受賞者略歴および受賞論文概要


たむら やすたか
田 村 安 孝 君(正会員)
1977年東京大学工学部計数工学科卒業,82年同大学院博士課程修了.日本学術振興会奨励研究員を経て84年山形大学助手(情報工学科),87年同大学助教授(情報工学科),96年より同大学院助教授(生体センシング機能工学専攻).80年本会奨励賞,94年可視化情報学会技術賞受賞.音響応用計測,センシングシステムなどの研究に従事.可視化情報学会,日本音響学会,IEEEなどの会員(工学博士).
いしはら ちあき
石 原 知 明 君(正会員)
1978年日本大学文理学部応用物理学科卒業.78年日本国有鉄道・鉄道技術研究所にて着雪防止,車体構造強度の研究に従事.89年(株)三井造船昭島研究所入社,超音波技術,音響撮像技術の研究開発に従事.可視化情報学会の会員.
いとう わたる
伊 藤   渡 君(正会員)
1992年山形大学工学部情報工学科卒業,94年同大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年日立電子(株)入社.現在,同社開発研究所にて画像認識による監視技術の研究に従事.情報処理学会の会員.
いしい のりお
石 井 規 夫 君(正会員)
1975年大阪大学大学院工学研究科修士課程修了.75年三井造船(株)入社.86年(株)三井造船昭島研究所へ出向.91年大阪大学工学博士号取得.船舶,舶用プロペラの性能研究および音響撮像装置の開発に従事.日本造船学会,可視化情報学会などの会員.
ひさもと しゅうぞう
久 本 修 三 君(正会員)
1960年武蔵工業大学工学部電気工学科卒業.64年三井造船(株)入社.91年(株)三井造船昭島研究所入社,95年(株)三井造船昭島研究所退職.海洋計測・制御装置,水中超音波機器などフィールド機器の研究開発に従事.電気学会,電子情報通信学会などの会員.
ゆあさ はじめ
湯 浅   肇 君(正会員)
1971年横浜国立大学大学院工学研究科修士課程修了.71年三井造船(株)入社.84年東京大学工学博士号取得.86年(株)三井造船昭島研究所へ出向.センシングを中心とする情報技術の研究開発に従事.日本造船学会,可視化情報学会,応用科学学会などの会員.
受賞論文「Walsh関数変調波を用いた3次元音響ホログラフィ撮像―水中3次元撮像システムの開発―」

 符号化された送信を用いる完全デジタル方式の実時間水中撮像システムを試作した.この撮像システムは,新しく開発した広帯域の超音波トランスデューサを用いた送波子16個と受波子16個を同心円上に配置したアレイを持つ.送波子はWalsh関数で変調された信号で同時に駆動され,異なる位置からの反射波が互いに近似的に無相関化されているような符号化された音響波面を形成する.送信および受信のビームのすべてが受信波形に対する数値的な復号化と遅延加算処理により合成される.

 撮像システムの性能評価試験を大型水槽で行った.空間分解能は,距離で5mm,角度で0.3度であった.直径50mmの鋼管を110mの範囲内で,50×50の角型断面をもつ鋼管は170mの距離で撮像できた.Bモード断面像とCモード正面像は距離20mでは1秒以内に再生・表示された.これらの像は1回の送信により得られている.さらに,繰返し送信により信号群の相互相関関数がゼロになる性質を利用する画質の向上や,3次元撮像の能力を示した.

ひらた けんたろう
平 田 健太郎 君(正会員)
1990年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻修士課程修了.同年住友金属工業(株)入社.94年京都大学大学院工学研究科数理工学専攻博士課程入学,96年12月より同大学院応用システム科学専攻助手.博士(工学).ロバスト制御,無限次元システムのH∞制御などの研究に従事.システム制御情報学会,IEEEの会員.
やまもと ゆたか
山 本   裕 君(正会員)
1978年8月フロリダ大学理学部数学科博士課程修了.同年10月京都大学工学部助手,87年5月 同助教授,97年8月 同教授.システム・制御理論,ことに実現理論,むだ時間系の制御,学習・繰返し制御,モデリング,サンプル値制御系などの研究に従事.85年椹木記念賞論文賞,87年本会論文賞,90年本会著述賞,96年IEEE CSS, George S. Axelby Outstanding Paper Awardを受賞.システム制御情報学会,IEEEの会員.
Ph.D. Allen Tannenbaum(正会員)
Allen Tannenbaum was born in New York City in 1953. He received his Ph.D. in mathematics from Harvard in 1976. He has held faculty positions at the Weizmann Institute of Science, McGill University, University of Florida, ETH in Zurich, Technion (Israel), and Ben-Gurion University of the Negev. He is presently Professor of Electrical Engineering at the University of Minnesota.
かたやま とおる
片 山   徹 君(正会員)
1969年京都大学大学院博士課程数理工学専攻修了.同大学助教授,愛媛大学を経て,現在京都大学工学部教授.システムの推定,同定,多変数制御などの研究に従事.IEEE,システム制御情報学会,応用数理学会などの会員(工学博士).
受賞論文「無次元化2ブロックH∞問題に対する解法−安定プラントの場合−」

無限次元システムのH∞制御に対する解法のひとつであるskew Toeplitzアプローチは,作用素方程式を解くことを要求するいわゆるリカッチ方程式型の解法とは対照的に, 重み関数が有理関数であれば最適解が有限次元のランク条件より得られるという特徴をもつ.しかしながら,skew Toeplitzアプローチは周波数領域での議論であるため,時間領域(状態空間)での解法が適用できることが望ましい.本論文では無限次元の安定プラントに対する2ブロック(混合感度)問題を定式化し,1ブロックの場合のZhou, Khargonekarによるハミルトニアン型の解法に相当する状態空間解法を与えている.

