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 論文集抄録
 

論文集抄録

〈Vol.38 No.12(2002年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

〈特集 計測制御とユニバーサルデザイン〉
[論  文]

[ショート・ペーパー]
[論  文] [ショート・ペーパー] [開発・技術ノート]

〈特集 計測制御とユニバーサルデザイン〉

[論  文]

■ 操作構造に注目した人工物モデルとユニバーサルデザインへの応用

京大・須藤秀紹,川上浩司,片井 修

 操作と物理環境のインタラクションに基づく人工物の表現モデルに「操作者の身体的リソース」という概念を導入することによって,対象となる人工物の操作にどれだけの身体的拘束が必要になるかを定性的に分析する手法を提案した.さらに,このモデルに基づいて人工物の操作をシミュレートするシステムを計算機上に試作し,操作に必要な身体的リソースに関するデータを容易に得ることが可能であることを確認した.試作システムは,操作中に必要な身体的リソースを常にモニタしながら人工物のオペレーションをシミュレートするものであり,たとえば「同時に3つ以上のものを把持しなければならない」といった無理のあるオペレーションを発見することができる.すなわち,ユニバーサルデザインの7原則のうち「少ない労力で効率的に,楽に使えること」という原則を考慮した人工物の設計支援に有効である.さらに,上記表現モデルは,操作環境から受ける物理現象や効果と操作が密接に結び付いて表現されており,ユニバーサルデザインの7原則のうち「間違えても重大な結果にならないこと」という原則を考慮した人工物の設計支援にも有効である.


■ ファジィ理論に基づいたVR援用他者疑似体験によるユニバーサルデザイン支援

三菱重工業・山田昌弘,京大・片井 修, 川上浩司,野津 亮

 本研究は,環境など人工物のユニバーサルデザインを実現する上で必要となる,デザイナー(設計者)による自身と異なる身体的特性の人達の疑似体験を仮想環境技術を用いて実現する方法を提案したものである.体験対象である環境を(仮想的に)変更することにより,身体的特性の違いにより環境知覚判断上生ずるであろう違いをキャンセルする.環境を規定する基本物理量(寸法や重量など)が,個人が環境を定性的ラベル(“大きい”,“小さい”,“重い”,“軽い”など)を用いてカテゴリー判断(“ファジィラベル表現”)する際に,自身の身体的特性値とどのように関連付けられるかについて,ファジィ理論の考え方を導入して明らかにする.このファジィラベル群が元のラベル群にできるだけ近づく(元に戻る)ように環境物理量を変更(仮想環境を修正)し,身体的特性の違いにより生じた環境知覚判断の違いを解消することができる.この方法を一般的に与えるとともに,精神物理学(Psychophysics)や生態心理学(Ecological Psychology)の視点からの仮想環境修正法についても検討する.最後に,VR技術を導入して本手法を実装し,キッチンシステムのデザイン評価に適用してその有効性を明らかにした.


■ 片手で操作できる標準型車いすの設計開発―内部モデル制御と最適制御を併用した走行補助装置の制御―

金沢工大・小林伸明,鈴木亮一,谷 正史 渋谷工業・中 俊英,金沢工大・神戸康有

 脳血管障害や脳外傷などにより,片側の手足の機能を失った片麻痺者を対象とした車いすに,ダブルハンドリム方式やレバー式などの片手駆動式車いすがある.しかし,このようなタイプの車いすは,操作が困難,旋回半径が大きい,駆動力が小さいなどのさまざまな問題点がある.一方,電動車いすを利用することも考えられるがたいへん高価であるとともに,介護の基本に「自立支援」の考え方があり,この意味で電動車いすの使用は必ずしも望ましいとはいえない.
 そこで本研究では,一般に市販されている標準型車いすの性能を損なうことなく容易に取付け可能な走行補助装置を設計し,取付け後も使用者が簡単に操作できるような新しいタイプの「片手で操作できる標準型車いす」を開発した.また,走行補助装置の制御は,内部モデル制御と最適制御を併用した制御系設計法を用いた.この手法により,体重の変化や路面状況の変化などに対しても良好な追従制御を達成できた.
 使用者側から実際に作業療法士,理学療法士の方々に試乗していただいたところ,操作方法,重量,折りたたみ幅についての性能は満足できるとの評価をいただいた.


