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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.2(2008年2月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ ハードウェアタスクエンジンの提案とそれを利用したセンサ信号処理SoCの設計,試作および評価

安川電機/早稲田大学・柏木喜孝
     早稲田大学・山内規義,安川電機・坂田俊一

 本論文では,信号処理用組込み機器向けのハードウェアとして,ハードウェアタスクエンジンを提案する.ハードウェアタスクエンジンは,最も優先度が高く、信号処理を行う割込み処理タスクを,ハードウェアタスクとして高速で柔軟に処理し,かつ割込みからの起動遅れを抑えることで高いリアルタイム性を備える.ハードウェアタスクエンジンを利用したセンサ信号処理SoCのプロトタイプをFPGAを用いて作成し,磁気センサによる磁気式エンコーダ処理で実証実験を行った.ハードウェアタスクエンジンは,割込みから41.60nsで起動でき,1/2のクロック周波数でソフトウェアの3.0倍高速な処理が行え,発熱も13.4%に抑えられることから,その有用性が確認できた.


■ レーザーレンジファインダを用いた柱状物体の3次元形状測定と表面反射特性推定の同時実現法

茨城大学・成田大助,馬場 充

 物体の3次元形状測定と表面反射特性の推定は製品検査やCGなどの分野においては重要である.従来より,形状測定と表面反射特性推定を同時に実現する方法として,幾つか提案されていたが,何らかの制約があった.例えば,測定できる対象に制限があったり,表面反射特性推定のために特定の反射モデルを仮定する必要があるなどであった.本論文では,レーザーレンジファインダーを用いた物体の3次元形状測定と表面反射特性の推定を提案する.その基本原理は我々らが既に提案している光の入射位置が検出可能な画像センサを用いて,物体からの反射光の画像センサへの入射位置,入射角度,入射輝度の3つを同時測定して,形状データと表面反射特性データを同時に獲得することにある.従来の表面反射特性の推定方法はサンプルを用いるか,画像データに特定の反射モデルを適用する方法のどちらかであり,レンジファインダを用いた表面反射特性は実現されていなかった.これは,表面反射特性の推定には測定対象の表面反射特性を測定する点の傾きを知る必要があったが,従来のレンジファインダではその傾きの推定が困難であったことが原因であると考えられる.それに対し,本研究で提案した測定法は物体表面の傾きが推定可能であるので,直接3次元形状測定と共に表面反射特性の測定が可能となった.提案手法は反射強度のピークが正反射方向に等しい鏡面反射成分を持つ柱状物体を対象とする.本研究ではプロトタイプレーザーレンジファインダを試作し,種々の反射特性を有する柱状測定対象に対して,3次元形状と表面反射特性の同時計測を行い,その有効性を実証した.


■ 睡眠段階遷移方程式と睡眠段階出現確率の推定

法政大学・栗原陽介,渡辺嘉二郎
     東京医科歯科大学・田中 博

 睡眠段階の判定において,国際標準であるR-K法を使用する際,判定者の主観により判定結果が完全に一致することは難しい.睡眠段階の遷移に関して,共通する特性を表すモデルにより判定結果を是正し,個別判定の不確定性を吸収することができれば,睡眠段階判定の信頼性向上につながる.本論では,睡眠中の体動の有無によって睡眠段階遷移方程式の遷移確率行列を切り替えるモデルを提案し,このモデルをもとに観測器を構成し,R-K法による睡眠段階および,筆者らがこれまで提案してきた空気圧方式をもとに判定された睡眠段階を観測値として入力することで,各睡眠段階の出現確率を推定する.その結果,各睡眠段階の出現確率の上位3位までを評価すると,それぞれの判定結果とκ統計量を比較すると,遷移確率行列を作成するのに使われたデータでは,2人の判定者間では0.95,空気圧方式とそれぞれの判定者間では0.79,0.76であった.また,遷移確率行列を作成するのに使われなかったデータでは2人の判定者間では0.93,空気圧方式とそれぞれの判定者間では0.73,0.75の精度で睡眠段階の個別判定における別の判定結果の可能性を推定することができる.


■ Chebyshev 多項式を用いた Hamilton-Jacobi 方程式の近似計算法

名古屋大学・水野 光,藤本健治

 本論文では,Chebyshev 多項式を用いた Hamilton-Jacobi 方程式の新しい近似解法を提案する.Taylor 展開に基づく従来法に Galerkin 近似を組み合わせた方法であり,指定した領域で従来法より精度の高い解が得られる.Chebyshev 多項式を用いていることから FFT による高速計算を用いることができるほか,多項式近似を用いる従来法よりも計算量の少ないアルゴリズムである.さらに数値例を用いて提案手法の有効性を示す.


