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 会告 : 2001年度計測自動制御学会学術奨励賞の贈呈
 

学術奨励賞 研究奨励賞9君,学術奨励賞 技術奨励賞2君に贈呈された.

○学術奨励賞 研究奨励賞

なかがわ せいじ
中川 誠司 君
 1971年7月8日生.99年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程電子工学専攻修了,同年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所入所,2001年改組により独立行政法人 産業技術総合研究所ライフエレクトロニクス研究ラボ,現在に至る.非侵襲的計測手法を用いた生体機能推定,重度難聴者のための骨導超音波補聴器の開発に関する研究に従事.

受賞論文「脳磁界計測による骨導音知覚メカニズムの検討」
<第16回生体・生理工学シンポジウムで発表>
 ヒトは空気の振動を介した音(気導音)だけでなく,頭蓋や皮膚,筋肉の振動を介した音(骨導音)をも知覚することができる.骨導音であれば20,000 Hz 以上の超音波であっても知覚可能なこと,さらに,この骨導超音波は重度感音性難聴者にも知覚され得ることなどが報告されており,骨導音は気導音とは大きく異なる知覚メカニズムを有することが示唆される.本論文では,脳磁界計測および聴覚心理計測を用いて,骨導音の知覚メカニズムに関する検討を行った.その結果,(1) 周波数8 kHz 未満では骨導音の知覚メカニズムは気導音のそれと同様である, (2) 聴覚健常者においては骨導超音波の知覚に蝸牛が関与している,(3) 骨導超音波の知覚には内有毛細胞のみが関与し,外有毛細胞は寄与しない,(4) 前庭有毛細胞が骨導超音波の知覚に補足的に関与している可能性があることが推測された.得られた知見は,骨導超音波補聴器の開発に有用な情報をもたらすものである.


のだ よしゆき
野田 善之 君
1972年8月6日生.2001年小山工業高等専門学校専攻科電子システム工学専攻修了,同年豊橋技術科学大学大学院工学研究科生産システム工学専攻修士課程進学,現在に至る.動的計量,空調システム,鋳造工程の自動注湯システムに関する研究に従事.日本計量史学会の会員.

受賞論文「コンベアライン上での連続秤量における精度の向上」<第40回計測自動制御学会学術講演会で発表>
 近年,輸送業において,計量システムの高速秤量,高精度化が求められている.本計量システムは,コンベアライン上で物体を高速搬送するなかで,搬送物の質量を計量するものである.しかし,秤量された計測データに搬送物の質量とは関係のない誤差信号が重畳される問題があり,その対策が特に重要な課題となっている.とくに,コンベアライン上で秤量する場合には,コンベア本体ならびに秤量物の固有振動による周期的な誤差が発生しやすい.この問題に対して,本研究ではコンベアおよび搬送物を含む計量システムの簡易モデルを構築し,そのモデルから妥当なローパスフィルタを選定した.そして,実測データに選定したローパスフィルタを適用して,その得られたデータの最大値に補正値を加えた値を計測値とする簡易計測法を提案し,その有効性を示した.


えびはら よしお
蛯原 義雄 君
 1974年5月12日生.97年京都大学工学部電気工学第二学科卒業,99年同大学大学院工学研究科博士後期課程進学,現在に至る.数値最適化手法を用いた制御系設計に関する研究に従事.

受賞論文「Mixed H2/D-stability Synthesis with New Dilated LMI characterizations」
<第1回制御部門大会で発表>
 近年,多目的制御系設計問題やポリトープ型の不確かさを有する制御対象に対する設計問題,解析問題に関する研究が盛んに行われている.これらの問題を標準的な線形行列不等式(LMI)を用いて扱う場合には,各設計仕様に対して,あるいはポリトープの各端点に対して共通のLyapunov変数を採用するという制約が生じるため,設計結果,解析結果が非常に保守的となることが知られている.この問題を回避するために,本論文ではH2仕様,H∞仕様,領域極配置仕様に対する伸張型線形行列不等式(dilated LMI)を導出し,多目的制御系設計問題,ポリトープ型の不確かさを有する制御対象に対する設計問題,解析問題の新たな解法を提案した.なかでもH2仕様と領域局配置仕様とを組み合わせた多目的H2/D-stability問題においては,伸張型線形行列不等式を用いることでLyapunov変数を非共通とすることができるだけでなく,従来解法よりも制御性能が向上する(悪くはならない)ことを証明した.