■ クロール型移動機構を用いた階段昇降可能な電動車椅子の開発

東京工科大・橋野 賢

 筆者が独自に開発したクロール型移動機構を電動車椅子に適用し,電動車椅子のパワー源と動力を利用して階段昇降を可能とする方式を提案し,プロトタイプ機によって実用性を示した.クロール型移動機構は,モータ駆動された円盤上に回転自在なローラを等間隔に設置し,幾何学的に転がるように設計された軌道上を転動し,ローラが受ける反力を移動装置の推進力として利用するものである.ローラが軌道上を転がるため,低騒音,低振動,無潤滑という特長を有している.
 階段昇降を必要とする階段近くであらかじめ保管しておいた減速機を電動車椅子本体にワンタッチで取付け,階段側面に取付けられたガイドに1人の介助者の力を借りて乗り移り,車椅子の動力を利用して昇降するものである.電動車椅子に設置するオプションは全体の重量に比較して軽量なため通常の平地走行には影響しない.階段側面に設置すべきガイドは壁面からわずかな出っ張りしかなく健常者の歩行に影響しない.また,製造および設置コストがエレベータ等に比較してきわめて安価であるため,経済的理由でエレベータ設置が期待できない地方の乗降客の少ない駅に福音をもたらす.また,車椅子のオプションは軽微であるので,個人負担も少なくてすむ.


[ショート・ペーパー]

■ 電子辞典を事例とするユニバーサルデザイン検討

キヤノン・西村博史,杉山美穂

 中高年以上の加齢マーケット拡大に対応したユニバーサルデザインのあり方を探るため,電子辞典を事例に若年から高齢までの各年齢層がどんな商品を求めているのか,要求内容の違い等についての比較検討を行った.
 高齢者への配慮点として,文字やボタンの大きい方が良いと言われているが,実際には商品全体の中での適度な大きさが求められ,必要以上に大きなものやコントラストの高いものが玩具っぽいと嫌われる等,若年中年の考える配慮内容と高齢者自身の希望する配慮点内容にずれが有ることがわかった.
 モニターテストで選択された要求内容は年齢層による差が少なく,高齢者の希望する商品は通常商品に適度な加齢対応の配慮が加えられたユニバーサルデザイン製品であることがわかった.
 また,操作面への配慮だけでなくデザイン面(心理面)への配慮も重要なポイントであることがわかった.


■ 遺伝的アルゴリズムによる脳波識別パターン作成の試み

電通大・堀 滋樹,金森直希,田中一男

 高齢や身体障害者のコミュニケーションシステムとして,生体信号を利用したさまざまな意思伝達システムが提案されている.その中で,究極の生体信号とも言える脳波を利用した意思伝達システムは健常者への応用も考えられ,期待が寄せられている.しかし,脳波の認識にはいまだ多くの問題があり,実用のレベルにあると言えない.本研究では脳波認識の実用化の第一歩として,実時間で処理可能なシンプルな方向認識判別アルゴリズムを開発する.このアルゴリズムでは,頭に取り付けられた13点の電極間の時間信号に対する相関係数行列から脳波識別パターンを作成する.このパターンの作成において,遺伝的アルゴリズムによるパターン集約を行うことで,認識率が向上することを示す.脳波識別は非常に困難であるにもかかわらず,提案したパターン作成法による識別では,未知の脳波データに対して68.2%という高い認識結果を得ることに成功した.


