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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.37 No.12 (2001年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文] [ショート・ペーパー]
■ 複数の入力出データに矛盾しないモデル集合の存在条件

阪大・浅井 徹

 ロバスト制御系を設計するために入出力データからモデル集合を構築する場合,制御対象そのものの不確かさを把握するためには,複数の入出力データを用いることが重要である.しかしながら,複数の入出力データからモデル集合を決定する場合,得られるモデル集合は一般に保守的になりやすい.

 そこで,本論文ではモデル集合族のパラメトリゼーションの自由度と得られるモデル集合の保守性の関係に着目し,パラメトリゼーションに高い自由度をもち,かつ入出力データに矛盾しないモデル集合の存在条件を与えている.モデル集合の存在条件は線形行列不等式(LMI)条件で与えられており,その存在を容易に確認することができる.さらに,そのLMI条件を満足する変数を用いて,与えられたモデル集合族に属し,かつ条件を満足するすべてのモデル集合のパラメトリゼーションも与えている.また,モデル集合の体積を最小化する手法も提案し,数値例によってその有効性を検証している.


■ 非最少位相系に対する繰返し制御器の設計

名工大・加藤久雄,舟橋康行

 繰返し制御系とは,ある与えられた周期で繰り返す任意の目標値信号に対し,被制御量を追従させるサーボ系のことであり,それに関する多くの研究が理論,応用の両面で発表されてきている.連続時間の繰返し制御においては,時間遅れ要素を含んだ内部モデルを系が有するかたちとなるため,たとえプラントが有限次元系であったとしても,制御対象と内部モデルからなる拡大プラントは無限次元系となる.したがって,連続時間繰返し制御系の設計における第一の問題は,そのような無限次元系の安定化となる.

 この問題に対し過去に,ループシフティングによって系を等価変換したうえでスモールゲイン定理を用いることによる安定化などが行われている.

 これに対し著者らは以前に,いわゆる既約分解アプローチを繰返し制御系に対して適用することにより安定化制御器を導出している.けれども,そこではプラントを最小位相系に限定していたので,本論文では対象を非最小位相系にまでひろげた場合の設計法がどのようになるかを示す.


■ 分布的および集中的柔軟性をもつ大規模宇宙構造物のPDSS制御

東工大・飯田幸美,松野文俊

 本論文では,分布定数モデルに基づいた大規模宇宙構造物に対する,単純でロバストな制御系設計について論じる.大規模宇宙構造物は,分割・軽量化された構成要素を大気圏外で組立てることにより構築される.したがって,構成要素に分布的柔軟性が存在し,その結合部には不確実な集中的柔軟性が存在するので,容易に振動が励起される.このような振動を制御によって抑制することを目的とする.宇宙構造物のように,分布的柔軟性をもつシステムは分布定数系として表現され,無限次元システムとなる.また,結合部の柔軟性は予想不可能であるので,制御系は,この不確実性に対してロバストでなければならない.まず,大規模宇宙構造物を,バネ結合したN本の柔軟ビームとしてモデル化し,分布定数モデルを導出する.つぎに,システムのもつ全エネルギーを考慮したリアプノフ関数を構成し,センサー出力の直接フィードバック則(PDSS制御)を導出する.また,変数分離法を用いて最大の不変集合を導出し,不変原理を用いて閉ループ系の漸近安定性を示す.制御器を設計する段階で,有限次元近似モデルを必要としないので,得られた制御器は元の分布定数系の力学的特質を保存しており,実装が容易で物理パラメータの不確実性に対してロバストとなる.最後に,提案した制御則の有効性を実験により検証する.


■ 粒子内蔵型機械拘束要素の開発と身体装着型力覚呈示装置への応用

岡山大・満田 隆,シャープ・久下幸子立命館大・若林将人,川村貞夫

 従来開発されている力覚呈示装置のほとんどは,サーボモータなどで力を作用するアクティブな方式である.アクティブ方式の力覚呈示装置では,システムが暴走したり故障した場合に人間に危害を及ぼす危険性がある.これに対し著者らは,剛性と粘性を真空圧によって可変に制御できる粒子内蔵型機械拘束要素(Particle Mechanical Constraint,以下PMCと略す)と,PMCを用いたパッシブ方式の力覚呈示装置を開発した.PMCは発泡スチロール粒子を内蔵する塩化ビニル製チューブで,収縮,伸長,曲げ,捻りを含む6自由度変形が可能な柔軟機械要素である.内部を真空化することでチューブが圧縮され,粒子が凝集することで要素全体が固形化し全自由度が拘束される.この際,要素全体の剛性と粘性は内部真空圧によって制御できる.PMCは真空圧で駆動するため,破損時の危険性が小さい.また,柔軟かつ軽量であるため対人親和性に優れている.本論文では,PMCの構造と基本特性を示し,身体装着型力覚呈示装置によって仮想粘弾性が呈示できることを実験結果とともに示す.


