SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.45 No.2(2009年2月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 単色光干渉法による透明膜に覆われた物体の膜厚と表面形状の同時測定

東レエンジニアリング・小川英光,
     パナソニック・中野渡祥裕,
     東レエンジニアリング・北川克一,
     東京工業大学・杉山 将,内藤卓人

 半導体や液晶パネルなどのように,表面を透明膜で覆われた物体の膜厚,および,膜の表面形状と裏面形状を,位相シフト法により同時に測定する方法を提案した.まず,単色光干渉顕微鏡で得られるインターフェログラムの表現式を求め,表現形式そのものは透明膜がない場合とまったく同じ形式であり,透明膜の有無は係数の中身に反映されることを解明した.したがって,膜なしの場合と同じ位相シフト法によって,インターフェログラムの観測値から,係数を決定することができる.本論文の核心は,この係数から膜厚および膜の表面高さを厳密に求める理論式を導くところにある.この方法の要は,インターフェログラムの係数を使って,物体光強度と参照光強度を分離抽出するところにあるので,SOR法 (Separation of Object and Reference beams)と名付けた.そして,位相シフト法とSOR法を組み合わせて実試料を測定し,その有効性を確認した.


■ 振動型接触プローブを用いた表面走査コントローラによる形状計測手法

豊橋技術科学大学・増井陽二,三好孝典,寺嶋一彦

 本論文は,3軸からなる計測器に測定プローブとして振動型接触プローブを用いた形状計測について提案する.振動型接触プローブは圧電素子により構成され,構造が単純で剛性が高く,高加速度で駆動できるという利点を有する.本プローブをタッチプローブとして用いた場合の有効性の検証も行われているが,本論文では倣いプローブとして用いた表面走査の手法について検証する.表面走査とはプローブと対象物が常に接触し続けるように制御する手法であり,制御コントローラによって各軸を協調させ駆動させることが重要となる.最初に測定プローブとして用いる圧電素子から構成される振動型接触プローブの特性について述べる.つぎに表面走査を行う非線形コントローラを提案する.最後にプローブを用いて非線形協調コントローラによる角形状対象物の計測,円対象物の計測結果について述べる.実験結果から,1[mm]の角形状の測定対象物に対して21.7[μm]の誤差で,半径0.5[mm]の円形状の測定対象物に対して10.9[μm]の誤差で計測できた.


■ フローリング,畳の上および浴槽,トイレ内における生活者の生体情報モニタリング

法政大学・栗原陽介,河西良拓,
     渡辺嘉二郎,小林一行
     東京医科歯科大学・田中 博

 高齢社会を迎えた日本において,生活空間の中に設置されたセンサにより見守られることは,緊急時の対応や,長期的な健康管理という観点から意義がある.在宅で日常的に生体情報をモニタリングするシステムにおいては,計測されていることを意識しない無拘束,無侵襲性や,システムのメンテナンス性などが重要である.筆者らはこれまで,エアマットレス型の空気圧方式を用いて,睡眠時の脈波,呼吸を無拘束,無侵襲で計測し,睡眠段階を推定する方法を提案してきたが,エアマットレスでは,定期的に空気を入れる必要があるため,メンテナンス性に問題があった.本論では,エアマットレスの替わりにシリコンチューブを用いた空気圧方式を提案し,フローリング,畳,浴槽,トイレにおいて環境雑音の増加に伴う脈波,呼吸信号のS/N比の変動を比較する.その結果,フローリング,畳,浴槽,トイレにおいて,それぞれ加える環境雑音が0.01G,0.09G,100ml,0.01G以下であれば,脈波,呼吸とも30dB程度の精度で計測でき,波形から一拍一拍を確認することが可能である.


■ 劣駆動非ホロノミック飛行船システムの大域的指数安定化制御

名古屋工業大学・山田 学,カリフォルニア大学・富塚誠義

 本稿では,水平平面内において劣駆動飛行船システムの位置および姿勢を制御する問題について考察する.考察する飛行船はコリオリ力などの非線形項をもつ非ホロノミックシステムであり,このシステムを大域的指数安定化する新しい安定化補償器の設計法を提案する.提案法は,この劣駆動系の安定化制御問題をある線形時不変系の安定化問題に帰着させる新しく滑らかな座標変換を与える.つぎの利点をもつ.(1) 提案するコントローラは,滑らかな座標変換と定数ゲインのみで簡単かつ実現が容易であり,さらに切替えなどの不連続要素をもたないため,飛行船は滑らかに振動なく,どんな初期状態でも,任意の希望の状態をすばやく達成できる.(2) 提案する座標変換は,機体座標系の横方向速度と位置に時変重みを掛けており,その結果飛行船の横方向の位置と姿勢角を優先的に希望値に収束させ,最後に進行方向の位置の順で希望値に収束させるため,むだなく風などに対して効率的な動きで安定化できる.(3) コントローラは,よく知られた線形制御理論の極配置法により容易に設計できる.(4) 小型飛行船の自動飛行制御装置を製作し,実機による飛行実験やシミュレーションとの比較により,提案法の有用性を実証した.


