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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.9(2008年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 機能的電気刺激(FES)による脚運動野における事象関連脱同期(ERD)への影響

東京工業大学・高橋 光,郷古 学,伊藤宏司

 近年,脳−コンピュータインターフェース(BCI)の研究が盛んに行われている.BCIはおもに脊髄損傷者などの意図代償を行う手法として注目され,運動想起時の脳波である事象関連脱同期(ERD)を使用してスクリーン上のカーソルを動かす例が有名である.BCIを使用したシステムにはさまざまな用途が考えられる.たとえば,運動意図情報であるERDを元に,自己身体に機能的電気刺激(FES)により感覚を返すことで,健常者の運動学習器や脳卒中リハビリテーションに応用できる可能性がある.先行研究により,感覚フィードバックがERDに影響することが示されている.しかし,どの感覚(皮膚感覚,筋感覚,腱感覚,関節感覚など)がおもにERDに影響を及ぼすかについての言及はない.そこで健常者を使用して,両脚の大腿四頭筋群電気刺激による感覚フィードバックのERDに対する影響を検証した.結果はERDが感覚フィードバックに影響することがわかり,特に筋感覚,関節感覚からの入力が体性感覚野,運動野のERDに影響していることが高いことが示唆された.


■ LMI条件に基づくFeedback/Anti-windup補償器の統合化設計―L2/指数安定性能保証領域に基づく設計条件の関係性について―

大阪大学・木山 健

 本論文では,飽和や不感帯の非線形性をもつ連続時間線形時不変な制御系を考え,一般化セクター手法に基づき,領域的なL2/指数安定性能を満たす2つの制御系設計方法を提案する.一方は動的出力フィードバック補償器と動的アンチワインドアップ補償器との,他方は静的出力/状態フィードバック補償器と静的アンチワインドアップ補償器との統合化設計である.両方法では,非線形性の出力が制御に利用可能であると仮定する.この場合,両制御系設計問題は,それぞれ線形行列不等式条件による凸最適化問題に帰着可能であることを示す.さらに,前者の動的補償器に基づく設計条件は,対応する後者の静的補償器に基づく設計条件の十分条件になっていることを証明する.両補償器への入力信号が等しい特別な場合,後者の静的補償器のクラスを,状態も観測可能な対応する前者の動的補償器のクラスにまで広げても,達成可能な制御性能は改善されず,厳密に等しいことも証明する.なお,この動的補償器の設計条件は,上記の非線形性を有する制御系の状態フィードバックゲインの設計条件と,この非線形性のない線形な制御系のオブザーバゲインの設計条件とに,システム論的に明確に分離できることを明らかにする.最後に,数値例により提案設計方法の有効性を示す.


■ 一次可制御な非ホロノミックシステムに対する有界な切替フィードバック制御

京都大学・石川将人

 本稿では,可制御Lie代数が一階のLie括弧積で表わされる3入力非ホロノミック対称アフィンシステムの制御問題を扱う.このクラスのシステムは三次元宇宙ロボットの姿勢制御問題,1リンク三叉ヘビロボットなどを例として含み,これまでにいくつかの手続き的アルゴリズム,不連続フィードバック制御などが試みられてきたが,制御則の非有界性や応答の遅さなどの点で問題があった.本稿ではこのシステムに対し,多段階の不変多様体およびそれへのスライディングモード型の到達則を設計することにより,有界な入力で有限時間で原点に到達させる切替制御則を設計する.また提案法のもとでの状態の挙動の詳細な解析,および制御則の物理的な解釈を与えるとともに,その特異点集合の幾何学的な構造を明らかにする.提案法の有効性は数値シミュレーションによって示す.


■ ロバスト性を考慮した倒立振子型移動ロボットの高速移動制御

オリンパス株式会社・畠山直也,
     職業能力開発総合大学校・島田 明

 本研究は,平行二輪型の倒立振子を利用した高速移動ロボットを開発することを研究の目標としている.これまで,島田・畠山は倒立振子が自らバランスを崩すことによって生じる加速度を高速移動に利用する制御法を提案し,シミュレーションと実験によってその妥当性を示した.その実現には,三次元空間での運動方程式を導出し,入力と状態変数の一部との関係を線形化する部分線形化を施し,その結果生成されるZero Dynamicsを利用することにより,フィードフォワード制御を行うものであった.しかしながら,同制御系はロバスト性に欠け,目標位置まで到達しないことがあった.そこで本稿は,制御対象を部分線形化した後にPD制御を施した角度制御系を改めて制御対象として扱い,H∞移動距離制御器を設計し,前記のフィードフォワード制御器と合わせて二自由度制御系を構成する制御法を提案するものである.さらに,意図するロバスト高速制御が実現できることをシミュレーションと実験によって示している.


