SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会誌・論文誌・出版物
    産業論文抄録 第3巻
 第1号 [論  文]
■Application of Virtual Simulation Environment to Fluid Catalytic Cracking Unit Control
     横河電機・高津春雄,テクノシステム九州・野崎貴之,岡田賢司

 石油・化学などの素材装置産業では,環境,安全性,省資源など多面的な課題に直面しており,プラント運転システムの導入に当たっても上記課題に対する有効性の事前検討が不可欠である.本論文では,これらの諸問題の対応策の一例として,プロセス運転やプロセス制御システム設計時に仮想シミュレーション環境を用いることの有効性を報告する.有効性を確認するために,厳密モデルに基づくダイナミックシミュレータと多変数モデル予測制御をFCC(流動接触分解装置)に適用した.第1章では,市場の背景について説明する.第2章では,ダイナミックシミュレータに対する機能要求について,第3章では多変数予測制御の機能要求について述べる.第4章では,対象プロセスであるFCCについてその概要を説明し,適用した多変数モデル予測制御の設計について述べる.第5章では,制御されたFCCプロセスの挙動を検証して,制御装置とダイナミックシミュレータの妥当性を評価している.妥当性の評価の一例として,ナフサ最大の運転モードとLCOライトサイクルオイル最大の運転モード切替時の挙動特性を取り上げ,その挙動をシミュレータとコントローラの両面から解析し,妥当性の検証を行った.(2004年3月公開)

第2号 [論  文]
■QPHPセンサを用いた多重傾斜成層砂中の流体速度ベクトルと熱物性の同時計測−農地土壌・都市地盤中における汚染物質の移動制御・モニタリングをめざして−
     岩手大・遠藤 明,原 道宏

 農業生産活動において,化学肥料や農薬使用による土壌と地下水の汚染が世界中で深刻な問題になっている.本研究は,キャピラリーバリアによる深部土壌の環境保全をめざして,汚染流出水の挙動をQPHP法により把握し,土層内の物質移動モニタリングシステムを構築することを将来的な目標として行った.本研究は,QPHP法を用いて多重傾斜成層砂の水分移動制御効果を確認することを目的に,@)QPHPセンサを用い多重傾斜成層砂における非定常流の間隙流速ベクトルと当該砂の熱物性を同時計測し,A)多重傾斜成層砂における水移動の特徴とQPHP法を用いて計測した間隙流速ベクトルおよび熱物性の特徴を比較し,当該土層における流れの形態や,土層内部において生じている水流と土壌水分の挙動を評価すること,およびB)非定常状態の流れにおけるQPHP計測の実用可能性の検討を行った.そして,非定常状態における当該土層において,集積型選択流およびフィンガー流の流れの形態や流向をQPHP法により検出することができたことから,将来,本計測方法が地盤環境モニタリング技術として応用されることが期待される.(2004年3月公開)

第3号 [論  文]
■MEMS型ファブリ・ペローフィルタを用いたCO2/H2Oガスセンサ
     横河電機・原 仁,鈴木健太郎,岸 直輝,野呂 誠,渡辺哲也,岩岡秀人

 本論文は,参照波長,水蒸気吸収波長,二酸化炭素吸収波長の3波長を静電駆動で選択できるMEMS型ファブリ・ペローフィルタを組み込んだ1光路3波長NDIRガスセンサについて評価結果を報告する.MEMS型ファブリ・ペローフィルタの構造設計と光学設計の手法を確立し,3層構造とアニールによる可動鏡膜応力が制御できること,可動鏡と固定鏡の間に電圧を印加した静電駆動で分光透過特性が可変できること,最大変位となるCO2測定時ギャップがPull-inギャップマージンを有することを実証した.このMEMS型ファブリ・ペローフィルタを組み込んだCO2 / H2Oガスセンサの基本動作を確認し,ガス濃度分解能(標準偏差相当)は,2000ppmのCO2ガスに対して約13ppm, 22.5g/m3のH2Oガスに対して約0.35g/m3であり,提案した1光路3波長NDIRガスセンサの動作が実証できた.これにより, 居住空間の測定対象である二酸化炭素濃度が数10ppm, 相対湿度が数%RHで検出できるNDIR方式の低価格センサの実現に向けた指針が得られた.(2004年6月公開)

第4号 [論  文]
■サーモパイル式MEMSフローセンサの特性とそれを用いた流量計の開発
     矢崎総業・小田清志,岡本康広,山浦路明

 温度センサとしてサーモパイルを用いたMEMSフローセンサを開発した.温度センサにサーモパイルを用いていることでさまざまな特徴をもつ.まず,温度センサで自己発熱せず,それによる計測誤差が発生しない.また,ほぼ一直線上にサーモパイルの温接点を並べられ,温度の広がりがなく温度計測が可能である.そのほかに,ヒータのすぐ近くにサーモパイルの温接点を並べたことで速い応答性を実現できた.これらの特長を生かし,瞬時流量計を開発した.
 一方,サーモパイルをもう1対配置したことにより,規格化出力を実現し,定電圧回路などの単純なヒータ駆動回路で高精度なフローメータを実現した.追加したサーモパイルはヒータに対して流れと垂直な方向に配置され,ヒータからの温度の広がりをモニターする.このフローメータは天然ガスなどの混合ガスでの質量流量計として有用である.ガス組成が多少変化しても質量流量計として計測できることが確認された.(2004年6月公開)