この解法では2ブロック作用素の特異値は,重み関数のデータより構成されるハミルトニアンを,有限次元代数リカッチ方程式の解を用いて座標変換したものの行列関数のランク条件から求められる.状態空間で取り扱うことによって,判定条件が簡潔に記述され,従来の周波数領域での解法に比べて,数値計算も容易になっている.

はつざわ たけし
初 澤   毅 君(正会員)
1983年東京工業大学大学院精密機械システム専攻修士課程修了.同年より通商産業省工業技術院計量研究所入所.微小寸法計測および標準,マイクロマシン要素関連の研究に従事.95年より東京工業大学精密工学研究所助教授,現在に至る.博士(工学).精密工学会,応用物理学会,米国精密工学会の会員.
受賞論文「マイクロ干渉計を用いた電子ビーム径の精密測定」

 電子顕微鏡などで用いられる収束電子ビームの直径は,系の分解能などを左右する主要なパラメータであり,サブ nm オーダの精密な測定が求められている.本論文では,ナイフエッジを用いた測定手法に対してビーム電流分布に関する定式化を行った後,高分解能干渉計を用いた測定系を構成し,走査型電子顕微鏡のビーム径を測定した結果が示されている.測定の信頼性を高めるために,ナイフエッジの機械走査系に対し,マイクロ干渉計による分解能λ/1600(=0.4nm)のスケールを設置することにより,サンプリング間隔が正確な電流分布測定系を構成している.またナイフエッジについても改良を図り,シリコンの異方性エッチングを用いた微細加工により,先端エッジ形状が鋭いものを製作している.このような測定系を走査型電子顕微鏡に設置し,加速電圧とビーム電流値を変えて測定を行った結果,数十 nm の電子ビーム径が測定の不確実さ3nm以内で測定できることを実証した.

あさい とおる
浅 井   徹 君(正会員)
1991年東京工業大学工学部制御工学科卒業,93年同大学理工学研究科修士課程修了,96年同博士課程修了.現在,日本学術振興会特別研究員.ロバスト制御に関する研究に従事(工学博士).
はら しんじ
原   辰 次 君(正会員)
1976年東京工業大学大学院修士課程修了.同年日本電信電話公社入社.80年長岡技科大助手,84年東京工業大学制御工学科助教授,92年同大学大学院システム科学専攻教授,96年同知能システム科学専攻教授.87年度および91年本会論文賞受賞,90年同著述賞受賞,92年同論文集創立30周年記念号表彰論文受賞.ロバスト制御,ディジタル制御に関する研究に従事.システム制御情報学会,IEEEなどの会員(工学博士).
受賞論文「パラメータ変動のモデリングと設計を同時に行うロバスト制御系設計法」

 本論文では,パラメータ変動モデルのモデリングと設計を同時に行うロバスト制御系設計法を提案している.これは,モデリングと設計が独立に行われていた従来の手法に比べ,その間での試行錯誤をなくし,保守性の低い設計が可能であるという利点をもつ.本論文では,実パラメータ変動を変動を表わす行列と係数行列の線形分数変換として表わし,閉ループ系のロバスト性を保証しつつ,最も良い性能が得られるように係数行列を決定する手法を与えている.ここで,閉ループ系のロバスト安定性およびロバスト性能は,H∞ノルムで評価している.

 仕様として与えられたロバスト性能を保証するコントローラ,およびパラメータ変動モデルが存在するための十分条件を行列不等式を用いて求め,特別な場合にはその不等式が線形行列不等式に帰着されることも示している.また,2つの凸計画問題の繰返しによって局所最適化が可能であることを示している.

 最後に, ACリニアモータへの適用例により,提案した手法の有効性も確認している.

ちだ ゆういち
千 田 有 一 君(正会員)
1990年千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了(生産科学専攻).同年(株)東芝入社.現在,同社研究開発センター機械エネルギー研究所研究主務.制御理論と制御応用に関する研究に従事.95〜97年度東京工業大学情報理工学研究科学研究科客員助教授.89年度本会論文賞,90年度システム制御情報学会論文賞受賞.システム制御情報学会,電気学会,IEEEなどの会員(学術博士).
やまぐち よしたけ
山 口 慶 剛 君(正会員)
1987年大阪大学大学院博士課程修了(物理学専攻).同年(株)東芝入社.現在,同社小向工場宇宙メカトロニクス技術部技術第二担当参事.宇宙機の姿勢制御/マニピュレータシステムの開発に従事.日本物理学会の会員(理学博士).
そが ひろし
曽 我 広 志 君(正会員)
1983年東京大学大学院修士課程修了(航空学専攻).同年(株)東芝入社.現在,同社小向工場宇宙機技術部第三担当主務.宇宙機の姿勢制御/誘導航法制御等の開発に従事.
きだ たかし
木 田   隆 君(正会員)
1973年東京大学工学部計数工学科卒業.同年航空宇宙技術研究所入所.宇宙研究グループ主任研究官をへて96年電気通信大学機械制御工学科教授.人工衛星の姿勢制御,宇宙構造物の振動制御の研究に従事.93年度本会論文賞受賞.日本航空宇宙学会,日本機械学会,システム制御情報学会,AIAA,IEEEの会員(工学博士).
やまぐち いさお
山 口   功 君(正会員)
1983年東京大学大学院修士課程修了(航空学専攻).同年航空宇宙技術研究所入所.現在,制御部主任研究官.大型宇宙構造物や宇宙ロボットのダイナミックスと制御の研究に従事.93年度本会論文賞受賞.日本航空宇宙学会,AIAA,IEEEの会員.
せきぐち たけし
関 口   毅 君(正会員)
1993年早稲田大学大学院修士課程修了(制御工学専攻).同年宇宙開発事業団入団.現在,技術研究本部制御・推進系技術研究部開発部員.大規模宇宙構造物や人工衛星等の姿勢制御の研究に従事.日本航空宇宙学会の会員.
受賞論文「H∞制御と2自由度制御によるETS-Yの軌道上制御実験」

