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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.43 No.8(2007年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ アクティブFSO通信システムの移動端末追跡制御

NTT・吉田耕一,辻村 健

 移動する端末を追尾しながら光通信を維持するアクティブFSO通信システムのトラッキング制御法を提案した.このシステムは送信端末LDから発射されたレーザー光が空間中を伝播し受信端末PDにより受光するFSO通信システムである.送受信端末の相対位置姿勢が変化しても端末上の駆動式反射鏡を制御してレーザー光をPD光軸に常に一致させ光通信を行う.制御用の信号は従来の電波や赤外線によるワイヤレスLANにより伝達される.光軸補正制御では駆動式反射鏡回転角と光軸のズレ量との間のヤコビアンを利用するが,その計算には端末間の相対位置姿勢を必要とする.本論文では拡張カルマンフィルタを用いた相対位置姿勢のオンライン推定を行いこれに基づき光軸補正を行うトラッキング制御法を導入した.ガルバノ式光学スキャナを駆動式反射鏡として活用したアクティブFSO通信システムのプロトタイプにおいてトラッキング制御実験を行い移動端末を所定のテスト軌道に沿って動かしたときの相対位置姿勢の推定結果と受信端末上の基準光軸に対する入射光の誤差応答を検証した.


■ 可変操縦特性と外乱抑圧を実現する移動体の制御系設計−航空機の横/方向運動に対する設計例とその検証実験−

JAXA・佐藤昌之

 人間が操縦する移動体の操縦性改善を目的とした研究は古くから行われており,所望の操縦特性を実現する制御系設計の手法や,規範となる操縦特性に関する研究が数多く報告されている.また,操縦性の別の指標である外乱の移動体運動への影響を低減させる研究も古くから行われており,極配置問題による手法などが提案されている.本来は,これら2つの特性の改善,すなわち操縦特性および外乱特性の改善を同時に実現することが望ましいが,同時実現を目指した研究は現在までのところほとんど見られない.さらに,前者の研究においては,規範となる操縦特性を1つに定めている場合がほとんどであり,複数の規範モデルに対応するためには複数の制御則を設計する必要があるなど柔軟性に欠けていた.そこで,本稿では,複数の操縦特性実現と外乱の影響低減の2つを同時実現する移動体の制御系を提案する.なお,提案する制御系は外乱抑圧を行うフィードバック制御器と複数の操縦特性実現を行うフィードフォワード制御器から構成され,フィードバック制御器を設計した後にフィードフォワード制御器を設計するという手順を提案する.また,提案する制御系が実用可能であることを,航空機の横/方向運動に対する設計例およびその検証実験結果を用いて示す.


■ 量子化したフィードバックによる外乱抑制

京都大・新銀秀徳,太田快人

 本稿では,有界振幅外乱の抑制におけるフィードバック信号の量子化ビット数を低減する問題について考える.扱う制御対象は,状態が観測可能な1入力のシステムである.出力振幅を抑制する問題は,制御対象の状態を不変集合の中に抑制する問題に帰着することが知られている.ここでの不変集合とは,状態がその中にあれば,制御入力によりそれ以後の状態をその中に保つことができるような集合のことである.本稿では,量子化を考慮しない,つまり連続の制御入力値を許容する場合に構成された不変集合をもとにして,状態フィードバックの量子化ビット数を低減する方法を示す.具体的には,与えられた多面体の不変集合にたいして,状態をその中に抑制するために必要な制御入力値の種類を最小化するアルゴリズムを示す.アルゴリズムは,線形計画法による最適化の反復として与えられる.