■ ユニバーサルデザイン化されたタッチパネルディスプレイ―視触覚ディスプレイの開発―

神奈川工大・吉留忠史,奥平壮臨, 河原崎徳之,西原主計

 銀行のATMや駅の券売機などタッチパネルシステムの適用された機器が増えている.しかし,これは視覚情報を必要とするため,視覚障害者が利用できない.視覚障害者は触覚によって物を識別するため,機器上のボタンの位置を確認し,押すことができない.それゆえ,パネルに触れたとたん反応するタッチパネルシステムは視覚障害者にとって操作することが困難な機器である.さらにタッチパネルシステムは視覚障害者ばかりでなく健常者にとっても,誤ってパネルに触れてしまったり,ボタンを押した感覚がないため違和感を感じたり,安心感を損なう,といったことが問題となる.
 そこで,タッチパネルシステムの利点と機械式ボタンの利点を組み合わせた新しいタッチパネルシステムを開発する.構造はディスプレイを格子状に分割し,そのすべての要素が独立に上下動する.ボタンとして表現される部分が突出することで機械式のボタンとなる.それを軽く押すと音声による案内が聞け,さらに強く押すとボタンが下がる.これによって,健常者ばかりでなく視覚障害者にも利用できるタッチパネルシステムが実現できる.われわれはこのシステムを視触覚ディスプレイと呼んでいる.本論文ではこの視触覚ディスプレイの試作機について紹介する.



[論  文]

■ ETS -Z自動ランデブ・レーダの軌道上性能評価

NASDA・河野 功,杢野正明,姉川 弘, 若林靖史,鈴木 孝,卯尾匡史, 檜原弘樹,森村忠昭,功刀 信

 1998年8月,宇宙開発事業団(NASDA)は,技術試験衛星Z型(ETS -Z)により,世界初の静的3次元レーザ・レーダであるランデブ・レーダ(RVR)を使用した自動ランデブ飛行に成功した.RVRはCCDを使用することにより,動的なスキャンを行わずにターゲット宇宙機の方向(Az/El角)を計測する静的な3次元レーザ・レーダである.ランデブ用のレーザ・レーダはスペースシャトル用としても研究開発が行われているが,レーザ・レーダを制御系に組み込み宇宙機の自動ランデブを行ったのは,ETS -Zが世界で初めてである.この成功により,GPS相対航法とレーザ・レーダの組み合わせで遠距離からの自動ランデブが可能であることを示すとともに,レーザ・レーダが数100m以近のランデブ航法手段としてきわめて有効であることを実証できた.
 本論文では,ETS -ZのRVD実験システムにおけるRVRの位置づけとRVRの設計について示す.ETS -ZのRVD実験は1998年から1999年にかけて3回実施され,RVRは数100m以近の最終接近フェーズの主航法センサとして正常に動作した.RVRの軌道上性能の評価は,画像センサである近傍センサ(PXS)やGPS相対航法との比較等により行った.RVRの計測性能は,近距離域では数cm,数100mの距離域で数10cmと評価された.本論文では,RVRの軌道上性能評価結果を示す.


■ 心音センサを用いた歩行時の心拍無拘束無侵襲計測

山口大・土本健太郎,山口産技センター・松本佳昭 山口大・田中正吾

 近年,個人の健康に対する関心が増加するに伴い,日常生活における健康状態を長期にわたってモニタリングするための無拘束な簡易手法の開発が望まれている.この観点から,就寝時における心拍や呼吸の無拘束無侵襲計測システムの研究,開発が数多く試みられてきた.一方,就寝時以外で心拍を計測するため製品の開発がいくつかなされているが,無拘束といえるものが少ない.
 このようなことから,本論文では,就寝時以外の無拘束無侵襲心拍計測を念頭に,まずは歩行時の心拍周期計測に着目し,心音センサをベストなどの衣服の胸部に取り付け,これを単に着用するだけで,歩行中の被検者の心拍周期を無拘束無侵襲に計測できるシステムを提案した.具体的には,歩行時の心音センサ出力信号に現れる心拍と歩行による(センサ共振周波数の)振動波形から,フィルタにより心拍や歩行の周期に関わる信号成分を抽出した後,これをそれぞれの信号成分の基本周波数とそれらの整数倍の周波数の正弦波の一次結合で近似することにより,心拍周期や歩行周期をリアルタイムに計測できることを示した.