やまもと なおき
山本 直樹 君
 1999年東京大学工学部計数工学科卒業,2001年同大学大学院計数工学専攻修了,同年同大学大学院情報理工学系研究科博士課程に進学,現在に至る.システム解析の研究に従事.

受賞論文「ハミルトン・ヤコビ方程式の可解領域について」
<第23回Dynamical System Theoryシンポジウムで発表>
 近年,非線形制御理論の整備が進むにつれて,その基本方程式とも呼べるハミルトン・ヤコビ(HJ)方程式の理論解析の重要性が強調されている.本論文では,非線形H∞問題に対するHJ方程式の解(すなわち,コントローラ)の存在領域について考察した.まず,非線形系を対象とするときは,状態空間におけるHJ方程式の解の定義域が,制御仕様を表わすゲインパラメータに大きく依存することを例示した.(このことは,線形系を対象とする際には見られない現象である.)つぎに,この集合を直接解析することが困難であるため,数値的に容易に得ることが可能である「弱可解領域」を定義し,その性質および存在条件を調べた.弱可解領域は真の可解領域を含む領域であり,それは,「制御が不可能である領域」についての情報を与えるものである.結果として,弱化解領域はゲインパラメータに単調に依存すること,および領域が弧状連結であることを導いた.このことは,制御仕様を緩めれば,HJ方程式の解の定義域を拡大できることを意味する.また,弱化解領域の存在条件が,未知外乱および状態変数の次数によって判定できることを示した.


ふじもと ひろし
藤本 博志 君
 1974年2月3日生.96年横浜国立大学工学部電子情報工学科卒業,98年同大学大学院工学研究科電子情報工学専攻修士課程修了,2001年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了,98年から3年間日本学術振興会特別研究員,2001年より長岡技術科学大学工学部電気系助手,現在に至る.ディジタル制御,モーションコントロールに関する研究に従事.

受賞論文「マルチレートサンプリング制御に基づく振動抑制及び周期的外乱抑圧制御法」
<第23回Dynamical System Theoryシンポジウムで発表>
 実システムのディジタル制御系では,センサやアクチュエータ,あるいは計算機やアナログ変換器のハードウエア上の制約から,サンプリング周期を任意に短く設定することは不可能である.本論文では,サンプリング周期が制限を受けているシステムに対して,高速な計算機を導入することにより,制御周期をより短く設定できる制御系に着目する.まず第1に,制御対象の共振周波数がナイキスト周波数に接近しているために従来手法では制御が非常に困難とされていた系に対して,マルチレートサンプリング制御を導入することにより,高い振動抑制特性を示す制御器の設計法を提案する.第2に,繰り返し外乱抑圧制御系に対して,周期外乱の高次の成分までをも抑圧する制御法の提案を行う.第3に,高次周期外乱の内部モデルが閉ループ特性を大きく乱す問題を回避するために,開ループオブザーバとスイッチング機構を有する新しい制御系を提案する.さらに,ハードディスクのヘッドの位置決め制御系に提案手法を適用し,アームの振動抑制問題や,ディスクの回転に起因する外乱の抑圧問題に有効であることを明らかにする.


そめや ひろし
染谷 博司 君
 1972年8月26日生.2001年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了,同年長崎大学総合情報科学センター助手,現在に至る.進化型計算,生命情報科学に関する研究に従事.博士(工学).

