SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.40 No.6(2004年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ Neural Network Based on Non-parametric Confidence Bound Estimation for MSPC Chart

Oita Univ.・Xiongfeng FENG, Masanori SUGISAKATsinghua Univ.・Xianhui YANG, Yongmao XU

 In implementing multivariate statistical process monitoring (MSPM), a frequently encountered problem is the estimation of Confidence Bound, which in fact, is a problem of density function estimation. Traditional assumption of normal distribution of process data often mismatches the real situation. As a new non-parametric method for density estimation, neural network estimator is proposed to estimate the distribution and density function of multivariate statistic. Estimated result is used to calculate the Confidence Bound of multivariate statistical process control (MSPC) chart. Experiment study illustrates the proposed technique has the permit of simplicity and effectiveness.


■ エアー枕封入音響センサによる心拍・呼吸の無拘束無侵襲計測

山口大・松原 篤,田中正吾

 著者らは先に,エアー枕に封入した音響センサを用いた心拍および呼吸の無拘束無侵襲計測システムを提案したが,瞬時心拍周期については常に高精度な計測が行えたものの,瞬時呼吸周期については,呼吸が弱い場合にときおり計測精度が劣化していた.以上のことから本論文では,前回のように心拍と呼吸信号を2つのバンドパスフィルタにより分離・抽出して心拍と呼吸の周期を独立に計測する代わりに,ひとつの共通のバンドパスフィルタに通したときに得られる心拍の基本周波数の側帯波成分を利用して呼吸周期を高信頼度に計測することにした.つまり,まずセンサ出力の全波整流波形をひとつのバンドパスフィルタに通し心拍および呼吸信号を分離せずにいっしょに抽出する,そして,このときフィルタ出力に現れる4つの周波数成分(心拍の基本周波数および第2高調波成分と心拍の基本周波数の側帯波成分)を,心拍と呼吸の周期をパラメータとするダイナミックモデルで表わし,これにカルマンフィルタ・最尤法を適用することにより,瞬時心拍周期および瞬時呼吸周期を高信頼度かつ高精度に計測しようとするものである.最後に,実験により,今回提案の方式により瞬時心拍周期および瞬時呼吸周期が呼吸の強弱に拘わらず高信頼度・高精度に計測できることを確認した.


■ 生体関節トルク特性を考慮した下肢操作特性の解析

広島大・田中良幸,マツダ・山田直樹,正守一郎広島大・辻 敏夫

 本論文では,人間の関節トルク特性を考慮した可操作性を定義し,人間の多関節運動時の力操作能力に対する新しい評価手法を提案する.まず,下肢関節による等尺性筋収縮時の関節トルクを計測し,単関節運動における各関節トルクの関節角度依存性を解析する.そして,関節可動域内において人間が発揮できる最大関節トルクが関節角度によって大きく変化すること,またその大きさが回転運動の方向に関して正負非対称となることを明らかにする.つぎに,計測結果を用いて関節トルク特性をモデル化し,それらを考慮に入れた定量的な評価指標を定義する.そして最後に,提案法を用いて下肢多関節運動における足先力の操作特性および各関節へ加わる負担度を解析評価し,本手法の有効性を示す.


■ ビレットの誘導加熱探傷における放射率差ノイズの粉体塗布による改善効果について

大同工大・遠藤敏夫,大同特殊鋼・中原勘寿

 鉄鋼の中間製品であるビレットの表面疵を自動検査する手段の1つとして誘導加熱探傷法がある.この探傷法はビレット表層部を高周波誘導加熱で急速加熱させたとき,疵部と健全部の温度上昇に差が生ずることから,その温度差を赤外線サーモグラフィで測定し,疵部位を検出する方法である.誘導加熱探傷法は,装置構成が簡便でメンテナンス性に優れるなどの利点を有するが,疵検出に赤外線サーモグラフィを用いているためビレット表面の放射率差,とくに,ビレット搬送時に頻繁に生ずる光沢部がノイズとなり,実用化にはビレット表面の放射率を高めると同時に,一様化する技術が必須であった.
 筆者らは,ビレット表面を粉体でまばらに覆うことによって疵信号を高め,かつ,ノイズを大幅に低減させる方法を考案した.ここでは,粉体塗布面の放射率が被覆面積率と直線関係にあること,さらには,粉体被覆厚みと熱伝達遅れの関係を,ステンレスサンプルを対象とした測定によって示し,粉体をまばらに塗布することによってS/Nが大幅に改善される仕組みを明らかにしている.ここで報告した方法を適用した非磁性ビレット用の自動探傷装置は生産ラインで現在も順調に稼働を続け,生産性と製品品質の向上に大きく貢献している.


