計測と制御 2003年9月号

VOL.42 2003

ミニ特集「生物に学ぶ機械と制御」

 古典・現代・ロバスト制御と発達してきた制御理論は数学的解析から応用への時代を向かえている.しかし,特性の異なるシステム・周囲の環境変化に対する制御が,「ロバスト安定」の言葉では表現しきれず,一般化された体系を持つ理論は実世界への適用が難しいため,数学的興味の範囲を脱していないのが現状である.
 一方,特にロボットにおける制御系では運動の実現のために知的な制御が求められている.これは,単なる学習や適応といったこれまでの制御理論の枠を越え,状況に応じた制御系の構造変化を求めるものである.この実現のために,これまでのモデルベースドの制御系設計に変わり,身体と環境の相互作用を考慮した制御系の設計を行う研究が近年盛んに行われるようになってきた.知能は身体に備わるという考え方は「身体性」という言葉で表現され,身体こそ知能制御の根本であるという考え方に基づき,環境とのインタラクションによって行動制御系が設計されるというコンセプトのものである.
 本企画では,「生物に学ぶ機械と制御」と題し,生物の運動特性を利用した機構の開発と,生体内におけるダイナミクスをモデルとした制御系設計法に関して,現在中心的な考え方とその応用に関して,若手の研究者を中心に解説していただく.この内容が制御界の大きなブレイクスルーとなり,さらには知能ロボットとその制御に大きく貢献されることが本企画の目的である.

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