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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.40 No.1(2004年1月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ コンデンサマイクロフォン型センサによる多機能センシングとセキュリティへの応用

法政大・山崎 輔,穂苅真樹,渡辺嘉二郎

 センサ出力は,大なり小なりそれが検知しようとする物理量以外の影響を受ける.これらの対象外の変数はノイズや外乱と呼ばれ,従来のセンサ設計において最小にされるべきものであった.
 本論文は,このような従来のアプローチとは異なる新規な考え方を提案する.すなわち,単一のセンサが受ける多くの物理量の影響をすべて受け入れ,分離し,これらの物理量を再構成してある応用において高度の判断が可能となるスマートセンサを構築する.このような考え方は常に成り立つわけではなく,ある応用において適切なセンサが存在する場合に可能である.
 本論文では,応用としてセキュリティを考え,センサとしてコンデンサマイクロフォンを選択した.コンデンサマイクロフォン型センサは広帯域の圧力を計測できる超高感度圧センサであり,これは加速度,温度,光などの影響を受ける.これらの物理量は周波数分離されセキュリティ用に再合成された.この1つのマイクロフォンからなるセキュリティセンサは地震の発生,火災の発生,不法侵入などを判定できる.このセンサの有効性は実験により確認された.


■ 実環境での物体認識のための距離画像マッチング

東北大・長尾景洋,岡谷貴之,出口光一郎

 本論文では三次元形状を用いた物体認識のための距離画像マッチングの手法について述べる.ここでの距離画像マッチングは,CADモデルなどをもとにしてあらかじめ与えられた形状データと,レンジファインダによって観測された距離画像を比較する処理である.実環境で物体認識を行うためにはさまざまな問題を考えねばならないが,レンジファインダの分解能は最も大きな影響を及ぼすものの1つと考えられる.
 本論文でわれわれはまず,一般的なステレオ計測の原理に基づくレンジファインダによって計測される値と物体までの距離の関係について調べていき,この原理による距離計測では見かけの形状変化が起こることを指摘する.結果として,実際の環境で距離画像マッチングを行う場合,レンジファインダの分解能の違いを考慮しなければならない.この問題を解決する方法として,計測距離による見かけの分解能を変化させてから比較を行う方法を提案する.つぎに,距離画像そのものから比較の元となる形状データを生成して距離画像マッチングを行う場合での,効果的な処理手順を具体的に提示している.
 これらの手法を用いて実験を行い,本手法の有効性について検討を行った.


■ An Open-loop Calculation in a Path Integral Representation of Affine Nonlinear Systems with Control Costs Quadratic in Control Variables

バブコック日立・Teturo ITAMI

 アフィン非線形最適制御系を対象として,2点境界値問題のモンテ・カルロ法による計算方法を提案する.このために,系の波動関数を初期時刻と終期時刻における状態空間内の点を結ぶあらゆる可能な経路の“量子力学的重ね合わせ”すなわち経路積分として表現する.
 経路はそれに沿った”作用”積分で特徴づけられ,作用積分が最小となる経路が最適経路にほかならない.このような作用積分を揺らぎを表現する新制御定数HRにより無次元化し,角度変数を作る.その複素指数関数値すなわち三角関数値が経路の波動関数への寄与率である.この制御定数をあらためて純虚数とおき,HR=iH~Rとする.このとき三角関数が実数の指数関数に変換され,波動関数の経路積分表示はボルツマン分布下の統計平均と同形となる.変換後の制御定数HRは実数であるが,H~Rがそのボルツマン分布の“温度”と見なすことができる.
 温度H~Rを十分に低くするならば,非線形最適制御における2点境界条件を満たす最適経路はこの波動関数の定常位相として計算される.1操作量,2状態量の系を例としたシミュレーション研究により,非線形最適制御を低温度でのボルツマン分布下の統計平均として計算する本方法の妥当性を検証する.


