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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.42 No.9(2006年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ Implementation of Multirate H2 Optimal Digital Controller to a Micro-Tunneling Robot Navigation System

NTT・吉田耕一

 本論文では小口径トンネルロボットのナビゲーションシステムのためのマルチレートH2ディジタルコントローラを設計する.対象となるトンネルロボットは発信コイルによる誘導磁界を検出する水平位置計測と光ファイバージャイロによる旋回曲率検知及び方向修正制御が異なる周期で実行されるためマルチレートシステムとなる.トンネリングのための計画線が適当な伝達関数で表現されロボットダイナミクスと組み合わされる.入出力スケジュールに基くliftingによりLTIシステムが求められcausality条件を満足する最適マルチレートディジタルコントローラが構成される.その際,実システムへの実装の容易性を考慮して状態空間表現ベースのコントローラ設計が行われる.また,設計したマルチレートコントローラによるナビゲーションシステムの有効性を数値シミュレーションにより検証する.


■ A Nonlinear Compensator of Zero-Power Magnetic Suspension for Zero-Compliance to Direct Disturbance

埼玉大・Md. Emdadul Hoque,水野 毅,高崎正也,石野裕二

 ゼロパワー磁気浮上を利用した除振装置では,正の剛性を持つ支持機構と負の剛性を持つゼロパワー磁気浮上機構とを直列に接続し,両者の剛性の大きさ(絶対値)を一致させることによって直動外乱に対する剛性を無限大としている.しかしながら,ゼロパワー磁気浮上機構の負の剛性の大きさは電磁石の変位・吸引力係数と一致し,その大きさは電磁石と浮上対象間のギャップの3乗にほぼ反比例するので,除振テーブル上の質量の増減によってギャップの大きさが変化すると,除振装置の直動外乱に対する剛性が低下してしまう.本論文では,このような問題を解決するため,ゼロパワー磁気浮上機構の非線形性を補償する制御方法を明らかにしている.具体的には,浮上対象物の変位のべき乗に比例した非線形フィードバック補償を施すことによって,電磁石の変位・吸引力係数が変動しない系を実現する.実験では,試作した3自由度アクティブ除振装置に非線形補償を適用し,除振テーブル上の質量が変動しても直動外乱に対する高剛性が保持できることを実証した.


■ Online Neurocontrol Design Optimized by a Genetic Algorithm for a Multi-trailer System

Univ. of The Ryukyus・Endusa Muhando,Hiroshi Kinjo, Eiho Uezato,
Tomonobu Senjyu,Tetsuhiko Yamamoto

 本論文では,ニューロ制御器の学習性能および制御性能を向上させるために,ニューロ制御器と線形制御器(LQG)を併用した制御システムを提案する.本論文ではニューロ制御器の学習法として遺伝的アルゴリズムによる進化学習法を採用する.提案したLQG併用ニューロ制御器を多重トレーラの後退制御系へ適用し,有効性を検証する.従来トレーラ・トラックシステムのニューロ制御系設計では,バッチ処理により多数の初期姿勢からの学習を行って制御器を構築していた.しかし従来法は制御器の学習に時間がかかり,オンライン・リアルタイム制御は不可能であった.本論文では,指定された初期姿勢のみの進化学習を行うことにより,制御器の学習にかかる時間を短縮する.提案する制御系は,LQGとニューロ制御器の併用構成としてあり,ニューロ制御器の学習負担が軽減される.しかし,単一の初期姿勢のみの学習となるため,学習の汎化能力に問題が出ることがある.これを避けるため制御対象の挙動を常に監視する機構を設けた.これにより,設計どおりに走行していない場合は,その姿勢からニューロ制御器の追加学習を行って,常に制御不能になることを避けながら,制御対象を目標値まで誘導することが可能になった.


