任意に配置可能であることを示した.これは,線形定数係数システムでの,システムが可制御ならば任意に極配置可能であるという事実に対応する.


■ 特異摂動システムのロバスト静的出力フィードバック制御

広島大・向谷博明,電通大・大屋英稔,筑波大・Hua Xu

 本論文では, 特異摂動システムにおける静的出力フィードバックによる二次コスト保証制御を考える. おもな貢献は, リカッチ方程式, リアプノフ方程式, および線形代数方程式による連立型代数方程式を解くために, Newton法に基づく新しいアルゴリズムを提案することである. その結果, 局所二次収束が保証される. 特に, 数値例では, CPU時間の減少が示される. その他の新しい貢献として, 連立型代数方程式の解の漸近構造, および存在条件が示される. さらに, 新しい数値計算アルゴリズムによって得られた収束解を利用した静的出力フィードバック制御則を提案する. 最後に, 本論文の結果の応用として, 不確定要素が存在しない特異摂動システムに対して静的出力フィードバックによる制御則の構築が可能であることを示す.


■ 二次差分形式に基づく離散時間システムに対する一般化Lyapunov安定定理

京大・小島千昭,鷹羽浄嗣

 本論文では,高階の差分代数方程式で記述される離散時間システムに対する一般化Lyapunov安定解析を考える.ビヘイビアアプローチにおいては,二次差分形式は,Lyapunov関数の特徴付けに用いられ,2変数多項式行列と一対一に対応付けられるので安定解析のための代数的ツールとして有用である.
 二次差分形式に基づき主要結果として一般化Lyapunov安定定理を導出して,ビヘイビアが漸近安定であるための必要十分条件がLyapunov関数を誘導する2変数多項式Lyapunov方程式(two-variable polynomial Lyapunov equation; TVPLE)の解の存在であることを示す.特に,本論文は,安定定理の証明をTVPLEのみに基づいて2変数多項式行列の範囲で完結させている.
 さらに,TVPLEから導出される1変数双多項式行列方程式の多項式行列解によるビヘイビアの漸近安定条件を与える.本結果は,双多項式行列方程式の解のクラスを多項式行列に限定して上の条件を満たす解を求めることによって,安定性を調べればよいことを示している.


■ 可逆系に対する安定な非干渉化のための動的フィードバックの設計

山形大・王 蕊,渡部慶二,村松鋭一,有我祐一,遠藤 茂

 本稿では,不安定零点を含む可逆系を,内部安定に非干渉化する動的フィードバック制御則の新しい設計法を与える.始めに,動的フィードバックによる内部安定な非干渉化のための必要十分条件を与える.つぎに,状態フィードバックによる極配置非干渉化法を拡張した動的フィードバック則の設計法を与える.さらに,本稿の主要課題である非干渉化系の内部安定化を,2つのリカッチ方程式を用いて行う新しい方法を提案する.本設計法の特徴は,従来の方法での煩雑な標準非干渉系等の計算をせずに非干渉化系の極を任意に設定できることと,1次独立な可制御行列の計算等をせずに,簡単に動的補償器が求められる利点がある.最後に,数値例で,本法の有効性を示す.


■ 永久磁石同期モータのILQ最適電流制御のμ解析によるロバスト性能評価―dq軸非干渉化状態フィードバック制御を含むロバスト解析―

芝浦工大・高見 弘,福岡工大・辻野太郎

 高性能な永久磁石(PM)を搭載したPM同期モータの実用化が急速に進展している.PM同期モータの電流制御系は,本来dq軸システムが干渉した時変系である.そこで,時変な干渉項をキャンセルする状態フィードバックによって大域的な非干渉化と線形化を同時に行う制御法が用いられる.しかし,大域的な非干渉化と線形化された電流制御系のモータパラメータ変動に対するロバスト性は明らかにされていなかった.
 先に筆者らは,PM同期モータのロバストな電流制御を達成するILQ最適電流制御法を提案した.さらに,大域的な非干渉化と線形化が成立する条件のもとで,μ解析によるロバスト性能を評価するための独自の評価指数を定義し,ILQ最適制御がロバスト安定性とロバスト追従性能の両面で非常に優れていることを定量的に明らかにした.
 本論文は,PM同期モータの実用的な電流制御系において,大域的な非干渉化と線形化が成立しない条件でロバスト性の解析を可能にするため,上記の解析法を拡張し,ロバスト性能の評価法を提案する.そのために,構造的摂動をもつシステムのよりタイトな解析が可能なディスクリプタ表現に基づき,非線形状態フィードバックを含むμ解析のための新しい状態方程式を導出し,ILQ最適制御の優位性を明らかにする.



