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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.42 No.11(2006年11月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ GIMC構造を用いた磁気浮上システムの高性能ロバスト制御

金沢大・滑川 徹,長岡技科大・丸山英人

 フィードバック制御構造において,制御性能とロバスト性の間にトレードオフの関係があることは良く知られている.制御性能とロバスト性の両立を目的としたロバスト制御系設計法としてGIMC構造が提案されているが不安定系にはまだ適用されておらず,またGIMC構造における切替制御の具体的な設計指針や実装方法についても明らかにされていない.
 本研究ではGIMC構造を不安定なメカトロニクスシステムである磁気浮上システムに応用し,制御実験により有効性の検証を行う.また更にGIMC構造における切替制御の具体的な設計指針と実装方法を提案することを目的とする.まずGIMC構造に基づく制御系設計の原理と設計手順について説明し,その切替の実装方法について提案を行う.次に制御対象である磁気浮上システムについて述べ,その磁気浮上システムに対してH∞混合感度問題を用いて2つの補償器を設計し,それらを基にGIMC構造に基づく制御系を構成する.最後に2つのH∞混合感度コントローラとの比較により,GIMC構造による制御系が制御性能とロバスト性の両立を実現していることを実験的に示す.


■ 腱駆動型ヒューマノイドロボットの適応バランス制御

理化学研・中山学之,名工大・山田篤史,
     名工大/理化学研・藤本英雄,理化学研・木村英紀

 本論文では腱駆動型ヒューマノイドロボットのためのバランス制御則を提案する.提案したバランス制御則は床反力モーメントを0化するように,上体の目標姿勢を修正する姿勢修正則と修正された目標姿勢を安定化するための腱休止角度生成則から構成される.このうち,上体姿勢修正則は,慣性力が目標ZMP周りに作るモーメントを適応推定則によって実時間で推定し,それを観測される床反力モーメントから差し引くことで,ロボットにかかる純粋な外力が目標ZMP周りに作るモーメントの推定値を求め,それを重力モーメントで打ち消すようにロボットの目標姿勢を修正する.このように目標姿勢を生成することで,素早くかつ滑らかにバランスの取れた姿勢へロボットを導くことができる.一方,腱休止角度生成則は,制御された系が生成された目標バランス姿勢の周りで大域的に漸近安定となるように,PD制御則と適応制御則から構成される.生成された目標姿勢の漸近安定性はリャプノフの直接法に従って理論的に証明される.また,提案した制御則が有効に働くことで,転倒を引き起こすことなくロボットのバランスが回復されることを,いくつかの計算機シミュレーションおよび製作した1リンク腱駆動型ヒューマノイドロボットによるバランス制御実験により確認した.


■ 農業用重量物ハンドリングロボットのロバストゲインスケジュールド制御

千葉大・酒井 悟,神戸大・大須賀公一,
      日産・前川貴洋,京都大・梅田幹雄

 低いイニシャルコストを達成する農業用重量物ハンドリングロボットの把持操作系と視覚系の実現を報告する.まず高コスト要素であるアクチュエータとセンサを低減するため,受動関節をもつマニピュレータ,単一カメラで構成されるステレオ視を提案する.しかし,この低減により十分な作業性能を達成することはより困難となる.そこで,制御対象の特徴を捉えた時変パラメータの抽出に基づくゲインスケジュールド補償器,μ-補償器を,不確かさ,非線形性,制約のもとで設計する.さいごに,実圃場実験にて制御系の有効性を検証する.異なる補償器との比較から,ロバストな制御系がイニシャルコストを低減することを例証する.


■ 軌道上における故障衛星捕捉時の安定化非線形制御

電通大・伊藤 玲,池田裕一,木田 隆,長塩知之

 今後の宇宙開発では故障した人工衛星を軌道上で捕捉して修理・点検を行う軌道上作業技術が期待されている.このような宇宙機の運動は,非線形システムであり,非線形運動を考慮した制御系設計が必要となる.さらに,設計した制御器は実装が容易であり,物理パラメータ誤差などの不確かさに対してロバスト安定であることが求められる.現在,人工衛星の捕捉前後の安定性を議論した研究は少ない.しかし,激しくタンブリングを行う故障衛星にアプローチし,その結合直後から合体したシステムの安定性を維持し,新たな軌道を追従する制御方式は重要な課題である.そこで本稿では,まず受動性の概念に基づいた適応制御と,その外乱抑制のためにL2ゲイン性能を付加した制御法に着目し,これを6d.o.fの宇宙機の場合に拡張する.次に,捕捉前と捕捉後の安定化条件およびL2ゲイン条件をそれぞれ独立にLMI条件として導出する.そして,これらを同時に満たすフィードバックゲインを求めることにより,制御則を変更せずに捕捉前後の系を安定とする設計法を提案する.そして,その有効性を数値シミュレーションにより示す.