 本論文は,1994年に打ち上げられた技術試験衛星ETS-Y(きく6号)を用い,軌道上で実施した姿勢制御実験結果の一部を示したものである.ETS-Yは,軽量・大型の太陽電池パネルが搭載された柔構造衛星であったため,将来の柔構造衛星に対する姿勢制御系設計方法の基礎の確立を目的として,軌道上での同定・制御実験が計画/実施された.実衛星を用いた制御実験は世界でも初めての試みである.本論文では,種々の実験のうち,H∞制御と2自由度制御を用いて実施した制御実験について述べている.制御系設計では,衛星の制御プログラムメモリ制限を満たすように低次元の2自由度制御器の設計方法を用いた.一方,軌道上実験では,目標姿勢角の変化に対する追従応答実験などを実施した.その結果,地上シミュレーション結果と非常によく一致した所期の性能を達成する制御実験結果が得られ,実衛星に対する本方法の有用性を実験的に検証できた.

わたなべ りょう
渡 辺   亮 君(正会員)
1989年慶應義塾大学大学院修士課程修了.95年早稲田大学大学院博士課程修了.89年石川島播磨重工業(株)入社,航空宇宙事業本部制御技術部に配属,現在に至る,ゲインスケジューリング,およびジェットエンジンのロバスト制御に関する研究に従事.博士(工学),早稲田大学.システム制御情報学会などの会員.
うちだ けんこう
内 田 健 康 君(正会員)
1973年早稲田大学修士課程修了,76年同大学大学院博士課程修了,83年より,早稲田大学教授(電気電子情報工学科),現在に至る.制御系の情報構造,ロバスト制御および推定などの研究に従事.工学博士.電気学会,システム制御情報学会,IEEEなどの会員.
ふじた まさゆき
藤 田 政 之 君(正会員)
1984年早稲田大学大学院理工学研究科博士前期課程修了(電気工学専攻),85年同博士後期課程中退.同年金沢大学工学部助手,講師,助教授を経て,92年北陸先端科学技術大学院大学助教授.94〜95年ミュンヘン工科大学客員研究員.ロバスト制御とその応用に関する研究に従事(工学博士).
しめむら えつじろう
示 村 悦次郎 君(正会員)
1962年早稲田大学大学院工学研究科博士課程修了,同年同大学専任講師,65年同助教授,71年同教授.95年北陸先端科学技術大学院大学教授,現在に至る.71〜72年Stuttgart大学客員教授.制御工学,制御技術史の教育研究に従事.本会フェロー(工学博士).
受賞論文「スケジューリングパラメータを持つ線形システムのH∞制御」

 平衡点の移動に伴いその動特性が変化する非線形システムに対し,ゲインスケジューリングが有効な制御手法であることは経験的に知られている.その一方,スケジューリングコントローラ(Scheduled Controller)を含む制御系の安定性と制御性能を理論的に確認することは容易ではなく,一般的にはシミュレーションに頼らざるをえない.

 本稿では,非線形システムをスケジューリングパラメータを持つ線形システムとしてとらえ,リアプノフの意味での安定性とL2ゲインの意味での制御性能(H∞制御性能)を評価する条件を導いている.また,この条件を用いたスケジューリングコントローラの新しい設計法を提案している.数値例では,与えられた制御系に対してスケジューリングコントローラを実際に設計,その制御性能をシミュレーションにより確認している.

