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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.33 No.3(1997年3月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧


■ 等温化圧力容器を用いた空気の非定常流量計測

東工大・川嶋健嗣,藤田壽憲,香川利春

 圧縮性流体の流量計測は,圧力のみならず温度も管理する必要があり,一 般に容易でない.よって圧縮性流体の非定常流量の簡易で有効な計測方法の知 見がない.著者らは等温化圧力容器を用いた圧縮性流体の瞬時流量計測法を提 案し,定常流量に対してその有効性を確認した.

 そこで本研究では等温化圧力容器を用いた空気の非定常流量計測法を提案す る.等温化圧力容器とは一般の容器に金属製綿を封入することで伝熱面積を増 大させ,容器内の状態変化をほぼ等温変化に規定できる容器である.よって容 器から放出される空気の流量が容器内圧を計測することのみで求まる.容器の 下流にサーボ弁を取り付け,この弁を加振させた状態で空気を放出させること で,非定常振動流を発生させた.はじめに提案した方法の測定誤差を検討した. つぎに実際に提案した方法で空気の非定常振動流の計測を行った.サーボ弁の 弁変位から求めた流量と比較することで提案した方法の有効性を確認した.実 験結果より提案した方法で40[Hz]の非定常振動流が平均流量に対して7%の精 度で測定可能であることがわかった.


■ ε-Feasibility for H∞ Control Problem with Constant Diagonal Scaling

Tokyo Inst. of Tech.・Yuji YAMADA, Shinji HARA and Hisaya FUJIOKA

This paper considers the H∞ control problem with constant diagonal scaling related to the robust control synthesis for systems with structured time-varying uncertainties. It has not been found that the general output feedback problem can be reduced to a convex optimization problem, and hence only a locally optimal solution can be obtained instead of the global one. The purpose of this paper is to provide an algorithm to find a sub-optimal solution with any specified small tolerance or a globally optimal solution for the constantly scaled H∞ control problem. We introduce notions of ε-feasibility and ε-feasibility test algorithm in order to develop desired algorithms. It is shown that we can get an algorithm to find a sub-optimal solution within tolerance ε>0 by combining the bisection method, if we have an ε-feasibility test algorithm. The ε- feasibility test algorithm named rectangle covering method is proposed. We also show that the worst case computational complexity is of polynomial order in the inverse of tolerance and the size of a priori given interval of scaling.


■ 入力端外乱を考慮した厳密な線形化

京大・藤本健治,杉江俊治

 非線形制御の分野において確立された設計手法の1つに,厳密な線形化 手法がある.通常この手法で制御対象を安定化した場合,それ以上の考察は行 われない.しかし実際にはたとえば入力端外乱が加わるなどして安定性が損な われる場合がある.したがって入力端に外乱がある場合のシステムの安定性に ついての解析,およびそのような外乱のもとで安定性を保つような制御系の設 計は重要な問題である.

 よって本論文では制御対象の入力端に外乱が入る場合の厳密な線形化につい て考察を行う.入力端の外乱には入力変換が重要な役割を果たすことから入力 変換を用いずに線形化できるクラスに注目し,そのクラスのシステムの入力端 ステップ外乱に対する漸近安定性の必要十分条件を与える.この結果は入力端 にステップ外乱がある場合,閉ループ系の安定性が線形化座標変換およびフィー ドバックの選び方に大きく依存することを示しており,そのような場合でも安 定性を保つような制御系の設計基準を与えている.また数値例によって本手法 の有効性を検証する.


■ マイクロトンネル機械のモデリングとその数値解について

諏訪短大・相原伸一,クボタ・壁内輝夫

 本論文では開削工事をすることなしに,極小径の可橈管を地中に敷設す るトンネル機械のダイナミックスを,確率的双曲型自由境界値問題として定式 化する.

 この装置は短いパイプがヒンジ結合された全長約30mの長さがあるパイプを 地中に,油圧ジャッキを使用して押し込んでパイロットパイプを敷設する機械 である.ここで強調したいことはこの掘削構造上挿入されたパイプは,全体と してみれば柔軟な梁と同じ構造であり,容易にたわむ性質を有することである. 一般に柔軟梁の振動問題は,位置に関して4階,時間に関して2階の双曲型偏微 分方程式で表現されるが,この問題ではパイプが地中に押し込まれる長さが時 間と共に増加するので,梁が定義される位置の領域が時間的に変化する移動境 界値問題になることがわかる.

