SICE 社団法人 計測自動制御学会
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 会誌・論文誌・出版物
    産業論文抄録 第6巻
 第1号 [論  文]
■ NN併用型2自由度MRACSに基づく超音波モータの位置制御
 秋田大学・長縄明大,ロジックデザイン・藤枝昌史,山口大学・田中幹也
 宇部工業高等専門学校・岡 正人, 山口大学・若佐裕治

 超音波モータ(USM)は,動作原理が摩擦駆動であり,その入出力特性は本質的に非線形性を有する上,摩擦熱による温度上昇や負荷の変化により回転速度特性が大きく変動する.このため,固定ゲインを用いたPID制御では,高精度な位置決め性能を実現するのが困難である.そこで,本論文では,2自由度制御系に基づくモデル規範型適応制御系(MRACS)の設計法について検討を行い,その有効性をUSMの位置制御により検証する.本論文の2自由度制御系は,条件付きフィードバック構造と呼ばれる制御系を基礎とし,フィードフォワードコントローラにより望ましい目標値応答特性を実現し,フィードバックコントローラによりモデル化誤差や外乱の影響を抑制する.フィードバックコントローラは,ニューラルネットワーク(NN)によりゲイン調整されるPIDコントローラとし,NNのオンライン学習により,USMの非線形性や特性変動の影響を抑制する.本手法の特徴は,コントローラの役割分担を明確にした制御系の構成であり,従来にない新しい構成のMRACSであること,USMの特性変動や負荷に対しても良好な目標値応答特性が得られることである.(2007年3月公開)

第2号 [論  文]
■ AEと油分析による歯車減速機設備診断法および潤滑油改良による歯車減速機設備運転周期延長法
 昭和エンジニアリング・里永憲昭,日良輔,山路信之
 三重大学・陳山 鵬

 本論文では,回転機械設備の異常を早期発見し,潤滑油管理などの適切な措置を取ることにより生産スケジュールに合った保全活動を行うために,重要な回転機械設備である遊星歯車式減速機の診断・保全管理を実例として,異常の早期検知が可能なAE法と油分析法を併用することによる異常検出と簡易・精密診断法を提案した.また,設備管理の中で重要な潤滑油管理法として潤滑被膜生成添加剤の使用による回転機械設備の運転周期延長法を検討・提案した.(2007年3月公開)

第4号 [論  文]
■ 蛍光ダイナミクス情報を利用したフローサイトメトリーによるFRET検出
     三井造船・中田成幸,林 弘能,星島一輝,土井恭二,木村憲明

 生体内で起こっているさまざまな生理機能は,細胞内のタンパク質や低分子化合物が互いに結合・解離することにより成り立っており,疾病発症と深く関わるシグナル伝達を調査するため,これらタンパク質の分子間相互作用研究が重要となってきている.近年,生細胞中でタンパク質の分子間相互作用を検出する技術として,蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer: FRET)現象を利用した手法が適用されてきているが、これらの研究は,顕微鏡イメージングをおもな手段として実施されており,1日に観察できる細胞の数は限られること,定量的な評価が困難であることなどから,研究効率を上げていくために新しいFRET検出の手法が望まれている.本論文では,生細胞中でのFRETを高速かつ確実,定量的に検出することを目標に,細胞を高速に流しながら1細胞ごとの蛍光強度を計測すると同時にその蛍光寿命情報を検出できる新しいフローサイトメータを提案し,実際の細胞内FRETの検出を行った結果について述べる.まずFRETの蛍光ダイナミクスのモデル化により蛍光寿命計測が蛍光色素の標識量やpH変化の影響を受けにくいFRET効率の計測法であることを示し,試作したフローサイトメータの蛍光寿命計測精度について実験的な検討を行った.その後,実際の細胞についてFRET計測試験を行い,その有効性を示し,薬理候補化合物のスクリーニングなど,基礎医学や創薬の研究開発の効率向上に寄与できる可能性を示した.(2007年4月公開)

第5号 [論  文]
■ システム提案書記載のキーワードを用いた小規模事務処理システム開発工数見積りの一手法
   島根大学/ギャラクシーエクスプレス・高橋正和,筑波大学・斎藤達也,徳島大学・福江義則,
   筑波大学・津田和彦