ほしの いくや
星 野 郁 弥 君(正会員)
1981年大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程終了.同年住友軽金属工業(株)勤務.アルミニウム圧延機などの制御技術の研究に従事.研究開発センター第二部計測制御研究室長.Automatica論文賞(90年)受賞(工学博士).
あべ ていいち
阿 部 禎 一 君
1982年神奈川大学電気工学科卒業,同年住友軽金属工業(株)勤務.アルミニウム圧延機などの機械制御,電気制御技術など,おもにシステムエンジニアリング業務に従事.名古屋製造所設備部電気制御室長.
きむら ひろし
木 村   紘 君
1967年名古屋大学大学院工学研究科修士課程終了.同年住友軽金属工業(株)入社,以後,アルミニウムの塑性加工および制御の研究に従事.研究開発センター第二部長.軽金属学会論文賞(86,88年),Automatica論文賞(90年)受賞(工学博士).
きむら ひでのり
木 村 英 紀 君(正会員)
1970年東京大学工学系研究科博士課程修了.同年大阪大学基礎工学部制御工学科助手.同講師,同助教授,同大学工学部電子制御機械工学科教授を経て,94年同大学基礎工学部システム工学科教授.95年東京大学工学部計数工学科教授.多変数制御系の設計理論とその応用に関する研究に従事(工学博士).
受賞論文「オブザーバを用いたロールバランス力による圧延機のロール偏心制御」

 本論文では,油圧圧下装置を備えていない旧式の圧延機における板厚精度向上策として,バックアップロールバランス力を用いるロール偏心制御を開発した.また,その設計法としては外乱推定オブザーバを積極的に用いる方式を採用した.オブザーバを積極的に用いる方式は,Wonhamらの理論をもとに木村によりその具体的設計方法が開発されたものであるが,本方法によれば,外乱が周期性をもつという特徴を有効に活用することによりアクチュエータの遅れや検出遅れに対する補償が容易に可能となることを示し,実機圧延にてその効果を確認した.補償器の特徴はつぎのようになる.(1)アクチュエータとしてロールバランス力調整を活用するため,油圧圧下装置は不用である.(2)アクチュエータの遅れ補償および検出遅れ補償が補償器の構造を複雑にすることなく可能となる.(3)ロール偏心量の推定にいわゆるゲージメータ式を採用しているため,塑性係数に依存しない.したがって,圧延材料ごとに補償器のゲイン調整を行う必要がない.

いとう さとし
伊 藤   聡 君(正会員)
1987年北海道大学工学部電気工学科卒業,89年北海道大学大学院工学研究科修士課程修了.同年(株)東芝に入社,研究開発センター S&S研究所に勤務.おもに,知識ベースシステム,協調分散システムの研究に従事.情報処理学会,人工知能学会の会員.
なかやま やすこ
中 山 康 子 君(正会員)
1979年横浜国立大学工学部情報工学科卒業,同年(株)東芝に入社,研究開発センター 情報・通信システム研究所主任研究員.知識処理,知的インタフェースに関する研究に従事.情報処理学会,人工知能学会の会員.
みずたに ひろゆき
水 谷 博 之 君
1971年名古屋大学理学部数学科卒業,73年名古屋大学大学院理学研究科修士課程修了,同年(株)東芝に入社,研究開発センターに勤務,現在に至る.おもに,システム技術,人工知能の研究に従事.情報処理学会,人工知能学会,AAAIの会員.
受賞論文「プラントモデルに基づくシーケンス制御ソフトウェアの仕様説明手法」

 本論文では,プラントモデルに基づくプラントの動作アニメーションによって,「設計者の意図が制御仕様に正しく反映されているかどうか」の検証を可能とする手法を提案している.このアニメーション生成には,制御仕様には記述されない,設計者が暗黙にもつ多くの情報が必要である.このうち,機械の機能に関する知識は,材料に対する作用を推論するために重要である.特に,鉄鋼プラントのような固体の材料を扱う場合,機器の接続関係が曖昧であり,個々の機器の取りうる状態が非常に多いため,プラント機器の機能を表現する場合,従来の「機器に対する入出力」の観点でとらえた表現やグローバルな挙動モデルを用いる方法では実際的なモデルの構築が困難である.ここでは,プラントの「構造」,「機器動作」,機能系統図的な表現の「機能」を材料に対する作用の観点で表現した「構造-動作-機能モデル」を提案し,コンパクトなモデルの構築を可能とすることで,上記の課題を解決した.

つちたに しげき
土 谷 茂 樹 君(正会員)
1979年大阪大学大学院基礎工学研究科物性学分野修士課程修了。同年(株)日立製作所日立研究所入社。湿度センサ、速度センサ、加速度センサなどセンサの研究・開発に携わる。96年6月より和歌山大学システム工学部光メカトロニクス学科に勤務。現在、センサやマイクロマシンの研究に従事。IEEE、電気学会、応用物理学会などの会員(工学博士)。
すずき せいこう
鈴 木 清 光 君(正会員)
1965年近畿大学理工学部機械工学科卒業。同年(株)日立製作所日立研究所入社。高温センサ、半導体圧力センサ、空燃比センサ、対地速度センサ、加速度センサなど自動車用センサの研究開発に従事。現在に至る。SAE、自動車技術会、電気学会、日本機械学会などの会員。
まつもと まさひろ
松 本 昌 大 君
1983年愛媛県立松山工業高等専門学校卒業。同年(株)日立製作所日立研究所入社。角速度、速度、加速度、圧力など物理量センサの研究開発に従事、現在に至る。
みき まさゆき
三 木 政 之 君
1971年茨城県立勝田工業高等専門学校卒業。同年(株)日立製作所日立研究所入社。96年より同社自動車機器事業部勤務。エアフローセンサ、空燃比センサ、加速度センサ、半導体圧力センサなどの自動車用センサの研究開発に従事、現在に至る。
受賞論文「マイクロ構造における表面間力に関する理論的検討」