■ エネルギ修正法による2フレキシブルリンクマニピュレータの制御

名古屋大・菅原佳城,尾形和哉,早川義一

 マニピュレータの軽量化に伴い,リンク自体の弾性変形によるたわみや振動が発生しやすくなる.そのような柔軟なマニピュレータはフレキシブルリンクマニピュレータと呼ばれ,一般化座標の総数より入力変数の総数が少ない劣駆動システムであり,また非線形システムである.リンクが増えるにつれてモデルは複雑になり,このようなモデルへの汎用的な制御則の適用には限界が生じる.
 本論文では,Interconnection and Damping Assignment-Passivity Based Control(IDA-PBC)法を2フレキシブルリンクマニピュレータに適用する.IDA-PBC法では,ある整合条件を満たすように導出された入力による閉ループ系が新しいハミルトニアンシステムとなっており,その仮想的な入出力関係も受動的となっている.そのため,閉ループ系が安定となるようなクラスの制御則を特定した後に制御性能を考えることが容易である.そこで,制御入力を印加後の閉ループ系が仮想的な機械システムとなるように制御則を導出し,その仮想的な機械システムのモードベクトルを用いてたわみ振動の大きさを評価することで,設計仕様を設計パラメータの決定に反映させることを提案する.さらに,その有効性を数値的考察および実験結果によって示す.


■ 柔軟ビーム磁気浮上系の受動性にもとづく非線形制御

岐阜大・清水年美,佐々木 実

 本論文では,柔軟ビームを浮上対象とした磁気浮上系の非線形制御を行った.柔軟ビーム磁気浮上系が機械系サブシステムと電気系サブシステムに分割できることを示し,さらに,それぞれのサブシステムに対して独立にコントローラを設計できることを示した.これらの結果を利用して,コントローラを設計した結果,電気系サブシステムに対しては電流フィードバックを用いないコントローラ,機械系サブシステムに対しては柔軟ビームの位置と速度,およびたわみ速度のフィードバックから構成されるコントローラが導出された.得られたコントローラが系を漸近安定化することを示し,数値シミュレーションを行ってその有効性を示した.


■ BMI解法のための分枝限定法に関する考察―下界値計算方法の改良による高速化―

電通大・岡野竜太郎,木田 隆,長塩知之

 多くの制御系設計問題が双線形行列不等式で記述されるが,現状ではその実用的な大域的最適化アルゴリズムが確立されているとはいえない.そのための有効な手法の1つとして分枝限定法が提案されており,いくつかの改良がなされている.しかしながら,まだ解を得るのに多大な時間を必要とする.
 そこで本論文では,分枝限定法にいくつかの改良を加え,現実的な規模の問題をより実用的な時間で解くことを目指す.おもな改良点は下界値計算方法である.ここで提案する方法の利点の1つは,下界値計算に要する時間を短縮できることである.またもう1つの利点は,この計算方法を用いることにより,分枝限定法における探索領域分割の対象となる変数を,双線形をなす変数の片方の変数のみとできることである.これにより,1回の繰り返しに要する時間を短縮し,さらに繰り返し回数自体を減らすことが可能となる.また,この改良にともなって,分枝限定法にさらにいくつかの修正を加える.
 そして,計算機実験により改良を加えた分枝限定法の有効性を示す.計算機実験では,BMIからLMIに変換できていない問題としてよく知られている,静的出力フィードバック制御器のゲイン設計問題を取り扱う.


■ 制御性能を改善する制御器の時変要素に関する考察

東大・丹下吉雄,津村幸治

 ゲインスケジューリング制御を始めとするLMIベースの時変制御系設計法においては,従来制御器の構造と制御性能の関係が不明となりやすい欠点があった.たとえば,制御器を時変クラスへ拡張することで時不変な制御器よりも良い性能を達成することが期待されるが,LMIの解によって与えられる性能限界を理論的に予測することは難しい.
 一方で,Poollaらの研究によりH∞制御においてLTIな制御対象に関して,時変制御器で達成可能な性能は時不変制御器でも達成可能であることが示されている.
 では時変な制御対象に関しては,時変制御器がLTI制御器に比べてどのような理由で優位にあるのだろうか.
 本研究ではあるLTI制御器が与えられている場合に,そのLTI制御器に時変要素を加えることによって制御性能が改善されるための条件を導き,時変制御器のパラメトライズを行う.さらに,制御器がプラントの時変モデルを自然に含む構造をもち,閉ループが時変要素によって線形変換されることを示す.



