福祉工学部会見聞録

 

20051026() 14:0017:00、福祉工学部会見学会セミナーにて

場所 独立行政法人 国立病院機構 下志津病院〔千葉県四街道市鹿渡934-5

URL http://www.hosp.go.jp/~simosizu/index.html

 

2005年度第6回福祉工学部会見学会セミナーを下志津病院療育指導室長の古舘亙様らのご協力で開催いたしました。11名(SICE会員6名)で筋ジストロフィー病棟の見学および患者さんと懇談をさせていただきました。

 

下志津病院の入り口

 

下志津病院は明治30年4月に下志津衛戌病院として発足し、広い敷地内には、養護学校もあり、病棟から屋根の下を通って濡れずに学校まで行けるそうです。現在病床数:440床(一般200床、重症心身障害120床、筋ジストロフィー120床)で、病棟は10(病棟案内によると第12病棟まであるが、第4と第9はない模様)あり、第68病棟が筋ジス病棟。第6、第7病棟はデュシェンヌ型の人が中心で、平均年齢30歳。第8病棟は筋強直性の人が多く、平均年齢58歳。

病棟のネットワーク環境は、光ファイバー+無線LAN。筋ジスの患者さんにとっては、ネットワークはアメニティであるという考えで整備されています。

 

6病棟の見学で、レスピレータ(人工呼吸器)を装着されたIさんがマイクロスイッチの着いたハンドグリップでソフトキーボードを使ってベッドサイドのパソコンMacを操作されている。病棟新聞を作ったりしているとのこと。Macを使っているのは3人程で他はWindowsを使っているそうです。

ベッドに横になっている方々は、手に合わせて自作されたワンクリックのスイッチでパソコンやテレビの操作をされていて、結構速い操作をされていました。

 

プレイルームで(第6病棟、弟7病棟で共用)にて、患者さんたちと懇談を行った。まず、見学させていただいた方々から簡単な自己紹介ののち、患者の皆さんお一人お一人にパソコンの操作の経験、現状や要望を含め話していただき、自由に質問する形でいろいろご教示いただいた。

 

以下、メモ書き的にその一部を羅列します。

 

1:ワンキーマウスを使用。PCではニュース、メール、検索、オンラインショッピングなどをしている。ディスプレイは普通のまま使っている。レスピレータを装着しているので、正面が見づらい。

補足1:神経内科医長 本吉先生

ディスプレイの傾きを容易に変えたい。姿勢を検知して自動的に変化してくれるものがあるといい。

ページめくり機なども大きくてティルトが困難。座位が30分ぐらいしか保持できないので、楽な姿勢でアップライトと同じ作業をできるようにしたい。

 補足2:ヘッドマウントディスプレイなら臥位でも使えるが、値段が高い。プロジェクタで天井に映し出すタイプもあるが高い

 

2:デスクトップとノートの割合では、デスクトップが最近増えている。作業がしやすいし、テレビ一体型なら画面が見やすい。

 

3:タブレットを使って絵をかいている。12時〜15時ぐらいがPCタイム。

CD-ROMの出し入れに困っている。ボタンひとつで閉まってほしい。CD-ROMチェンジャは壊れやすい。

どんなものでもボタンはできるだけ軽いほうが良い。

 

4:17インチノートPCを使用。富士通のPCが好きだったが、機能の問題で東芝に変えた。トラックボールを使っている。スイッチを外に出す改造をして、左手でスイッチ、右手でトラックボールを操作している。

ソフトキーボードの動作が会社によって異なるのが困る。富士通のPCでは、1回立ち上げると他のソフトを立ち上げたりしても出たままになっていてくれるからよかったが、東芝に変えたら、メールを書くたびにソフトキーボードを立ち上げなければならなくなった。スクリーンキーボードは大きくて邪魔なので、ソフトキーボードを使う。ソフトキーボードでもパスワードの入力をしたい。

PCを使ってチャットをしている。111時間ほどPCを使うがそのうち7時間はチャット。ボイスチャットや画像を使用したチャットもしている。

テレビを録画するのに、PCの画面も起動してしまうので、夜中の番組を録りたいときは困る。

ディスプレイは角度を変えられるので見やすい。

音声入力では、ViaVoiceは聞き取ってくれない。

 

5:ノートPCと(?)マウスを使用している。プリンタで名刺や会議の垂れ幕、カレンダー等を作成している。ゲームはPCよりプレステ。

 

6:Macを使っている。Macにも右クリックがほしい。

質問:MacWindowsを選んだきっかけは?