 マイクロセンサやマイクロアクチュエータなどマイクロ構造では表面同士の相互作用(表面間力)がその動作に重要な影響を及ぼす。本論文では、表面間力測定用のサンプルをモデル化し、マイクロ構造で働く各種表面間力の大きさを理論的に検討した。この結果とすでに得られている力の実測値とを比較し、マイクロ構造において支配的な表面間力を推定した。

 ファン・デル・ワールス力、接触表面への毛管凝縮水による液架橋力および2表面のそれぞれに吸着した水分子間の水素結合力により、表面間力の実測値を説明できる大きさの力が発生しうることがわかった。接触帯電による静電気力は上記3つの力に比べて十分小さく、表面間力に対する寄与は小さいと考えられる。マイクロ構造において、可動部同士または可動部と固定部との接触部分が曝される雰囲気が高湿状態では液架橋力、低湿状態では水素結合力、表面の物理吸着水が十分除去された状態ではファン・デル・ワールス力がそれぞれ支配的な表面間力であると推定される。

さかもと のぼる
坂 本   登 君(正会員)
1991年北海道大学理学部数学科卒業.96年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程(航空工学専攻)修了.同年名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻助手.97年より講師.非線形制御理論,ロバスト制御理論の研究に従事(工学博士).
すずき まさゆき
鈴 木 正 之 君(正会員)
1969年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了.同年同大学工学部助手,航空学科講師,助教授,教授を経て,94 年より同大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻教授.非線形制御系,特異摂動システム,ロバスト制御,宇宙ロボティクスなどの研究に従事.日本航空宇宙学会,システム制御情報学会,IEEEなどの会員(工学博士).
受賞論文「γ-受動システムとその位相的性質」

 本論文ではシステムの消散度に着目し,消散の度合いを計る指標 γ をもつ supply rate を導入することにより,γ-受動性を提案している.これは γ が小さいほど消散の強い受動システムとなり,γ が 1 のとき通常の受動システムとなる.

 この supply rate に関し消散的なシステムは γ が 1 より大きいとき受動的とも内部安定とも限らないが,そのようなシステムに対する漸近安定化定理を得た.

 さらに,γ-受動システムはゲイン γ をもつシステムと Cayley-変換を通じて双対的となることが示され,この性質を用いて γ-受動化問題は H∞ 問題と双対になることが証明される.

 線形時不変系の場合,γ は伝達関数の位相差と密接な関係があり,これを用いて位相曲線の整形手法を提案している.H∞ 問題が有界実性に基づきゲイン曲線の整形を行うのに対し,これは,γ-受動性に基づくことにより位相曲線の整形が可能であることを示している.また最後に,受動定理の一種の拡張定理を示し,そのロバスト安定解析に対する有効性を例によって確認した.

やまぐち たかし
山 口 高 司 君(正会員)
1981年東京工業大学大学院精密機械システム専攻修了.同年(株)日立製作所機械研究所入社.86年より1年間カリフォルニア大学バークレー校客員研究員.93年ストレージシステム事業部技術開発本部主任技師.96年機械研究所主任研究員.磁気ディスク装置位置決めサーボ系の研究開発に従事.日本機械学会,電気学会,精密工学会の会員.
ししだ かずひさ
宍 田 和 久 君(正会員)
1986年北海道大学大学院電気工学課程修了.同年(株)日立製作所機械研究所入社.93年よりストレージシステム事業部技術開発本部.磁気ディスク装置における位置決め技術の研究開発に従事.
とおやま そういち
遠 山 聡 一 君(正会員)
1988年慶応義塾大学理工学研究科修士課程修了(機械工学).同年(株)日立製作所機械研究所入社.磁気ディスク装置,光ディスク装置のアクセス制御に関する研究開発に従事.日本機械学会,システム制御情報学会などの会員.
ひらい ひろむ
平 井 洋 武 君(正会員)
1968年九州大学工学部電気工学科卒業.同年(株)日立製作所機械研究所入社.サーボ技術の開発に従事.91年主管研究員.93年ストレージシステム事業部ディスク装置開発部部長.96年機械研究所主管研究員.日本機械学会,精密工学会などの会員(工学博士).
受賞論文「磁気ディスク装置の高速高精度サーボ制御技術の開発」

 磁気ディスク装置の大容量化・高速転送化の要求に伴い,ヘッド位置決め精度の向上,およびヘッド移動時間の短縮が課題となっている.この高精度位置決めと高速移動の両立のために,複数の制御系を設けこれを切り換える設計手法,特に制御系を切り換えた後の過渡応答を整形する「初期値補償制御」設計手法を開発した.

 本技術は,制御系の切換え時にコントローラの内部変数の値を,切換え時の制御対象の状態量に応じて再設定する.これにより速度,加速度が従来の3倍以上大きい状態で制御系を切り換えても,オーバシュートのない望ましい過渡応答を実現することが可能となった.また初期値を操作するため,閉ループ特性には影響を与えない特長がある.

本技術により業界最高水準のトラック密度およびヘッド移動時間を実現した.なお,本技術はコントローラの内部変数にある演算結果を代入するだけであり,実現が容易である.

