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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.39 No.12(2003年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 2次元超音波センサアレイとニューラルネットワークによる物体の3次元形状認識と位置・姿勢計測

広島工大・大谷幸三,岡山大・馬場 充

 本論文では,測定対象に照射した超音波の反射あるいは透過音圧信号をもとに,ニューラルネットワークを用いて対象の形状認識,位置・姿勢検出を行う手法を提案した.従来にも,超音波を利用した距離画像やホログラフィ画像などと,ニューラルネットを組み合わせた形状認識法はいくつかあるが,いずれも距離分解能や空間分解能の面で原理的な限界があった.そこで本研究では,2次元超音波センサアレイで観測した音圧強度分布から,対象の形状や位置と相関のあるいくつかの特徴量を見出し,これらを高分解能に抽出する信号処理回路を考案した.プロトタイプシステムによる実験では,柱,球,錐状の6個の物体に対して,(1)位置自由,姿勢固定の形状認識,(2)位置固定,姿勢自由な形状認識,(3)姿勢固定での2次元位置計測,(4)位置固定での姿勢計測,をそれぞれ検証し,本手法の有効性を確認した.


■ 棒状Si電極とPt点電極を組み合わせた姿勢センサの研究

広島工大・白井義人,北山正文,川畑敬志,田中 武

 本論文では,著者らがすでに提案しているPt点電極による離散的液位検知法を用いた姿勢センサに,棒状Si電極による弱電解液液位計測法を利用した姿勢計測手法を組み合わせて,センサシステムの単純化,計測精度の向上,および,計測範囲を広げることを目標にして,姿勢センサの新しい考え方を提案することにした.
 具体的には,まず,棒状Si電極による弱電解液液位計測法と,Pt点電極による離散的液位検知法を利用した姿勢計測手法の説明をする.つぎに,姿勢センサに装着する棒状Si電極の配置を検討するために,棒状Si電極の配置と傾き角度計測範囲の関係を把握するためのシミュレーション手法を提案した.さらに,棒状Si電極の較正実験,静的状態における傾き角度計測・温度依存性実験,および,動的状態における傾き角度計測についても検討した.以上の内容について行った実験,および,実験結果を示し,今回,提案した手法の有効性を立証する.


■ ディスクリプタ表現を利用した入力むだ時間システムの静的状態フィードバックによる安定化

阪府大・菅野 慎,陳 幹,柴田 浩,藤中 透

 現実の制御対象にはむだ時間を含むものが存在する.むだ時間の存在は,システムを不安定にする要因の1つであるため,むだ時間を含んだシステムの安定性や設計法に関する問題は重要である.近年,むだ時間を扱った研究は盛んに行われており,線形行列不等式型の安定判別条件や補償器設計問題が報告されているが,これらは状態にむだ時間を有するシステムを扱っていることが多く,入力にむだ時間を有するシステムに対しては,ほとんどがむだ時間に依存しない形の手法であった.また,むだ時間に依存する形の手法も報告されているが,ほとんどは動的な状態フィードバック制御器を用いたものであった.本論文では,ディスクリプタ表現を利用することで,入力と状態にむだ時間を有するシステムに対し,静的な状態フィードバック制御器を用いたむだ時間に依存する形の安定化条件を導出する.また,入力と状態にむだ時間をもち,かつ,有理関数型の不確かさを有するシステムに対するロバスト安定化条件を導出する.


■ Adaptive Control Design for n-th order Nonlinearly Multiplicative Parameterized Systems with Triangular Structure and Application

Nagoya Univ.・Kiyoshi YOKOI,Access Co. Ltd.・N. V. Q. HUNG,The Univ. of New South Wales・H. D. TUANand Nagoya Univ.・Shigeyuki HOSOE

 A novel adaptive backstepping design for a class of n-th order nonlinearly parameterized systems with a triangular structure is proposed. Under the Lipschitz condition with respect to unknown parameters of the system, an effective adaptive controller is designed without the requirement on the compactness of the unknown parameter set. Especially, the proposed adaptive control enables the advantage of “tuning function concept”, which results in only one estimation law for the unknown parameters. Our simulation with induction motor model particularly shows the viability of the obtained results.


■ A Distributed Smooth Time-Varying Feedback Control Law for Multiple Nonholonomic Mobile Robots to Make Group Formations

Musashi Inst. of Tech.・Hiroaki YAMAGUCHI

 This paper presents a distributed control scheme for multiple nonholonomic mobile robots of the Hilare-type to make group formations. The Hilare-type mobile robot is kinematically equivalent to a unicycle-type mobile robot. Each robot in this control scheme has its own coordinate system, and it senses and controls its relative position to other robots, which means that each robot has relative position feedback. Via this feedback, this robotic system consisting of the multiple mobile robots becomes a large-scale visually articulated multi-body system. Each robot especially has a two-dimensional control input referred to as a “formation vector” and the formation is controllable by the vectors. The mobile robots have nonholonomic constraints and they cannot move in an omni-direction instantaneously, so that such nonholonomic mobile robots cannot be asymptotically stabilized by smooth static feedback control laws. We introduce a distributed smooth time-varying feedback control law whose asymptotic stability is guaranteed in a mathematical framework, averaging theory. To prove its asymptotic stability, we apply Eckhaus’/Sanchez-Palencia’s theorem. We specifically deal with a matrix whose components are averaged over time by integration and whose eigenvalue distribution describes stability of this control law. Since the eigenvalue distribution is analytically shown by Ho¨lder’s inequality in functional analysis, stability analysis of this control law is given in averaging theory and it is technically related with functional analysis. The validity of this control law is supported by computer simulations.


