(社)計測自動制御学会中部支部
計測自動制御学会 中部支部 第40期 支部賞
(敬称略)

研究賞(2件)

  • 受賞者:山元 純文(名古屋工業大学)
    題 目:「テーブル駆動システムに対する非線形摩擦補償を併用した高速・高精度位置決め」


     生産性向上・高精度化実現のために,高速かつ高精度位置決め生後技術を必要とする各種メカトロニクス機器では, @機構共振,A非線形摩擦等非線形要素,B両者の個体差,特性変動によるばらつき,が高速化・高精度化への阻害要因となる。     
     本研究は,上記課題を有するボールねじ駆動テーブルシステムを対象に非線形 摩擦特性のモデル化・補償法について扱ったものである。非線形摩擦は,動作条 件や温度によって変化し,位置決め応答のばらつきや精度低下要因となるため, その定量的解析に基づき,制御帯域外に存在する機構共振に対するロバスト安定 を陽に考慮したロバストフィードバック補償器を設計することにより,位置決め 応答ばらつきの低減を実現している。
     一方,フィードバック制御による外乱抑圧では,安定性の観点より補償性能に 限界があることから,上記補償に対して外乱フィードフォワード補償を併用する。 なお,粗動領域と微動領域においてその振舞いが大きく異なり,粗動領域ではト ルク定数及び粘性摩擦力の同定誤差及び温度特性変動に伴う変動成分が,微動領 域では非線形ばね特性が同方向への連続動作であるインチング動作及び往復動作 での特性の差異が位置決め応答性能に影響を与える。そこで,これらの特性を陽 に考慮した外乱フィードフォワード補償法により高精度化を実現している。
  • 受賞者:河村 庄造(豊橋技術科学大学)
    題 目:「制御系を有するメカトロニクス機器及び機械構造物の構造系と制御系の統合最適設計」


     振動制御系を有する機械構造物の最適設計においては,最初に機械的特性を評価して構造系を最適設計し, 得られた構造系に対して,改めて制御系を設計する手順が取られていた。そのような最適設計に対し, 構造系と制御系の同時最適設計,すなわち構造系と振動制御系の特性を同時に考慮して連成系全体の 評価関数を最小化することで,より良い設計を行う手法を提案した。制御系として最適レギュレータ を用いる設計とH∞制御系を用いる設計の両者を行い,いずれも統合設計によって優れた設計結果を得る ことができた。特に後者においては,設計問題の設定によっては,同時最適設計によって不安定なシステム になる可能性を指摘し,それを考慮した同時最適設計手法を提案した。さらに代表的なメカトロニクス機器 の一つである産業用ロボットを取り上げ,振動制御を効率よく行うため,好ましくない振動が低減されるような構造系設計手法を提案した。


技術賞(2件)

  • 受賞者:高羽 直樹,竹田 修二,室崎 隆(株式会社デンソー)
    題 目:「視覚による外観検査の開発」


     画像処理を活用した視覚による外観検査において,統計処理手法の工程能力指数 Cpを考慮したSVM(サポートベクターマシン)判別境界を算出する方法を考案した。 まず,学習で算出された不良品のSVM判別境界を不良分布の中心から3σの距離であると仮定した。  その3σの境界線を不良分布の中心から4σの距離にシフト(マージンを確保)した位置を 新しいSVM判別境界とすることで未学習の不良データを確実にNGとして正常判定することができた。  これにより自動車部品「オルタネータ」及び「フュエルポンプ」の溶接外観検査において,省人化 Δ50%を実現した。
  • 受賞者:山崎 光一,藤原 大悟,市原 好将(三菱重工業株式会社)
    題 目:「小型飛行実験機によるオンライン空力微係数推定アルゴリズムの検討」