■ モデルの不確かさを考慮した線形ジャンプシステムに対する状態フィードバックによる予見H∞追従制御

大阪大・名倉 剛

 本論文では有限時間区間におけるモデルの不確かさを考慮した線形時変ジャンプシステムに対する状態フィードバックによるロバスト予見H∞追従制御問題について考察している.そのモデルの不確かさの構造はあらかじめ与えられており,未知行列に関してもその上界は既知であると仮定している.モデルの不確かさの構造に応じて導入した補助システムと補助評価関数に対する補助ゲーム問題の解を求めることにより,予見可能性に応じて3つのH∞追従制御問題に対する状態フィードバック則を提案している.さらに数値シミュレーションによって予見時間を増やすことにより追従性能が改善されることを示すとともに,モデルの不確かさの取りうる値がロバスト追従性能にどのような影響を及ぼすかを考察した.本論文は線形連続時間および離散時間システムに対するロバストH∞追従制御理論を線形ジャンプシステムへ拡張したものである.できる限り一般的な線形ジャンプシステムについて考察したうえで,より限定された線形ジャンプシステムに対しても可解性の十分条件と状態フィードバック設計法を提示しモデルの不確かさを考慮する場合と考慮しない場合の可解性の十分条件の差異にも言及した.


■ 離散時間系における最適$H2$制御性能の非最小位相特性による特徴付け

東工大・加嶋健司,西尾和記

 システムのパラメータ(不安定極/零点,入出力遅延,重み関数の時定数など)が達成可能な制御性能へ与える影響を明らかにすることを目指し,さまざまな制御系設計における性能限界の解析表現の導出が,近年盛んに行われている.しかしながら,一連の研究の多くは伝達関数表現を用いているため,多入出力系などへの拡張は必ずしも容易ではない.
 一方,第一著者は連続時間系において,状態空間表現にもとづき,非最小位相特性に着目した特殊な構造を有する一般化プラントに対して,H2性能限界の解析表現を導出する手法を提案した.本論文では,この手法を一部用いることにより,離散時間系に対するH2性能限界の解析表現の導出する.この問題は基礎的研究としてだけではなく,ディジタル制御における量子化問題などへの応用という点でも重要な意味をもつ.理論的な困難さは,導出過程で重要な役割を果たす打ち切り作用素の値域が連続時間系の場合と異なる点にある.
 これに対して,“厳密に因果的な”システムを導入することにより,離散時間系においても,非最小位相特性が性能限界劣化に及ぼす影響が,連続時間系と同様の自然な形で特徴付けられることを示す.


■ 群ロボットによる協調捕獲行動の自律分散制御

農工大/理研・小林祐一,住友商事・大坪恭士,理研・細江繁幸

 自律分散型群ロボットシステムには,局所的な観測のみから全体としての秩序を形成することによる,観測・通信コストの低減や柔軟性・適応性などが期待される.本研究では,群移動ロボットによる移動対象物の協調捕獲問題における自律分散型の制御法を提案する.協調捕獲行動を取り囲み行動と把持行動とに分け,取り囲み行動の設計では,近傍(隣接)ロボットの位置情報のみを利用した制御則に関する収束・順序保存などの基本的性質と,制御則と評価関数との関係を明らかにした.この議論を利用し,近傍ロボットの位置・姿勢情報のみから未知形状対象物の形状推定を用いた把持行動の制御則を提案した.force-closureの条件を分散的な形で表現し,系の評価関数の設計に利用できることを示した.シミュレーションにより,移動対象物の取り囲み行動および凸形状対象物の把持行動において提案制御則が適切に機能し,かつ把持行動においては局所情報から各ロボットが force-closure の達成を判断可能であることを示した.


■ 多目的最適化における逐次近似最適化手法

香川大・尹 禮分,中山弘隆,尹 敏

 近年,工学設計などの実問題では設計に対する要求の多様化に伴って,多目的最適化問題として定式化されることが多い.しかし目的関数の形が設計変数に関し陽にはわからず,構造解析,熱解析,流体解析等の数値解析や実験などの評価によって,はじめて目的関数の値が得られることが多い.このような数値解析や実験には多大の計算時間やコストがかかるため,従来の多目的最適化法をそのまま適用することは現実的に困難であり,目的関数の評価回数をできる限り減らすことは現場においても解決すべき大事な問題である.そこで,本研究では少数のサンプル点から得られる情報を用いて目的関数を予測し,予測された目的関数に対し,意思決定者の希求水準に対するパレート最適解およびパレートフロンティアを生成する方法を提案する.さらに,少ないサンプル点から精度のよい近似パレート最適解を生成するためには追加学習によって逐次的に予測精度を上げていくことが重要である.そこで,追加サンプル点の選定法を提案し,数値例を通じて本提案手法に有効性について検証する.