■ はめ込みによるモデル構造簡略化の代数的特徴づけ

阪大・大塚敏之

 本論文は,状態量に関してたかだか2次の非線形項からなる状態2次表現へシステムを変換する手法を論じている.与えられたシステムを入出力関係が等しい他のモデル構造へ変換する写像はシステムのはめ込みと呼ばれ,状態2次表現へのはめ込み可能性条件は過去に著者によって得られている.しかし,過去に考えられたクラスのはめ込みの存在は,非常に緩い条件のもとで保証されるものの,与えられたシステムと同一の入出力関係をもつ状態2次表現の存在に対しては十分条件である.そこで,本論文では従来あまり意識されていなかったはめ込みの区別を導入し,それらの定義と性質を整理する.そして,システムの観測空間が生成する体の性質を利用し,状態2次表現へのはめ込み可能性に対して従来よりもさらに緩い必要十分条件を与える.さらに,微分代数関数を用いて,はめ込み可能性の判別に有用な十分条件を与える.


■ 画像情報から受ける感性度解析手法の基礎的研究

アプコット・平井豊祥,広島工大・北山正文,広島修道大・高木敬雄

 われわれは,空間を視知覚的に把握するための計測,画像から受ける美的現象などの知覚特性を計測するシステムなどの感性計測を実現するため,視覚情報から受ける心理的変化に注目し,その要因の1つである,色彩とその配列を考慮した1/f揺らぎ解析システムの構築を行ってきた.本研究ではこれを発展させ,画像情報から取得することが可能な5要素(色彩の変化,色彩のイメージ,模様の配置,模様形状の変化,模様サイズの変化)から,感性空間中での極となる,代表的な9種の感性を数値化した感性度(快さ度,陽気さ度,きれい度,動き度,派手度,熱さ度,重さ度,力強さ度,かたさ度)を算出する手法を提案する.



■ 記憶メカニズムを導入した階層型ニューラルネットワークによる強化学習

神戸大・小澤誠一,白神那央人

 強化学習では,環境との相互作用を通して逐次的に報酬が得られるため,エージェントには追加学習を安定に行う能力が求められる.行動価値関数の学習をニューラルネットで行う場合,優れた汎化能力を期待できる半面,追加学習にともなう忘却が問題となる.そこで,この忘却を抑制するメカニズムをもったメモリーベース強化学習モデルを提案する.このモデルは,RBFネットの基底関数を適応的に配置できるResource Allocating Networkとメモリで構成され,学習中に得られる代表的な入出力関係(状態―行動価値)をメモリに蓄える.そして,これらを適応的に想起・学習することで効果的に忘却を抑制する.追加学習にともなう忘却の抑制効果を調べるため,2つの作業領域を逐次的に学習する問題に適用した.その結果,メモリをもたない従来モデルに比べて,大幅に忘却を抑制でき,優れた行動方策を獲得できることがわかった.また,従来手法(タイルコーディングとLWR)との比較を行った結果,学習速度は遅いものの,実行に必要な主メモリ領域が格段に少ないことが示された.行動価値関数の近似精度はLWRとほぼ同等であることから,本手法は主メモリの大きさが制限されたシステムへの適用や規模の大きな問題に対して有効であると考えられる.


■ 平置き倉庫における荷物の整理作業計画

東大・原 崇之,太田 順,ムラタシステム・田村博文,村田機械・東 俊光

 本研究では,平置き倉庫における整理作業の作業計画手法を提案する.整理作業とは入庫・出庫作業の合間に行われる作業で,入庫・出庫作業の作業効率を高めるために倉庫内の荷物を品目別に並べ替える作業である.これらは人間の操作するフォークリフトによって行われ,作業の手順,すなわちどの荷物をどこにどの順番でもっていくかを計画することが作業効率に大きく影響する.これは大規模な最適化問題となるため,メタヒューリスティクスのひとつである模擬焼きなまし法,およびモデルの簡略化に基づく近似解法を階層的に用いた手法により実時間内での解決を図る.また,人手作業故避けられない計画と実行のずれという問題に対し,オンラインで作業をモニタリングしながら逐次再計画を行う手法を提案する.これらの有効性はシミュレーションを通じて従来法と比較を行い,平均して約14.3%の性能向上が確認され,提案手法の有効性が示された.


