計測と制御 2017年04月号

VOL. 56, 2017

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特集「人に寄り添う空気圧システムの現状と展望」

 現在,空気圧システムは安全でクリーンなエネルギ媒体としてロボット工学分野だけでなく,医療・福祉分野などで幅広くその利用価値が認められつつある.一般に,空気圧(駆動)システムは電気式モータに比べ柔軟で人間親和性に優れており,出力対重量比にも富んだアクチュエータの実現に寄与している.その一方で,位置や力の高精度な制御が難しいという大きな問題を抱えている.また,空気源であるコンプレッサーの小型・軽量化の問題は依然残されたままであるという見方が多い.そこで本特集では,こうした問題をクリアにしながら現在の技術をどのように確立して来たのかをモデリングや制御法,および応用事例を示しながら概観することを目的としている.
 本特集では「人に寄り添う空気圧システム」と題して,空気圧システムの柔軟性・利便性(安価で小型)や高周波数域での低インピーダンス特性(圧縮性)を陽に生かせるケース,すなわち人により近いシステムの構築を考えている.空気圧以外の油圧・水圧は非常に大きな出力が得られる一方で,油圧・水圧は外部への排出が一般にできないため回収のための配管が必要となり,空気圧に比べ2倍になること(利便性の欠如・大型化)や,高周波数域までの制御(制御面での煩雑さ)が余儀なくされる問題がある.そこで,本特集号ではよりクリーンなエネルギとして空気圧システムのみに着目し,空気圧システムの柔軟性・安全性を利用したロボットの身体構成法や空気圧駆動デバイスの開発(制御法),および代表的な空気圧アクチュエータのひとつであるMcKibben型空気圧ゴム人工筋のモデリングについて説明する.続いて,駆動に必要な小型制御弁の開発について解説し,アクチュエータの開発や医療・福祉分野の応用技術について俯瞰し,空気圧システムの最大の問題ともいえる空気源の確保にも焦点をあてる.最後に研究事例として,医療・福祉について紹介する.こうした解説や事例紹介を通して,人間支援システムにおける空圧の有用性を明らかにするとともに,新たなアクチュエータの開発や計測・制御技術の発展に寄与することを本特集では目指している.

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