(社)計測自動制御学会中部支部
計測自動制御学会 中部支部 第38期 支部賞
(敬称略)

研究賞(1件)

  • 受賞者:原 進(豊田工業大学)
    題 目:「適応的非定常制御手法の提案と機械構造物の運動と振動の制御への応用」


     振動系の位置決めなどある種の機械構造物の制御問題に対して,時変制御器を適用する非定常最適制御手法が,制御の性能と効率を両立する観点から有用であるのは知られていた.しかし,非定常最適制御手法では時変Riccati方程式をオフラインで予め解いておき,求まるゲインを計算機メモリに実装するため実用上の課題が残されていた.受賞者は,実用性の高い非定常的制御手法を構築すべく,時変Riccati方程式をオンライン/リアルタイムで解きながら,最適制御と同様の効果を得られる手法を提案した.本手法では制御ゲインをオンラインで求めるため,パラメータ変動に対する適応性を得ることが可能となり,受賞者はこれを「適応的非定常制御手法」と呼んだ.本手法は時不変/時変振動系の位置決め制御問題を始め,自動モードから手動モードに切り換わるパワーアシストシステムの制御問題にも適用され,有効性が示されている.


技術賞(1件)

  • 受賞者:伊藤 博,室崎 隆,永田 功,横山 宏昭,大島 道博 (株式会社 デンソー)
    題 目:「センサレス組立機の開発」


     コンパクトで信頼性の高い組立機を目指すためには、従来の設備構成から見直すシンプル化が不
    可欠である。
     センサが設備故障原因のトップを占めていることに着眼して視覚装置を活用した下記特徴を有する
    センサレス技術の研究を行った。
     ・小型カメラと画像処理による設備動作確認、ワーク確認技術
      動作ステップ間の変化を重心推移で検出することにより、設備の状態を同定
     ・設備で発生する異常解析、設備の経時変化を視覚情報として録画保存する技術
      動作ステップ毎の画像を保存してそれをマスター画像と照合再生することにより異常個所を明示
     これにより、 1/2倍機器密度のコンパクトで信頼性の高い組立機を実現した。


奨励賞(3件)

  • 受賞者:残間 忠直(三重大学)
    題 目:「混合論理動的システム論によるシステム同定および最適制御に関する研究」


     連続時間システムに論理や判断などの変数が組み込まれたシステムはハイブリッド動的システムとよばれる.たとえば,ヒトは基本的な動作の組み合わせによって一連のタスクを実現することができるが,これは各々の連続動作とそれらを適切に切り換える判断が巧く働いているからであると考えられる.また電気電子回路などでは離散的なオン・オフ動作のみのスイッチングデバイスを適切に切り換えて連続的な電圧や電流を制御する変換回路があるが,これもまたハイブリッド動的システムとして捉えることができる.
     本研究では,混合論理動的システム論に基づき,離散変数と切り換え数を同時に考慮したシステム同定手法を提案した.提案手法によって切り換え数が未知である場合にもシステム同定が可能であり,ヒトのタスクモデルに適用することができる.また,電気回路のスイッチングを厳密に離散変数と捉えた最適制御手法を提案し,その有効性を実験により明らかにした.

  • 受賞者:廣瀬 徳晃(名古屋工業大学)
    題 目:「付加入力型初期値補償による繰り返し位置決め制御の整定特性改善」


     高速かつ高精度な位置決めを必要とする産業機器(ガルバノスキャナ)では,そのスループット向上を目的として,位置決め動作の時間間隔(以後、インターバル周期と呼ぶ)の短縮が要求されており,繰り返し位置決め制御を行った場合でも、一定の位置決め整定特性を保証する制御系設計が重要な課題である。インターバル周期短縮時に問題となるのは、前回位置決め動作における過渡応答の影響が次の位置決め動作に影響し、位置決め精度が劣化することである。すなわち、各位置指令が与えられた時刻を初期時刻と捉えるならば、制御対象の初期状態量が原因である。そこで、本研究では、付加入力型初期値補償を適用することで初期状態量の影響を抑制し、上記課題を解決する。本研究によって得られた研究成果の一部は、既に製品にも搭載されており、産業機器のスループット向上に寄与している。

  • 受賞者:中島 明(名古屋大学)
    題 目:「多指ハンドロボットにおける非ホロノミックな転がり接触と把持・操りの同時制御」

     
     多指ハンドは,接触点を介して把握対象物に力を与えるため,望みの把握と操りのためには,適切な接触点の配置が重要となる.また,操りでは指先の滑りや転がりにより接触点が変化するため,把握・操りと同時に接触点の制御が必要である.そこで本研究では,転がりが非ホロノミック拘束であり入力より多くの状態量を制御できることに着目した.まず,指先の転がりと平面を転がる球とのアナロジーから把握・操り系の自由度を解析し,対象物運動・把持力・転がり運動の線形化補償による独立制御を実現した.これにより接触状態は平面(物体表面)を転がる球(指)の非ホロノミック系に従う.次に,座標の一部の閉軌道により他の座標が変化する非ホロノミック系の特徴に着目し,球上の台形状の閉軌道により残りの接触座標を目標点へ収束させるアルゴリズムを提案した.最後に,これらの手法の統合により,把握・操りと接触点の同時制御を実現している.


功労賞(0件)


  該当なし 
 



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