■ 低次元オブザーバを利用したサーボ特性を持つ一般化内部モデル制御の構成法

金沢工大・谷 正史,鈴木亮一,日立製作所・山下大輔,
金沢工大・小林伸明

 内部モデル制御の特徴として,未知外乱を新たなセンサを用いることなく再構成できることと,優れた外乱除去特性を持つ点にある.一方,欠点として,状態の情報が必要なこと,制御対象が安定であること,内部モデルを含むためコントローラの次数が増大することが指摘されている.そこで,本論文では,内部モデル制御の特徴である外乱推定と,状態推定のできる未知入力系に対する低次元オブザーバを利用した一般化安定化補償器による制御方法を導き,これをサーボ系に組み込んだ一般化内部モデル制御の新しい設計法を提案し,この制御系の持つ特徴を明らかにする.
 提案する制御系は,未知外乱の推定と抑制という内部モデル制御系の特徴を持ち,ステップ目標,未知のステップ外乱に対して定常偏差をなくすサーボ系の特徴を併せ持つ.更にフィードバックゲイン,オブザーバゲインの選定により,外乱抑制や近似非干渉等が達成できることを明らかにする.


■ Zero Dynamicsを利用する倒立振子の高速移動制御

能開大・島田 明,畠山直也

 本研究は,平行二輪型の倒立振子を利用した高速移動ロボットを開発することを最終目標としており,自らバランスを崩すことによって生じる加速度を高速移動に利用する制御法を提案し,実用化を試みようとするものである.但し,本稿は,研究の第一段階として,倒立振子装置を代用し,直線運動時の制御技術の確立に的を絞る.本稿で紹介する倒立振子システムは,バランスの崩しと戻しをコンピュータが能動的・自律的に行うことを特長とする.この加速時の動作は,スピードスケートの選手が得意とするスタート時のロケットスタートのような動作である.そして,停止時には,その逆の動きとなる.本論文では,その実現手段として,入力と状態変数の一部との関係を線形化する部分線形化を施し,その結果生成されるZero Dynamicsを利用することにより,意図する高速制御が実現できることをシミュレーションと実験によって示す.


■ 遅延外乱による衝突回避を目的とした複数台AGVの分散型経路計画法

岡山大・森中翔一朗,大阪大・西 竜志,岡山大・小西正躬

 半導体工場に代表される搬送システムには,数十台規模のAGV(Automated Guided Vehicle)が用いられており,AGV間の衝突・干渉を回避した経路計画を数秒以内に得ることが求められる.AGVの経路計画に対する従来研究のほとんどは,すべてのAGVが経路計画システムによって導出された搬送スケジュール通りに走行する条件下での経路計画問題を対象としている.しかしながら,現実の搬送環境下では,搬送要求のタイミングのずれやタスク遅延,走行遅延により,想定していなかった衝突・干渉が生じ,頻繁に再経路計画を行う必要が生じる.そこで本論文では,搬送システムにおける安全性を確保するために,遅延外乱による衝突回避を目的とした複数台AGVの分散型経路計画法を提案する.提案する手法は,各AGVに対して遅延外乱を想定したときに他のAGVとの衝突頻度分布を定量評価し,各AGVの衝突可能性に対するペナルティを目的関数に組み込むことで,外乱に対してロバストな経路計画を作成する方法である.衝突可能性に対するペナルティの計算方法として,マルコフ連鎖を用いて得られる遅延頻度分布を用いた方法とシミュレーションによって得られる衝突頻度分布を用いた手法を,さまざまな問題に適用し,従来手法と比較することにより,提案手法の有効性を確認した.


■ GA最適化によるニューロ制御器を用いた二輪車両のレギュレータ設計法

琉球大・金城 寛,上里英輔,中園邦彦,山本哲彦

 driftlessシステムとして記述される二輪車両の状態フィードバック制御系を構成するために,遺伝アルゴリズム(GA)で進化学習するニューロ制御器を用いる方法を提案した.提案する方法は,制御したい範囲で設定された複数の初期状態を学習パターンと考え,ニューラルネットの学習およびパターン認識機能を用いて制御系を設計するものである.ニューロ制御器の学習にGAを用いることにより,学習アルゴリズムが数学的に容易となることが本論文の特徴である.進化学習により得られたNCは,対象の運動特性に応じた制御方策を自動的に獲得することを実験的に示した.本方法は,非ホロノミック系の制御系設計法として一般的に用いられている chained form を使わない方法であり,従来法のような姿勢角の制限はない.