■ パラメータの微分が不要なゲインスケジュールド逆システム

航技研・佐藤昌之

 制御性能を高める方法の1つとして,フィードフォワード制御が有効であることは広く認知されており,特に任意の出力に対して必要な入力を計算する右逆システムの有用性は高いと考えられる.しかし,一般には逆システムは微分器を必要とするため,現実的な制御器とはいえなかった.そこで,微分器を用いない現実的な逆システムとして低域通過型の逆システムが提案されているが,筆者は以前に低域通過型の逆システムをH∞ノルムを用いて定義し有用性を示した.しかし,これら従来の逆システムは,対象システムが時不変システムであることから,プラントの動特性が変化した場合には,十分な効果をあげることができないと考えられる.そこで,プラントの動特性が変化した場合にも有用なL2ノルムに基づくゲインスケジューリング制御の概念を用いて,スケジューリングを行う逆システムを提案する.さらに,その設計問題においては,リアプノフ関数をパラメータ依存型としながらも,パラメータの微分を用いない制御器の存在条件がLMI条件によって定式化できることを示す.最後に数値例として非コロケートな多入出力システムにおいて,従来の低域通過型右逆システムと比較し有効性を確認する.


■ ノンパラメトリックな不確かさを有するStrict-Feedback非線形システムに対するロバスト適応制御

熊本大・水本郁朗, アルバータ大・R.B. GOPALUNI, S.L. SHAH, 熊本大・岩井善太

 適応Backstepping手法は,マッチング条件やLipschitz条件を満足しないより広い範囲の非線形性に対して適用可能な,非線形系に対する適応制御手法として注目されている手法である.しかし,この手法もパラメトリックな不確かさをもつシステム,すなわち,不確かさが既知関数と未知定数の線形和で表わされるシステムにのみ適応可能であるなどの制約をもっていた.このようなことからパラメトリックな不確かさとして表わすことができない,ノンパラメトリックな不確かさをもつ非線形システムに対する,ロバスト適応制御手法が,近年いくつか提案されている.しかしながら,これらの手法でも,入力項に現れる不確かな非線形性は,まだパラメトリックなものに限定されていた.
 本報告では,上記の点を考慮し,加法および乗法的(入力項に対する)ノンパラメトリックな不確かな非線形項をもつstrict-feedback非線形システムに対するBackstepping法に基づくロバスト適応追従制御系設計法の提案を行い安定性の解析を行った.


■ 飛翔体誘導制御系設計に関する一考察

防衛庁・江口弘文,山下 忠

 比例航法で飛翔する誘導飛翔体は目視線角の変化率を計測するための目標追尾装置を搭載している.この目標追尾装置は飛翔体に搭載されていながら慣性空間で発生する目視線角の変化率を計測することができるが,同時に空間安定特性の不完全性(このことを単に空間安定特性という)と呼ばれる特性を内蔵しており,このことのために場合によっては誘導制御系が発散してしまうことがある.そこで本論文では,目標追尾装置をフリージャイロ方式とレートジャイロ方式に大別し,それぞれの場合について,空間安定特性を考慮に入れた場合に発生する寄生ループの安定性に関する考察から,誘導制御系設計に関する新しい条件式を導出するとともに,定常特性に関する考察から,フリージャイロ方式の場合,空間安定特性が等価的に有効航法定数を減少させることも示した.また標準飛翔体モデルを用いてこれらの考察の妥当性を確認している.


