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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.47 No.1(2011年1月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

特集 次世代イノベーションのためのシステム・インテグレーション
[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

顔面熱画像を用いた長時間運転時におけるドライバーのストレス評価

青山学院大学・浅野裕俊青山学院大学、武藤拓路、井出英人

 交通安全白書によると脇見運転や安全不確認などの安全運転義務違反による不注意型の事故は全体の5割以上を占めている.
これらが起きる原因の一つとして,長時間運転による運転者の精神的・身体的な負担が考えられる.
 運転者の認知・判断・操作の繰り返しによって引き起こされるストレスは疲労感や注意力の低下につながる可能性があることから
運転時おけるドライバーの生理心理状態を評価することは事故防止等の観点から重要な課題となっている.
先行研究ではストレスに伴う自律神経系作用により顔面皮膚温度は有意に変動することがわかっている.
 そこで本研究では長時間運転時におけるドライバーの顔面皮膚温変動に基づくストレスの定量的評価技術の開発を目的として,
ドライバーのストレスを生理心理評価した.
これまで長時間運転時におけるストレスを顔面皮膚温度変動から定量評価を試みた例はほとんどみられない.
 ストレスの定量的評価技術を確立することにより,低拘束かつ無侵襲な状態で警告を促し事故を未然に防ぐ新しいシステムを実現することができる.
実験の結果,顔面皮膚温度変動によって長時間運転時におけるドライバーのストレスを評価できる可能性を示すことができた.


■ 腰軌道の運動学的分析に基づく片麻痺歩行評価システム

東京工業大学・西 辰徳,
 日産厚生会玉川病院・和田 義明,
 東京工業大学・三宅 美博

 リハビリ医療の現場では,効果的な歩行リハビリを実施するために,障害者の歩行状態を簡単に計測できかつ定量的な評価が行えるシステムが求められている.我々の研究グループでは,腰部に取り付けた3軸加速度センサーから得られる情報を用いて,歩行中の腰部の動き(腰軌道)を算出する技術を開発し,簡便かつ被計測者への負荷が小さい歩行計測手法を提案した.本研究では本計測手法を片麻痺歩行に適用し, 障害を定量的に評価する手法の提案とその妥当性,有効性について検証することを目的とした.具体的には片麻痺歩行の運動学的特異性と腰軌道の幾何学的特異性との関連から5つの特徴量を定義し,その評価指標としての妥当性を運動麻痺
の評価指標であるBrunnstrom Stage(BS)との関係性から検討した.また,5つの特徴量を用いて構築したBS分類システムの分類精度という観点からも特徴量の妥当性,有効性を検討した.その結果,本計測手法および評価手法が歩行障害の定量的評価に有効であることが示唆された.


■ 4点測光式スポット位置検出装置

岡山大学・永井伊作,渡辺桂吾

 レーザスポットの2次元位置が計測できる装置にはロボットの誘導制御,デジタル射撃の標的,レーザ光軸の調整手段などさまざまな用途がある.このようなスポットの位置検出に使われるセンサとしては,PSD,CCD,光センサアレイ,4分割フォトダイオード等がある.これら従来センサでは,受光面積,精度,速度,入射角特性,製造コスト,背景光に対する安定性といった諸特性のうち一部のみ優れていたとしてもその他の特性で劣っている傾向がある.これらの諸特性を広く兼ね備える位置検出センサがあれば,ロボットの誘導制御,建物・橋梁などの長距離間の変位測定等で新たな応用が期待できる.本論文では4つの光センサを用いた新たな光位置検出装置を提案し,計測原理,装置の構造,計測実験について述べる.本装置の特徴は,受光部の簡単な構造,簡単な回路構成,50×50mm2というPSDより広い検出面積,400Hzというカメラより高速な計測周波数,85°という光センサアレイ方式よりも広い入射角特性,非分割型の座標出力,強い背景光に対する安定性である.使用条件をさまざまに変化させて行った実験の結果,計測精度は2mm以下であり,本装置を移動ロボットの誘導に利用することは十分可能であるという結論が得られた.


