日時 2018年9月16日(日) 13:00~16:00
場所 東京電機大学 東京千住キャンパス

4名の講師をお招きし,パーキンソン病に関する知識とパーキンソン病に対する工学的なアプローチについて講演いただきました.

「パーキンソン病患者のQOLと福祉工学・ケア工学」
 福祉工学部会主査・慶応義塾大学 藤井千枝子先生

 講演会の開催の趣旨,パーキンソン病の症状,原因(ドーパミン,遺伝子,オートファジーなどとの関係),患者会の活動,治療法(iPS細胞の活用,音楽療法),難病指定の状況,支援方法・機器について全体的な概要説明がありました.

「パーキンソン病と共に生きる」
 東京都パーキンソン病友の会 平峯 寿夫先生

 はじめに,ご自身のパーキンソン病発症の経緯と病気の進行の度合いや日常での薬の服用,難病指定のための取り組み,自身の運動症状を医師へ伝える方法についてのお話がありました.次に,パーキンソン病の長寿命化により,どのように長生きするかが焦点になっており,人として最低限の尊厳(食事,入浴,排せつ)を保てるかどうかが重要となっているという話がありました.最後に,会社を退職後のセカンドライフをパーキンソン病が豊かにしてくれたこと,コミュニティの一員として生きていくことの重要性を強調されたことに,感銘を受けました.

「ウェアラブルデバイスを用いるパーキンソン病の歩行分析とリハビリ支援」
 東京工業大学 三宅 美博先生

 パーキンソン病を支援する支援機器について講演いただきました.まず,IMUセンサによる歩行分析システムWalk-Mate Viewerについてご紹介がありました.このシステムはタブレットでリアルタイムで歩行をモニタリングできます.この分析結果をもとにストライド長と持ち上げ高さを軸として患者の疾患の分類ができ,さらにパーキンソン病の早期診断ができる可能性があることを示されていました.次に,VRを利用して患者にリズムを与えて歩行を支援するWalk-Mate,最後にウェアラブルロボットにより歩行リズムを与えるWalk-Mate Robotの紹介がありました.上肢にリズムを与えることで,下肢による歩行にリズムを作る装置で,ロボットを外した後にも歩行が改善することを示されていました.病院などでの検証も行われ,3つのシステムの実用性の高さを実感しました.

「医工連携が拓く持続可能な社会-パーキンソン病患者のQOLと福祉工学・ケア工学」
 筑波大学 中内 靖先生

 はじめに,中内先生が主催するヒューマン・ロボット・インタラクション研究室と環境知能化についてご紹介がありました.研究例として,データマイニングを活用して行動を予測して調理作業を支援するシステム,ユビキタスセンサやインテリジェントなコンセントタップのご紹介がありました.医工連携の例として,インテリジェント薬箱,インテリジェントコップ,インテリジェントT型杖のご紹介がありました.インテリジェント薬箱は,自宅での服薬を支援する機器で,ニーズの調査から,装置を改善する過程までを詳しく説明されていました.インテリジェントコップは,飲水量を自動計測できるコップです.インテリジェントT型杖は,IMUセンサにより歩行をモニタリングするシステムです.センサを活用したこれらのシステムは,パーキンソン病の支援に活用できる可能性を感じました.

「介護領域におけるロボット活用の動向」
 産業技術総合研究所 梶谷 勇先生

 ロボット介護機器プロジェクトで開発を支援している,移譲支援装置(HAL),リショーネ,空気圧による移譲支援装置,カメラによる見守りシステム,歩行器(ロボットアシストウォーカ),移乗支援(Hug),シルエット見守りセンサ,ベッドサイドトイレ(排せつ支援)などをご紹介いただきました. ロボット介護機器開発ガイドブックやロボット介護機器開発のための安全ハンドブックなどのガイドライン,今後提供予定のユーザ向けの利活用マニュアルについてもご紹介いただきました.

(文責:吉川)