■ シナジェティクスを用いたステレオマッチング問題の一解法

九工大・入江 徹,村上智仁,前田 博,生駒哲一

 コンピュータビジョンにおいて視点から対象までの距離情報を得る代表的な手法の1つに両眼立体視法がある.この両眼立体視法における困難な課題として,一方の画像のある点が,もう一方の画像のどこに対応しているかを求めるステレオマッチング問題があり,解決のために多くの工夫がなされている.しかし,隠れや順序問題を含んだ複雑な画像の対応付けを正確に行うことは困難な問題である.
 この問題に対し,シナジェティクスを用いたパターン認識をステレオマッチングに適用する.シナジェティクスを用いたパターン認識は,オーダパラメータとアテンションパラメータの2つのパラメータをもつ非線形微分方程式系で表わされる.これらのパラメータにさまざまな特徴量を反映させることで,対象に応じたパターン認識が可能となる.
 本論文では,シナジェティクスを用いたステレオマッチングアルゴリズムを提案すると共に,動的計画法を改良したステレオマッチングアルゴリズムを提案して比較を行い,積み木画像を用いた隠れや順序逆転を含むステレオ画像のマッチングを行った.その結果,シナジェティクスを用いたステレオマッチングアルゴリズムは隠れや順序逆転を含んだ画像に対しても非常に高いマッチング精度を実現することがてきた.


■ 遠隔操作環境における共有自律の実現を指向した人間―ロボット間の相互主導型インタラクションの設計

京大・堀口由貴男,椹木哲夫

 本稿では,人間―ロボット間のコラボレーションに相互主導型インタラクション(mixed-initiative interaction)の概念を取り入れ,共有自律(shared autonomy)を指向したインタラクション・モデルの提案を行う.人間操作者と自律ロボットの相互認識を確立するためには,認識のための行為(epistemic action)を含む各主体の能動的な活動の相互作用によって創出される相互主導性の実現が重要である.そこで,両者が直接知覚・直接操作可能なコミュニケーションのための共有モダリティ(shared communicational modality)を与え,それを介して独立した主体性を有する人間とロボットの判断の整合を確立していくアプローチを取る.まず,遠隔操作環境を対象として操作者とロボットによる共同作業のインタラクションについての分析を行った.このインタラクション分析には,判断分析の手法であるBrunswikのレンズモデル(Lens model)とその拡張である一般化レンズモデル(generalized Lens model)を利用している.そしてこの結果をもとにした提案モデルを実装し,実験によりその有効性についての評価・考察を行った.


■ In-Flight Alignment of SDINS under Large Initial Heading Error

Seoul National Univ.・Hyun Su HONG, Jang Gyu LEE Kwangwun Univ.・Chan Gook PARK

 This paper presents a new method of in-flight alignment for a Strapdown Inertial Navigation System (SDINS) under a large initial heading error. To handle the large heading error, a new attitude error model is introduced in which attitude errors are divided into heading and leveling errors using a newly defined horizontal frame. Some navigation error dynamic models are derived from the attitude error model for indirect feedback filtering of the in-flight alignment system. A Kalman filter with position measurements is designed to estimate navigation errors as an indirect feedback filter. Simulation results show that the newly developed model works effectively for coarse alignment of a large heading error. The proposed in-flight alignment method decreases the heading error very quickly from more than 40 degrees to about a few degrees.