■ セルラニューラルネットワークおよびその異常診断への応用(第2報:近傍設計によるセルラニューラルネットワークの効率化)

岡山工技センタ・章  忠山梨英和大・灘波道弘,岡山県立大・川畑洋昭

 相互結合型ニューラルネットワークの一種であるセルラニューラルネットワーク(CNN)は連想記憶媒体として有効であることが報告され,パターン認識などに適用されている.そのCNNにおいて,近傍や出力関数の設計は分類能力に大きな影響を与える.そこで,本論文では近傍の設計に着目したCNNの効率化について検討を行い,分類能力を保持したまま,想起時間を短縮する近傍の設計方法を提案した.そしてモデルパターンによるシミュレーションを行い,従来法との比較から提案法が有効であることを示した.さらにCNNを用いた異常音診断を例に挙げ,提案法が実際のアプリケーションにおいても有効であることを示した.得られたおもな結果はつぎの通りである.1)CNNの自己想起機能に影響を与える重要な因子は近傍の大きさではなく,繋いでいる,異なる状態をもつ周辺セルの数,言い換えれば周辺セルからの情報量である.また,想起能力を維持するために必要な周辺セルの数NはCNNのサイズによらず,記憶パターン間の類似度ρ0に大きく依存している.2)新たな近傍設計ルールを提案し,設計基準となる,異なる状態をもつ周辺セルの数Nの目安をシミュレーションにより定めた.そして,得られたNを用いてCNNを構成しモデルパターンの実験により近傍設計ルールの有効性を確認した.3)さらに,新たな近傍設計法を用いてCNNを設計し,車の異常音の診断実験を行った.提案手法によるCNNの想起時間は同様な性能をもつ従来法によるCNNの想起時間の約5%であり,提案手法の有効性を明らかにした.


■ 足爪先加速度積分による歩行経路の3次元無拘束計測

弘前大・佐川貢一,横河電機・煤孫光俊東北大・大瀧保明,猪岡 光

 歩行時爪先加速度を積分することによって,東西南北上下方向の3次元移動量を無拘束推定する方法を提案する.使用したセンサシステムは,3次元加速度センサ,角速度センサ,地磁気センサで構成される.移動距離は加速度の二階積分によって求めるが,加速度積分によって求めた速度には積分誤差が含まれる.そこで,立脚相での速度が常にゼロになると仮定して,加速度積分の積分誤差をキャンセルする.また,遊脚相でのセンサシステムの計測軸の方向も常に把握する必要があるが,計測した角速度の積分値も積分誤差の影響を受ける.そこで,遊脚相終了時のセンサシステムの計測軸と,立脚相で求めた計測軸とのずれがキャンセルされるように,遊脚相での計測軸の動きを修正する.提案した2種類の積分誤差修正法の効果を確認するため,階段昇降時の3次元移動経路を推定する実験を行った.その結果,実際の歩行距離に対する最終推定位置の誤差は約10[%]となった.このことから,提案した方法は,身体に取りつけたセンサシステムで3次元歩行距離を無拘束推定することが可能であることが確認された.


■ 等温化圧力容器を応用した圧力微分計の提案

東工大・加藤友規,川嶋健嗣,香川利春

 空気圧制御システムにおいては,圧力の測定は大変重要である.さらにその微分値が計測できれば微分先行型制御が構成可能となる.
 本論文では,信号出力の微分値をセンサによって直接的に計測することを目的とし,「等温化圧力容器」の原理を応用して,タンク内や管路内における圧力の変化速度を測定する「圧力微分計」を提案した.この圧力微分計は容器内に金属製綿が詰められた等温化圧力容器,ダイヤフラム式差圧計と層流抵抗管によって構成されている.
 まず提案する圧力微分計の構成図・測定原理を説明し,つぎにシミュレーションにより,提案する圧力微分計の有効性を検証し,さらに実験により提案する圧力微分計の出力信号を圧力計の出力信号を同時微分することにより得られる圧力微分値と比較を行った.最後に圧力容器に銅線を詰めずに空容器を用いた場合の出力信号と比較し,提案する圧力微分計の優位性を確認した.



■ Identification of Incipient Slip Phenomena Based on the Circuit Output Signals of PVDF Film Strips Embedded in Artificial Finger Ridges

Toyota Tech. Inst.・Isao FUJIMOTO, Yoji YAMADAKeio Univ.・Takashi MAENO, Tetsuya MORIZONO,Yoji UMETANI

 This paper deals with development of compliant artificial finger skin surface ridges with a pair of PVDF film strips embedded in each of them as sensing transducers for incipient slip detection in pursuit of elucidating the mechanism of human static friction sensing. We describe design and manufacture of the surface ridges and distinctive detection of incipient slip from rolling.


