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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.33 No.12(1997年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]

[開発・技術ノート]


[論  文]

■ 差動法を用いた水晶振動子によるセンサ

大阪工大・村岡茂信

 水晶振動子による力センサは,外力により共振周波数が変化することを利用したものである.このセンサの周波数出力は周波数カウンタにより容易にディジタル化でき,ディジタル化された信号はマイクロプロセッサに直結できる.また,周波数出力のセンサは,ノイズに強いため,アクチュエータ等のノイズを発生しやすい場所での使用に有利である.さらに,センサ素子での消費電力も小さい.一方,水晶振動子は衝撃力に弱いが,緩衝材を介して水晶振動子に外力を加えれば,外力の高周波数成分が除去され水晶振動子を衝撃力から保護できる.本論文では,力センサとしての単一の水晶振動子の特性について整理した後,温度補償,感度と分解能の向上,同相ノイズの除去を目的とした差動法について報告する.また,差動法での水晶振動子に動的な力を加えたときの応答例により,このセンサが動的な力に応答できることを示す.最後に,2組の差動法を組み合わせた把持力と把持位置を同時に測定できるセンサの構成例を示す.


■ リーマン幾何学手法による履歴特性を持つ非線形系の制御

東北大・井澤義明,箱守京次郎

 本論文では入力部に履歴特性(ヒステリシス)を持つ非線形制御系の設計法を提案する.履歴特性は二価の非線形関数となることから非線形系としての取り扱いをより複雑なものにしている.本論文ではまず位相幾何学の立場からこの二価関数の系を見かけ上一価関数の非線形系として表現する方法を提案する.具体的には履歴曲線をトーラス上の閉曲線の写像とみなすことによって新たな仮想非線形系を構築する.さらに,この系に筆者らの提案してきたリーマン幾何学手法による非線形最適レギュレータ理論を適用し,本履歴系を設計する.本レギュレータは線形最適レギュレータと位相構造が等しいことから,漸近安定性,フィードバック構造などのすぐれた特性がそのまま反映される.また実際例としてバイメタルを用いた温度制御系を取り上げ,その制御性能を調べている.


■ Real-Time Receding-Horizon Control Algorithm for Nonlinear Systems

University of Tsukuba・Toshiyuki OHTSUKA,Tokyo Metropolitan Institute of Technology・Hironori A. FUJII

   A real-time optimization technique is proposed for optimal state feedback control of general nonlinear system. A state feedback control law is determined so that a receding-horizon performance index is minimized. Computation of the control input is equivalent to solving a family of optimal control problems with a varying initial state in the real time, for which the stabilized continuation method is applicable. Application of the stabilized continuation method results in a real-time solution technique that does not involve any approximation nor iterative algorithm in principle. The proposed solution technique is successfully implemented in a control experiment of a 2-wheeled mobile robot that is nonlinear and nonholonomic. Equilibrium points of the closed-loop system are also analyzed.


■ 相補重みによるH∞サーボ系設計

茨城大・黒田晃弘,近藤 良

 本論文では相補重みを用いたH∞サーボ系設計法を提案した.従来のH∞サーボ系の設計法である虚軸上に極を持つ重みを用いた場合には,系全体を安定化することは不可能である.新たに相補重みを用いることにより安定な重みを用いているので系全体を安定化することができ,サーボ系を設計することができる.

 また,相補重みによる設計法は準最適H∞問題ではないのでいわゆるDGKF問題ではなく,最適H∞問題として解が得られる.この方法で得られる補償器に内部モデルとして虚軸上の極が含まれることを示した.相補重みには時間応答の改善をするための設計パラメータが含まれていることもわかった.


■ 入力制限を考慮したスライディングモード制御系の設計

東工大・岡林亮爾・古田勝久

 スライディングモード制御とは,状態空間に設計した切換面上に状態を拘束することにより希望のダイナミクスを達成する制御法であり,優れたロバスト性を有することが知られている.しかし,従来の制御則は原則として入力制限を考慮しておらず,また切換面は線形(超平面)であることを前提に設計される場合が普通である.