■ 非ホロノミック二輪車両移動ロボットの適応制御ー収束速度を指定する大域的指数安定化補償器の設計ー

名古屋工業大学・山田 学,馬原功次,水野直樹

 本稿では,物理パラメータが未知の下で,ダイナミクスを含む非ホロノミック二輪車両システムに対する安定化問題について考察する.未知パラメータをオンラインで推定し,推定器も含めたシステムの大域的指数安定性を保証する新しい適応制御系を提案する.提案法の有効性は以下である.(1) システムの状態変数を大域的指数収束させるだけでなく,未知パラメータの推定速度やシステムの状態の収束速度もそれぞれ個別に指定できる.(2) 提案するコントローラは,滑らかな座標変換から構成され,構造が簡単で不連続要素をもたないため,二輪車両系は滑らかな動きで任意の初期状態(位置・姿勢)から任意の希望の状態に指数収束する.(3) 座標変換は機体座標系における横方向の位置に重みを掛けているため,まず二輪車両系の横方向の位置を優先的に希望値に収束させ,その後姿勢角,最後に進行方向の位置の順で希望値に収束させ,むだなく効率的な動きで安定化できる.(4) コントローラの設計法は簡単で,よく知られた線形制御理論(線形時不変系に対する極配置法)のみを用いて容易に設計できる.また,収束速度の指定も直接的かつ容易である.最後に数値シミュレーションにより,提案法の有用性を実証する.


■ 制約を持つ非線形システムの切替え型制御:SICE-DDアームを例にして

東京大学・石川真生,南山大学・大石泰章

 本論文では,制約を持つ非線形システムの切替え型制御について,SICE-DDアームのPD制御を中心に議論する.特に,与えられた制約に対する許容集合を2乗和多項式を使って計算し,これに基づいて切替え則を設計する方法を提案する.2乗和多項式を使うと計算量が大きくなってしまうことが多いので,PD制御に関する既知のLyapunov関数を使うことを考える.このLyapunov関数は三角関数を含んでおり,そのままでは2乗和多項式を適用できないが,三角関数を多項式で置き換える方法を提案する.最後に,数値例によって提案法の有効性を検証する.


■ 組織学習のためのインシデントレポートデータベースの開発

大塚雄市,安部智貴,野口博司,牧之内顕文

 インシデント報告システムは,組織の安全と利用者の安心確保のために不可欠である.
 しかしながら,個別の病院組織のシステムと全国統一のシステムとの関係性が未整理なために,個別組織の安全管理部門に負担が大きくなっていることが懸念されている.
 本研究では,全国統一の報告制度に適合可能で,かつ独自の組織対策にも活用可能なインシデントDBシステムを構築することを目指す.両システムの統合方針として,発生状況を比較できるように共有し,要因部分に各組織の管理システムに起因した特有のものを組み込むことが提示された.そして,現場からの報告や対策を組織が学習し,インシデントの被害低減のための対策を展開するという組織の学習方針が導出された.これらの方針に基づき,XML++ XSLT を用いたDBシステムを開発した.
 そして,開発したDBと従来システムの比較を行った.その結果,所要入力時間の平均値が有意に低減し,また被験者の主観評価も良好なものを得た.
 更に,現場入力者と管理者が強調してシステムを改善し,お互いが納得して活用できるシステムを構築する事を図った.組織の学習方針に従ってDBシステムをツールとして運用することで,より多くの報告が寄せられ,組織学習のサイクルが促進されることが期待される.


■ レーザスペックル法の植物水分ストレス検出への適用

信州大学・石澤広明,ウシオ電機・松尾 司,
     日本繊維製品品質技術センタ・三木誉史

 農産物の栽培では,作物の生長を常にモニタし,診断を加え,さらに障害などが生ずる可能性があれば適当な処置を講ずる必要がある.通常の栽培者は大きさや形状,色などの物理的情報を利用し,水や肥料を与え,あるいは農薬散布により栽培管理している.この際,問題となる状態変化を早期に検出することが,適した管理を実行する上で重要となる.本研究では,水分ストレス下における植物葉の変化を簡便かつ非破壊に検出するシステムとして,レーザスペックル法を提案し,スペックルパターンの時間的変化から,早期に水分ストレスを発見できることを明らかにし,本手法の妥当性を実験的に検討した.


[ショート・ペーパー]

■ 移動平均をもちいた標本標準偏差による指尖脈波の解析

アサップシステム・浅川貴史,
     神奈川工科大学・西原主計,吉留忠史

 近年,心拍間隔の変動から心理的負荷の測定を行う方法としてに指尖脈波を使う研究がさかんである.また,その解析方法としてフーリエ変換に周波数解析が広く知られているが,最近の研究では,ローレンツプロットやリアプノフ指数に着目したものがある.しかし,いずれの方法も解析方法も必要とするデータ数分の測定に数分間の時間がかかる.著者らは,移動平均をもちいた標本標準偏差により解析を行う方法を研究している.この方法では,これまでより少ないデータ数で解析が行えるため測定に必要な時間が短いことが特徴である.今回の論文ではその第一段階として実験によりリラックス状態とストレス状態の区別が行えることを検証した.実験ではリクライニングチェアと事務用椅子に座った状態と,座位での読書とゲームを行った状態の心拍間隔を指尖脈波により測定し,その平均,標本標準偏差,周波数解析の値を比較した.結果として,心拍間隔の平均値では,同じ姿勢で何もしないリラックス状態と読書を行った状態の区別ができないが,標準標本偏差と周波数解析では明確に区別ができた.解析時間についても約30秒で行うことができ,著者らの当初の目標を達成することができた.


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