■ 腹腔鏡下手術支援システムのための術者動作解析とTimed-automata による手術シナリオモデルの構築

大阪大・大沼健太郎,東大・正宗 賢,
   東電機大・貞弘晃宜,吉光喜太郎,
   Tallinn Technical Univ.・Juri VAIN,
   埼玉医科大・橋本大定,東電機大・福井康裕,宮脇富士夫

 本研究では,術者の動作や術場の状況に適応して術者の作業を補助することで,迅速で正確な手術を実現する腹腔鏡下手術支援システムの開発を目的とする.開発中の手術支援システムは,器械出し看護師に代わり最適な手術器具を術者に提供するScrub Nurse Robotと術者に最適な術野を提供する腹腔鏡マニピュレータで構成される.手術中の状況に適応して,これらの手術支援ロボットシステムを駆動するためには,術中計測からの術者動作の認識・予測が不可欠である.そこで本研究では,術者−看護師間の器具授受動作を動画から3次元解析し,術者動作の認識アルゴリズムを構築した.また,手術手順などの術中情報を定量的に把握するために,腹腔鏡下胆嚢摘出術を対象として手術シナリオモデルを構築した.その結果,術者動作の認識が可能となったことで手術シナリオと併せて,本手法が手術支援ロボットの制御やシステムの統合に有用であると示された.


■ モジュール型高信頼性移動ロボットのシステムアーキテクチャ開発と応用

名城大・大道武生,永井 建,
       森 和弘,足立佳儀,手嶌高梓

 自律移動ロボットが屋内・屋外・天候/何もない所/物体のある所/吹雪等の荒天走行を行うためには,1つの手法ではなく,多くの手法を適正な配分で統合する必要であると判断される.本稿では,それらを統合する設計アーキテクチャとアーキテクチャの実現手段を提言し,室内搬送ロボットへの応用(愛知万博 愛・地球博展示デモ),大学構内走行への応用等を通じてその有効性を評価する.



[ショート・ペーパー]

■ 簡便な小型ガソリンエンジン速度センサの提案

福岡大・林 長軍,尾崎弘明,九産大・丘 華

 本研究では,きわめて基礎的な物理原理を基にして,新しいガソリンエンジン速度センサシステムを提案する.そのシステムは(1) コンパクトかつ軽くてスペースを取らないこと,(2) 測定精度が高いこと,(3) 制御システムに取り込みやすいこと,(4) 安価であること,(5) 製作がきわめて容易であるなどの特長をもっている.ここでは,提案したセンサシステムをエンジン実機および小型ヘリコプタ飛行制御へ適用した実験例を示し,提案したセンサシステムの有効性および実用性を明らかにする.


■ ハプティックインタフェースを用いた力感覚と錯覚現象の計測

横浜国大・大竹理香,原 正之,黄 健,藪田哲郎

 本論文では,ハプティックインタフェースを用いバーチャルリアリティ上での大きさ重さ錯覚実験を行った.これはハプティックインタフェースを用いることで,被験者の各種データの測定,および実環境では困難な(被験者に対し物体の重さを急激に負荷する受け身型の)重さ知覚による実験を可能にしたものである.
 その結果,バーチャルリアリティ上においても大きさ重さ錯覚が生じることを明らかにし,本実験システムの有用性を証明した.また実験時に取得したデータと被験者の重さ評価値を相関係数によって定量的に評価することで,被験者の重さ判断の根拠となった事柄の探索を行った.すると多くの被験者が,物体の急激な重さ負荷により生まれる操作端位置の変化量を重さの判断の根拠としていることがわかった.これは人間の反射運動によるものと考えられ,その影響は試行を重ねることにより小さくなっていくことが併せて確認された.またこの時大きさ重さ錯覚は,反射運動の影響が大きく効いている部分では出にくく,試行を重ねその影響が小さくなると逆に出やすくなっていることが確認された.これより反射の影響により本来の視覚情報の影響が疎外されているのではないかという考察を行った.