第5号 [論  文]
■超小形・高速応答の流量センサの開発
     CKD・伊藤彰浩

 従来,マウンター,ボンダーに代表される,電子部品の実装工程において,部品の真空吸着搬送時の吸着確認には,圧力センサが用いられている.しかし近年,携帯電話・ノートパソコン等の普及によって,電子部品の小型化が進み,吸着ノズル径も小さくなり,吸引時にノズルを通して流入してくる流量が微量になるため,圧力センサを用いた吸着確認では,吸着時と非吸着(吸引)時の圧力差がわずかで誤検知してしまう問題点があった.この問題点を解決するためには,流量センサを用いた吸着確認が最適である.流量は,吸着ノズル径と真空圧力により決まるため,吸引時にノズルを通して流入してくる流量が微量になった場合でも,ノズル径に合った流量レンジの流量センサを用いれば,確実に吸着確認ができる.しかし,吸着確認に流量センサを用いる場合,以下の事項が求められている.
 @装置のタクトタイムを上げるため,高速応答であること.
 A吸着ノズル付近の可動部に設置するため,超小形・軽量であること.
 B各ノズル径に対応した流量レンジであること.
 このような要求に対応するため,MEMS技術を用いたセンサチップと新提案の流路構造を組み合わせた,超小形で高速応答の流量センサを開発した.(2004年6月公開)

第6号 [開発・技術ノート]
■ダイナミクスモデルを考慮に入れたコンテナクレーンの高精度位置姿勢制御に関する研究
   宇部高専・山根健治,三菱重工業・河野 進,山口大・田中正吾

 大型コンテナの荷役に利用されるコンテナクレーンの自動運転を念頭に,コンテナ進行方向の振れのみでなく,トロリ移動に伴うコンテナのねじれについても効果的に抑制する計測制御システムを提案した.すなわち,コンテナおよびスプレッダのダイナミクスを考慮した単一剛体振子としてのモデル化を行い,状態フィードバック制御のための観測系として,トロリーと2つのシーブに搭載した3つのロータリーエンコーダ,およびトロリーに搭載した1つのタコジェネレータに加えて,コンテナ保持部であるスプレッダの両端に設置した2つの加速度センサを利用する計測制御システムに対してシミュレーションによる検討を行った.なお,制御用アクチュエータはトロリおよび2つのシーブを駆動する計3つのモータとした.その結果,トロリー移動に伴うコンテナ進行方向の振れと同時に,ねじれ方向の振れも高速・高精度に計測し,これら6つのセンサのセンサ情報およびこれに基づく最適制御により,トロリー停止と同時にコンテナを静止させるコンテナ姿勢自動計測制御システムの有効性を示した.(2004年6月公開)

第7号 [論  文]
■電子式バルブポジショナに搭載する空気圧式調節弁のヒステリシス補償機能
     早稲田大・涌井徹也,橋詰 匠,横河電機・西島剛志

 プロセス制御の操作部である調節弁が大きなヒステリシスをもつ場合,より高度な調節弁の制御を行うために開発された電子式ポジショナを使用しても,各構成要素が有する非線形性の相互干渉により制御挙動に不具合を生じることが少なくない.これまでに,位置制御調節計の積分器入力信号にギャップを設けて微小偏差を許容し,その上でダイヤフラム室内圧力の制御ループを付与したカスケード制御を導入することで,制御性能が著しく向上するが,ステム位置の目標値変化幅が小さい場合には,依然として調節弁のヒステリシスの影響が現れ,長い無駄時間を生じることを確認している.また,実流状態下では,調節弁が受ける流体反力がステムの駆動力に対して無視できない場合(たとえば,大口径弁の使用や高差圧ラインへの適用)には,ヒステリシス特性が無負荷状態下(流体を流さない場合)とは大きく異なり,制御挙動に影響を及ぼすことにも留意すべきである.以上をふまえて本論文では,ステム位置の目標値変化に対して,水流状態下での調節弁のヒステリシス特性の影響を十分に低減し,ステムが速やかに動き出すように,ダイヤフラム室内圧力をフィードフォワード操作するヒステリシス補償機能を提案し,実験調査を通じてその有効性を明らかにしている.(2004年7月公開)