■ 同期タッピングにおける2つのタイミング予測機構

東工大・三宅美博,大西洋平,エルンスト・ペッペル

 タイミング予測に関する情報処理は,われわれが外界の事象を知覚し行動する際に重要である.本研究は,これまで考慮されていなかった被験者の時間知覚における注意の役割に着目し,2種類の予測機構の存在とその具体的な違いを明確にするための実験を行った.被験者に与えられた課題は,周期的なパルス音刺激に合わせて人差し指でボタンを押すことであった.音刺激の周期(ISI)は450msから6000msまでの10種類であり,通常のタッピング課題と文章を黙読しながらのタッピング課題の比較を行った.その結果,450msから1800ms程度のISIでは,タップのタイミングが音刺激に先行する予測的タッピングが観察され,しかも黙読課題の影響を受けないことが明らかになった.しかし,2400ms以上のISIでは,黙読課題によって予測的タッピングの生起率が,通常のタッピング課題に比べて有意に減少することが示された.以上の結果から,1800ms以下の時間感覚に対する予測機構は注意の影響を受けない,他の心的活動と並列処理が可能な無意識的過程であること,一方,1800msより大きい時間感覚の予測機構は,心理的処理と資源を共有する過程であることが明らかになった.


[ショート・ペーパー]

■ 往復流型空気タービンによる呼吸量計測に関する研究

松江高専・亀谷 均,高尾 学, 佐賀大・瀬戸口俊明

 呼吸障害の治療では,患者の呼吸機能の評価を行うため呼吸状態のモニタリングが必要である.呼吸量のモニタリングについては,差圧型流量計や熱線型流量計が使用されている.これらの方法では細管,熱線が汚れメンテナンスが必要になるなどの問題があることから,往復流型タービンを用いた新しい往復流計測法を提案する.往復流型タービンは幾何学形状が回転中心面に対して対称で,トルク特性が気流方向に依存せず,往復気流中で常に同じ方向に回転するという特性を有する.また,このタービンでは流量係数の変化がタービンの加速度に大きく反映される.したがって,角速度と角加速度を測定することで呼吸量が定量化できる可能性があることから,往復気流型タービンを利用した呼吸量測定用センサを提案しその特性を評価した.呼吸を模擬する往復気流発生装置で行った実験により以下のことを明らかにした.(1)本タービン流量計により,呼吸の周期が測定できることを示した.(2)既知のタービン特性曲線を用いることで,呼吸のような非定常流がタービンの角速度および角加速度から一義的に得られる可能性を示した.(3)非定常流の正確な流量を測定するためには,タービン特性曲線のヒステリスの除去が必要であることが明らかにした.


■ −90°位相軌跡法による最適レギュレータの位相余裕の改善

三菱重工・片柳亮二

 最適レギュレータによる状態フィードバック制御系は,良好な安定性を有することが知られているが,これは一巡伝達関数の零点が,リカッチ方程式から得られるフィードバックゲインにより良好な位置に配置されることによる.この状態フィードバック制御系はω→∞において位相遅れが−90°となるが,途中の周波数において−90°以上遅れる場合がある.
 そこで,本論文では“−90°位相軌跡”という概念を用いて,最適レギュレータの位相余裕を改善する手法を提案する.
 従来の根軌跡がが虚軸と交わるとき,一巡伝達関数の位相が−180°となることから,本論文では一巡伝達関数の位相が−90°になる軌跡(−90°位相軌跡)を描き,その軌跡が虚軸と交わるときはその周波数において一巡伝達関数の周波数特性の位相が−90°となることを利用する.具体的には位相遅れを改善するために,本論文では−90°位相軌跡の漸近線と実軸との交点を零にする.これを実現するフィードバックゲインはシュミットの直交化法を用いて得られることを示す.


[開発・技術ノート]

■ Vibration Monitoring System for a Transmission Shaft in Real Time Using an Eddy Current Displacement Sensor

Fukui Univ.・Toshihiro YAMAGUCHI, Yoshiro IWAI, Shigeru INAGAKI and Masahiko UEDA

 A system for monitoring the vibration of a transmission shaft by means of an eddy current displacement sensor has been developed, which provides the Lissajous figures and the occupation distribution of a single revolution in real time. The sampling frequency of data acquisition was 5kHz, which is sufficient for the speed of 1600 cycles/min used in many plants. The measurement error of the system is within 30μm, which is precise enough for our purposes.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会