つちや まさよし
土 屋 政 義 君(正会員)
1975年東海大学工学部原子力工学科卒業,95年湘南工科大学博士後期課程在学中.85年(株)ダン科学退社後,同年(株)シグマテック設立.おもにアルゴンレ−ザ,He−Neレ−ザ,半導体レ−ザなどを用いた微粒子計測器,気中イオンカウンタなどの研究,開発に従事,現在に至る.日本エアロゾル学会,日本気象学会,静電気学会などの会員.
かさい たけし
葛 西   武 君
1982年東京理科大学工学部電気工学科卒業,85年(株)ダン科学退社後,同年(株)シグマテック設立,現在に至る.おもに微粒子計測器,気中イオンカウンタなどの研究,開発に従事.日本エアロゾル学会の会員.
はやし まさひこ
林   政 彦 君
1987年名古屋大学工学部航空学科卒業,89年名古屋大学理学研究科大気水圏科学専攻修士課程修了,90年名古屋大学太陽地球環境研究所に勤務,現在に至る.おもに大気エアロゾルと地球環境変動の研究に従事.日本気象学会,地球電磁気・地球惑星圏学会,日本エアロゾル学会,American Geophysical Unionの会員.
いわさか やすのぶ
岩 坂 泰 信 君
1965年東京大学理学部物理学科卒業,70年東京大学大学院理学研究科地理物理専攻博士課程修了(理学博士).70年名古屋大学理学部に勤務,89年名古屋大学太陽地球環境研究所に勤務,現在に至る.おもに大気物理学,大気環境計測学の研究に従事.地球電磁気・地球惑星圏学会,日本気象学会,日本エアロゾル学会などの会員.
たかみ かつみ
高 見 勝 巳 君(正会員)
1956年熊本大学工学部電気工学科卒業,60年(株)日立製作所に入社,中央研究所に勤務.91年湘南工科大学工学部に勤務,現在に至る(工学博士).おもに赤外線,γ線,レ−ザ応用計測の研究に従事.応用物理学会,電気学会,日本エアロゾル学会などの会員.
受賞論文「観測気球搭載用エアロゾル・ゾンデの開発」

 オゾンホ−ルの問題に代表されるように,エアロゾルの大気環境における役割が注目されるようになった.それにともない,自由対流圏や成層圏高度のエアロゾルの振舞いを観測するための計測装置も開発されつつある.しかし,対流圏以上のエアロゾル観測は航空機や気球に頼らざるをえず,計測器の規模や資金的な面の制約が大きい.このため現在までの観測レベルはエアロゾルの分布や組成が断片的に描かれているにすぎない.これまで,エアロゾルの濃度や粒子径分布を計測するために観測気球搭載用エアロゾル・ゾンデによる対流圏,成層圏の観測を実施してきた.しかし,光源にハロゲンランプを用い,検出器として光電子倍増管を用いるなどして,その重量は約13kgであった.このため,運輸業界の世界的な取り決めで観測が規制されていた.本研究は,エアロゾル・ゾンデの小型・軽量化を図るため,光源には半導体レ−ザ,受光素子にはシリコン光検出器を用いた.そして開発したエアロゾル・ゾンデを用い,各所でフィ−ルド試験を行い,装置の実用性と測定値の信頼性を検証した.

まつむら しろう
松 村 司 郎 君(正会員)
1961年中部電力(株)入社.81年同社電力技術研究所に配属.おもに火力プラントの制御,エキスパート・システムの開発研究に従事.
しおや ひでお
塩 谷 秀 雄 君(正会員)
1980年慶応義塾大学工学部電気科卒業.同年日本ベーレー(株)入社,システム技術部勤務を経て応用システム部配属後おもに火力プラントの最適制御,適応制御システムの開発に従事.現在システム設計部に配属.
受賞論文「事業用ボイラ蒸気温度のモデル規範型適応制御」

 モデル規範型適応制御理論を事業用ボイラの蒸気温度制御に適用し制御性能を改善した.

 制御対象は発電機出力375MWドラム型ボイラの主蒸気および,再熱蒸気温度制御系である.この系は時定数が長く,互いに干渉しあい,さらに火炉の汚れにより動特性が経時的に変化するのでボイラ制御の中では最も制御が難しいとされている.

 開発したモデル規範型適応制御システムは推定すべきパラメータの数が42個におよぶ大がかりなものであるが,これを実現するためにつぎのような工夫をした.

 1.負荷によりボイラの動特性が変化するのでプラント表現式と無駄時間の次数を固定する代わりにプラントの同定と制御のためのサンプリング周期をボイラ負荷に応じて連続的に変化する手法を採用した.

 2.パラメータ更新計算にUDアルゴリズムを採用した.

 3.PE条件(Persistence Excitation Condition)が不足したときにパラメータ更新を中止する方法を採用した.

のはら つとむ
野 原   勉 君(正会員)
1988年名古屋大学工学部情報工学科博士課程修了(工学博士).三菱重工業技術本部(名古屋)勤務.おもに,機械制御系の設計に従事.現在,大規模サーボ制御系の研究開発を担当.流体制御,実時間デジタル信号処理,数式処理の工学応用などに興味をもつ.日本造船学会,日本応用数理学会,Associacao Brasileira de Ciencias Mecanicas, IEEEなどの会員.
まつうら まさみ
松 浦 正 巳 君
1973年横浜国立大学工学部造船工学科卒業,75年同大学工学研究科修士課程(造船工学専攻)修了.三菱重工業技術本部(長崎)勤務.おもに,船舶・海洋構造物の開発および運動性能に関する研究に従事.現在,船舶・海洋構造物の波浪中運動性能および係留安全性の研究開発を担当.日本造船学会会員.
受賞論文「多分割多方向造波装置の開発」

 四方を海で囲まれたわが国は,海難事故による重油流出汚染などの危険に常にさらされており,海洋構造物や船舶の耐波性能に関する構造設計が,きわめて重大な課題となる.しかし,構造物と海洋波との相互作用,非線形現象等が存在し,理論計算やシミュレーションにはおのずと限界がある.そのため,造波装置を用いた模型による水槽実験が必要不可欠である.

