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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.48 No.4(2012年4月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 有限次元コントローラを用いた不安定な混合定数系の安定化

神戸大学・佐野 英樹

 本論文では, 1次元移流拡散プロセスと不安定な ODE プラントがカスケード接続された混合定数系の, 有限次元コントローラによる安定化問題を考察している. Krstic(2009年)や Tang ら(2011年)は1次元拡散プロセスと不安定な ODE プラントからなる混合定数系に対し, バックステッピング法を用いて静的/動的な安定化コントローラを導出している. しかしながら, それらは有限次元コントローラではない. 本論文では,
拡散プロセスの部分に移流の影響を考慮した混合定数系を制御対象として, 有限次元コントローラを用いた安定化という問題設定にしている.
 本論文では, 1次元移流拡散プロセスの部分の定式化には先の結果(Sano, 2011年)を用い, 出力作用素が $A^{\gamma}$に従属する非有界性をもつ発展方程式として表している. 特に, カスケード接続する際のフィルタに剰余モードフィルタ(RMF)を用いたとき, ODE プラントが可制御かつ可観測であれば, システム全体の有限次元モデルが可制御かつ可観測になることを示している. この事実が, 従来の RMF の手法を用いた有限次元安定化コントローラの構成を可能にしている. このように, 二箇所に RMF を使っている点が本論文の特徴になっている.


■ 板形状変化予測に基づくクーラントを用いた冷間圧延機の形状制御

住友軽金属工業・堂前行宏,岡村義英

 冷間圧延機における板の形状制御は,品質や生産性向上のために重要な技術のひとつである.形状不良は最悪の場合,板破断を引き起こすことになり,生産性を著しく阻害する.そのため,これまでに種々の形状制御が開発されてきた.形状を制御する主なアクチュエータとしては,ロールベンダー等のメカニカルなものと,クーラントと呼ばれる冷却油によるロールの熱膨張を調節するものに大別される.板幅中央部でのひずみや板端部でのひずみ等は,主に高応答性を有するメカニカルなアクチュエータで制御される.一方,クーラントによる制御ではメカニカルなアクチュエータに比べて応答性は劣るものの,各ゾーンに対応した局部的な形状制御が可能である.冷間圧延における形状の高精度化のためには,クーラント制御性能をより高めていくことが重要である.
 本論文では,板形状変化モデルに基づく新たなクーラント制御手法について述べる.提案する手法では,クーラントによる形状変化を予測し,目標形状からの偏差が最も小さくなるようにクーラントの吐出状態を設定して制御を行う.実機適用の結果,一般的手法に比べて大幅な改善が見られ,開発した手法の有効性が確認された.


■ 次元圧縮機能を有するリカレント確率ニューラルネットの提案と時系列脳波パターン識別への応用

大阪大学・島 圭介,広島大学・高田 大輔,
熊本高等専門学校・卜 楠,広島大学・辻 敏夫

 本論文では,次元圧縮機能を有するリカレント型ニューラルネットを提案するとともに,そのニューラルネットを用いて運動イメージに伴って発生する脳波パターンの識別を試みる.一般に筋電位や脳波などの生体信号の識別には,任意の非線形写像を学習的に獲得できるリカレント型確率ニューラルネット(Reccurent probabilistic neural network: RPNN)が有効とされる.しかしながら,高次元の入力ベクトルに対しては学習が難しく,識別精度が低下するという問題が残されている.この問題に対し,提案するニューラルネットは線形判別分析に基づく次元圧縮機能をネットワーク構造に導入し,隠れマルコフモデルと混合正規分布モデルに基づいて時系列信号を精度よく識別可能である.実験では,提案ネットワークに空間ラプラシアンフィルタとウェーブレットパケット展開を組み合わせ,4名の健常な被験者の脳波から運動イメージを識別した.その結果,84.6±5.9 [%]の平均識別率でリアルタイムに識別可能なことを確認し,提案法の有効性を示した.


■ 遷移沸騰領域における冷却制御のモデリングと安定性解析

住友金属工業・中川繁政,奈良先端科学技術大学院大学・平田健太郎,杉本謙二

 近年,地球温暖化対策としてCO2削減が大きな問題となっており,自動車用素材である薄鋼板についても,自動車軽量化の観点から,高強度で加工性の良い高張力鋼板のニーズが増えてきている.一般に熱延高張力鋼板の製造では,仕上圧延後の冷却に際し,目標巻取温度が比較的低温(550℃以下)に設定されることが多いが,この温度領域は遷移沸騰領域と呼ばれ,水冷熱伝達率変化が大きく変化し、その結果、巻取温度制御精度が悪化することが従来より問題とされてきた.しかしながら,線形現象ではないため,これまでは現象の定性的な理解にとどまっており,そのモデル化や安定性解析等の定量的な検討は行われてこなかった.
 そこで,本論文では,冷却工程のプロセスゲインが鋼板温度に依存するという前提のもとで,冷却制御の非線形状態空間モデルを導き,遷移沸騰領域における冷却制御の安定性解析を行ない,遷移沸騰領域でのパラメータ変化と安定化限界ゲインの関係について述べる.