 小規模事務処理システム(SOIS)の開発においては,システム提案書の作成段階において開発工数の見積りが実施される.しかし,その見積りには大きな誤差が含まれるのが実情である.このような状況のなかで,本論文では,システム提案書に記述された情報をもとに,SOISの開発工数を正しく見積る手法を提案する.この手法を提案するにあたり,既存のSOIS開発事例について,システム提案書と開発工数実績の関係を分析した.その結果,(a) システム提案書に特定のキーワードが記述されている場合,SOISは特定の入力データと出力データを有する,(b) 入力データの個数と出力データの個数の積は開発工数と比例関係にある,という関係を導くことができた.これらの関係を用いて,システム提案書の作成段階で,SOISの開発工数を適切に見積る手法を提案した.提案手法の概要はつぎの通りである.(1) システム提案書から入出力データに関係のあるキーワードを抽出する.(2) キーワードに対応するSOISの入力データと出力データを列挙する.(3) 入力データの個数と出力データの個数の積を計算する.(4) この積と開発工数の実績との間の回帰分析を行い,回帰式を導出する.(5) 導出された回帰式を用いて,SOISの開発工数を見積る.提案手法をいくつかの開発に適用した結果,開発工数を誤差10 [%] 以内で見積ることが確認できた.(2007年4月公開)

第7号 [論  文]
■ 空気圧浮上ガントリーの加速度補償を用いた精密速度制御
     東レエンジニアリング・苅北一朗,
     立命館大学・前田浩一,北野岳志,徳平裕介

 近年大型化する液晶パネルのガラス用の塗布装置の空気圧浮上ガントリータイプの精密テーブルにおいて,入力外乱を早期に抑えて速度変動を小さくするために加速度補償制御を行った.加速度補償制御は従来からある技術であるが,加速度推定ノイズが大きいために加速度補償ゲインを高くすることができず,その効果を確認できずにいた.本研究は高分解能のリニアスケールを用い,2段の一次フィルタを用いてノイズ除去を行うことによりゲインを高くとることができ,左右脚独立制御においても加速度補償制御を用いることにより,速度変動率と左右脚の変動幅を要求されている仕様より小さくすることができた.加速度補償はP補償,PI補償の2種類が試され,左右脚の変動幅のいずれにおいても,KvとKpを一定の場合でも,また,パラメータの最適調整を行った場合でも加速度補償の効果があることが判明した.さらに,突発的入力外乱を与えてそれに対する速度応答を確認したが,加速度補償がない場合に比して加速度補償の効果が確認された.(2007年6月公開)

第8号 [論  文]
■ 画像情報に基づくホバークラフト型全方向移動体のロバスト位置姿勢制御
     大阪大学・木山 健,三菱重工業・塩田真吾,早稲田大学・渡辺 亮

 本論文では,各種機器,物資を搬送するためのホバークラフト型全方向移動体を提案し,その実現のための基礎として自作した2次元平面模型の基礎的な運動を実現する画像座標およびロバスト制御に基づく制御系設計方法を提案する.
 まず,ホバークラフト模型の制御系設計における課題を,閉ループ系のロバスト安定性,長いサンプリング時間,ローゲインの出力フィードバック制御,重心の変化およびカメラ画像の揺れに整理する.つぎに,これらの課題を解決するために,画像座標に基づくロバスト固有値制約制御系設計を導入し,その基礎となる解析条件を線形行列不等式(LMI)条件として,この解析条件に基づく出力フィードバック制御系設計条件をrank条件付きLMI条件として導出する.そして,この設計条件を用いて,固有値の存在範囲を適切に原点付近へ制約したコントローラの設計を行い課題に対処する.最後に,シミュレーションおよび実験によりその有効性を実証する.なお,これまでに調整されたPIDコントローラによる位置姿勢制御と比較し,提案方法は位置偏差を低減でき有効である知見を示す.(2007年6月公開)

第9号 [論  文]
■ Development of High Speed Oblique X-ray CT System for Printed Circuit Board
Nagoya Electric Works・Atsushi TERAMOTO, Takayuki MURAKOSHI,,
Nagoya Univ.・Masatoshi TSUZAKA, Gifu Univ.・Hiroshi FUJITA

 BGA,CSPに代表される高密度LSIパッケージが電子機器に広く用いられている.これらのパッケージは電気的接続にはんだバンプを使用しており,それらはパッケージ裏面に配置されているため,外部から観察することができない.X線透視ははんだバンプの検査手法として,現在多くの電子部品実装工程にて用いられているが,X線の透過方向に情報が積算されるため正確なはんだ形状を得ることが難しい.傾斜型CTは,はんだバンプを非破壊で検査する手法として有効である.しかし,従来の傾斜型CTシステムは検査速度や機構的な制約から実装ラインでの全数検査に導入することは困難であった.本論文では,高速にはんだの3次元形状を得る,新しい傾斜型CTシステムを提案する.本システムは,回転移動するフラットパネルと広照射角を有する開放型X線発生器によりサンプルの投影データを収集し,3次元フィルタ補正逆投影法にて3次元画像を得る.
 本撮像系に適した再構成演算ユニットを開発し,リアルタイムで3次元画像を得ることができた.検証では,BGA実装基板や熱衝撃を与えたサンプルなどを用いて評価を行い,実装基板の非破壊検査を行う上で有効な情報が得られていることを確認した.(2007年6月公開)