 本造波装置は,75枚の造波板をACサーボモータによりおのおの独立に運動制御することにより,同時に異なる方向へ進行する波を発生させ,さらに,規定のスペクトル波を発生させることが可能な大規模サーボ制御装置である.海洋波発生のためには,従来長時間の計算を必要としたのに対し,本装置においては,開発した高速繰返し制御アルゴリズムにより実時間で制御を可能とした.また,繰返し周期のない定常波を得るため,等エネルギー分割法を採用して高精度なスペクトル波を再生している.

とらお あきら
虎 尾   彰 君(正会員)
1979年東京大学工学部計数工学科(計測専修)卒業,同年川崎製鉄(株)に入社.現在,技術研究所,加工・制御研究部門主任研究員(課長).千葉大学大学院自然科学研究科,人工システム科学専攻客員助教授兼務.おもに鉄鋼プロセスにおける光応用計測技術の研究開発に従事.工学博士.89年10月より2年間 University of Pennsylvania, Center for Sensor Technologies 客員研究員.81年本会学術奨励賞受賞.SPIE,日本鉄鋼協会,電気学会の会員.
やなぎもと たかゆき
柳 本 隆 之 君
1983年木更津工業高等専門学校電気工学科卒業,同年川崎製鉄(株)に入社.技術研究所,加工・制御研究部門にて鉄鋼プロセスにおける光応用計測技術の研究開発に従事.96年12月退社.
やりた いくお
鑓 田 征 雄 君
1970年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程(機械工学)終了,同年川崎製鉄(株)に入社.現在,技術研究所,加工・制御研究部門長(理事).鉄鋼の圧延加工,計測制御の研究開発に従事.工学博士.80〜82年Stanford大学,Rensselear工科大学客員研究員.日本鉄鋼協会より82年,93年俵論文賞,96年西山記念賞,日本塑性加工学会より97年会田技術賞受賞.日本機械学会,日本塑性加工学会,日本鉄鋼協会の会員.
いり まさと
伊 理 正 人 君
1989年東京大学工学部機械工学科卒業,同年川崎製鉄(株)に入社.現在,千葉製鉄所設備技術部主査(掛長).おもに冷間圧延設備の建設業務に従事.日本機械学会,日本鉄鋼協会の会員.
たかさき じゅんすけ
高 崎 順 介 君
1973年九州大学工学部鉄鋼冶金学科修士課程卒業.同年川崎製鉄(株)に入社.千葉製鉄所冷間圧延部ほかにおいて薄板製造技術の開発,生産管理に従事,86年12月から91年7月までニューヨーク事務所駐在.現在,東京本社鉄鋼企画部主査(部長).日本鉄鋼協会の会員.
ささき ひろあき
佐々木 洋 明 君
1991年慶応義塾大学理工学部機械工学科卒業,同年川崎製鉄(株)入社.千葉製鉄所制御技術部においてメッキ工程の計装設備の建設,改造に従事.現在エンジニアリング事業本部製鉄・プラント事業部制御技術部において製鉄プラントの電気設備の設計に従事.
まき ゆうのすけ
牧   勇之輔 君
1981年東京大学工学部計数工学科(計測専修)卒業,同年川崎製鉄(株)に入社.現在,千葉製鉄所制御技術部主査(課長).92年から2年間Case Western Reserve 大学システム工学科へ留学(修士課程修了).製鉄プロセスの計測制御システムの設計,建設に従事.日本鉄鋼協会の会員.
受賞論文「レーザ誘起蛍光法による冷延鋼板用オンライン塗油量計の実用化」

 冷延鋼板製造プロセスにおける防錆油塗布は主として自動車用外板に使用される製品の品質保証のうえで重要であり,表面塗油量は鋼板の使用目的に応じて適切に管理される必要がある.そこで,鋼板製造中に表面塗油量をオンラインで連続的に精度よく測定可能となる測定装置を新たに開発して,当社千葉製鉄所の連続焼鈍ラインに設置,実用化した.

 本測定装置は塗布される油に特定波長のレーザ光を照射し,発する蛍光強度を測定して塗油量を測定するレーザ誘起蛍光法を使用しており,測定対象鋼板の粗さや表面被膜の違い等の反射特性を同時測定して補正することで高精度な測定を実現した.

 本装置により鋼板製造時に鋼板長手方向全長にわたる連続測定が可能であるため,全製品に対する定量的な品質保証体制が確立され,鋼板ユーザの信頼を高めることができた.

 さらに,従来は塗油不足を恐れて多めに塗油していたのに対して本装置による測定結果をもとにして目標の値の最小限の塗油が可能となるため,油の使用量削減にも貢献できる.

