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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.37 No.10 (2001年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 光源の振動を利用する小型距離センサ

科技団・王 欣雨,オリンパス・劉  忻東京農工大・篠田裕之

 本論文は,生体の粘膜表面などに適用可能な新しい原理の小型の距離センサを提案し,その有効性を立証したものである.

 マイクロカテーテルを用いた無侵襲外科手術は現代の注目技術の1つであるが,それに搭載して組織までの距離を計測する適当な小型センサが存在せず,手術をより難しいものにしている.また計算機の新しいインタフェースとして,あるいは言語学習補助や発声学研究のために舌の位置を計測することの重要性が指摘されており,ここでも歯のすきまのようなわずかな間隙から対象物までの距離を測定可能なセンサが求められている.これらに共通しているのは,センサのサイズが2,3mm程度以内と小型であり,水気を帯びた粘膜のように散乱性と鏡面性を併せもち反射率が未知である自由曲表面までの距離を計測しなければならない点である.また特に手術への応用を考えた場合,1mm以下の精度は必要ないものの,センサの汚れなどに対して計測値が左右されない頑強さと安定性が要求される.非接触の距離計測法としては,これまでに非常に多くの手法が提案され,利用されているが,単純にそれらを流用してここで要求されるセンサを実現するのは困難であった.そこで本研究では新しい距離センシングの手法を提案した.

 ここでは微小な抗原と光検出子を1つずつ搭載したセンサヘッドを前後方向に振動させ,対象面で反射して検出子に到達する光の強度と,振動によるその強度変動振幅の比から対象表面までの距離を推定する.対象表面の反射特性が空間的に一様とみなせれば,最初に設定したすべての要件が原理上満たされる.すなわち対象面の傾き,反射特性の違いは測定値に影響を与えない.さらに単一の受光素子で観測された光強度の平均値と振動分の比が距離推定値となることからセンサ自身の汚れや受光感度のばらつきも測定に影響を与えない.またセンサの構造は非常にシンプルである.この振動式距離センサの基本原理を検証し,センサを試作して対象面の性状,傾斜や表面色などの影響や誤差の評価を行った.反射率の分析がある条件を満たしながら変化する特殊な対象表面以外は,その色,反射特性,傾きなどによらず測定誤差は±1mm程度であった.


■ 組合せはかりにおける供給量制御規範とその適用効果

姫路工大・亀岡紘一,中谷 誠

 組合せはかりは,複数のはかりで構成され,それぞれのはかりによる測定値の組合せの中から合格組合せ質量を決定し,それ相当の品物を組合せるために用いられる.本研究は,組合せ質量そのものに着目した制御規範とそれを実現するハードウェア構成を有する組合せはかりを対象として,計算機シミュレーションを行い,その制御規範が組合せ合格質量の精度向上に著しい効果があることを示している.また,計量ホッパにあらかじめ供給しておくべき量について考察し,その値の決定法も示している.さらに,被計量物が計量ホッパ内に長時間残留する問題の改善に関しても,組合せ過程の「連」を調べることにより,上記制御規範が非常に有効であることを明らかにしている.


■ 光透過度に基づく食品生地内混入異物の検出法

新潟大・神田和也,亀田製菓・伊藤和雄新潟大・岡田徳次

 本論文は,包装食品の品質に関し光学的な判別システムを提案する.未加工の食品素材は,穀物である.一般に,この素材は,粉にされ,焼かれ,味付けされ,そして,透明なプラスチックフィルムで包装される.そのとき,食品は,異物の検査に加えて,数が確かかどうか,欠けることなく満足な食品として適切かどうかが検査される.われわれの検査方法は,食物素材では光が反射し,拡散し,そして,そのとき,厚さに依って弱まるという光学的特徴を利用する.2本のコンベアのつなぎ部に位置する円筒内にフォトダイオードを置く.もちろん,円筒は,連続的な食品生地の流れを保つように形作られている.重畳する食品生地の枚数と充足度を評価するため,それぞれいくつかの閾値とのべ面積を定義する.また,面積を見積もるための定式化は,信号処理によって導き出される.判別を説明するため,自動化検査システムは,機械系と光学系の部品が一緒に組み合わされ作られている.実験結果は,高い判別率で,実時間内で動作することを示している.


