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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.46 No.6(2010年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 標準用白金抵抗温度計に準じる温度計の特性評価手法の開発

産業技術総合研究所・山澤一彰,安曽 清,
     丹波 純,新井 優

 産業現場において高精度の温度計測を行うために,白金抵抗温度計が多く用いられている.これらは一般にJIS規格に準拠したPt100などの測温抵抗体であることが多い.より高精度な0.01℃レベルの不確かさで温度の測定を行いたい場合は,基準となる温度計,すなわち小さな不確かさでトレーサビリティの取れている温度計,を用いて校正して使用しなければならない.
 本論文では,最も重要で,多用されている温度域である0℃〜30℃の範囲において,産業現場等で使用する温度計を,ITS-90に定める標準用白金抵抗温度計と詳細に比較測定し,不確かさを評価する手法を検討した.比較測定のための実験装置を製作評価し,この装置を使った温度計の比較測定手法の不確かさは拡張不確かさ(k=2)で0.43mKという非常に小さい不確かさであることを確認した.この手法の実例として,1990年国際温度目盛(ITS-90)に定められた標準用白金抵抗温度計に準じる直径1.2mm,長さ10mmの円筒状の小型の白金抵抗温度センサをもつ温度計の温度−抵抗値特性を詳細に評価し,温度計としての有用性を新たに示した.
 このような不確かさの小さい比較装置および手法の開発は,高精度な比較測定を行う上で今後広く使われていく.


■ 5つの車軸と3つのステアリングを有する連結車両システムの制御

青山学院大学・山口博明,アマダ・森 将人,
     青山学院大学・河上篤史

 本論文では,新たに,5つの車軸と3つのステアリングを有する連結車両システムと,その経路追従フィードバック制御法を提案した.具体的には,2台の車両型移動ロボット,2つの荷台,これら荷台を連結する受動的な回転関節に位置するステアリングから構成される連結車両システムを提案した.また,本連結車両システムの運動学的方程式が,仮想的な機械要素を想定することで,曲率が2階微分可能な任意の経路を1つの座標軸とし,この経路の接線に直交する直線をもう1つの座標軸とする座標系において,正準系であるChained Formへ変換可能となることを示した.さらに,Chained Formに基づいて,本経路追従フィードバック制御法を提案した.本制御方法においては,2つの荷台により直線型の荷台を形成し,あるいは,V字型の荷台を形成し,これらの形状を維持しながら経路追従動作を行うことが可能であり,2つの荷台をあたかも1つの荷台であるかのごとく振舞わせることができる.これにより,搭載する搬送対象物の形状に応じて,荷台の形状を変化させることが可能となる.本制御方法の有効性は開発した実機を用いて実験的に確認されている.


■ 通信容量制約に基づく動的量子化器の量子化幅設計と性能解析

熊本大学・岡島 寛,松永信智,
     電気通信大学・澤田賢治

 近年,飛行機などのビークルやマニピュレータのテレオペレーション,遠隔手術などへの期待から,ネットワークを介した制御系の解析や設計に関する多くの研究が行われている.このとき,通信容量の制約を考えた上でのフィードフォワード型の伝送は重要であり,その制約を満たし,かつ効果的な信号の量子化手法として動的量子化器が知られている.動的量子化器はフィルタ部と量子化部をもち,量子化誤差の情報をフィルタにフィードバックする構造を有している.従来,フィルタ部の設計に関しては多くの研究がなされており,その有効性が示されている.その一方,通信容量制約を満足するためには量子化部での量子化幅の設定が重要であるが,その設定手法は考えられていなかった.
 そこで本研究では,動的量子化器における状態の可到達集合に着目することで,LMI最適化の枠組みで通信制約を満たしつつ小さな量子化幅を設定する手法を提案する.また,LMI問題を解くことにより得た最適値は,フィルタ部から量子化器出力への影響を評価した量となっており,フィルタ部の優劣を評価するために有効な評価指標となる.本論文の結果から,通信制約を有する問題においては,フィルタ部および量子化部の双方を考慮した設計が重要であることが結論付けられる.


■ 大域最適化における量子トンネル・パラメータ

広島国際大学・伊丹哲郎

 粒子は局所最小点から量子トンネル効果によって脱出する確率を有するが,この効果は量子アニーリングにより非線形関数の大域最適化のために利用されている.量子力学的な粒子の運動エネルギーの大きさを制御するために,本論文で「量子トンネル・パラメータ」QTを導入するが,これは粒子の質量mに対する,量子的なエネルギーの最低値を決める定数(プランク定数相当)の2乗の比である.最小点x0のまわりで,非線形関数V(x)が調和振動子あるいは井戸型の形であると仮定することにより,運動エネルギーKをQTの解析関数として表現する.この解析式により,粒子座標の量子力学的期待値がQT無限大で大域最適点x0を近似することが明確になる.単一の固有関数では表現できないような最低固有値が縮退に近い系でも,これを解析式で表現することにより同様の結果,QT無限大での粒子座標期待値の最小点への収束を確認できる.従来の量子アニーリングと同様に量子トンネル現象をランダムウォーク量子モンテカルロ法で表現することにより,QT無限大での粒子座標期待値の最小点への収束,という結果が同様に得られる.


■ ダイナミクス整形によるロバスト打撃動作

防衛大学校・八島真人,山脇 輔

 本論文では,アームの冗長性を利用して系のダイナミクスを適切に変えて,アームが未知外乱に対して低感度となるような軌道計画法を提案し,フィードバック補償を行うことなくロバストな打撃動作ができることを実験によって示す.まず,未知外乱によってアーム手先位置誤差が発生しやすい方向は,系の出力可制御性行列の最大特異値に対応する特異ベクトル方向にあることを示す.この特性は系のダイナミクスに依存することに着目し,アームの冗長性を利用してロバストな運動を実現するようにアーム姿勢を適切に変えて系のダイナミクスを変えるという「ダイナミクス整形」の概念を示す.ダイナミクス整形の概念を適用して,ロボットアームによって静止対象物を目標方向にロバストに打撃するための軌道計画法を示す.提案手法は3つのフェーズからなり,それぞれゴルフスイングにおけるアドレス,テイクバック,ダウンスイングに対応させることができる.3自由度アームを用いた実験によって,オープンループ制御系だけで,外乱が入力されても手先位置をノミナルの打撃手先経路の近傍に留め,対象物をロバストに打撃できることを示し,提案手法の有用性を明らかにする.



[ショート・ペーパー]

■ 入力アフィンな多項式システムの大域的可観測性

大阪大学・河野 佑,大塚敏之

 非線形システムの可観測性を可識別性を用いて評価しようとすると,無限本の条件式の確認が必要となる可能性があり,この性質を確認することは困難である.そこで,本稿では,入力アフィンな多項式システムの大域的可観測性を,有限本の条件式の確認で評価できることを示す.また,同様の方法で,一般的な離散時間多項式システムの大域的可観測性を評価できることを示す.


 
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