     小型飛行実験機による飛行試験においてM系列信号を各舵角コマンドに重畳し, 飛行試験データを取得した。 得られた飛行試験データと機体の非線形回転運動方程式に対し,代表的なオンラインパラメータ推定手法である Fourier Transfer Regression法(FTR), Extended Kalman Filter法(EKF),Unscented Kalman Filter法(UKF) の3手法をオフラインにて適用し, 空力微係数推定値及びアルゴリズムの妥当性を検討した。
     その結果,オンライン空力微係数推定手法としては,EKFが最も適しているとの知見を得ることができた。 以上の結果から,M系列信号入力,非線形回転運動方程式及びEKFを用いたオンライン 空力微係数推定アルゴリズムにて,飛行中に空力微係数推定が可能な見込みを得た。


奨励賞(2件)

  • 受賞者:中島 真央(静岡大学)
    題 目:「光電子融合デバイスの高速動的再構成技術と宇宙応用技術の開発」


     次世代のロボット,自動車には思考を含めたリアルタイム制御が必要になると考えられるが, その実現のためには,ノイマン型プロセッサでは役不足であり,既存のVLSIの1万倍以上の大 規模なハードウエア資源による超並列計算が必須になる。これは既存のVLSI技術の延長上で の実現は難しく,3次元的なVLSI技術が必要である。その実現に向けて,ホログラムメモリ技術 とVLSI技術とを融合させた光電子融合デバイスの開発を進めた。これまでに光電子融合デバイ スとして世界最大規模となる11,424ゲートのVLSIの評価試験を終え,同じく世界最大規模となる 100回路情報の動的再構成技術の開発に成功した。これは,既存のVLSIの性能を仮想的に100倍 に向上できることを意味する。また,この切り替え時間についても,光再構成として世界最高速とな る13.75 nsを達成している。また,宇宙空間でリモートに再構成可能なFPGA技術についても研究を 進め,回路情報に欠損があってもロバストに回路を構成できる宇宙用・光電子融合FPGAを世界で 初めて実証した。
  • 受賞者:前田 佳弘(名古屋工業大学)
    題 目:「テーブル位置決め装置における非線形摩擦のモデリングと摩擦補償による位置決め制御系の高精度化」


     工作・加工機械に対する制御精度向上の要求が高まる中,位置決め機構に内在する転が り案内・軸受機構系で発生する転がり摩擦による制御精度劣化が問題となっている。本研 究では,位置決め制御性能の劣化要因である転がり摩擦に着目し,摩擦の精密モデリング ならびに補償方式について研究を行っている。
     摩擦モデリングに関しては,一般に良く知られる摩擦静特性(静止摩擦,クーロン摩擦 ,粘性摩擦)に加えて,摩擦動特性として転がり摩擦を考慮した摩擦モデリングを実施す る。そこでは,詳細な実機実験により転がり摩擦の詳細特性を解析し,実機摩擦特性を表 現可能な転がり摩擦モデルを提案している。さらに,制御系設計に向けて,精密摩擦モデ ルを用いた高精度シミュレーションにより転がり摩擦が位置決め応答特性に与える影響を 解析し,高精度位置決め実現における課題を明確にしている。
     一方,摩擦補償に関しては,前述のシミュレーション解析から明らかとなった課題であ る,転がり摩擦非線形ばね特性に着目した制御手法を提案している。転がり摩擦が動的に 振舞うのは始動及び整定時の微動領域であり,それぞれ過渡応答特性の劣化及び遅い整定 応答を招く。そこで,精密転がり摩擦モデルをベースとした摩擦補償を適用することで, 位置決め動作における動的転がり摩擦の影響を抑圧し,位置決め制御系の高精度化を実現 している。


功労賞(8件)

  • 舟橋 康行 様(中京大学)
  • 松村 司郎 様(伊藤忠エネクス(株))
  • 武藤 高義 様((財)岐阜県研究開発財団コーディネータ)
  • 稲熊 幸雄 様(大同大学)
  • 細江 繁之 様(理化学研究所)
  • 都築 良彦 様(元ブラザー工業(株))
  • 藤本 英雄 様(名古屋工業大学)
  • 土屋 総二郎 様((株)デンソー)



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