■ 外乱抑制に基づく柔軟構造物の振動制御

名工大・不破勝彦,豊田工大・成清辰生,ファインプロセス・川口久雄

 近年,鉄道車両の高速化にともない車体の軽量化が避けられない状況となってきており,車体剛性の低下に伴う低周波域での共振点の外乱により励起される振動の抑制,乗心地や経年変化等の特性を左右する共振点以外の外乱により励起される微振動の抑制などが重要な研究課題となっている.筆者らは,周波数変動を伴う周期性外乱が抑制できる外乱オブザーバ(DOFV)を提案し柔軟構造物の1次振動モードおよびその近傍の周波数成分を有する外乱により励起される振動を抑制する制御実験を行っている.しかしながら,複数の振動モードを有するとした問題設定に対して振動抑制性能を確認していない.鉄道車両や宇宙ロボットなどの制御対象では軽量化が避けられない昨今において,複数の振動モードを有する制御対象の振動抑制性能を確認することは実応用上重要であると考える.
 本研究では,複数の振動モードを有する柔軟構造物の制御対象に対して,DOFVを適用した振動制御実験を行う.周波数の変動を伴う外乱により励起される振動の振幅は変化するが,本制御系では複数の振動モードにて励起される振動ばかりでなく,それらを含む比較的広範囲の周波数成分の外乱により励起される微振動までも抑制できることを確認する.


■ 電子制御スロットルシステムの同定とロバスト制御

ニッキ・ウメルジャン サウット,ソルクシーズ・ハイレット トフティ,電通大・中野和司

 車両の燃費改善,排ガス対策,快適性,高機能化の要求の高まりに伴って,エンジンの目標出力を決定するスロットルチャンバの電子制御化が進んできており,今後もさらにその傾向は続くものと思われる.
 本論文では,DCモータ,スロットルバルブ,リターンスプリングから構成された,負圧,ギヤおよびばね特性などを含むスロットル開度(角度)の非線形性に高いロバスト性が要求される電子制御スロットルサーボ系のためのモデリング,同定および制御系設計法について述べる.
 ここで,電子制御スロットルシステムには上述のような無視できない非線形要素が存在し,スロットルバルブの角度制御に大きな影響を与えることが実験により示されたので,この実験システムをモデルとして具体的な同定および制御法について示す.この場合,観測はスロットルバルブの角度情報のみであり,外乱およびVSSオブザーバによる推定が良好な実験結果を示し,さらにスライディングモード制御により提案した制御システムが,目標値に素早く追従できることをシミュレーションおよび実機実験によって示す.



[ショート・ペーパー]

■ 左下三角インタラクタ行列の一導出法

大工大・加瀬 渡

 線形多変数制御系の解析・設計問題において,インタラクタがさまざまな場面で重要な役割を果たす.先に著者は,ある種の代数方程式を,擬似逆行列を使って解くことでの導出を提案した.擬似逆行列を求めるルーチンは,標準的な制御系解析設計支援ソフトウェアパッケージに装備されており,数値解析的にも安定した方法である.しかしながら,この方法では一般にインタラクタの左下三角構造を指定することはできない.
 本稿では,先に提案した方法で導出されたインタラクタを左下三角構造に変換する方法を提案する.この際,先のインタラクタを利用した逆インタラクタ化システムの非零マルコフパラメータは,元のインタラクタの係数からなる行列の擬似逆行列で与えられるという性質が重要な役割を果たす.


■ 三叉ヘビ型移動ロボットの運動解析と制御

東工大・岩谷 靖,東大・石川将人,原 辰次

 本論文は,新しいタイプの非ホロノミック移動ロボットとして三叉ヘビ型移動ロボットを提案する.
 この移動ロボットを提案する意義の1つは,非線形制御理論の観点から見た可制御構造の以下の2つの特徴にある:(1)可制御Lie代数が一階までのLie括弧積で張られる,(2)ジェネレータと呼ばれる特殊なベクトル場が2つ存在する.この構造を2ジェネレータ・一次型と呼ぶ.これまでに多ジェネレータ・一次型の車両系の報告はない.
 一般に,非ホロノミック系(対称アファイン系)の可制御構造は,その制御手法と深い関係がある.本論文で提案する三叉ヘビ型移動ロボットは,多ジェネレータ型のなかで最も簡単な一次構造をもつことから,これまであまり研究の進んでいない多ジェネレータ型非ホロノミック系に対する制御系設計の研究への寄与が期待できる.
 本論文ではまず,このロボットの運動学モデルを導出し,その可制御性と特異点の解析を行う.そして,制御方法の検討を行い,数値例を用いて,その制御方法の妥当性を確認する.


■ ハプティックインタフェースを利用した仮想環境上の触知覚錯覚

横国大・原 正之,都立大・樋口貴之,横国大・藪田哲郎

 人間の能動的触知覚における錯覚現象に着目して,力感覚を提示する装置であるハプティックインタフェースを用いて錯覚現象の評価実験を行った.その実験結果より,実環境で見られる人間の能動的触知覚における水平垂直錯覚の現象が仮想環境においても見られることを確認した.また,このような感覚を評価する実験において,本論文で用いた実験システムを用いることで実験条件を比較的少ないパラメータの操作でソフトウェア的に作り出すことができ,さらには手の運動速度の測定が容易であるなど,錯覚現象のメカニズムを明らかにする上で有効な実験ツールになりうる可能性があることを明らかにした.


 
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