■ ルシフェラーゼによる生物発光を検出可能な高感度バイオフォトセンサの開発

広島大学・亀田成司,森山祐介,野田健一,岩田 穆

 ルシフェリン−ルシフェラーゼ生物発光反応は微生物検出や衛生検査などの化学分析に広く利用されている.この生物発光反応の発光量は非常に微弱であるので,発光検出には光電子増倍管を内蔵したルミノメータや冷却CCDを搭載した光学顕微鏡などが使用されている.しかし,サイズや消費電力の観点から,近年注目されているLab-on-Chipなどの超小型分析システムには適していない.そこで本研究では,ルシフェラーゼの微弱な生物発光を低消費電力かつ高精度に検出可能なバイオ用途向けの高感度CMOSバイオフォトセンサの開発を行った.CMOS集積回路上にセンサを集積することで超小型分析システムへ適用できる.使用したプロセスは0.18μm CMOS Image Sensor(CIS)プロセスである.APSの長時間露光,PDの面積拡大,各種ノイズ除去方法などの対策を施すことにより,開発したセンサが0.00001lμx程度の微弱発光を検出できることを生物発光実験で確認した.また,回路動作の低速化,処理回路の単純化などの工夫により32μW/chipの低消費電力化を達成した.そして,現在検討しているELISA(酵素免疫測定)法による細菌検出に十分応用可能な検出性能をもつことを確認した.


■ 細胞の個性に適応するオートフォーカス顕微鏡

東北大学・小原 健,
国立精神・神経医療研究センター・五十嵐 康伸,東北大学・橋本 浩一

 運動する細胞を継続的に観察するための,オートフォーカス顕微鏡を開発した.オートフォーカスの手法として,高速なDFDi法を用いた.しかしDFDi法は実験環境の変化に弱いという問題がある.そこでオートフォーカスを行う直前に,汎用性と精度の高さを併せ持つラプラシアン法を用いて,DFDi法を補正した.これによって両者の長所を併せ持つオートフォーカスが可能となった.開発したオートフォーカス顕微鏡を用い,自由に運動するゾウリムシを観察した.ゾウリムシは移動速度が速いために,通常ではすぐに視野の外へ移動し,フォーカスも悪くなってしまう. しかし開発した顕微鏡を用いることで,ゾウリムシを視野の中に留め,フォーカスの良い状態で継続観察することが出来た.観察時間は約45秒,オートフォーカスの誤差は主に5μm程度であった.


[ショート・ペーパー]

■ マイクロカンチレバー型触覚センサアレイによる把持状態の識別手法

ATR・水戸 和,大阪大学・美馬達也,
ATR・山添大丈,吉田俊介,多田昌裕,
大阪大学・寒川雅之,金島 岳,奥山雅則,ATR・野間春生

 本研究では,われわれの開発した超小型MEMS触覚センサアレイをロボットハンドに装着し,これに機械学習アルゴリズムと組み合わせることによって,従来の触覚センサでは困難であった事前の情報付与なしに,すべりを含む把持状態の自動認識を実現した.従来,ロボットの把持動作において,触覚センサから安定した把持やすべりといった状態を直接検出することは,大変困難な課題であると認識されている.たとえば,把持状態のひとつであるすべり状態は,ハンドと対象の接触面をミクロに見ると,接触面において部分的なはがれといった変化が起こっていることが知られている.
 われわれはMEMS技術により作製した複数のマイクロカンチレバー構造をエラストマ内に封入し,エラストマ表面にかかる力をマイクロカンチレバーの変形として検知可能な触覚センサアレイを開発した.この触覚センサアレイをロボットハンドに装着し,ロボットハンドで対象物体を把持して滑り落とすまでの状況を想定して,この一連の物体把持動作における対象物体の接触面の変化を本センサによって直接計測した.得られたデータに対して機械学習による識別手法を用いることにより,把持物体と指先の摩擦係数などの予備知識なしに,この把持状態を識別することを試みた.


[論文]

■ ある種の混合定数系の有限次元モデル規範形適応H∞制御

統計数理研究所・宮里義彦

 集中定数系に対する適応制御はこれまでに多くの研究成果が得られている.一方で,適応制御を様々な分布定数系に拡張する試みも,いくつかの研究結果が得られているが,特に有限次元制御器や有限次元近似モデルを用いた際のスピルオーバーの問題(無限次元モードの影響)について,十分な議論が行われてきたとは言い難い.これに対して本稿では,双曲型分布定数系として表される弾性部と集中定数系として表されるモーター駆動部から成る混合定数系に対して,有限次元補償器でモデル規範形制御系を構成する手法を述べる.提案する制御機構は,制御対象の有限次元部分モデルに対応する通常型の有限次元補償器と,有限次元モデルに含まれない無限次元モード(スピルオーバー)の影響を抑制するフィードバック項から構成される.後者の項は,無限次元モードの影響を外乱と見なした仮想的なH∞制御問題の解として導出され,スピルオーバーによる不安定要因の安定化と,外乱抑制作用による制御誤差の低減化を行う.実現された制御系においては,このスピルオーバー項と一般化出力(制御誤差と安定化信号から構成される)の間のL2ゲインが設計変数で陽に規定され,この設計変数の適切な選択により,スピルオーバー存在時でも制御誤差の影響を任意に小さくすることができる.混合定数系の制御問題の例として,アーム部の振動抑制制御とモータ駆動部の回転角追従制御として定式化される弾性アームの制御を考え,振動抑制と回転追従に関連する2種類の信号を合わせた一種の拡張誤差を導入して信号間の重みを適切に設定することで,2つの制御目的が良好に達成されることを,数値実験の結果より確認した.