第8号 [論  文]
■熱式MEMSフローセンサの開発
    オムロン・野添悟史,藤原敏光,栗林秀成,上田直亜,谷口 勤

 近年,環境保全や省エネが取りざたされる中,燃料電池などの新エネルギー機器や燃焼装置など各種気体を使用する機器において,その効率化のため気体の流量を計測制御するニーズがある.このような機器では,気体の流入源としてダイアフラム方式のポンプを使用することも多く,この場合の流れは,ダイアラムの動きに応じて流量が周期的に変化する脈流となることが知られている.従来からあるフローセンサでは,このような脈流では測定値が安定せず,正確な流量測定ができないといった問題があった.われわれはこれらの問題解決に応えるべく,MEMS技術から製造される小型の熱式半導体チップセンサを応用したフローセンサについて,60Hzのダイアフラム方式のポンプ脈流を導入した場合と定常流を導入した場合のセンサの出力特性を比較し,センサ内流路に設けたオリフィスの与える脈流による出力変動の影響の低減効果を定量化した.オリフィスがない場合では,脈流と定常流では大きく異なる出力特性を示すのに対して,オリフィスをセンサ流路の下流部に設けることで脈流と定常流での出力特性差がなくなることが示された.また,この現象はオリフィスの径に応じており,オリフィスの穴径が小さいほど効果が大きい傾向にあることがわかった.(2005年1月公開)

第9号 [論  文]
■後流差圧検出ピトー管流量計の実用化
     東工大・温井一光,川嶋健嗣,香川利春,工学院大・小宮勤一

 空気,天然ガス等の各種流体の流量測定には,さまざまな流量測定原理を用いた流量計を実用化し,産業界の化学プラント,ビル,半導体製造設備等で広く使用している.しかし,圧縮性流体の流量は安定した定常状態よりも,非定常状態の脈動やミスト,ダストの混合状態の場合などにおいて正確に測定する流量計が必要である.また,最近の流量計は装置の小型化により,高速応答,測定範囲の拡大等が要求されている.
 本研究では,後流差圧検出ピトー管とマイクロ微差圧センサーを組み合せた後流差圧検出式ピトー管流量計を提案した.流量計の特徴はピトー管の後流差圧検出孔を後流に配置しているため,流体中のダスト,ミスト等により差圧検出孔を閉塞し難い構造になり,安定した測定ができる.また,測定範囲はReynolds数で層流から乱流まで連続して測定することが可能になり,20:1以上に拡大できた.非定常状態の流量特性は.研究室で所有している等温化圧力容器を使用した非定常流量発生器により,周波数追従特性0〜10Hz,測定ライン圧力大気圧〜0.3MPa(G)の範囲における非定常特性について測定を行った.実用化に向けて製作した同一形状の流量計5台について流量―差圧特性と器差を調べたので,それらの結果を報告する.(2005年1月公開)

第10号 [論  文]
■旋回クレーンの起伏・旋回・巻上げ同時動作による直線搬送方式での荷物の最短時間制御
     豊橋科技大・沈 N,寺嶋一彦,矢野賢一,神鋼電気・鈴木健介

 旋回クレーンは荷役機械として工場,建設現場,港湾などで広く用いられている.荷物の残留振動を制御しながら,速く安全に荷物を搬送することが望まれる.最短時間制御はこのような条件を満たす効率的な方法の1つである.
 本論文では直線搬送方式による最短時間制御の方法を提案し,直線搬送方式モデル(STT)に基づいて改良STTモデルを導出した.最短時間制御の解法としては,DFP,クリッピング法,二分法等の組合せにより合理的に解くアルゴリズムを構築した.実験結果によって,本提案手法の妥当性を実証した.また,本提案手法の制御効果はPreshaping法の簡便な制御方法に比べ,ロープ長が長くなるほど,搬送時間の短縮化の効果が顕著になり,残留振動を制御できる効率的搬送であることを実証した.(2005年1月公開)

第11号 [論  文]
■セルGA法と2-opt法を適用した大規模実時間配送計画システムの開発
     日立エンジニアリング・井上春樹,岩手県立大・佐々木 淳,米田多江,船生 豊

 ロジスティクス分野では,配送業務の効率向上によるコスト低減,サービス向上,環境対策など多くの課題を抱えている.これらを改善する有効な施策として,短時間で実用的な要求を満足する解を生成する配送計画システムの実現が社会的ニーズの水準で期待されるようになってきた.
 配送計画問題は多目的,多制約の難解な組合せ最適化問題のひとつである.従来,解法としてシミュレーテッドアニーリング法と遺伝的アルゴリズム法が多く用いられてきた.しかし,配送先数が500を越えるような大規模問題に対してこれらの従来手法を適用した場合,立案に大きな時間を要し,現実的希求水準を満足できないという問題が生じてきている.
 本研究では,これを達成するため,セルGA法と,その個体再生成処理に2-opt法を適用し,クラスタ並列コンピュータ上で動作する配送計画システムを開発した.平均200台の車両,875配送先の複数の実データによる実証試験の結果,短時間で高精度な配送計画を自動立案可能なこと,および高いコスト削減効果が得られることを確認した.
 本システムはすでにわが国と韓国の100以上のユーザの物流現場で日々活用され,高い効果をあげている.今後は,一層幅広い分野および地域での活用を図ってゆく.(2005年1月公開)
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