 本研究では入力が制限された1入力システムに対し,制御則を大きさが既知の符号関数とし,特に切換面を有効に設計することにより,一定の大きさ未満の外乱に対するロバスト性,すなわち一定の大きさのロバスト性を有するスライディングモードを達成することを目的とする.まず線形システムに対し,従来の線形切換面が適用できるための条件および切換面の選び方を示す.つぎに2次システムに対し,指定した大きさのロバスト性を有するスライディングモードを達成する,新たな非線形切換面の設計法を提案する.本手法を2次線形システムに対して適用し,非線形切換面を導出するとともに,線形切換面を用いた場合との比較をロバスト性,安定領域,およびダイナミクスの観点から行い,優越性を検証する.


■ Process Fault Diagnosis by Using Fuzzy Cognitive Map

Dankook University・Kee-sang LEE,Kunsan National University・Sung-ho KIM,Hiroshima University・Masatoshi SAKAWA,Masahiro INUIGUCHI and Kosuke KATO

   In this paper, a method of the fault diagnosis based on FCM (Fuzzy Cognitive Map) is proposed. FCM which can store uncertain causal knowledge is essentially fuzzy signed directed graphs with feedback. The proposed basic fault diagnostic algorithm is considered as a simple transition from Shiozaki's signed directed graph method to FCM framework. It can simply identify the origin of the fault and can further be expanded to hierarchical fault diagnostic scheme. In particular, as the proposed scheme takes a shorter computing time in comparison with other methods, it can be used for on-line fault diagnosis of large and complex processes where conventional fault diagnostic methods can not be applied. Examples highlighting the use of the proposed scheme are presented.


■ 電子音の感性評価

法政大・小坂洋明,タムラFAシステム・重松剛史,法政大・渡辺嘉二郎

 最近,人間の感覚や感性に配慮したヒューマンインタフェースの在り方に関心が寄せられるようになった.目覚し時計のアラームや自動車のバック警報音に代表される,電子音も,感性の観点からきちんと設計の対象ととらえるべきである.本論では,感性の観点から電子音を設計する指針を与えることを目的に,電子音の物理パラメータと評価用語の定性的,定量的関係を調べる.はじめに,電子音を感性評価するのに適当で,独立しかつできるだけ少ない言葉で実験するため,評価用語を6つに絞った.次に,被験者の負担を軽減するため実験計画法を適用し,評価回数を393,216回から192回に減らした.最後に,電子音の各物理パラメータと評価用語の定量的関係を調べるために評価実験を行った.分散分析を適用し,各用語ごとの独立パラメータとその寄与の度合いを求めた.つぎに,物理パラメータを同時に変化させたときの人間の感性を探るため,重回帰分析を適用した.これから,電子音の独立パラメータを調整して,所望の評価用語の度合いを持つ電子音を決定できる.最後に,「非常に緊迫感がある」などの音を作る.各評価用語でその度合いが最も高かった独立パラメータを組み合わせ18音を設計した.評価実験をしたところ,設計上期待した結果が得られた.


■ 加速度センサとジャイロセンサを用いたジェスチャ認識

イメージ情報研・坂口貴司,金森 務,片寄晴弘,奈良先端大・佐藤宏介,阪大・井口征士

 人間のジェスチャには豊かな情報が含まれており,今後のマンマシンインタフェース,マンマンインタフェースの有力な手段と考えられる.そこで近年,VR,手話認識などの分野において,人間動作の計測および認識を行う研究が盛んに行われている.しかし,画像処理による方法にはオクルージョンの心配が,また磁気センサには外部磁界環境の影響等の問題がある.

 そこで,著者らはオクルージョンの心配がなく外部磁界環境の影響も受けないという特長を有するジャイロセンサと加速度センサを用いたジェスチャ計測および認識手法を提案している.両センサは運動覚センサであり,ジェスチャが表現している意味の強さ(例「とても」,「やや」などをここでバリュー情報と呼ぶ)を加速度および角速度情報という形でうまく検出してくれる.

 本論文では最初に加速度センサとジャイロセンサを用いたジェスチャ認識について提案し,開発した3軸のジェスチャセンシングユニットについて説明する.また,これとニューロネットワークを用いて12種類のジェスチャ(手話動作)の認識実験を行い,両センサの併用によりシンボル情報認識に加えて高精度なバリュー情報認識が行えることを確認した.