■ 立体自動倉庫の入出庫スケジューリング問題に対する厳密解法

京都大・田中俊二,松江高専・荒木光彦

 立体自動倉庫では,入出庫品をスタッカークレーンを用いて効率よく搬入・搬出する必要がある.本研究では,このような入出庫の計画を策定する問題(入出庫スケジューリング問題)に対し,CVRP(Capacitated Vehicle Routing Problem)に関する最近の研究結果に基づいて厳密解法を構成した.具体的には,まず,対象とする問題を0-1整数計画問題として定式化し,列生成とカット生成による下界値計算方法,および,実行可能化した緩和解に局所探索を適用する上界値計算方法を提案した.そして次に,列生成と0-1整数計画問題ソルバを組み合わせた厳密解法を提案した.数値実験を通じて,本手法により良好な下界値・上界値が得られること,また,ある程度の規模までの問題なら最適解を高速に求められることを示した.


■ 最大エントロピー原理を用いた時間付きマルコフモデルによる事象駆動系の故障診断

名古屋大・齋藤光生,鈴木達也,稲垣伸吉,名古屋工業研・青木 猛

 本論文ではPLCに代表される事象駆動型システムの故障診断方法について検討する.連続して生起するイベント間の時間間隔を確率変数として扱う時間付きマルコフモデルを用いて対象とする制御プラントのモデル化を行う.これは,事象駆動型システムを対象とする場合,確定的なモデルを用いるよりも確率的なモデルを用いるほうが,不確実性を許容している点において,より現実的な診断が可能となるためである.まず,時間付きマルコフモデルにおけるイベント生起間隔に関する確率密度関数の最大エントロピー原理に基づく推定手法を提案する.最大エントロピー原理は,ある制約条件のもとでエントロピーが最大となる確率密度関数を推定する手法であるが,これを用いることで,モデル化の際に生じるゼロ頻度問題に対処することが可能となる.次に,時間付きマルコフモデルに基づいた故障診断手法を提案する.最後に,提案手法を現実的なシステムの一例である自動搬送ラインに適用し,その有用性を示す.


■ 実時間広域交通信号制御への制御工学的手法の適用

山口大・若佐裕治,松下電器・岩岡浩一郎,
     トヨタ紡織・花岡健一郎,山口大・田中幹也

 本論文では,広域の交通信号網を制御するためのモデリング方法およびその実時間での制御方法を提案する.とくに先行研究には,1)モデルが不可制御になる,2)修正計算によって最適性が失われる,3)外乱要素が無視されている,という問題点があった.これらに対して制御工学的な観点から改善策を提案する.また,得られたモデルの可制御性から,交通信号システムの構造設計において有用な性質を導く.さらにモデリングの際に信号パラメータの平衡点の存在が仮定されているが,この平衡点を設定する問題を2次計画問題として定式化する.提案法はとくに交通量が比較的多い状況において,渋滞発生の抑制に対して有効である.最後に,提案するモデリング方法および制御方法の有効性を交通シミュレータによって確認する.


■ 人間−機械系の等価インピーダンス特性解析システム

豊田中研・羽田昌敏,山田大介,三浦弘樹,広島大・辻 敏夫

 われわれの運動を発生させる唯一のアクチュエータである筋は,環境からの入力に対してさまざまな粘弾性特性を示すことが知られている.このような人体のもつ筋骨格システムの機械インピーダンス特性と対象物のもつ機械インピーダンス特性を同時に捉え,人間−機械系の等価インピーダンス特性として解析することで,人間の巧みな戦略がもつ物理的意味を明らかにできる可能性がある.本論文では人間−機械系の新しい解析ツールとして,人間や対象物に対する拘束条件および接触条件を考慮した上で,人間−機械系の等価インピーダンス特性を解析できるシステムのプロトタイプを提案する.筆者らはすでに,人間−機械系の等価慣性を拘束および接触条件を考慮して導出する手法を提案している.本論文では,この手法を筋の粘弾性特性を含むインピーダンス特性にまで拡張する.まず提案するシステムの構成および処理の概要を述べ,次に等価インピーダンス特性の計算法について説明する.そして,ノブ付きステアリングを操作する際の上肢動作に対して本システムを適用し,手先およびステアリングコラム軸まわりの等価慣性と等価剛性が変化する様子を解析し,本システムの有用性を示す.


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