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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.9(2003年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 四元数表現による三軸計測信号の処理

筑波大・山本広樹,青島伸治

 三軸のセンサから得られる3つの計測信号を1つの物理量として処理する方法とその有効性を示すため,四元数による信号表現(四元信号)を提案するとともに,四元信号を周波数成分に分解するための変換とその逆変換を導いた.この変換は複素フーリエ変換に類似しており同様な性質も満足する.そして,四元信号へ拡張したFIRフィルタの特性について考え,四元信号化による効果について検討した.その結果,四元信号化したフィルタシステムは,三軸の計測信号について1軸の計測信号の場合と同様に周波数領域における振幅と位相の概念でその処理を捉えることができること,また,従来の信号処理と同様な機能を実現できることが示された.


■ ラム波伝搬の時空間勾配解析に基づく非破壊検査

佐賀大・寺本顕武,鶴田浩輔

 本論文は,ラム波を用いた超音波計測において,時空間勾配解析を用いた非破壊検査手法を提案し,強力な入射波に重畳する点状再放射源からの微弱な散乱波の波面を計測できることを音響実験により実証している.とくに提案手法は検査対象表面上の各観測点近傍における
 (1)検査対象表面の法線方向の変位
 (2)法線方向の粒子速度
 (3)検査対象表面に沿い,互いに直交する向きの一対の面外せん断ひずみ
の間の線形従属性に着目し,これらの4信号より構成される共分散行列のランクに基づく,無次元量「不均質性の指標」を提案している.さらに提案指標を用いることにより,波面の伝搬速度や周波数と独立して,再放射源からの散乱波の波面を検出することができることを示している.そのため提案手法は,薄板を伝搬するラム波のような周波数分散性の波動場に対して有効であることが確認された.


■ 永久磁石同期モータのILQ最適電流制御のμ解析によるロバスト性能評価

九州大・高見 弘,福岡工大・辻野太郎,阪大・藤井隆雄

 近年,小型・軽量で高性能,高効率な永久磁石(PM)同期モータの応用が急速に進展しており,電気自動車,電気鉄道,産業機械などへの応用がめざましく拡大している.
 筆者らは先に,PM同期モータの安定な電流制御を達成する最適解と最適条件を解析的に求め,高速でシンプルな電流制御系を構成できることを示した.そして,電流制御のステップ応答シミュレーションによって,すべてのモータパラメータの変動に対する制御系のロバスト性をILQ最適制御とPI制御について比較し,ILQ最適電流制御系が電流制御に対して非常にロバストで優れていることを明らかにした.
 本論文は,ILQ最適制御系とPI制御系を統一的に扱うためにフィードフォーワード補償を有する一般化サーボ系を構築する.そして,ロバスト性能を評価するための独自の指数を定義し,ロバスト性の定量的評価法を提案する.これをもとにμ解析によってロバスト安定性とロバスト追従性能を解析的に検討する.PM同期モータの電流制御におけるPI制御との比較によって,ILQ最適制御系がロバスト安定性とロバスト追従性能の両面で非常に優れていることを定量的に明らかにする.これは,すでに報告した数値シミュレーションによるILQ最適制御のロバスト性を解析的に検証するものである.


■ Optimal Control of Rotaty Crane Using the Straight Transfer Transformation Method to Eliminate Residual Vibration

Toyohashi Univ. of Tech.・Ying SHEN,Kazuhiko TERASHIMA and Ken’ichi YANO

 本論文は,直線搬送変換(STT)方式で,旋回クレーン荷物の遠心力などの振動を抑制し,かつ計算効率の良い最適制御方法について述べたものである.本論文では,まず旋回クレーンの荷位置モデルを導出し,その妥当性を実験より検証した.つぎに,荷位置モデルに基づいた最適制御計算により,定点から定点への搬送において,直線搬送方式が他の経路よりも,最も振動を抑制する搬送であることが明らかにされた.そこで,最適計算の効率化のために直線搬送変換(STT)モデルが構築された.これに基づき,Davidon-Flecher-Powel(DFP)最適化手法で旋回クレーンの最適制御が行われた.STTモデルを用いた提案方法は,シミュレーションと実験を通して,振動抑制および計算効率化のために有効であることが実証された.