[ショート・ペーパー]

■ 左下三角インタラクタ行列の新計算法

名工大・加藤久雄,舟橋康行

 一般に,線形時不変の制御系設計の際に,制御対象の不安定零点が制御目的に対する障害となることはよく知られている.したがって,それをどう扱うかは重要な問題である.不安定零点は1入力1出力の場合は,伝達関数が零となる不安定領域の点であるが,多入力多出力系の場合は伝達関数行列がフルランクでなくなる点へと一般化される.したがって,そのうち無限零点は1入力1出力系の場合は,単に分母多項式の分子多項式の次数差となるのに対し,多入力多出力系の場合は,より複雑な構造をもつものとなる.この多入力多出力系の無限零点の構造を明確にしたものがWolovichらによるインタラクタ行列である.

 このインタラクタ行列に関してこれまで,求めるための計算が複雑であるという問題点があったが,著者らは先に一般化インタラクタ行列に対しては簡単な計算法を提案した.本論文はそれに続き左下三角形の制約を課したもとでのインタラクタ行列の計算法を与えるものである.一般化インタラクタ行列の場合と同様,特異値分解を基本とし,あとは実数行列の和と積のみで行えるものである.


■ 自動車のエアバッグ展開アルゴリズム

法政大・渡辺嘉二郎,梅沢 靖,飯島慎太郎

 高速走行する自動車でエアバッグにトリガーをかけるタイミングの決定は困難な課題である.エアバッグトリガーからエアバッグ展開完了までのむだ時間の存在がその理由である.

 本論文は,むだ時間を補うために衝突後の搭乗者の運動を予測するというアイデアのもとに,エアバッグ展開理論を進展させ,一般的なエアバッグ展開アルゴリズムを提案する.

 本論文は,衝突時における搭乗者と座席,シートベルトの力学モデルに注目し,衝突実験による閾値の設定が少なく,車種によらないエアバッグ展開のアルゴリズムを示す.

 実際の衝突データによるシミュレーションを行い,提案された方法の有効性を示した.


■ 内点法を用いた用役プラント最適化―warm-startによる再計画―

東芝・村井雅彦,飯野 穣,重政 隆

 本論文は,用役プラントの再計画問題について述べている.用役プラントの最適運転スケジューリング問題は,LPモデルとして定式化され,主アフィン変換法により解かれているものとし,負荷外乱により変動したLP問題に,warm-startを用いて再最適化を行うことを試みた.数値例では,warm-startが最適解を得るために要する時間が,cold-startの要する時間の約半分であることを示している.


■ A Simulation of Information Exchange Between Two Fish Swimming in a Water Tank

Kyoto Institute of Technology・Nobuo SANNOMIYA,Toyobo Co., Ltd.・Ko NAITO

   The information exchange between two fish swimming in a water tank is investigated by using a dynamical behavior model and the noncooperative nonzero-sum game theory. A simulation is carried out based on the proposed information exchange rule. Quantitative similarity is obtained between the observation data and the simulation result.


[開発・技術ノート]

■ SHGレーザビーム描画装置の開発

日置電機・原野正幸,信州大・鳥羽栄治,児島由尚,西松豊典

 エレクトロニクス,オプトエレクトロニクス,メカトロニクスなどの分野では,フォトリソグラフィによる微細加工プロセスによる集積化技術の開発がますます重要となっており,教ミクロンオーダの描画精度でパターンを比較的容易にマスクレスで直接描画できる装置として,レーザビーム直接描画装置が開発されている.本装置では,光導波路の効率的な作製を目的として,描画光源として完全固体青色SHGレーザを使用し,従来のレーザビーム直接描画装置と比較してかなりの小型化を実現し,複数枚の反射率の異なる光導波路基板を連続パターニング可能なレーザビーム直接描画装置を開発した.さらに,任意のパターン線幅を得るための予測式を重回帰分析法により導出し,任意パターン線幅の設計式となることを明確にした.

copyright © 2003 (社)計測自動制御学会