■ PID型状態フィードバックによる宇宙機の非線形トラッキング制御

釧路工業高等専門学校・池田裕一
     電気通信大学・木田 隆,長塩知之

 今後の宇宙開発では,ランデブー・ドッキングなど,大きな姿勢・位置変動をともなうミッションが考えられている.これらのミッションは宇宙機のトラッキング制御問題となり,このような宇宙機の運動は,並進・回転運動が互いに干渉した非線形系であるため,非線形制御が必要となる.また,その目的から高精度の位置・姿勢制御が要求される.このため,環境外乱の影響による位置・姿勢の偏差を抑制するために,外乱抑制指標をL2ゲイン(γ>0)とする制御系設計に関する研究が多く報告されている.
 一方,外乱として一定値外乱を考えたとき,これによる定常偏差を除去するためには,PID制御のように積分操作を加えればよいことが知られている.宇宙機のトラッキング制御においても,多くのPID制御手法が提案されているが,パラメータ誤差に対してロバストではない,姿勢表現に特異点が存在するなどの問題がある.また,これらの研究では,姿勢制御のみを扱っており,位置制御も含めた制御手法は提案されていない.
 本稿では,宇宙機の6自由度トラッキング制御問題に対して,受動性に基づいたPID型状態フィードバック制御法を提案する.提案する手法は,特異点が存在せず適応制御に容易に拡張できる.また,適応制御においては質量の推定値が真値に収束するための条件を導出する.


■ 冗長なディスクリプタアプローチによるロバストH∞性能解析のための拡張型 LMI 条件の導出

舞鶴工業高等専門学校・川田昌克

 不確かさを有する線形システムに対する様々な解析・設計問題におけるパラメータ依存 LMI の数値的な取り扱いを容易にする方法として,拡張型 LMI アプローチがある.また,ポリトープ型の不確かさに対するロバストH∞性能解析において,高次の多項式型パラメータ依存リアプノフ関数を構成することも可能である.一方,システムの表現を拡大し,結果的に LMI を拡大する手法として,冗長なディスクリプタアプローチが知られている.従来,H∞性能解析においては,冗長なディスクリプタ表現の直達項に何らかの仮定を設ける必要があったが,最近,新しい補助変数を導入することによって,この制約を取り除くことが可能であることが筆者らにより明らかにされている.
 これら2つのアプローチは,LMI を拡大しているという点で類似の手法である.本論文では,高次の多項式型パラメータ依存リアプノフ関数に基づくロバストH∞性能解析に関し,筆者らが提案する新しい冗長なディスクリプタアプローチの結果を利用することによって,既存の拡張型 LMI アプローチの結果を導出可能であることを明らかにする.さらに,求解のための計算時間の観点から,導入する補助変数を減らすことについても検討する.


■ Derivation and Solution of Harmonic Riccati Equations via Contraction Mapping Theorem

Kyoto University・Jun ZHOU

By the contraction mapping theorem and the harmonic Lyapunov equation theory, sufficient existence conditions of what we call the harmonic Riccati equations in finite-dimensional linear continuous-time periodic systems are explicated. Properties of the harmonic Riccati equations are also examined. Different from the Hamiltonian analysis, the approach reveals some analytic properties of periodic solutions of periodic matrix Riccati equations. An iterative algorithm is suggested for solving periodic matrix Riccati equations, which only involves algebraic Lyapunov equations and Fourier coefficients of periodically time-varying matrices.


■ サンプル値H∞遅延フィードバック制御器の一設計法

奈良先端科学技術大学院大学・平田健太郎

 本論文では,補間理論に基づく,多入出力系のサンプル値H∞遅延フィードバック制御器の設計法を与え,実機実験によってその有効性を検証している.提案法は,状態空間におけるJ-無損失共役化子を用いた行列値BH∞関数補間の特徴づけを利用しており,古典的なNevanlinnaアルゴリズムに見られるような再帰的計算や複素係数演算を必要としない.また提案法では,自由パラメータの調整による零点構造の埋め込みを後天的におこなうため,所望の制御構造を予めプラントに付与しておくプラント拡大による設計と比較すると,H∞制御問題のサイズを,プラント拡大時に解かれるべき問題のサイズよりも小さくすることができる.とくに,DFCにより安定化したい不安定周期軌道の周期がサンプル周期に比べて大きい場合には,大きな差となりうる.さらに,主結果の導出にあたって,境界補間問題の可解性に関する従来のスカラー関数に対する結果を行列値関数の場合に拡張している.