■ CMACと階層型ニューラルネットワークを併用したインテリジェント制御系の一設計

広島大・高尾健司,加納寛子,山本 透,雛元孝夫

 これまでに,非線形制御の1つとして,人間の脳の構造を工学的に実現したニューラルネットワークを用いた手法が考察されている.その理由としては,その高い非線形近似能力が挙げられる.しかし,その学習速度の遅さが問題とされてきた.また一方で,ニューラルネットワークの一種として,小脳の働きを数学的にモデル化したCMACが提案されている.その特徴としては,学習の際,入力点(学習点)の周辺の入力に対しても学習効果を波及することができるため,従来のニューラルネットワークの学習で広く使われている誤差逆伝播法(BP法)と比較すると,格段にその学習速度は速い.しかし,CMACは入力値に対して量子化,写像を行うため,その出力は離散値をとってしまう.そのため,CMACは非線形近似の精度が悪いという欠点を有している.このような問題に対し,本論文では,学習の初期段階ではCMACを,学習がある程度進むとニューラルネットワークに自動的に切り替えられる新しいインテリジェント制御系の一設計法を提案する.提案手法によると,お互いの欠点を補完することができ,少ない学習回数で良好な制御結果が得られる.なお,数値例により本手法の有効性を定量的に検証している.


■ 2指ハンドによる転がり接触を用いた対象物の把握・操りと接触点の制御

名古屋大・中島 明,長瀬賢二,早川義一

 本論文では,多指ハンドロボットによる転がり接触を伴う対象物の把握・操りと接触点の制御について議論した.本研究では,6自由度を持つ2本の指先を考え,転がり接触を伴う対象物の把握・操りにおいて,転がり接触の非ホロノミック性を積極的に利用し,対象物の位置・姿勢,内力,および,すべての接触点の制御を同時に実現する手法を提案した.具体的には,(1)対象物の位置・姿勢,内力,および,接触点の一部に対する線形化補償器の導出,(2)指と対象物を抽象化した平面を転がる球のモデルにおいて,上記で制御された接触点の単一の閉軌道の繰り返しを利用した接触点のレギュレーション法の提案,を行った.提案する閉軌道は,それを決定するパラメータを適切に選ぶことにより,必ず目標点までの距離を減少させることができるという特徴をもつ.また,手法の有効性を数値例により確認した.


■ 第1種境界条件をもつ線形放物系に対する境界安定化

神戸大・南部隆夫

 本論文では,境界観測―境界制御則のもとでの線形放物形分布系の安定化を考察する.境界制御系においては,従来は付随する楕円型作用素の分数ベキに関する十分な知識が不可欠であった.境界構造が複雑になるにつれて,対応する楕円型作用素の分数ベキの構造を完全に把握することは,より困難になる.たとえば,標準的な2階楕円型作用素であっても,その境界条件が部分的に第1種,部分的に第3種のような場合には,その分数ベキの構造は十分には知られていない.
 本論文の目的は,第1種境界条件をもつ境界制御系に対して,特別な分数ベキの構造を経由することなく,より簡単な代数的方法を提案することにより,安定化を実現することである.本文における制御系では,実は分数ベキの構造は完全に知られている.しかしながら,既存の分数ベキ変換による方法では,最も基本的な制御系の適切性(well posedness)の検証に重大な困難が生じてしまうため,本文の代数的方法がそれを回避できる大きなメリットの1つになる.
 本文の制御系は標準的なモデルであるが,その代数的枠組みはより一般的な制御系に適用でき,新しい代数的視点を提供できる.例として,簡単な2階線形微分方程式系を考察し,この方法により安定性増大のための制御則設計が可能であることを示す.