■ 速度型PID制御則を用いた多入力系の極零点配置に関する一考察

大同大学・不破勝彦,豊田工業大学・成清辰生,
名古屋工業大学・大羽達志

 PID制御は,プロセス制御の分野ではその利用が9割以上を占める制御技術である.その背景には,過去,現在,未来の状況を見据えた制御を容易に実現できることが挙げられる.しかしながら,基本的には3つの自由パラメータしか存在しないため,どのような制御問題に適用できるか否かは不明である.たとえばシステムの極および零点配置は,線形時不変系の振舞いを記述する制御問題であり,この問題を考察することは理論的見地ばかりでなく産業応用上においても重要である.本稿では,多入力系に対して,希望の極および零点を配置するような速度型PID制御器の設計法を考察する.基本的なアイデアは,入力の一部を零点配置に,残りの入力を極配置に適用する状態フィードバックゲイン行列を求め,それが反映されるようなPIDゲイン行列を設計することである.本稿の特徴は,PIDゲイン行列の存在性を保証するた
めの条件を,制御対象の相対次数と関係づけて明らかにしていることと,零点配置後のシステムが可制御になるための条件を制御対象のパラメータ行列や配置すべき零点と関係づけて明らかにしていることである.


■ マルチエージェントシステムによる逃避ターゲットの包囲と誘導

京都大学・桜間 一徳,電気通信大学・宮崎 裕史,中野 和司,細川 嵩

 本論文では,マルチエージェントシステムを用いて,ある戦略をもって逃避するエージェントを包囲し,
さらに目標点に誘導する問題を取り扱う.まず,包囲・誘導が成功するための十分条件を導出する.この結果によって,包囲・誘導のための条件が包囲のみを考えた条件よりも厳しいことを示す.導出された包囲・誘導条件はエージェントのコントローラゲインによって記述されており,コントローラを設計する際に用いることができる.次に,パラメータの選定次第ではターゲットは目標点から誤差を持つことがあるため,この誘導誤差の評価を行う.最後に,解析結果の妥当性をシミュレーションと実験によって確認する.


■ ロボットハンド指先に付与したネット状近接覚センサ情報に基づく把持姿勢の決定

電気通信大学・鈴木健治,鈴木陽介,長谷川浩章,明 愛国,
東京大学・石川正俊,電気通信大学・下条 誠

 従来研究における視・触覚センサベーストによる未知物体の把持動作に着目すると,対象物とロボットハンドが近接する非接触相と接触相の境界面においてオクルージョンや影といった影響を免れず,センサ情報が欠落するという問題が生じる.そのため,リーチング時の累積的誤差,視覚センサを用いて対象物に対してアプローチを行う際に,オクルージョンによる推定誤差が起因して姿勢誤差が生じた場合に把持失敗の原因となっていた.そこで本論文では,センサ面から数10mm間の近接領域においてリアルタイムで距離・位置を検出可能な「ネット状近接覚センサ」をロボットハンド指先指腹部に付与して近接領域における情報欠落を防ぎ,近接覚センサ出力に基づいた単純なフィードバック制御により対象物表面―指先面間に生じた姿勢誤差を修正することで確実な把持達成に寄与するプリシェイピング動作を実現した.


■ 環状遺伝子制御ネットワークの周期振動特性解析

東京大学,日本学術振興会特別研究員・堀 豊,東京大学・原 辰次

 本稿では,環状フィードバック構造を持つ遺伝子制御ネットワークにおけるタンパク質濃度の周期振動特性を考える.まず,多変数Harmonic balance法を用いて,振動の周波数,位相,振幅を近似的に求める方法を定式化する.その後,遺伝子発現特有のダイナミクスとネットワークの環状構造を用いることで,振動特性を反応パラメタに関して解析的に導出する.さらに,導出された解析解から,振動特性を特徴づける本質的なパラメタを明らかにし,パラメタと振動特性の定性的関係を理論解析的立場から考察する.
最後に,数値例を通して,本稿で示した解析法の有効性と生物学的考察を確認する.


 
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