■ 透過光量を利用する包装食品良否判定システム

新潟大・神田和也,岡田徳次,アデマック・伊藤和雄

 さまざまな種類の工程を経る間に練粉食物素材中に予期せず混入する遮光性異物の検出方法について述べる.一般に,きわだった特徴のないプラスチック,ビニール,種子,木片のような非金属の検出は困難である.色,誘電率,反射要素の情報は,素材との違いを特徴づけるのにふさわしいかもしれない.しかし,理想的な検出として,これらの混入物のいかなる属性にも影響されない適切な情報を用いることが薦められる.そこで,混入物は,金属でなくても光を散乱し,影をつくる傾向をもつことに着目し,光透過度の利用を検討した.素材周端でなく異物のある箇所で,混入物の影が明確になるようにするため,60[deg]の交角をもつ乳白色フードを設計し,物体を照明する.これを介して透過光はフォトダイオードによって収集され,論理処理のためにディジタル化される.本稿は,これらの信号処理法を提案し,また,実験によって検出方法の正当性を示す.


■ 非線形特異摂動システムに対する動的な合成制御則

名大・穂高一条,鈴木正之

 本論文では,プラントとコントローラとして,一般的な非線形時不変特異摂動システムを考え,これらによる漸近安定化問題を考える.筆者らは以前の研究で,線形の特異摂動システムを対象とした場合,フィードバックシステムを作る操作とサブシステムを作る操作が順序交換可能であることを示し,この事実が安定化問題を非常に簡潔に解く手がかりを与えることを明らかにした.そこで本論文では,この順序交換可能性を非線形の場合に拡張し,動的な出力フィードバックによる安定化コントローラを導く.そこでは安定化が可能であるための主要な条件が,それぞれのサブシステムを制約条件つきのコントローラで安定化できることであることがわかる.さらにプラントの状態変数が部分的にフィードバック可能である場合には,退化システムの安定化問題を解き,その後境界層システムの安定化問題を解くことで,もとの特異摂動システムを安定化するコントローラが得られる.その際,コントローラは各サブシステムを安定化するコントローラを合成して作られる(合成制御則).この設計手順と合成制御則は,従来知られていた全状態フィードバックによる安定化の手順と合成制御則の動的なコントローラの場合への一般化であることが明らかとなる.


■ ディスクリプタシステムに対する非標準H∞制御問題

名大・宮崎 孝,細江繁幸

 本研究では,一般化制御対象がディスクリプタシステムで表現された場合の非標準H∞制御問題を考える.標準問題と異なり制御対象が無限遠点に零点をもつことを許し,ディスクリプタシステムを用いることでプロパーでない制御対象もあつかえる.従来法では解が得られない問題へ対応するため,内部安定性の定義において閉ループ系の要素が,すべてプロパーであることを求めない問題を扱う.

 プロパーでない有理関数のJ-スペクトル分解によりH∞制御器を求める.このJ-スペクトル分解は,2個の一般化リカッチ方程式の解により求まり,H∞制御問題の可解条件もこの一般化リカッチ方程式の可解性で表現される.また,この一般化リカッチ方程式は,一般化固有値問題を解くことにより解が得られる.

 安定性の定義から得られた制御器はプロパーと限らない.プロパーな制御器の存在条件について考察する.


