計測と制御 2002年10月号

VOL.41 2002

特集「人間感覚の計測と情報処理」

 人間感覚および生体のモデリングは,計測と制御ないしシステム・情報的観点から,興味深い対象である.人間感覚は確かに環境のセンシング・計測という性質を中心とするものではありながら,物理現象の定量化・数値化という古典的・狭義の計測そのものの枠に収まりきれるものではない.そこには「感じ方」「価値観」が介在している.たとえば温度感覚でいうならば,温度そのものはもちろん重要な要素であるが,温度そのもののセンシングのみでは人間の温度感覚とはならない.「暑い」「暖かい」「涼しい」「寒い」等と感じるプロセスにはそれを感じる人間の個人的要素・価値観が介在しているために,同一の物理現象であっても異なる感じ方が生じることになる.  このように,人間感覚を理解する上では,物理現象の数値化の側面はもちろん重要であるが,それのみにとどまることなく,心理量の計測,モデリングなどの幅広い研究分野の連携が欠かせない.そこで,SICE的視点から人間感覚の計測と情報処理を特集することにより,人間理解における「計測と制御」の重要性をアピールするとともに,人間を考えることの学問的おもしろさの一端を会員に提供することをねらいとする.  そのため,人間感覚の各要素についての計測技術と,生体モデリング各論に関する解説計10編と事例紹介3編をもって個別技術を展望しつつ総論1編によって人間感覚の情報処理を概観するよう構成する.

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