 数学的に表現すれば,挿入されたパイプの先端位置を決定するには通常の境 界条件に加えて,もう1つ条件が必要になる.この条件は自由境界条件を呼ば れ,これは挿入されたパイプの全長とたわみの釣り合いによって決定される.

 さらに油圧ポンプで発生する押し込み力は時間的に不規則入力を受ける双曲 型偏微分方程式の自由界値問題を考察する.


■ 線形制御系の極配置問題におけるむだ時間の利用

茨城大・田中教之,山中一雄,上越教育大・川崎直哉

 可制御な時不変線形系の極は状態フィードバックによって自由に設定で きるが,状態観測器などの推定機構を介してこれを間接的に行うと系の次数が 増して余分な極を生じる.このような系に対し,人為的にむだ時間を導入する ことによって推定誤差を消去し,系の応答を補償することを考えた.

 この提案した方法を用いると,状態推定によって生じた余分な極が除去され, あたかも状態フィードバックを用いたかのような状態軌道を得ることができる. すなわち,適当なむだ時間により補償された系の制御対象は,仮想的な状態フィー ドバックシステムの制御対象とある意味で同じ振舞いをすることが証明される. また,制御対象の微小な摂動に対するロバスト性について,肯定的な見通しが 例題により示される.


■ 公称モデルを用いた部分空間同定法

京大・岡田昌史,福島宏明,杉江俊治

 近年,状態空間モデルを入出力データから直接同定する部分空間同定法 が注目されている.しかし,この方法はノイズに敏感であるため,従来よりノ イズと入力の無相関性を利用してノイズの影響を低減する方法がいくつか提案 されている.しかし,この場合には閉ループ同定への応用は難しいなどの問題 点がある.本論文では,同定対象の入出力データだけでなく公称モデルの情報 を用いることにより高精度な同定を行う新たな部分空間同定法を提案する.こ の方法では,従来の部分空間同定法と異なり明確な評価関数に基づいて同定が 行われる.さらに,ノイズと相関のない公称モデルの応答データを利用して入 出力データからノイズの影響を除去しているため,簡単な変形により閉ループ 同定にも拡張することが可能である.また,開ループ同定と倒立振子システム を想定した閉ループ同定の数値例によって提案手法の有効性を検証している.


■ 遺伝的アルゴリズムによる終端拘束付き最適制御問題の数値解法

奈良先端大・山下 裕,北大・島 公脩

 本論文では,遺伝的アルゴリズムによって,終端拘束のある最適制御問 題,特に最適特異制御を含む場合の最適解を数値的に求める方法を開発した. 入力の関数を遺伝情報に組み込む方法として,離散化した一連の入力列として 扱うのではなく,3次spline補間を用いてデータ量を削減した.終端状態制約 を含む場合に対応するために,乗数法を用い,終端拘束に対するラグランジュ 乗数を遺伝情報として組み込んだ.また,最適特異制御区間の収束性の改善の ため,最適特異制御区間でのハミルトニアンの入力の係数を評価値に加えた. さらに,終端拘束も評価規範に加え,それらの重み係数を遺伝的アルゴリズム の世代ごとに適応的に変化させた.最後に,本方法を用いた場合の例のシミュ レーションを行い,有効性を確認した.


■ パイロット弁付きガス整圧器の特性

東工大・潘 衛民,藤田壽憲,清水真也,香川利春,
山武・大谷秀雄,東京ガス・谷田部義則

 パイロット弁付きガス整圧器は都市ガス供給システムにおいて高圧幹線 の圧力制御を司る中心的な装置である.これまでガス整圧器の開発に当たって は静特性のみが着目されてきた.またガス管路網の解析においてはガス整圧器 の動特性は考えられてこなかった.ガス整圧器の動特性を把握することは災害 時のシャットダウンシーケンス,ガスの安定供給に関わるきわめて重要である. また設置するパイプライン特性とガス整圧器の動特性があいまって不安定とな ることも知られており,ガス整圧器の動特性の解明が望まれている.

 そこで本研究ではパイロット弁付きガス整圧器の数学モデルを提案しその妥 当性を確認するとともに,そのブロック線図と特性パラメータを示すことによ り特性を解明した.また他の圧力制御弁では見られないパイロット弁付きガス 整圧器に固有の一次減圧機構の働きについても検討し,一次圧および二次圧の 変動に対する補償効果について明らかにした.同時にパッキン摩擦力がガス整 圧器の整定時の安定性に大きく影響することも示した.提案した数学モデルを 従来の管路シミュレーション手法と組み合わせることにより,ガス整圧器を含 めた管路網解析が可能である.