■ ゆらぎを用いた内視鏡自動位置決めシステムの開発−非モデルベースの内視鏡自動位置決めアルゴリズム−

大阪大学・山田泰生,西川敦,戸田伸吾,
大研医器株式会社・小林武治,数原幸平,市原貴晴,倉下直人,
大阪大学・関本貢嗣,三吉範克,瀧口修司,土岐祐一郎,
森正樹,宮崎文夫

 一般的な内視鏡手術では術者は手術器具を操作し,カメラ助手は内視鏡を操作する.医師不足の観点から,術者単独での内視鏡手術への要求がある.この要求を実現するために,術中,カメラ助手の代わりに内視鏡を操作する内視鏡自動位置決めシステムの研究が国内外で盛んに行われている.内視鏡自動位置決めシステムの多くがカメラ助手の内視鏡操作をモデル化しようとするアプローチを取っている.しかし,カメラ助手に匹敵するようなパフォーマンスを有するシステムは未だ存在しない.その最大の要因はカメラ助手のモデル化を正確に行うことができないことに起因する.
 本研究では生物の環境適応能を参考にした非モデルベースの内視鏡自動位置決めアルゴリズムを提案し,内視鏡自動位置決めシステムに実装した.我々は構築した内視鏡自動位置決めシステムを用いて,豚の肝臓を用いたin-vitro実験を医師の協力のもと行い,システムの評価を行った.また,術者の手技を比較することで提案した手法の有用性を検証できた.


■ 結合入出力法と確率実現を用いた閉ループ同定の解析

京都大学・田中 秀幸,ブラザー工業株式会社・大村宗右

 本論文では,有限個のデータから推定されたスペクトル密度関数および結合入出力に基づく閉ループ同定について考察する.
 スペクトル密度関数は確率部分空間同定法で推定できることが知られているが,正実性のために有限区間上の確率実現がしばしば用いられている.
 本論文では有限区間上の確率実現がどのように閉ループ同定に用いられるかを示し,有限区間による誤差がどのように0に収束するかを示す.


■ 線形時不変システムに対する時変フィードバックによる非指数関数オーダーの安定化

大阪大学・井上 正樹,和田 光代,池田 雅夫

 本論文では,線形時不変システムを対象として,線形時変コントローラによる非指数関数オーダーの安定化を考える.
 このために,振舞いが非指数関数的上界のもとで減衰するようすを適切に表現できる新しい安定性の概念を提案する.そして,その概念のもとで振舞いを解析する.まず,線形時変システムの振舞いが指定した非指数関数より速く減衰するための条件を,Liapunov 微分方程式の形で導出する.そして,状態フィードバックコントローラと出力フィードバックコントローラを考え,それぞれについて安定化可能条件と閉ループ系の非指数関数的振舞いを実現するためのコントローラ設計法を導出する.提案する条件は Riccati 微分方程式の形で与える.一般に時変の係数行列を持つ微分方程式は解析的には解けないが,コンピュータを用いて数値計算で解くことができる.そして,コンピュータを用いることで,時変コントローラを実現して実システムに実装することも可能である.最後に,提案する設計法の使い方について例示し,数値例によりその有効性を示す.



[ショート・ペーパー]

海馬CA1 ニューロンネットワークでの確率共振現象による閾値以上の入力信号の情報伝送の改善

早稲田大学・川口 港,関東学院大学・簑 弘幸,早稲田大学・百瀬 桂子,
Case Western Reserve University・Dominique M. Durand

 確率共振(SR: Stochastic Resonance)は、非線形系に入力される閾値未満の信号が適切な強度の雑音の印加によって検出される現象である。近年、閾値以上の入力信号によるSR(SSR: Suprathreshold SR)が抽象的な物理学的モデルで観測されると報告されているが、中枢神経系でのSSRの振る舞いは未だ明らかにされていない。そこで本研究では、複数の海馬CA1ニューロンモデルにおいてSSRが情報伝送を改善するか否かを計算機シミュレーションによって検証することを目的とする。計算機シミュレーションでは、閾値以上の信号と背景雑音が各ニューロンの樹状突起に印加され、各ニューロンの細胞体における活動電位の発火時刻が記録された。集合活動電位の発火時刻列から推定された相互情報量は、特異的雑音強度で最大となることが観測され、中枢神経系のモデルにおいてもSSRが生ずるとの結論に至った。本研究が海馬での記憶の形成機構の理解への一助となることが期待される。


 
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