■ Joint Synthesis of Controller and Fault Detectorand Its Application to Motor Drive Control System

Nagoya Univ.・Hisahide NAKAMURA,Tatsuya SUZUKI, Shigeru OKUMAMie Univ.・Kazuhito YUBAI,Univ. of California・Masayoshi TOMIZUKA

  This paper presents a joint synthesis strategy of a controller and a fault detector, and its application to a motor drive control system. The influence of a fault in power electronic devices is analyzed and simulated. Some experimental results demonstrate the effectiveness of the proposed synthesis method.


■ 確率的2分木の行動選択を用いたActor-Criticアルゴリズム:多数の行動を扱う強化学習

東工大・木村 元,小林重信

 実環境のロボット学習制御において,繊細な制御を行うためには連続で膨大な状態空間の扱いと同時に,多数の行動選択の学習も求められる.しかし多数の行動を扱うためには,状態(=行動)評価関数の表現を工夫するだけでなく,行動選択や探査戦略についても特別の工夫が必要である.一般に知られるε-greedy戦略やボルツマン選択戦略は,行動数が少ない場合は強力である.ところが行動数の増加に比例して学習時間が増加したり,パラメータのスケジューリングを行動数に応じて適切に設定する必要があるという問題がある.これらは,全行動を区別なくフラットに行動選択を行っていることに起因する.実環境における学習問題の多くは行動空間に位相構造が存在するため,物理量的に近接・類似する行動をグループ化することで容易に階層化できる.

 本論文では数十以上の多数の類似した行動を効率よく扱うために階層的行動選択を行う強化学習方式を提案する.提案手法はパラメータ化された確率的政策関数表現として2分木構造を導入し,actor-critic アルゴリズムによって政策パラメータを更新する.実験により,行動空間に位相構造が存在する環境では行動の個数が増加しても提案手法の学習性能が低下しにくいことを示す.


■ An Adaptive Storage Function Method for Rainfall-Runoff Forecasting

Chungbuk N.U.・Sunwook CHOI, Tae Shin CHODongNam Eng.・WoonHae KIM,Chungbuk N.U.・Young Choi KIM

  The storage function method (SFM) has been the main method of rainfall-runoff forecasting used in Korea. However, it has a major drawback in that the SFM' s parameters are difficult to calibrate exactly. They have large degrees of uncertainty and may also be time varying. To cope with these difficulties, we present an adaptive storage function method (ASFM). Under the assumption that a small basin can be modelled by a single watershed and channel pair, a multiple model adaptive estimation (MMAE) for the parameter adaptation is introduced. In ASFM, measurements of outflow level are required every sample time. Applying ASFM to two catchment datasets, namely for the Pyungchang River in 1988 and the Chungju Basin in 1995,we show that the proposed ASFM has better performance than the conventional SFM.


■ Behavior Learning of Autonomaus Robots by Modified Learning Vector Quantization

Kyushu Univ.・Shon Min KYU, Jun-ichi MURATAand Kotaro HIRASAWA

  This paper presents a method for searching for the optimal paths for autonomously moving agents in mazes by modified Learning Vector Quantization (LVQ) in a reinforcement learning framework. LVQ algorithm is faster than Q-learning algorithms because LVQ concentrates on the best behavior in available behaviors while Q-learning algorithms calculate values of all available behaviors and choose the best behavior among them. However, ordinary LVQ sometimes mis-learns in the reinforcement learning environment due to erroneous teacher signals. Here a new LVQ algorithm is proposed to overcome this problem, which finds the optimal path more efficiently.