かしわぎ ひろし
柏 木   濶 君(正会員)
1962年東京大学工学部応用物理学科卒業.67年同大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士).同年熊本大学助教授.73〜74年米国Purdue大学客員準教授.76年熊本大学教授,現在に至る.90〜94年熊本大学総合情報処理センター長.94〜96年熊本大学大学院自然科学研究科長(熊本大学評議員併任).M系列の計測制御への応用・非線形系の同定などに関する研究に従事.88〜90年本会理事.93年本会九州支部長.94年本会フェロー.
受賞図書「M系列とその応用(昭晃堂・1996年)」

 M系列は擬似不規則信号の1つであって,通信や計測制御の分野で幅広く用いられている.本書はM系列の性質とその計測制御への応用について,主として著者の研究を中心として,基礎から応用までを分かりやすく解説を試みたものである.すなわち,M系列を扱うために必要な符号理論的代数は最小限にとどめ,ガロア体GF(2)からやさしく解き起きし,M系列の発生と性質,GF(2)上の高速演算法,M系列の部分的性質,M配列,遅延時間測定への応用,乱数発生への応用,論理回路の故障診断,RAMの故障診断,線形制御系の同定,非線形制御系の同定,原始多項式の探索など,著者の永年にわたる研究の成果が述べられている.

従来,M系列を扱う理論が難解であるため,実用面との橋渡しをする解説書が望まれていたが,本書はそのような役割を果たすものと思われる.国内外を見ても他に類書がないのも本書の特徴である.

受賞製品「パーティクルアナライザシステムPT1000/CY2000」
横河電機(株)

 パーティクルアナライザPT1000は,マイクロ波誘導プラズマによる発光分析法により金属元素はもちろん,ハロゲン,C,Si,Nなどの非金属元素が4元素同時に高感度に測定できます.また,前処理は不要でサンプリングフィルタをそのままアナライザにセットするだけで粒子1個の組成が分析でき,個数と粒径分布を含めた3次元情報が同時に得られる全自動分析計で,操作が簡単です.

 用途は,半導体,LCD分野でのクリーンルーム環境,装置内発塵,ウェハー上の微粒子の分析だけでなく,材料(超純水,試薬,ガス)の分野まで幅広く,大気浮遊粉塵などの大気環境,土壌,自動車排気ガス,触媒など粉体,セラミック,機能性材料の領域へとアプリケーションが広がってきております.

受賞製品「電磁流量計MagneW3000 FLEXシリーズ」
山武ハネウエル(株)

 MagneW3000 FLEXシリーズは,当社の10万台を超える電磁流量計の製作実績をベースに,ユーザから寄せられた期待と要望を集成して開発した電磁流量計シリーズである.以下,おもな特徴を挙げる.

 FLEXでは,独自のフッ素樹脂PFAライニング技術の開発により,測定管内部の面粗度を従来の1/3以下とする鏡面仕上げライニングを実現し,耐付着性を飛躍的に向上させ,スラリ流体の安定計測に実績をあげている.

 検出器は,口径200mmまで,SUS製ケースの防浸構造とし,変換器は,カバーを開けずに外部より操作可能な赤外線タッチセンサを採用し,悪フィールド環境でも計器内部を保護し,長期使用を可能にした.

 既設流量計と面間寸法を同一にし提供する“リプレーサブル面間”仕様は,ユーザのコストメリットだけでなく,他方式の流量計のリプレースにも適用され,流量計測の問題解決にも寄与している.

今後もユーザ各位にご満足をお届けしたいと考えている.

受賞製品「PCベース監視制御システム」
富士電機(株)

 従来の専用システムではなく,小規模から大規模への拡張が可能な,パソコンによる監視制御システムであり,以下の特長を持ち製品化されている.

 1)ネットワークシステムを前提にしたクライアント・サーバ・システム(CSS)により, 段階的なシステム拡張を容易に可能としている.

 2)Windows-NTで構築され,これらのプラットフォームの上に各種ミドルウェア,オプションソフトを搭載する.これらのミドルウェアはアプリケーションの移行性の確保を容易にしている.

 3)バッチプロセス制御,銘柄管理,インテリジェント・アラーム,スケジューリング機能などのオプションソフトを開発・整備している.

 4)高速リフレッシュされるプラント画面,異常発生時にポップアップ表示されるアラーム画面等の監視機能,および機器の運転・停止状態の容易な把握とタッチ操作による個別発停が行える制御機能等を持つ.また,OA処理(プラントデータの統計処理等)との連携が可能である.

受賞製品「静止衛星用地球センサ」
日本電気(株)

 静止衛星用地球センサ(ESG-100シリーズ)は,三軸姿勢制御の静止衛星に搭載されて姿勢角(ピッチ・ロール姿勢誤差角)を出力する姿勢制御用センサ装置であり,地球の中心方向を検出するために地球大気から放射される14μm〜16μm波長帯域の赤外線を利用した光学センサ装置である.その性能諸元は検出精度0.03゜,データ更新レート8Hz,寸法157mm×121mm×123mm,重量1.95kg,消費電力5W,動作温度−30〜+60℃を実現しており,動作寿命20年以上にも対応可能な設計となっている.このような高性能/高信頼性に加えて低コストが評価され,国産衛星のみならず海外においても多くの衛星に採用されている.なお,本製品の開発に当たっては,宇宙開発事業団技術研究本部の設計の成果が取り入れられていることをここに記し,深く感謝の意を表する次第です.


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