■ LMIに基づく分散型アンチワインドアップ制御系設計

大阪大・竹川正浩,木山 健

 近年,飽和を有するシステムに対して,線形行列不等式(LMI)に基づく集中型のアンチワインドアップ制御系設計の研究が精力的になされてきている.
 本論文では,飽和要素の出力から入力までの直達成分を考慮するアンチワインドアップ制御系の設計法の中で,大規模システムの制御に有効なように分散制御問題を考察する.
 はじめに,問題設定としてm入力をもつ制御対象と,m個のアンチワインドアップコントローラの各係数行列をブロック対角に並べることで定義される分散型アンチワインドアップコントローラの定式化の準備を行う.つぎに,構成される閉ループ系に対して,マルティプライヤ的手法を用いた吸収領域の解析条件を紹介し,この解析条件に基づく設計問題の可解条件を導出することを考える.本論文では,制御対象の入出力チャンネル数と求めたいコントローラの次数に応じてリヤプノフ行列に適切な構造をもたせることにより,可解条件をLMI条件の形式で導出できることを示す.なお,このLMI条件に基づき制御対象より低い次数のコントローラの設計も可能ということに注意されたい.最後に,数値例を用いてこのLMI条件の妥当性を検証する.


■ 適応制御を用いた宇宙ロボットマニピュレータの目標関節速度生成

水産大学校・平 雄一郎,九工大・相良慎一

 宇宙ロボットマニピュレータの手先位置制御法開発においては,運動量保存則に基づく幾何学・動力学モデルがよく用いられる.一般に,幾何学モデルは手先位置が理想軌道に追従するような目標関節変数(仮想的な中間制御入力)の導出に用いられ,動力学モデルはその目標関節変数を実現するような関節トルク(ロボットで一般的な制御入力)の導出に用いられる.しかし,これらのモデルはパラメータに関して線形でなく,適応コントローラの設計に適していない.そこで,線形パラメータ表現される代用モデルがいくつか導出され,それらを用いて適応コントローラが設計された.しかしながら,これらのコントローラでは幾何学モデルに対する適応制御系の構成が達成されておらず,目標関節変数を適応的に生成する機構が付加されなければならない.本稿では,非線形パラメータ表現される幾何学モデルに対する目標関節速度の適応的生成法を提案する.本稿で設計したコントローラを用いれば,パラメータが未知定数であっても,マニピュレータ手先位置が理想軌道に追従することを理論解析により示した.


 

■ 変分対称性を利用したハミルトン系の繰返し制御について

名古屋大・藤本健治,佐藤訓志

 ハミルトン系の変分対称性を利用した反復学習制御法が著者らによって提案されている.この方法はいくつかの利点をもつが,周期的な信号を扱う繰返し制御問題に対してはそのまま適用することができなかった.そこで本論文ではこの方法を拡張して,繰返し制御問題に適用できる方法を提案する.本手法により,制御対象の詳細な情報を必要としない周期軌道追従だけでなく,ある種の最適制御を繰返し制御の枠組みで行うことも可能になる.本論文ではまずハミルトン系と変分対称性,また著者らによって提案されている反復学習制御法を簡単に述べた後,繰返し制御への拡張を考える.まず周期軌道による初期値の変動を考慮した入力の更新則を導出し,状態調整時間という待ち時間を導入した.これにより各周期の初期状態の変動をある有界な領域に閉じ込めることができ,反復学習のアルゴリズムが周期軌道に対しても適用可能になる.最後に,シミュレーションを行い.本手法の有効性を確認した.


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