受賞論文「Toroidal Search Space Conversionによる最適解の位置にロバストな実数値GA」
<第13回自律分散システム・シンポジウムで発表>
 関数最適化において,染色体に実数値ベクトルを直接用いた遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm; GA)である実数値GAが高い性能を示すことが報告されている.しかし,実数値GAの交叉にはサンプリング・バイアスと呼ばれる探索の偏りが存在することが知られており,これが存在することにより,最適解が探索空間の境界付近に位置している問題に対してGAは低い性能を示す.この問題に対していくつかの手法が提案されているが,いずれもサンプリング・バイアスを軽減するものであり,無にすることには成功していなかった.そこで本研究では,サンプリング・バイアスを無にする探索空間の変換手法Toroidal Search Space Conversion(TSC)を提案した.既存手法との比較実験を行ったところ,提案手法を用いたGAは,最適解の位置に対するロバスト性が最も高いことが確認された.


ながなわ みか
長縄 美香 君
 1976年4月1日生.99年東京大学工学部計数工学科卒業,2001年同大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了,同年同大学大学院博士課程進学,現在に至る.生体データの統計的信号処理に関する研究に従事.

受賞論文「独立成分分析の意図的破綻による陽電子断層像からの血漿−放射能曲線抽出」
<第16回生体・生理工学シンポジウムで発表>
 血漿−放射能曲線の計測として,患者の動脈にカテーテルを留置して持続的動脈採血を行うが,患者と医師双方にとって負担の大きい計測であるため,臨床的には省略が望まれている.本論文は,組織−放射能曲線が大部分を占める陽電子断層像の時系列から,わずかに含まれている血漿−放射能曲線を独立成分分析を用いて抽出することを試みた.陽電子断層像中の外乱と見なすことができる血漿−放射能曲線に対して,敏感な非線形関数をコスト関数とする,すなわち,独立成分分析をロバスト性の観点から意図的に破綻させることによって外乱成分を抽出することを提案した.血漿−放射能曲線に対応する画像と,組織−放射能曲線に対応する画像の画素値の確率密度関数の差を強調する前処理を行うとともに,この意図的破綻を行った結果,シミュレーションデータと臨床データの両方において血漿−放射能曲線の抽出を確認した.


もり しゅんすけ
森  俊介 君
 1977年11月21日生.2000年東北大学工学部電子工学科卒業,同年東北大学大学院情報科学研究科修士課程に進学,現在に至る.複数電源電圧を用いた低消費電力フィールドプログラマブルVLSIに関する研究に従事.

受賞論文「知能集積システム用低消費電力リコンフィギャラブルVLSIプロセッサ
<東北支部第191回研究集会で発表>
 知能ロボット等のリアルワールド応用知能集積システムを実現するには,高性能化かつ低消費電力化な専用プロセッサの開発が要求される.このような専用プロセッサの構成では,ユーザが電気的に回路機能を書き換え可能なFPGAなどのプログラマブルデバイスを使用する方式と,ASICを用いる方式に分類される.前者は,後者に比べ開発コストが低く開発期間が短い利点がある反面,後者に比べ処理性能が低く消費電力が大きい欠点を有する.このような背景から本研究ではFPGAの問題点を克服する低消費電力かつ高性能なリコンフィギャラブルVLSIプロセッサの開発を目的としている.高性能化のためリアルワールド応用で多用される算術演算主体の負荷分散型処理に着目し,算術演算および,演算器間の局所データ転送に特化したプロセッサアーキテクチャを提案している.また,性能の維持と低消費電力化の両立には,複数電源電圧化が有効なことに着目し,演算器ごとに最適電源電圧を割り当て可能なアーキテクチャを提案している,


かわた まなぶ
河田  学 君
 1976年2月10日生.99年京都工芸繊維大学工芸学部機械システム工学科卒業,2001年東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士課程前期2年の課程修了,同年三菱重工業(株)産業機器事業部に所属,食品包装機械の設計に従事.