■ 三叉ヘビ型ロボットの推進原理と周期入力による制御

京大・石川将人

 三叉ヘビ型ロボットとは,著者らが以前に提案した,まったく新しい形態をもつ非ホロノミック移動ロボットである.本論文ではこのモデルを各足が1リンクから多リンクを有するモデルへと拡張し,非線形の可制御性理論(可制御Lie代数の解析)に基づいてその推進原理を明らかにする.このロボットは非ホロノミックシステムの中でも2ジェネレータ・1次(1リンク型)あるいは2ジェネレータ・2次(2リンク型)という構造的に制御の難しいクラスに属するシステムである.本論文ではこれに対し,Lie括弧積とホロノミーの原理に基づいた周期入力による推進制御アルゴリズムを提案し,並進および回転運動を実現する.提案法の有効性は数値シミュレーションによって検証する.


■ TCP/AQMネットワークにおける安定化輻輳制御器のパラメトリゼーションと設計

東大・中嶋篤史,津村幸治

 本論文ではTCP/AQMネットワーク上のパケットの輻輳制御を考える.そのダイナミクスを離散時間システムで近似し,対象プラントの安定性を厳密に示すことにより,安定化線形制御器のパラメトリゼーションを導出した.これにより制御性能改善のための一般的な制御系設計が可能となる.当該研究分野においては,主として安定性に議論が留まる傾向があるが,本論文はさらに制御性能改善についても,近年のアドバンストな制御理論の適用が可能となることを示した.


■ 操作量をコストに含めない確率的LQ制御

茨城大・齊藤充行,山中一雄,上越教育大・川崎直哉著者

 よく知られたLQ 制御問題は,出力整定誤差の2次形式に加えて操作入力(操作量)の2次形式を含む評価関数を想定し,この評価関数を最小化する制御則を求める最適制御問題である.操作量を評価関数に含めることは,解の存在を保証するだけでなく,過大な操作入力の発生を抑制するなどの効用をもたらす.しかし,出力整定誤差をできるだけ小さくするという本来の目的に照らして考えると,評価関数の中に操作量の2次形式を含めることは最適性の意味を曖昧にしてしまうという難点があった.
 本論文では,出力整定誤差のみを評価し,評価関数に操作量を含めなくても解が得られるような,新しいLQ 制御問題の定式化を提案している.その原理は,状態を観測したときの誤差(雑音)を仮定し,この状態観測雑音の存在が状態フィードバックゲインを抑制する効果を期待することにある.このような状態観測雑音を前提に,状態ベクトルの共分散行列を評価関数とする修正版LQ 制御問題を定式化し,その可解条件を調べた結果,よく知られているRiccati方程式とは異なる形のRiccati方程式が現れた.そして,このRiccati方程式にもとづいて,静的状態フィードバック則が最適となるための必要十分条件に対する簡潔な表現が得られた.


■ 連続時間システム同定のための耐雑音性を有する反復学習制御

奈良高専・酒井史敏,京大・杉江俊治

 本論文では,連続時間システム同定のための耐雑音性を有する反復学習制御を提案を行う.はじめに,パラメータ空間における反復学習制御に対して,過去の試行における情報を利用するための積分器を導入した新しい学習更新則の提案を行った.つぎに,提案する学習更新則における学習ゲインの設計問題は,離散時間システムに対する状態フィードバックによる安定化問題に帰着され,学習ゲインの設計にH2状態フィードバック制御を利用することにより,観測雑音が推定パラメータにおよぼす影響を最小化する学習ゲインの設計を行うことが可能であることを示した.さらに,観測雑音に起因するパラメータ推定誤差の分散についての考察を行い,反復学習制御を行う前(学習ゲイン設計時)に試行の繰り返しにより最終的にどの程度の同定精度が得られるかを評価することができることを示した.最後に,従来の連続時間システム同定法との比較に関する考察を行い,観測雑音が加わる環境下においても従来法と同等以上の同定精度が得られることを数値例により確認することができた.