■ ロボットマニピュレータのLMIによる機構設計法とゲインスケジューリング手法を用いた構造・制御系の同時最適設計

秋田大・小笠原伸二,平元和彦,土岐 仁

 ロボットマニピュレータに対する静的指標に基づく機構設計法と,動的性能指標に基づく構造系と制御系の同時最適設計問題について考える.従来,可操作度などの静的な指標に基づく機構設計において,大域的に最適な機構を効率よく求める方法は確立されていなかった.本論文では,この問題に対してヤコビ行列がリンク長さの線形行列となることを利用し,LMI(Linear Matrix Inequality:線形行列不等式)を用いて効率的に操作力楕円体の意味で最適なリンク長さを求める方法を提案する.一方,マニピュレータの制御系設計において,リンク質量などの動力学パラメータと制御を行うコントローラを最適設計することにより,性能の向上が期待できる.マニピュレータのようなシステムは,検出可能な動作状態(マニピュレータの姿勢)によってその動特性が変化する.このようなシステムに対しては,ゲインスケジューリング制御が有効であることが知られている.しかしながら,現在まで構造・制御系の同時最適設計問題において,ゲインスケジューリング制御法を用いた手法は開発されていない.本論文では,反復LMI近似の手法を用いて,ゲインスケジューリング制御を前提として局所的な最適解への収束性を保障した同時最適設計法を提案する.2リンクのマニピュレータを設計例として,提案手法を用いて静的手法に基づくリンク長さの最適設計と閉ループ系のL2ゲインを最適化するリンク質量とゲインスケジューリングコントローラの同時最適設計を行い,その有効性を示す.


■ 時変の伝送遅延を含む系に対するゲイン切替え型オブザーバ

奈良先端大・中村幸紀,小木曽公尚,
     関西大・安達直世,奈良先端大・杉本謙二

 近年,ネットワーク通信を介して信号を伝送する制御系が注目されている.しかしながら,ネットワークの利用状況により信号の伝送遅延時間は激しく変動するので,制御性能が劣化することが知られている.このため,一般に制御や状態推定を正確におこなうのは困難である.そこで本論文では,遠隔地にある制御対象からの観測信号が遅延を伴って受信される状況を考え,この場合に対する状態推定法を提案する.
 状態を推定する際,信号の遅延時間に応じてゲインを切替えるオブザーバを用いる.オブザーバの設計は,切替えを伴う推定誤差系の安定化問題に帰着され,本論文では推定誤差系の安定性を保証するように線形行列不等式を解くことでゲインを設計する.さらに,切替え型オブザーバの性能を向上させるために,誤差系に対するLyapunov関数の減衰率を指定した設計法を述べる.これによって,推定の過渡特性の改善が期待される.最後に,数値例と実機実験により,提案手法の有効性を検証する.


■ 汚染河川の自然浄化の解析,強化および推定:システム工学的アプローチ

京都工芸大・柏木正隆,大住 晃,渡邉雅彦
     国土交通省・高津知司

 本論文は, 工場排水や生活排水などによって汚染された河川の水質(生物化学的酸素要求量 [BOD] と溶存酸素量 [DO])に関する状態空間モデルを構築し,河川の自然浄化の解析と,その自然浄化機能が人為的に強化できることを示し,さらに状態推定方程式を導出したものである.河川の水質モデルとしては古典的な Streeter-Phelps モデルが有名であるが,これは我が国のような時間的にも空間的にも変化に富む河川には適さないといわれている.本論文では河川の流れの拡散を無視しない数学モデルに基づいて議論するが,それは不安定基本解を含む2本の2階線形微分方程式によって与えられる.そこで,安定な水質方程式を構成し,それらをもとに状態空間モデルを構成する.
 シミュレーションでは,河川に人為的に薄層浄化水路区間を設けることによって河川の浄化が早められることと,離散的に得られる観測データから水質の推定が有効に行なえることが示される.