受賞論文「インテリジェントFESを利用した下肢麻痺者のための自転車の開発」
<東北支部第192回研究集会で発表>
 本研究では,筋系に電気刺激を与えることで失われた運動機能を再建するFESにより,足を動作させ駆動する自転車の開発を行った.下肢麻痺者はこの自転車を利用することで骨や筋肉は強化され,さらに自発的行動意欲を向上させるといった効果が期待される.また従来のFESシステムは人に常時付けて四肢の動きや発生した力を計測するよいセンサがないためオープンループシステムであったが,自転車にセンサを取り付けることでフィードバックすることを可能にした.実験は健常者で行いサイクリング運動は大腿四頭筋と大腿二頭筋の左右4つの筋肉を刺激して行うがクランク角全周にわたりトルクが発生できるように,クランク角度に応じて刺激する筋肉を切り替えて実現した.その際筋肉を刺激してから張力が発生するのに150msの遅れが生じるためクランク角速度に応じて本来刺激するクランク角度より150msだけ早く刺激した.つぎにクランクにおける角速度と角度とトルクの関係を,足をリンクモデルとして考えた理論と実験結果とにより近似し,コンピュータシミュレーションモデルを構成しその妥当性を確かめた.さらにこれを用いてギア比を決め患者用自転車の設計を行った.


○学術奨励賞 技術奨励賞

きただ ひろし
北田  宏 君
 1966年8月30日生.89年東京大学工学部計数工学科卒業,91年同大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了,同年住友金属工業(株)入社,現在に至る.連続鋳造機の制御技術研究の業務に従事.

受賞論文「Q−パラメータアプローチによる連続鋳造機鋳型内湯面レベル周期変動の制御」
<第1回制御部門大会で発表>
 鉄鋼製造プロセス中の連続鋳造機では,鋳型内湯面レベルの変動を極力抑制することが製品品質および操業安定上非常に重要である.そのため,変動を抑制する制御手法の開発が積極的に進められてきたが,弱冷却鋳造時に発生する周期性の強いいレベル変動の抑制は長年の課題であった.
 本論文では,既存コントローラによる制御系安定性・サーボ機能を保持したまま,制御系の周波数特性を整形するコントローラ設計方法を提案した.本手法では,Youlaパラメトリゼーションを基に,安定な伝達関数でコントローラをパラメータ表示する.制御系感度関数の周波数ゲイン特性を整形するパラメータを,モデルマッチング問題を用いて設計する.提案した手法を鋳造内湯面レベルの周期性変動抑制を目的とするコントローラ設計に適用し,シミュレーションおよび試験連鋳機における適用実験で効果を確認した.
 提案した手法は,連続鋳造機湯面レベル制御だけでなく一般的な周波数整形にも適用しうるものであり,さまざまな制御対象への応用の発展が期待できる.


やまさき たすく
山崎  輔 君
 1977年6月15日生.2001年法政大学工学部システム工学科卒業,同年同大学大学院工学研究科システム工学専攻修士課程に進学,現在に至る.センシング・システム制御に関する研究に従事.

受賞論文「コンデンサマイクロフォンを用いたセキュリティシステム」
<第18回センシングフォーラムで発表>
 コンデンサマイクロフォンは元来,音波を検出するための音響センサとして製作されているが,空気圧,回路的に工夫することで周波数帯域を低周波から高周波帯域まで広げ,これにより多様な圧力変動現象をとらえることができる.この技術を応用し用いることで,マイクロフォンを音,静圧,動圧,熱,加速度といった各種物理現象を検出する多目的センサとして使用することも可能である.
 われわれはこの多目的センサがセキュリティに関する情報の多くを検出できることに着目し,コンデンサマイクロフォンを用いるタイプの1センサ多対象型セキュリティシステムの構築を提案した.
 本論文ではこれらの現象を模擬実験を行い計測し,結果からセンサの精度が既存のものと比べ十分高いことを確認した.またデータには特徴的な波形,スペクトルが得られ,適切な信号処理を施すことによって各物理量の分離は可能であり,事象の検知も可能であることを示した.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会