■ トロイダル型無段変速機のゲインスケジュール型非線形サーボ装置の設計

日産自動車・川邊武俊,城 新一郎,メンスレー・ミッシェル

 トロイダル型無段変速機(TCVT)は,自動車の低燃費化に有効である.ところが,TCVTは,時変性や非線形性を有しており,従来の線形制御手法や非線形制御手法では,変速比を正確に制御できないことがある.そこで,時変性および非線形性に対応したサーボ制御装置の設計手法を開発した.制御装置の簡素化のため,スライディングモード制御理論にもとづいた状態フィードバック則を用い,状態量の推定には状態観測器を用いる構成とした.状態観測器は,ゲインスケジュール型の低次元化状態観測器と,時変性に対する補正項を含む厳密線形化型の全状態観測器との2種類を開発した.
 提案した設計手法の有効性を計算機シミュレーションおよび実験で明らかにした.


■ エネルギー制御法による二重倒立振子の振り上げ制御システムに関する解析

岡山県立大・忻  欣,兼田雅弘

 本論文では,並列型二重倒立振子を対象として,リアプノフ安定性理論に基づき,エネルギー制御法による振り上げ制御システムのエネルギーの収束性を詳細に解析する.その解析により,並列型二重倒立振子の振り上げ制御が可能となる条件を明らかにする.さらに,両振子のエネルギーの収束値がそれぞれ,2つの値のいずれかになること,また,それらの4つの組合せに対応する両振子の動きの安定性を不変集合の安定性の観点から明らかにする.これらによって,並列型二重倒立振子の振り上げ制御システムにおける両振子の動きを理論的に解明する.
 上述の解析から,並列型二重倒立振子の振り上げ制御にエネルギー制御法が有効であることを理論的に明らかにする.
 なお,上述の解析法は,多自由度の劣駆動システムに対して,エネルギー制御法による閉ループシステムのエネルギーやシステムの挙動に関する解析に新たな糸口を与えている.


■ 難易度に基づく分割統治機能をもつゲート付きニューラルネットワーク

九大・村田純一パナソニックコミュニケーションズ・梶原義龍早稲田大・平澤宏太郎

 階層型ニューラルネットワークの性能向上のため,入力空間を小領域に分割し,それぞれに複数のノードを割り当てて出力を得る分割統治型ニューラルネットワークを提案している.各中間層ノードには,そのノードからの信号の送出を許可/抑止するゲートが設けられ,各ゲートが入力値に応じて開閉することにより,入力空間の分割と分割された小領域へのノード割当てを行う.各中間層ノードは入力空間全体ではなく一部だけに専念すればよいため,より誤差の小さいネットワークが構成できる.
 ニューラルネットワーク本体およびゲートは学習によってその機能が構築される.提案ネットワークの特徴は,ゲートの学習の際に,問題解決の難易度すなわちネットワーク出力誤差の入力空間中での違いを考慮し,誤差が大きい領域では細かく領域分割し,小さい領域では粗く分割することによって,限られた個数の中間層ノードを適切に配置し,より誤差の小さいネットワークを構成することができる点にある.
 関数近似の例題から,提案ネットワークが,通常の階層型ニューラルネットワークおよび問題の難易度を考慮せずに学習したネットワークに比べて,小さい誤差を達成できることが確認された.