■ 一般化終端不等式条件を用いた線形時変に対する出力フィードバックReceding Horizon H∞制御

金沢大・河合康典,東 剛人,藤田政之

 本稿では,直交条件を仮定しない一般的な線形時変システムに対して出力フィードバックによるreceding horizon H∞制御問題について考察する.まず,出力フィードバック問題においては,2本のリカッチ微分方程式それぞれに対して終端不等式条件が必要となるが,従来研究において提案された終端不等式条件を特別な場合として含む2本の一般化終端不等式条件を提案し,その性質を示す.つぎに,提案した一般化終端不等式条件を用いたreceding horizon H∞制御問題について考察し,コントローラの導出を行い,閉ループ系の指数安定性とL2ゲインに関する有界実性を示す.ここでは,われわれが従来研究において提案しているブロック対角行列を用いたアプローチが重要な役割を果たしている.最後に,提案した一般化終端不等式条件を用いて構成されるコントローラを用いた数値例を示し,その有効性を検証する.


■ PID制御器のデータベース駆動型チューニング

阪大・太田 純,山本 茂

 現在行われている補償器の自動調整は,入出力データから制御対象の数学モデルを記述し,それによって補償器のパラメータを与えるのが一般的である.しかし,制御対象が複雑になるにつれて数学モデルの記述も複雑になり適用が困難になる.本論文では,制御対象をモデル化するのではなく,オペレータが行う補償器のパラメータ調整則を一種の非線形関数として捉え,その関数を推定することで補償器の自動調整を行う手法を提案する.
 本論文では,オペレータが過去に補償器を調整して得られた補償器のパラメータおよび制御結果をデータベースに蓄え,Model-on-Demandなどのデータベースを活用した手法によりパラメータ調整則を与える非線形関数を推定し,所望の制御結果を得ることを目的とする.本稿では,特にPID補償器について提案手法の有用性を示す.有用性を検証するため1次遅れ+むだ時間系からなるプロセス制御系と電気油圧サーボ系に対し,シミュレーションを行い,それぞれ所望の制御実績値となるようなPIDパラメータを自動抽出する.


■ 交互発話における発話長と発話間隔の時間的階層性

東工大・三宅美博,辰巳勇臣,杉原史郎

 本研究は,交互発話における発話ダイナミクスの時間構造を明らかにすることを目的としている.実験課題は,相手の発話に注意しつつ一方がA(エー)他方がB(ビー)と交互に発話していくものである.最初に,人間と機械が交互発話できる実験システムを構成し,機械側の発話条件をさまざまなパラメータに固定して実験を行った.その結果,交互発話においては発話長間での相互作用と発話間隔の間での相互作用という,2種類の作用関係が存在することが示された.つぎに,機械側の発話条件に時間的摂動を加えたところ,人間側の発話長は素早く応答するが,発話間隔はゆっくりと応答することが明らかになった.このことは,2種類の相互作用の間に時間的な階層性が存在することを意味している.さらに,発話間隔は呼吸過程から,発話長は発声機構から影響を受けていることも示された.これらの結果より,人間の対話コミュニケーションは,発話長と発話間隔という二重化された階層的相互作用プロセスから構成されていることが推測される.


■ 振動刺激による人間の歩行誘導

三重大・池浦良淳,デンソー・山下普史三重大・水谷一樹

 本論文では,振動刺激を用いた人間の歩行誘導を試みる.具体的には,偏心おもりを取り付けたモータを両手にもたせ,右側に向かせる場合には右手のモータを振動させ,左手のモータを静止させる.逆に,左に向かせる場合には左手のモータを振動させ,右手のモータを静止させる.当手法において,人間への目標方向に対するモータの振動方法を検討した.まず,振動モータの指令に従って,歩行をしないである場所で足踏みをしながら方向を変える実験を行った.その結果,偏心量の違いによる振動力の大きさは,人間の応答には影響がないことがわかった.また,周波数特性から,1.3Hzまでの方向転換指令までは追従できることがわかった.つぎに,歩行中に同様の指令をした結果,歩行速度が速くなると人間の方向転換の速度も速くなることが示された.また,周波数特性から歩行速度が速くなると1.3Hzに方向転換速度のピークが現れることがわかった.このような人間の特性をARXモデルで表現し,パラメータの同定を行った.最後に,人間を向かせる目標角度に対して,比例制御による制御系を構成し,ARXモデルによるシミュレーションと人間による歩行実験を行った.その結果,両者の結果はよく一致し,当手法の有効性が示された.


 
copyright © 2004 (社)計測自動制御学会