■ 複数のオブザーバによる状態方程式のパラメータ推定

阪府大・村松鋭一,阪大・池田雅夫

 線形時不変状態方程式の係数行列における未知パラメータを推定する方法を提案する.係数行列の一部の要素に未知パラメータが存在する状態方程式が得られているとし,その状態空間を固定したまま未知パラメータのみを推定することを考える.未知パラメータとの総和が1になるような補助パラメータと,未知パラメータの数+1個のオブザーバを導入し,各オブザーバゲインをある条件を満たすように定めたとき,各オブザーバによる出力推定値の適当な線形結合が,対象プラントの出力値に漸近することを示す.この適当な線形結合とは,推定すべき未知パラメータと補助パラメータを重みとしたものである.この性質を用いて未知パラメータの推定法を与える.


■ マルチモデルシステムのための準最適制御

広島市立大・向谷博明

 本論文では,マルチモデルシステムに対する準最適制御問題を研究する.まず,従来の結果と比較して,広いクラスのマルチモデルシステムに対するリカッチ方程式の解の構造を明らかにする.つぎに,従来の設計方法である2時間分割法と異なるリカッチ方程式の近似解に基づく手法によって,準最適制御則を構築する.したがって,境界層システムの状態行列の非特異性を要求しない.さらに,導出された新たな制御則は,摂動項の値が既知である必要がない.一方,本論文では,マルチモデルシステムに対するリアプノフ方程式を解くための数値計算アルゴリズムを新たに提案する.提案されたアルゴリズムは,再帰的アルゴリズムと異なり,正確に解くことが可能である.さらに,複数の摂動項を扱うことが可能である.


■ Dynamics-Based Adaptive Control for a Master-Slave System in Teleoperation

Toyata Tech. Inst.・N.V.Q. HUNG, T. NARIKIYOand H.D. TUAN

  In this paper, a dynamics-based adaptive control scheme is developed to achieve stability for teleoperation system and its transparency in the sense of motion/force tracking. The proposed scheme does not require either accurate dynamic parameters of manipulators or models of human operator and remote environment. Adaptive controllers are bilaterally designed for both master and slave sites to guarantee the stability of whole system and performance of motion tracking. Especially, the concept of a virtual master manipulator is introduced to obtain the convergence to zero of force tracking error. The validity of the proposed control scheme and its advantages of control performances over conventional impedance matching control are confirmed by numerical simulations and experiments.


■ 長波帯RFIDによる簡便な視覚障害者向け保護誘導標識の実現性の評価

湘南工科大・保坂良資

 公共空間で視覚障害者に対して,保護誘導情報を提供できる新たな標識について提案する.この標識は,長波帯RFIDセンサと同マーカから構成される.RFIDは,一種の超小型ビーコンである.このマーカはバッテリをもたず,センサから受信した信号の電気エネルギにより駆動される.ここで提案する方式では,RFIDマーカは,歩行路端の辺縁部に埋設される.RFIDセンサは,白杖内部に設置される.視覚障害者が,歩行路の端点の辺縁に接近すると,センサとマーカの間で情報通信が実施される.このとき,マーカからセンサへ位置情報が送信されるため,当該視覚障害者は,白杖内のセンサから,それに応じた警告情報を得ることができる.この方式を用いれば,歩行路端で生じる事故から,視覚障害者を保護することができる.


■ モデル規範制御系における外乱除去法の過渡特性とロバスト性

防衛庁・鈴木良昭,防衛大・鈴木 隆,板宮敬悦

 モデル規範形適応制御系において確定外乱を除去するためのコントローラの構成法としては,(1)コントローラそのものを内部モデル原理に基づいて構成する方法(内部モデル法)と,(2)プラント・規範モデル間の出力誤差をフィードバックするための補償要素を内部モデル原理に基づいて構成する方法(フィードバック補償法)の2つがある.これら2つの方法は共に確定外乱の除去という目的は達成しうるものの,外乱除去の過渡特性や非モデル化動特性の存在に対するロバスト性を比較し,その違いについて論じた研究は見当たらない.上の2つの外乱除去法の違いは,コントローラのパラメータが可変である適応制御系を対象にしなくても,パラメータをノミナル値に固定したモデル規範制御系を対象にしても知ることができる.本論文は,モデル規範制御系を対象として,上述の2つの外乱除去法のシステム構成について考察すると共にその過渡特性とロバスト性の相違を論じたもので,フィードバック補償法は,外乱除去の過渡特性は良好であるが,非モデル化動特性の存在に敏感であること,内部モデル法は,制御系の次数を低く構成できるので,フィードバック補償法よりは非モデル化動特性の存在に対してロバストに対処できることを明らかにしている.