回答:最初になんとなく。絵をかくにはMacだと思った。

 

7:ホームページデザイナやFlashの勉強をしている。

割り箸にペンをつけて、口でくわえてテンキーをマウス代わりにして使っている。使用時間は多くて1時間。分からないことは互いに教えあっている。

 

8:寝ながらノートPCを使っている。トラックボールを使用。PCは仕事、ネット、絵をかくのに使用。

横を向いて寝ると、画面の下のほうが見づらいので困る。下に本を置いて使ったりしている。

 

9:ネットでゲームをしたり、ものを調べたりしている。使いづらいことは特にない。

 

10:Macを使用して病棟の新聞を作成している。左手でマイクロスイッチを使い、スクリーンキーボードで入力している。スクリーンキーボードは十数年前から使用していて、最初はキネックス(Ke:nxhttp://www.accessint.co.jp/cgi-bin/products/index.php?id=9:3:19&pcd=0257)、現在はスイッチXS(SwitchXShttp://www.at-market.org/index3f.htm)を使っている。

PCでは病棟の新聞作成、ネット、メール、ホームページの作成をしている。また、スイッチXSMacに関して企業へアドバイスをしている。

フリーズしたとき自分で再起動をしてくれるとよい。PowerKeyにそういう機能があったが、製品がなくなってしまった。

ドコモでスキャンニングする携帯があると知ったが、病棟では携帯が使えない。

ディスプレイが顔の近くまで来てほしい。

 

11:視線の動きでPCを動かしたい。

コメント:Yさん

視線入力装置はスウェーデンのtobii technology社などいいものがあるが、100万円程度する。

http://www.creact.co.jp/jpn/j_n_tobii05.html

 

12:音声入力できるECS(環境制御装置)(旭化成テクノシステム、http://www.asahi-kasei.co.jp/ats/hukushi.html)をHCRで見て試したのだが、病棟の音や、聞き取りにくい声のために使えなかった。切り替えて使えるとよい。

 

13:PCで電話をかけたい。PCで電話を受けることのできるシステムはあるが、かけられるものがない。スカイプ(http://www.skype.com/intl/ja/)はスカイプ同士ならよいのだが、他にかけると高い(http://e-words.jp/w/E382B9E382ABE382A4E38397.htmlによると、スカイプユーザ同士は無料、日本国内への通話は14円弱)。スカイプ同士なら会議もできるのはよい。

電話はPHSに限定されるが、みんな持っている。PHSPCにつなげば、かけること以外はできる。いろんなキーボードがほしい。

 

14:質問:新しいインタフェースを試したりはしないのか?

回答1:ワンキーマウスで今のところ不都合はないが、スクロールに時間がかかる。もっと速くなってほしい。

回答2:スキャン入力には苦労せずついていける。ワンキーマウスは安くて簡単。

 

15:質問:ネットワークに繋がっているロボットがあったら、何をしてほしいと思うか?

回答1:冷蔵庫のものを取ってきてもらう。電話をかけてくれる。病状が悪化を看護師さんに知らせてくれる。身体の向きを変えられない人に外の様子を教えてくれる。PCの再起動をしてくれる。細かいことをやってほしい。看護師さんが忙しいと頼みづらい。

回答2:ナースコールが鳴っても看護師さんが来られないときに、代わりに来て様子をみてくれ、用件を聞いてくれる。足がいたいところをさすってくれる。急用でタンがからんでいるのかわかる。

 

ナースコールについて

16:呼吸器が外れたときに気づいてもらえないと困る。ドアホンとナースコールを連動させてほしい。

17:ナースコールを間違って押したときにキャンセルできるようにしてほしい。間違って押して来てもらうのは気まずい

18:ナースコールの種類を増やしてほしい。

18:PHSに対応したナースコールや、呼吸器とナースコールの連動など。

 

19:部屋の電気やエアコンのスイッチのON/OFFができたらいい。

 

以上

                            

文責 小野栄一(福祉工学部会平成17年度主査、URL2006.1.12現在)

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