■ 柔軟な可変粘性要素の開発

立命館大・川村貞夫,ソニー・小形 崇,立命館大・磯田康吉

 本論文では,要素自身が柔軟であり,粘性値が可変の受動要素を開発する.従来の粘性負荷装置に比べて大きな違いは,要素自身が軽量で柔軟であることと,外部信号によって粘性値が,さまざまに設定できることである.要素自身の軽量性・柔軟性は,人間に装着する機械システムなどを想定した際には,きわめて重要な性質となる.たとえば,人工現実感において,このような要素を直接的に人間の関節に装着すれば,仮想的に粘性を人間に体感させることが安全に行える.また,空気圧ゴムアクチュエータとこのような要素を併用することによって,適切な粘性が運動に負荷でき,振動抑制が効果的に達成される.この際,粘性要素自身も柔軟であるので,アクチュエータ統合システム全体も柔軟という長所を残して,人間との機械的な親和性を保証できる.そこで,本研究では柔軟な可変粘性要素を提案し,基本的特性を示すとともに,効果的にダンピング効果が実現できることを実験によって示す.まず,基本的要素の構造を説明し,そのモデル化を行う.つぎに,速度信号をフィードバックすることによって,任意の値の粘性が実現できる原理を解説する.また,実際に粘性を提案する方式によって実現し,その性能を評価する.


■ フェロモンコミュニケーションを利用した自律移動型センサ群による監視の高信頼度化

電通大・石垣 陽,田中健次,筑波大・伊藤 誠

 原子力発電所など大規模プラントでは,高信頼度に異常を発見する安全監視システムが不可欠である.誤報・欠報といったセンサの誤動作を防ぐには,複数センサを多数の監視地点に固定する方法が効果的だが,現実にはコスト面での問題がある.また,原子力プラントでは,放射線に脆弱なセンサを原子炉付近に常時設置できないなど,センサの固定が本質的に困難な場合があるという問題もある.これらの問題の解決には,少数センサ群による自律移動型監視システムが有効と考えられ,本論文ではフェロモンコミュニケーションを利用したアリ型センサシステムを提案する.
 自律移動型監視システムのセンサに要求される機能として,つぎの3つが考えられる.すなわち,(1)異常検出時は1箇所に集まり誤報を防ぎ,その後空間全体に効率よく拡散し欠報を防ぐこと,(2)監視対象が均質である場合,場所によらず,監視に訪れる到着間隔がほぼ一定であること,(3)その到着間隔は,監視対象の重要度に応じて制御できること,である.本論文では,これらの要求を満たすための,監視対象の重要度やセンサ数などに応じたフェロモンの散布・蒸発パラメータを,計算機実験により明らかにしている.


■ AGV搬送システムにおける投入台数および双方向性走行経路設計法

東大・千葉龍介,太田 順,新井民夫

 AGV(Automated Guided Vehicle)搬送システムにおいて,重要な設計事項に,走行経路設計問題,行動則設計問題,投入台数設計問題がある.ここで行動則は,工場のスペック等の制約により,他の2種に先立ち設計される.AGVはガイドが必要であるが,そのガイドの敷設により走行経路が限定されてしまう.したがって,AGVが走行する経路を事前に,適切に設計しておく必要がある.これが走行経路設計問題である.
 本論文において,入力されるAGVの行動則に適切なAGV台数を設計し,また適切な双方向性走行経路の設計を遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)を用いて行う方法を示す.また,AGVの行動則を包括的に分類することにより,さまざまな行動則に適したAGV台数および双方向性走行経路が設計されていることを,シミュレーションにより検証し,その有効性を示す.入力される行動則により,さまざまな走行経路が設計されることを示し,行動則に適した走行経路の重要性を示す.


■ 高放射線環境下で使用可能な基線長可動型距離センサの開発

日本原子力研・岡 潔,三菱電機・檜山昌之

 従来の距離測定用センサ内部には,投光光源として半導体レーザーが,また結像スポット点の変位を検出する素子としてPSDまたはCCDリニアセンサ等の光半導体素子が用いられていた.このため,核融合炉や原子力事故等,放射線の空間線量率が高い場所では,これらの半導体素子は急激に劣化し,計測不能となってしまうという問題点があり,人間の代わりに作業するロボットには搭載不可能であった.
 本件では,このような背景をふまえ,高放射線環境下で作業するロボットに搭載可能で,ロボットと対象物間の距離を測定することが可能な距離測定手法について新たに考案したので,その原理について述べるとともに,従来の測定手法と比較して測定精度が良いことを示した.また,本手法を基に設計・製作を行った距離測定センサについて特性試験を実施し,その結果を基に本センサの優位性を示した.


 
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