■ 手先コンプライアンスを考慮した冗長アームの最適姿勢問題とその区間解析による解法

神戸大・田川聖治,高見弘樹,白木浩一,羽根田博正

 冗長アームの逆運動学は,無数の解が存在する不良設定問題である.一方,余分な自由度を利用して,冗長アームでは作業に適した姿勢を選ぶことができる.本稿では,冗長アームに適切な姿勢を取らせることで,能動的なフィードバック制御系を構築することなく,受動的に手先コンプライアンスの構造を変換することを試みている.まず,手先コンプライアンスの非干渉化を目的とした冗長アームの姿勢の評価指標を提案している.つぎに,その評価指標を目的関数として,冗長アームの逆運動学を,等式制約条件付き非線形最適化問題(最適姿勢問題と呼ぶ)に定式化している.さらに,最適姿勢問題に対して,区間解析に基づく最適化手法を示している.区間解析による最適化手法はある種の分枝限定法であり,得られる解の大域的な最適性と実行可能性が理論的に保証される.最後に,いくつかの冗長アームの最適姿勢を厳密に求めている.これらの計算結果から,冗長アームの姿勢の最適化による手先コンプライアンスの調整は,簡便で汎用的な技法であるが,その有効性には限界もあることがわかる.


■ 液体タンクに起因した衛星ニューテーション運動発散の時定数推定

宇宙研・澤井秀次郎

 宇宙機の打ち上げにおいて,ロケット上段飛翔フェーズではしばしば姿勢のスピン安定化がはかられる.このような場合,なんらかの擾乱が加わると,姿勢はいわゆるニューテーション運動を行うが,このニューテーション運動が発散的に大きくなるとロケット打ち上げの成否に直接影響を及ぼすこともある.ニューテーション運動の主要な発散源のひとつとして,衛星搭載の液体推薬タンク内部の流体運動が知られており,その影響の定量的評価を試みる研究は従来よりいくつかなされている.しかし,それらの結果が十分な一般性を有しているかについては,いまだに議論がある.これは本質的に,この問題が流体の減衰項の正確な推定を要求するためである.そこで本稿では,厳密なニューテーション発散時定数を推定する代わりに,流体の減衰項が最悪の場合の発散時定数を算出することを提案した.現実のニューテーション発散はこの算出された値以下であることが期待できるため,現実の衛星打ち上げ計画では,この値を最悪値として参照することで設計を行うことができる.


■ 待行列理論によるフラクタル信号発生機構のモデリング

インプレックスシステムズ・関本勝也九工大・緒方純俊

 本論文は,マルチタスクオペレーションシステムのジョブ処理能力に注目し,待ち行列理論を拡張する.すなわち,ここでのCPUモデルが前報で示したフラクタル信号よりもより一様なフラクタル性を有すること,ならびにこれらの信号がブラウン信号ではないことを示す.


■ A Genetic Algorithm to Obtain Dead-lock Free Schedules for No-buffer Jobshop Scheduling Problems

Kyoto Inst. of. Tech.・Zhao YONG and Nobuo SANNOMIYA

  A genetic algorithm is proposed to obtain dead-lock free schedules for no-buffer jobshop scheduling problems. As the main contribution of this research, the proposal of a new decoding method ensuring no violation of no-buffer constraints enables genetic algorithms to handle the no-buffer jobshops. Experiment results on some modified benchmark problems show that the proposed algorithm obtains equivalent or buffer schedules than those given by available literature.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会