第10号 [論  文]
■ Development and Assessment of GPS Precise Point Positioning Software for Land Vehicular Navigation
      National Defence Academy・Masatoshi HONDA,Masaaki MURATA and Yukio MIZUKURA

 近年,2波受信機による単独絶対測位によって,相対測位(DGPS)と同程度の高精度測位を行える精密1点測位(PPP)が注目されている.PPPの技術的基盤は,放送暦に代わり,国際GNSSサービス(IGS)から提供されるGPS衛星の精密暦(および精密時計誤差)の使用にある.本研究では,とくに地上走行する移動体の測位・航法への利用を目的として,まず基本的なPPPソフトウェアを設計開発した.ついで2波受信機を車両に搭載したGPS受信実験を静止および移動するアンテナについて実施し,GPS観測データを収集した.さらにそれらのデータを用いた事後評価解析によって,開発したソフトウェアの測位性能を実証した.本研究によってPPPフィルターの設計基盤が確立されたと考える.おもな結果は以下のようである.(1)水平面内精度として,静的アンテナについて3〜4cm (RMS),動的アンテナについて20〜40cm (RMS),高度方向の精度として,静的アンテナについて6〜8cm (RMS),動的アンテナについて30〜90cm (RMS) を達成していることを確認した.これらの精度レベルは,観測データの連続性,すなわちサイクルスリップの発生頻度に大きく依存する.(2)PPPでは対流圏遅延量の適切なモデル化と一部パラメータの同時推定が不可欠である.また精密な測位結果はフィルター(EKFを使用)の収束後,すなわち定常状態に達してから得られる.しかしながら,PPPフィルターの収束は一般にかなり遅く,数10分から数時間を要するので,収束性の高速化が今後の課題になる.(2007年7月公開)

第11号 [論  文]
■ Effects of Passenger's Arrival Distribution to Double-deck Elevator Group Supervisory Control Systems Using Genetic Network Programming
Waseda Univ.・Lu YU, Jin ZHOU,Shingo MABU, Kotaro HIRASAWA, Jinglu HU,
Fujitec Co. Ltd.・Sandor MARKON

 本論文では,ダブルデッキエレベータ群管理システムの乗客到着分布が乗客の待ち時間,長待ち時間,エレベータ運行時間に及ぼす影響を検討している.
 エレベータ群管理の基本アルゴリズムは,最近研究された進化論的計算手法のひとつである遺伝的ネットワークプログラミング(Genetic Network Programming,GNP)を使用している.GNPは有向グラフを遺伝子とするアルゴリズムで,ノード遷移の記憶,ノードの重複活用,コンパクトな構成,ブローティングの排除などの特徴を有している.今回適用したGNPは通常のGNPとはことなり,エレベータ情報判定部,エレベータ候補選定部,エレベータ候補判定部,呼び割り当て部の4個のサブGNPから構成され,個々のサブGNPで機能局在型の処理を実行している.
 乗客の到着分布に関しては,アーラン分布を基本とし,集団到着を実現するために2項分布を利用している.
 エレベータシミュレータと上記GNPによる群管理制御装置により,乗客到着分布が群管理に及ぼす影響を検討した結果,集団分布・指数分布に近いほど,乗客の待ち時間などエレベータ指標は悪化することを定量的に明らかにした.(2007年7月公開)

第12号 [開発・技術ノート]
■ 産業論文のこれまで5年間の成果と査読管理システムの仕組み
     岩村忠昭

 SICE産業論文委員会は2002年にスタートした.現在では採録論文数が60となり,SICEにおけるその存在意義が確立してきている.委員会の最大の使命は論文の採択において実産業界への貢献を最優先とすることであり,委員会の特徴は「IT化」された査読管理システムを導入していることである.本報告では委員会の活動および査読管理システムについて説明し評価する.(2007年7月公開)

第13号 [論  文]
■ 水ラインでのディジタル式差圧伝送器による導圧管の詰まり検出
     早稲田大学・栄野隼一,大阪府立大学・涌井徹也,早稲田大学・橋詰 匠,
     横河電機(株)・宮地宣夫,黒森健一,結城義敬