■ エレベータ運行計画問題に対する動的計画法の一構成と状態遷移モデルの縮約による効率化

神戸大学・稲元 勉,玉置 久,村尾 元

 エレベータシステム(以降,ES)の効率的運行を目的とするエレベータ運行計画問題の最適解を求めることは,既存手法の有効性の評価や新規なルールの設計に有用であるが,システムの振舞いが複雑・非線形であるために困難である.
 本論文では,そのための枠組みの構築が目標とされ,ES の状態遷移確率を定式化することで適用可能となる動的計画法の一構成が示され,状態遷移確率の計算式にみられる特徴を利用することで効率化された手法が提案される.
 ES の状態遷移確率は,ES の振舞いを確率的とする要因を状況入力として考慮することで構成された状態遷移関数に基づいて,ある状態遷移をもたらす状況入力の生起確率の総和として定式化される.
 計算例では,規模の小さな ES へ down-peak もしくは two-way 交通流に従って利用者が到着する2つの問題へ,報酬反復法及び提案手法が適用される.
 その結果,動的計画法を用いることで,ある既存手法よりも統計的有意に有効なエレベータ運行を作成できること,及び提案手法を用いることで,利用者の平均待ち時間に関して報酬反復法と同程度に有効なコスト関数が,より短い計算時間で得られたことが報告される.
 また,同様のことが,利用者の最大待ち時間に関しても成立する可能性が示唆される.


■ 配送計画問題に対する解空間の分解に基づく分散型メタヒューリスティック解法

立命館大学・榊原一紀,野一色 学
     神戸大学・玉置 久,立命館大学・西川郁子

 本研究では,配送計画問題を対象に,メタヒューリスティクスを効果的に適用する方法論として,問題固有の知識を解空間の分解に反映するという分散型の解法を提案する.ここで,対象問題として配送計画問題の一つである時間枠制約付きPickup and Delivery問題を取り上げる.この問題は,配送物一つ一つの配送元と配送先を陽に考慮し,配送物の車への割り当てと各車の巡る経路を決定する問題である.この問題に対して,各車へ割り当てる配送物の数に着目した解空間の分解を示した上で,分解された各部分空間に対して,擬似焼き鈍し法を適用する枠組みを提案する.さらに,擬似焼き鈍し法を適用する部分空間を効率的に選択するための方法として,遺伝アルゴリズムを用いた方法を構成する.計算機実験により,より大規模な問題に対して提案方法が,得られた解の質と計算時間の観点から分解を考慮しない場合に比べて優れた結果を得ていることが確認された.


■ 知的車椅子ロボットにおける環境パラメータを介した協調行動の獲得

横浜国立大学・濱上知樹,千葉大学・平田廣則

 知的車椅子ロボットの自律的な協調行動獲得を目的として,社会性昆虫の集団にみられる局所環境情報を介した局所相互作用(stgmergy)と遺伝的プログラミング(GP)による行動決定木の進化を併用した行動決定機構を提案した.局所環境情報に各ロボットの行動の遂行成功・失敗に基づいた動的なパラメータに基づく集団内のマクロな指標を用い,この環境情報から適切な振る舞いを決定する行動決定木を,遺伝的アルゴリズムにより進化させる方法を用いた.このアルゴリズムを用いたシミュレーション実験の結果,狭い通路や交差状の通路において,複数知的車椅子ロボット間の協調行動が創発することを明らかにした.さらに.シミュレータで得られたエージェントを実機に用いた結果,同様の協調行動が得られることを確認した.


■ 運転支援システムのためのドライバのブレーキ操作タイミングに関係する要因の解析

交通安全環境研究所・森田和元,関根道昭,岡田竹雄

 追従走行時に先行車両が減速したときの後続車両ドライバのブレーキ操作タイミングについて,ドライビングシミュレータによる室内実験を行って調べた.被験者14名の走行データを基にして判別分析を行い、ブレーキ操作タイミングと関係の強い指標を推定した.後続車両速度,車間距離,相対速度,TTC,視角の増加率の時間変化(TTCの逆数に等しい)などの11種類の指標を調べた結果,視角の増加率の時間変化が最もブレーキ操作判断のタイミングに関係していることがわかった.このことは,テストコースにおける7名の被験者による走行実験結果からも確認された.この知見は,自動ブレーキ等の作動タイミングの設定に活用することが可能である.


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