■ 宇宙ロボット運用時のオペレータの技術レベルとマン・マシンインタフェース

通信総研・永井康史,土屋 茂,木村真一

 遠隔操作による宇宙システムの運用環境では,操作する対象が非常に高価である上に,誤操作はそのシステムに損傷を与える可能性があるので,運用者に非常に高い緊張を強いることとなる.このような運用環境において運用者の技術レベルに合ったマン・マシンインタフェースはどのようなものであろうか.このことを調べるために宇宙開発事業団の若田宇宙飛行士に被験者としてご協力いただいてETS-Z搭載のロボットアーム運用に際し,検証を行った.具体的には,異なる技術レベルのオペレータに対しモダリティに変化を持たせ(視覚情報or視覚+聴覚情報)運用情報のモニタリングをタスクとするインタフェース実験を行った.このとき被験者の目の動きを計測しその影響を調べた.その結果,技術レベルの非常に高い宇宙飛行士を被験者とした場合では,モダリティの変化には影響されず,また,ある程度経験を積んだ被験者では,視覚情報のみの場合に比べ,聴覚情報+視覚情報とした場合の方が情報の取得性が向上する傾向があることがわかった.

■ 進化的recruitment戦略を用いた強化学習による自律移動ロボットの制御器設計

東工大・近藤敏之,伊藤宏司

 強化学習のように行動政策が不確定な状態から探索的学習を行う場合,可能な限り状態空間を低次元化して学習初期の探索効率を向上させることが不可欠である.しかしながら,初期の状態分割は不確実で偏りのあるデータに基づいて行われるため学習の進展とともに適宜修正される必要がある.本研究では未知環境を能動的かつ探索的に移動するロボットが,遂次的に得られる入出力データと外部評価(報酬)に基づいて環境の内部状態表現の更新と行動学習を同時並行に行う強化学習手法を提案する.ここではNGnetを用いてロボットの状態評価器・制御器を関数近似し,その結合荷重の更新にはTD学習を用いた.また,状態の内部表現(RBFの形状・位置ならびに個数)の仮説的生成―評価ループを実装するために,分類子システムの発展戦略を参考にした進化的recruitment戦略を提案した.本手法では各RBFを自律個体とみなし,その評価値を参照頻度,TD誤差への寄与率から算出する.評価に基づいて局所的に個体比較を行い,RBFの追加,選択・淘汰ならびに中心・分散パラメタの突然変異操作を繰り返し行うことで学習器の構造最適化を試みた.提案手法を移動ロボットのPeg押し課題に適用し,シミュレーションならびに実機による実験の結果,その有効性を確認したので報告する.

■ A New Method of Shifting Bottleneck with Tabu Search for Solving Flexible Flow Shop Problems

Kyoto Inst. of Tech.・Yuedong XU, Nobuo SANNOMIYAATR・Yajie TIAN

 The shifting bottleneck is well known as a method for solving complex scheduling problems. Based on the theory of constraints, the efficiency of the production system depends on the bottleneck process. The shifting bottleneck in to optimize the bottleneck process one by one and consequently the efficiency of the total system is improved. In this paper a new shifting bottleneck method is proposed for solving flexible flow shop problems. In this method the original problem is decomposed into several parallel machine scheduling problems to be solved one by one. The disjunctive graph is used to specify the schedule, and the tabu search is used to solve the parallel machine scheduling problems. A computation experiment is performed for two kinds of problems which are the problems generated randomly and the problems derived from a real production line. The effectiveness of the proposed method is shown in the computation result.

■ 複数ロボットによる力センサレス適応協調制御

岐阜大・川崎晴久,上木 諭,伊藤 聡

 本論文は,複数のロボットアームで剛体物体を把持し搬送する作業を対象とした,力センサを用いない適応協調制御を提案する.提案する適応制御は,把持する物体の動力学パラメータの推定にもとづき参照モデルを構成し,参照モデルから各アームの目標とする手先位置と手先力を生成する.各アームの運動は相互に状態フィードバックすることなく分散・並列的に制御され,手先力の制御はフィードフォワードのみで構成し,手先位置は動力学パラメータの推定にもとづいて適応制御する.対象物体の軌道は目標軌道に漸近収束し,各アームの手先力は有界であることがLiapunov-Like-Lammaを用いて証明される.本適応協調制御は,力センサを用いないことと各アームが分散・並列的に制御されることに大きな特徴があり,その構成は大変簡素である.提案する適応協調制御の有効性は,2台の3自由度ロボットアームによる平面内の物体搬送の実験で実証される.
 
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