 オリフィス式流量計は,プロセスオートメーションの分野で広く使用されており,その使用中の不具合の多くは導圧管の詰まりである.現在は定期点検により対処しているが,時間やコストがかかるだけでなく突発的な詰まりには対応ができないため,オンラインでの詰まり検出が求められている.そこで,差圧だけでなく,オリフィス上流側と下流側の圧力も同時に計測できる差圧伝送器を使用し,水ラインでの実験に基づいて導圧管の詰まりを検出する手法を考案した.
 はじめに詰まりが差圧計測に与える影響を定量的に評価し,詰まりを検出すべき弁開度を設定した.つぎに詰まりの進行とともに圧力信号に含まれる揺動成分(以後,圧力揺動)が変化するが,圧力揺動は運転動作点(流量・ライン圧力)変更の影響を受けるため,運転動作点を変更すると詰まりの検出ができないことが明らかとなった.そこで,運転動作点の変更による3つの圧力揺動(差圧,オリフィス上流側圧力,オリフィス下流側圧力,の揺動)の増減傾向が一致していることに着目し,それら圧力揺動の比を評価した.そして,この評価値を用いることで,運転動作点変更の影響を受けない定量的な詰まりの評価が可能となり,検出目標までに導圧管の詰まりを検出できることを明らかにした.(2007年7月公開)

第14号 [論  文]
■ Address-block Extraction Method by Multiple Hypotheses Approach for Mail Sorting Machine
Hitachi, Ltd.・Tatsuhiro KAGEHIRO, Masashi KOGA, iroshi SAKO and Hiromichi FUJISAWA

 郵便物の配送業務において,郵便物の自動区分は必須となっており,郵便区分機の一機能である宛名自動読み取りは,業務の高効率化を図るために重要な機能となっている.本論文では,宛名読み取り機能向けに開発した宛名記載領域抽出手法について述べる.本手法は,複数の宛名記載領域候補を生成し,それぞれの候補に対し宛名らしさをBayesルールによって評価することを特徴としている.また,候補の評価尺度となる確信度は,宛名記載書式の仮説を立てて独立に算出されるため,個々の書式に対し最適な評価が可能になった.確信度算出のための尤度比分布の作成は,学習データを用いて半自動で可能となり,試行錯誤的なパラメータ調整が不要となった.本手法を用いて,宛名記載領域の抽出精度を評価したところ,上位5位の累積抽出精度は,活字サンプルの場合94%,手書きの場合89%となり,活字の横置き横書きのサンプルでは,第1位候補の正解率は16pt向上し,手書きの縦置き縦書きのサンプルでは11pt向上した.また,本手法を適用した宛先読取精度は,印刷記載の場合,アクセプト率84.5%,手書き記載の場合67.5%となった.(2007年9月公開)

第15号 [論  文]
■ おむつ廃棄物処理システムのモデリングおよび制御応用
    早稲田大学・葉 怡君,小川雅俊,大貝晴俊,北九州市立大学・森田 洋,(株)電通社・野村美樹

 産業廃棄物の増加に伴って,環境汚染が産業における深刻な問題になっている.そのため,様々な環境対策が検討されている.本論文では,使用済紙おむつの廃棄物処理プロセスを対象とし,微生物による新たな分解処理手法を用いた廃棄物処理システムを提案した.さらに,紙おむつ分解実験の結果から得られた微生物の増殖特性に基づいた,装置内温度による微生物数の増減への影響を表現できる紙おむつ廃棄物処理プロセスモデルを構築し,紙おむつが短時間で分解されるように,微生物増殖の最適温度条件を考慮した上で,プロセスに影響を与える熱量を選択制御で決定する制御系を設計した.このように,微生物の増殖特性に基づいて温度制御を行うことにより,紙おむつ処理能力の効率化を実現した.
(2007年11月公開)

第17号 [論  文]
■ グリッドコンピューティングによる加熱炉の温度計算
     法政大学・坂本憲昭,小沢和浩,TNC Systems・新村隆英
 
連続式加熱炉におけるモデル計算は,繰り返し計算が多くCPUの負担が非常に大きい.この計算を規定時間内に終了させ,また,毎日の連続操業に耐えうるため,予備機を含めた専用の高速な計算機が要求される.
 一方,低コストで計算高速化を実現する手法として,汎用パソコンによるグリッドコンピューティング環境がある.本稿では実際にグリッドで加熱炉のモデル計算を行い,計算時間の短縮化の効果とコスト削減の意味を示す.
 計算時間については,実験例では70%減の短縮となった.コストについては,汎用のWindowsパソコンであればよいので,導入時のコストダウンを抑えることができる.最近ではハード・ソフトともに同一品(または同等品),同一プログラム開発環境を確保するのが困難になっているが,本グリッドならばその時代に入手できるパソコンであればよいので,保守および運用コスト削減に寄与できると考える.
(2008年1月公開)
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