■ 自己生成・自己組織化ニューラルネットワークを用いた自律移動ロボットの環境認識とナビゲーション

東大・大石隆文,古田一雄,近藤駿介

 本論文では,自己生成・自己組織化ニューラルネットワークの新しい手法を 提案し,自律移動ロボットの環境認識とナビゲーションに適用した.ここで想 定されているロボットは,絶対位置計測なしに,超音波距離センサーの情報に 基づいて作業環境を学習するものである.提案されたネットワークは,ツリー 構造ではなくグラフ構造に組織化され,また古いリンクの忘却を行うために, デッドノードやデッドリンクの生成が少なく,教師なし学習によって入力信号 空間に効率よく拡がることができる.さらに,学習によって生成された位相マッ プに基づいて,ロボットの経路計画とナビゲーションを行う手法を開発した. 提案手法を用いて,8つの超音波距離センサーを有するロボットのシミュレー ションを行い,本手法がロボットの作業環境認識とナビゲーションに有効であ ることを示した.


■ ニューラルネットワークによるエレベータ交通流の検出

三菱電機・岩田雅史,匹田志朗,駒谷喜代俊

 エレベータ群管理などの交通システムの制御は交通流に合わせて行う必 要があるが,実時間で交通流を測定することは実用上困難である.そこで,従 来より乗降客数や主階床の混雑度など測定可能な値から,交通流の変化を検出 していたが,検出に用いるデータの種類が少ないと,外乱の影響を受けやすく, 逆に複数のデータを用いるとパラメータが多くなるなどの実用上の問題点があっ た.

 本論文では,ニューラルネットワークを用いて測定可能なすべての乗降客数 から交通流の特徴モードを判別することにより,エレベータ交通流の変化を検 出する手法を提案した.本手法においては,ニューラルネットワークの学習機 能を有効に活用することにより,ビルごとに調整する必要がない.また,複数 のデータをニューラルネットワークにより並列的に扱うため,エレベータ運行 による交通量データの変動に対するロバスト性が向上する.さらに,実測デー タとシミュレーションを用いた実験により本手法が実用上の意味においても有 効であることを示した.


■ 直交化最小二乗法による階層型ニューラルネットワークの中間層ニューロン数の削減法

九工大・楊 子江

 バックプロパゲーション学習に基づく階層型ニューラルネットワークが, システム同定と制御などに数多く応用されている.この階層型ニューラルネッ トワークを個々の実際問題に応用する場合,問題に適したサイズのネットワー クを用いることが非常に重要である.本論文は,ネットワークの中間層ニュー ロンの出力の線形従属性を検出することによって,冗長と思われるニューロン を削除し,よりコンパクトなネットワーク構造を得る手法にスポットを当てる. 著者は,システム同定の分野で,モデル選択とパラメータ推定において,非常 に有力な手法として,広く使われるGram-Schmidtの直交化に基づいた直交化最 小二乗法による階層型ニューラルネットワークの中間層ニューロン数の削減法 を提案する.提案される手法は,ネットワークの学習を一度行った後,直交化 最小二乗法を用いて,出力層ニューロンの入力の自乗和への寄与が大きい順番 で,中間層ニューロンを採用していき,出力層ニューロンの入力を再構成する. ほかのニューロンの線形結合で表現できるニューロンまたは出力層との結合重 みが小さいニューロンは,自然に後の方で選択される.また,選択の過程で, 選択された各ニューロンの出力層との結合重みの新しい値,およびすでに選択 されたいくつかのニューロンによる出力層ニューロン入力の再構成における誤 差も自動的に計算されるので,設計者が要求する表現力を満たす最小限のニュー ロン数を簡単に決められる.提案した手法の有効性はシミュレーションを通し て明らかにする.


■ 移動ロボットによるダイナミックビジョンシステム

防大・森 泰親,General Electric Co.・加藤寛太,早大・内田健康

 視覚によって環境を調べるとき,1カ所に静止して周りを見渡すだけで は十分な情報を得ることはできない.ある時点までの不確かな情報を基にして, つぎにどのような観測を行えばよいかを立案し,その計画に従って行動し観測 する能力が求められる.

 観測と行動を一体化し,未知の環境において動的かつ自律的に環境モデルを 構築することができる新しいダイナミックビジョンシステムを実現しその有用 性を確認した.本システムはつぎの特徴を有している.a) 3次元認識自体を 目的として観測を積極的に制御し,3次元認識の解析に都合の良い画像を積極 的に得る.b) 行動ベースの機能とモデルベースの計画機能を強調結合してダ イナミックビジョンシステムに必要な知能行動を実現している.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会