■ 仮想摩擦に基づくAcrobotの軌道計画

東京工科大学・余 錦華,昭和電子工業・小林宏徳
    岡山県立大学・忻 欣,
    東京工科大学・今津篤志,大山恭弘

 本論文は,Acrobotのダウンワード運動に基づき,その蹴上がり運動軌道を計画する新しい手法を提案する.まず,垂直に倒立する不安定平衡点から吊り下がる安定平衡点への運動軌道を,仮想摩擦を導入して作成する.さらに,この軌道計画問題を非線形制約最適化問題として定式化し,最短な蹴上がり時間となる仮想摩擦係数を求める.最後に,時間軸上で軌道を反転して最適な蹴上がり軌道を作成する.本手法の有効性はシミュレーションにより検証した.


■ ハイブリッド型適応機構を用いたロボットマニピュレータの反復学習制御−2次元適応制御の応用−

統計数理研究所・宮里義彦

 未知の制御対象に対して限られた事前情報のもとで追従制御を実現する手法として反復学習制御があり,これまでに多くの研究結果が報告されている.これに対して先の研究において,未知のロボットマニピュレータに対してハイブリッド型適応機構を用いて反復学習制御を実現する方式を提案した.ハイブリッド型適応機構とは,制御は連続時間形式で実行されるのに対して,調整パラメータの更新は離散時間的に行われる適応制御の形式である.提案する方式では,試行ごとのパラメータの更新と,H∞制御問題から導出された安定化制御信号により,すべての状態変数が有界となり,試行を繰り返す過程での追従誤差の0への収束が達成される.本稿では,これまでに述べてきたハイブリッド型適応機構を用いた反復学習制御について概観するとともに,オフラインチューニングとしてのハイブリッド型適応機構に各試行時において新たにオンラインチューニングも加えて両者を併用する2次元適応制御方式について提案する.この2次元適応制御方式は2次元システムの適応制御方式の1つとして提案されたものであるが,試行を繰り返すごとに適応制御の制御環境が適応的に改善されていく性質をもち,その意味で一種の学習制御過程のモデルとしても捉えることができる.


■ 時間軸変換を用いたChained Systemの不連続制御−入力制限への対処と吸収領域の解析を利用した応答改善−

東京工業大学・相模 毅,三菱電機・伊藤然一,
   東京工業大学・中浦茂樹,三平満司

 非ホロノミックシステムのうち,現在までに多く研究されてきたのはchained formシステムである.このシステムには,すでにさまざまな(不連続・時変の)制御手法が提案されているが,制御性能などといった,実用的観点からの研究はまだ不十分である.たとえば Astolfiの不連続制御器では1.不連続集合近傍で入力がいくらでも大きくなる.2.状態が収束する際にオーバーシュートが生じる.といった欠点が知られている.
 そこで本稿では,時間軸状態制御系を用いて,あるクラスの不連続制御器を表現,再解釈し,その上でシステムの収束に関する新たな条件を提示する.ここで取り扱う制御器のクラスは Astolfiの不連続制御器を包含する.また,提示する状態の収束条件は Astolfi制御器のものより大きな自由度をもっている.
 さらに,本稿ではこの自由度を用いた応用例を2つ示す.第1の例は入力制限がある場合の制御器の改善であり,第2の例は,与えられた状態制限のもとで収束可能領域をなるべく大きくする設計例である.


■ 有限時間区間に対するハイブリッドシステムの離散抽象化

北陸先端科学技術大学院大学・平石邦彦,
     小林孝一,崔 舜星

 ハイブリッドシステムの制御問題において,システムのふるまいに関する論理的制約を扱うために,状態空間を離散集合により抽象化する考え方が提案されている.離散抽象化により,対象とするシステムが論理的な制御仕様を満たしているかどうかをモデル検査などの形式技法で開発された手法で検証することが可能になる.さらに,論理的に記述されたふるまいを制御対象にさせる入力を求めることも可能になる.離散抽象化の代表的な方法としては,双模倣性に基づく状態空間の分割が知られている.しかしながら,一般のハイブリッドシステムに対しては,双模倣性を満たす同値類に状態空間を分割する手続きの停止性が保障されない.本論文では,ハイブリッドシステムに対する双模倣性を有限時間区間の範囲内で限定した有界双模倣の概念を定義し,停止性が保障された計算手続きを与えた.さらに,有界双模倣を利用して,時相論理式を制約条件としてもつモデル予測制御問題に対し,目的関数値の上界を保証する近似解法を与えた.


■ The Optimization of Ultrasound System Doppler Velocity Range using Hybrid Control

Toshiba Medical Systems Corp.・Tatsuo BABA,
Kobe Univ.・Nobuo OHMAE and Koichi OSUKA

 超音波ドプラ診断装置の操作性向上を目的として,ドプラトレース波形の情報をもとに自動的に速度レンジと速度オフセットを最適化する信号処理方式を開発した.従来方式では信号の欠落やドプラ信号特有の折返しの影響を受け不安定になる弱点があった.今回ハイブリッド制御を用いた新方式を開発しシミュレーションにより従来方式と性能比較をおこなった.その結果,通常のドプラ血流診断で想定されるさまざまな状態変化に対して従来方式に比べて安定した応答が得られた.


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