計測と制御 2003年3月号

VOL.42 2003

特集「横断型基幹科学技術の役割とその推進」

 最近の技術開発の新しい顕著なトレンドのひとつは,垂直型の研究から横断型の研究への軸足の移動である.このような技術の流れの著しい変化にもかかわらず,日本における伝統的な価値観を引きずった技術開発の現場では,個別技術・要素技術を深めることによって製品の性能を向上させ,生産コストを下げることのみに主要な力点が置かれている.しかし,日本の科学技術は研究者の一人あたりの経済効率の低さ,90年代にITを経済成長に結び付けることへの失敗,ソフトウェア技術に代表される産業高度化への立ち遅れが顕在化し,わが国の研究開発が,論理のレベルが一段と高くなった現代技術でリーダシップを発揮する力を失ってしまっているのではないかと懸念される状況へ陥っている. このような状況においては,多様な個別技術を横断的に支える横断型の科学技術を発展させ,それにもとづいて多くの個別技術の特長を生かしつつそれらを融合して新しいシステムと新しい価値を創造する横断型の研究開発がこれまで以上に重要になっている.  以上の認識に立って,計測自動制御学会を含む12の学会は,その会長の連名で,「横断型研究開発を推進するための基盤整備の重要性」を訴える提言を2001年12月26日,総合科学技術会議に提出した,現在,提言に賛同する学会は,文科系を含めて30学会に達している.そして,これらの学会は横断型科学技術学会連合として,その推進母体を発足しようとしている.また,文部科学省振興調整費政策提言プログラムによって,「横断型科学技術の役割とその推進」の政策をこの学会連合の総力として調査研究し、提言しようとしている.  横断型の典型的な科学技術として,計測・制御学、モデリング学、シミュレーション学,設計学などが挙げられ,それらでの計測自動制御学会の役割はたいへん大きい.そこで,この学会連合を牽引している本学会の会誌「計測と制御」において,横断型科学技術の重要性とその推進に関する特集号を企画した.

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