■ エージェント間の情報交換に基づく群強化学習法

京都工芸大・飯間 等,黒江康明

 一般の強化学習法では,一つのエージェントがエピソードを繰り返して学習を行い,そのために学習に時間がかかったり,最適な方策が得られないことがある.一方,最適化の分野では,Particle Swarm Optimization (PSO) のように,多数の個体を用いて最適解を得ようとする解法が注目を集めている.そこで,本論文では,短時間でより良い方策を得るために,複数のエージェントを用意して,それぞれが個別にエピソードを繰り返すとともに,他のエージェントとの情報交換により自身の行動価値(または状態価値)を良い値へ更新する群強化学習法を提案する.また,各エージェントが他のエージェントとの情報交換により自身の行動価値を更新する方法として,最良行動価値をコピーする方法,最良行動価値との平均をとる方法,PSOの更新式を用いる方法の3種類を提案する.これら3種類の方法では,各エージェントの行動価値の優劣を何らかの方法で評価する必要がある.そこで,エピソード中に得られた報酬に基づいて行動価値を評価する方法を提案する.提案手法を最短経路問題に適用し,1エージェントしか用いないQ-learningと比較することで提案手法の有効性を検証する.


■ バーチャルゾウリムシの化学応答シミュレーション

広島大・平野 旭,辻 敏夫,滝口 昇
     大阪大・大竹久夫

 われわれの身の回りに存在するゾウリムシは,危険な化学物質を感知すると回避行動を示す.逆に,餌などが放出する化学物質領域を感知すると加速遊泳し,なおかつその領域に留まる傾向を示す.この化学物質に対する応答は,複雑に変化する過酷な自然環境から身を守るための重要なメカニズムの1つである.本論文では,化学物質に対するゾウリムシの挙動と,その挙動を決定している情報処理系の関係を理解可能にすることを目的とし,刺激受容から運動を決定するまでの一連のプロセスをモデル化する.そして,環境のK+濃度の変化に対するシミュレーション結果を実生物データと比較することで,モデルの妥当性について検証する.


■ Genetic Network Programmingによるダブルデッキエレベータ群管理システムの最適化

早稲田大・江口 徹,周 金,平澤宏太郎,古月敬之
    フジテック・マルコン シャンドル

 近年,高層ビル内の効率的な人員輸送のために,かごが2台垂直に連結されたダブルデッキエレベータシステム(DDES)の開発が進められている.DDESにはかごの連結による特有の挙動や乗り心地の悪化の問題が存在するため,従来のシングルデッキエレベータシステム(SDES)に比べ群管理は複雑となる.一方,グラフ構造遺伝子を持つ新しい進化論的計算手法Genetic Network Programming(GNP)をエレベータ群管理システムへ適用する研究が進められ,その有効性が明らかにされている.GNPは上記DDES特有の挙動をそのノード関数に容易に導入することが可能であり,進化論的に獲得される効率的なルールベースの群管理を実現できる.本論文では,GNPによるDDESの新しい群管理方式を提案し,その最適化および性能評価をシミュレーションにより行う.シミュレーションではDDESに対するGNPの最適化,最適GNPによる提案手法と従来手法との性能比較,獲得した群管理ルールの検討,DDESのSDESに対するシャフト数削減効果について検討を行い,その有効性を明らかにしている.



[ショート・ペーパー]

■ 電磁波レーダを用いた滑走路下空洞の検出について

山口大・田中正吾,岡本昌幸,河野 進

 空港滑走路においては,正方格子状の鉄筋が配筋された鉄筋コンクリートによる強固な路盤が敷設されるが,たびたび大きな着陸時の衝撃を受けたり,あるいは地震等により,コンクリート直下の地盤に空洞が発生したりすることもある.従って,これを見逃すと,路面の陥没を誘引し,重大な事故につながることになる.
 本論文では,著者らがこれまでに開発した信号伝播モデルの適用を考えたが,先に提案した電磁波レーダ非破壊検査システムはトンネル等のコンクリートを対象にしたものであり,鉄筋コンクリートの場合への適用の可能性が定かでなかった.ところが,今回適用してみると,滑走路などに使われるコンクリートの鉄筋は,ピッチが150mmと小さくてもビルディングなど他の鉄筋コンクリート構造物に比べて径が6mmとやや小さめで,ほとんど鉄筋による反射はなく,先の信号伝播モデルの若干の修正により,(コンクリートの場合と同様)高信頼度・高精度な空洞の検出および深度・厚さの計測が可能であることを示す.


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