■ ニューラルネットワークの確率的学習則と自律移動ロボットの行動獲得への適用

立命館大・西川郁子,セイコーエプソン・内田周志

 階層型ニューラルネットワークに対して,教師なしの確率的学習則を提案する.賞罰に相当する評価値に応じて確信度付きの教師信号を設定し,誤差逆伝播法と同様の枠組みにより学習する.学習過程での出力ユニットの確率性は本質的であり,確率性を徐々に抑えて学習を完了する.この枠組みを基盤として,さらに時系列学習を行うために二種の拡張を行った.第1の拡張は,評価値を得た時点で,その時点までの一連の入出力時系列に対して評価を配分する.そのために賞および罰の評価に対応する2つの伝播誤差を減衰付きで時間加算して保持し,評価を得た時点でいずれか一方を採用する.第2の拡張は,学習則は変えず,ニューロンに履歴保持機能をもたせる.これら両手法を,それぞれ時系列学習課題に適用し特性を調べた.まず簡単な課題として,排他的論理和問題などで,確率出力の必要性や,学習能力を調べた.つぎに,自律移動ロボットKheperaのシミュレーションモデルによる,衝突回避および餌獲得行動学習に適用し,有効性を確認した.さらに,学習環境の複雑さを,学習過程でのセンサ入力パターンのエントロピーにより定量化し,未学習環境への汎化能力を比較した.


■ 部分的条件省略ファジィルールを用いた強化学習

京大・山岸栄輝,川上浩司松江高専・堀内 匡,京大・片井 修

 連続値入出力を扱うQ学習の手法として,部分的条件省略ファジィルールを用いた強化学習を提案する.Q学習で使用されるQ-tableを用いる場合に生ずる「連続値を連続値としては扱えない」という問題に対して,すでにファジィ内挿型Q-learningが提案されているが,そこでは,Q関数の連続関数表現がファジィ推論を導入することにより与えられている.この場合,対象問題に対する知識が十分でない場合には,ファジィルールの前件部に対象システムの状態変数のすべてを含める必要が生じ,状態変数の組合せ爆発により学習すべきルール数が膨大となる.この問題に対して,本研究では,前件部に含まれる対象システムの状態変数を部分的に省略することによって,学習すべきパラメータ数を劇的に減少させつつ,省略しないファジィルールの場合と同等の性能により早く到達できる学習法が存在することを示す.


■ A Study on Analysis of Impact Sound Waveform byAnswer-in-Weights Neural Network

Takushoku Univ.・Hajime KANADA, Takehiko OGAWA,Kiyomi MORI and Masaru SAKATA

  We have investigated the method to measure the elastic moduli of composite materials by impact sound. For estimating the degree of fatigue of the materials, it is important to detect long-term components as well as periodic components from the impact sound waveform. In this report, we propose to use answer-in-weights neural networks for measuring the damping ratio of actual sound waveform.


■ A System Identification Method for Linear Regression Models Based on Support Vector Machine

Utsunomiya Univ.・Shuichi ADACHI,Tomonori OGAWA and Ryugo KONNO

  In this paper, a system identification mothod for linear regression models based on support vector machine is proposed. It is shown through a numerical example that the proposed identification method is robust for input-output data with outlier.


■ 様々な性格の自律移動ロボット群に生じる共同作業パターン

名城大・魚住栄治,佐川雄二,杉江 昇

 本論文では,集団における各構成員の性格の違いが協調作業に与える影響について考察する.従来提案されてきたロボットなど協調作業する集団は,まったく同一の行動パターンをもつものから構成される場合と,指導者とそれに従うものというように役割もしくは機能的に異なるものから構成される場合がほとんどであったが,性格の差異はその中間に位置するといえ,機能的には差がないがその程度に差がある場合といえる.人間やチンパンジーのような集団では,性格の異なる個体が相互補完することにより,集団がスムーズに運営されている例を見ることができるが,本研究はそれをロボットの集団に導入しようとするものである.性格には様々なものがあるが,本研究では,タスク指向的に行動するロボットを対象としているので,タスクの遂行に最も影響を与えるものとして積極性を取り上げ,その違いが具体的な作業に与える影響について考察する.物体の搬送をタスクとしてロボットの動作を計算機によりシミュレートした結果,各ロボットの性格の差が大きいほうがタスクの実行効率が高いことを確認することができた.

[開発・技術ノート]


■ 三相誘導電動機の計測用不平衡入力を用いたセンサレス回転速度制御システム試作

筑波大・岡内祥司,青島伸治

 三相誘導電動機に速度計測用として不平衡な入力を加え,それに対する電流の応答をもって回転速度を推定することが可能であることを,先に報告した.本論は,その速度推定値をフィードバック信号に使用して,センサレス速度制御システムが実際に構築できるかを検証したものである.

 システムは安価なマイクロコンピュータ2個と小型三相誘導機を使って作製した.そのシステムの運転状況を定常状態と立ち上がりについて紹介する.これらの結果から本速度推定値が速度フィードバックとして有効に機能していることが認められた.

 また実際に運転することによって確認された電動機駆動用電流の高調波の影響や,システムのパフォーマンス向上に障害となる点についての説明と解決策についても触れる.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会