■ 高周波化フィードバックによる線形周期係数システムの特性乗数配置

名大・穂高一条,軸屋一郎

 本論文では,連続時間・線形周期係数システムの制御において最も基本的な問題の1つである,特性乗数配置問題を考える.この問題に対して筆者らは,以前の研究において,扱うことのできる制御対象を限定しているものの,特性乗数を漸近的に配置する高周波化・周期係数状態フィードバックの構成法を提案している.これは,閉ループシステムの応答をあらかじめ定めた定数係数システムの応答に漸近させるフィードバック則であり,これに伴い,閉ループシステムの特性乗数を,指定した値に近づけることができるが,より近づけるには一般にフィードバックゲインが大きくなり,実際的ではなくなる可能性がある.そこで本論文では,この高周波化フィードバックゲインを修正することで,特性乗数を厳密に配置することができることを示す.したがって,特性乗数のより正確な配置に起因する過大なフィードバックゲインを回避することができる.必要となる計算は,主として行列の代数演算のみであり,制御則をシンボリックに表現できる点で,先行研究より有利である.さらに,特性乗数配置だけでは規定できない周期点間の応答をも整形できるという,先行研究には見られない特徴をもつことになる.


■ 重要度指標付きGenetic Network Programmingを用いた株式売買モデル

早稲田大・泉 良裕,平澤宏太郎,古月敬之

 有向グラフ構造の遺伝子を特徴とする新しい進化型計算手法であるGenetic Network Programming (GNP)を株式売買モデルに展開する研究が進められている.
 従来のGNPを用いた株式売買モデルでは,単に買う,売るといったタイミングを決定するモデルであり,売買量を考慮した検討はなされていなかった.そこで,実際の市場で直面する売買量の決定といった問題を解決するために重要度指標付きGNPを提案し,シミュレーションにより,その有効性を検討した.
 その結果,提案方式は,BUY-AND-HOLDおよび従来のGNPではこれまで困難であった下げ相場における取引でも利益を確保できることを10種の銘柄について明らかにした.


■ 加速度センサを用いた運動学的解析による共創型歩行介助システムの評価

東工大・小林哲平,三宅美博
   玉川病院・和田義明,松原正明

 本論文では加速度センサによる歩行運動の簡便な定量的計測法を提案し,加速度センサの問題点であるオフセット誤差を考慮した算出法を作り,誤差の累積を抑えた歩行軌跡を求めることができた.さらに軌跡から得られた特徴点を数値化することによって歩行運動の評価となる指標を作り,健常者と股関節疾患患者との比較に適用することで,障害の把握のための指標として有用性を示した.また,手術後のリハビリテーションによる経時的な変化を評価することで治療効果判定,回復量の推移を評価することができた.そこで,歩行介助ロボットWalk-Mateと患者の協調歩行の計測において本手法を用いたところ,両脚における持上げ率非対称性の改善,歩行周期,歩幅の非対称性の緩和という即効性が見られたことから,Walk-Mateのリハビリテーションにおける有効性を示唆することができた.


[ショート・ペーパー]

■ Particle Swarm Optimizationの高次元問題における探索性能の改善

甲南大・伊藤 稔,田中雅博

 最適化問題の大規模化と複雑化に伴い最適解を求めるのが難しくなっている.このため,実用時間内に近似解を求めることが可能なメタヒューリスティクスが注目されている.最近,新しく提案されたメタヒューリスティクスの1つにParticle Swarm Optimization(PSO)がある.PSOは数多くの数値実験の結果から,連続型の多峰性関数の大域的最適解を実用的な時間で解くことが可能なことが示されている.しかしながら,PSOには最適化問題の高次元化にともない探索性能が低下することも指摘されている.本論文では,PSOの高次元問題における探索性能の改善を目的とし,新しいモデルの提案を行う.提案手法を関数値最小化問題に適用し従来法との比較を行う.そして,提案手法が高次元問題においても良好な探索を行うことができることを実験的に示す.


 
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