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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.40 No.8(2004年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ パラレルワイヤ駆動による他動的運動を用いた人体の関節トルク推定システム開発

松下電工・谷口祥平立命館大・小澤隆太,石橋良太,植村充典,金岡克弥福岡工大・木野 仁,立命館大・川村貞夫

 人間は多関節構造体であり,スポーツなどに見られるように複雑で巧みな運動を行う.その運動解析の研究は,スポーツトレーニング分野やパワーアシスト装具の開発利用を目的として数多く行われてきたが,その1つに関節トルク推定問題がある.関節トルクの推定に用いる運動は能動的運動と他動的運動の2つに分類される.おもに能動的運動を利用して行われる推定法は逆ダイナミクス法であり,これは人体のモデル化誤差,パラメータ同定誤差,速度・加速度信号を取得する際のノイズ,フィルタ誤差などが原因で正確な関節トルク推定をすることが困難となる.一方,他動的運動を利用した関節トルク推定法として,腕や足などの先端を他動的に駆動し,そのとき発生する力と対象の幾何学的な関係から関節トルクを推定する方法がある.本研究では,この他動的運動を利用する関節トルク推定システムを開発する.本システムは,パラレルワイヤ駆動機構と学習制御を利用して,任意の時空間軌道に対する関節トルクを推定できる.本推定法は逆ダイナミクス法で問題であったモデル化誤差,パラメータ同定誤差,速度・加速度データのノイズ・フィルタ誤差が関節トルク推定誤差に生じず,高精度な関節トルク推定ができる.


■ Load and Deflection Measurement for Evaluation of Ground Strength with Portable FWD System

Tokyo Sokki Kenkyujo Co., Ltd.・Takahiro FUJYU,Jun SUGAWARA, Hiroyuki TAKUNO and Haruki OKANO

 本稿は地盤の剛性評価に用いる可搬型の小型FWD(FWD-Light)における荷重と変位量の計測方法について紹介を行うものである.
 本装置は,対象地盤表面に設置した載荷板上へ任意の高さから重錘を落下させ,このときに発生する衝撃荷重と載荷点直下の変位量を,内蔵のひずみゲージ式荷重計および加速度計により測定し,さらに専用モジュールにて測定値に演算処理を施し,地盤の剛性評価を行う非破壊試験装置である.おのおののセンサの出力を,本体に内蔵したA/D変換器により常にディジタル値に変換し,衝撃荷重が設定したレベルを超える前後の荷重および加速度データをメモリに記録する.さらに,加速度データについては,零レベル以降のデータを2回積分することで変位量を求めている.こうした計測結果は専用の表示器もしくは専用の計測・処理ソフトウェアがインストールされたパソコン上に地盤剛性の評価結果とともに表示・記録される.


■ 参照入力集合のパラメトリゼーションにもとづく拘束システムの制御―リファレンスガバナの実現と実験による検証―

大阪大・大原伸介,平田研二

 現実の制御系は,アクチュエータの飽和要素,制御対象の保護のための制限など数多くの拘束条件を有する拘束システムである.そのような拘束システムの制御法として,リファレンスガバナとよばれる付加的な入力整形機構が近年注目されている.
 本稿では,オンライン処理にもとづいた新たなリファレンスガバナを提案する.ここでは拘束条件を破らないことを保証した参照入力からなる集合,参照入力集合をパラメトライズし,それを利用したリファレンスガバナを提案する.参照入力集合をパラメトライズすることは,これまでに提案されている手法に対し,無限個の参照入力集合を構成することになる.その結果,参照入力の整形の自由度が増加し,良好な追従特性が得られる.またデータとして保持する集合は1つのみでよいので,計算機の負担が軽減される.実現されるリファレンスガバナによる参照入力の整形は線形計画法を用いて計算できるので,効率的に参照入力の整形することが可能である.最後に,数値例とDCモータの位置決めの実験結果を紹介し,提案手法の有効性を示す.


■ 外乱を受ける拘束システムに対するリファレンスガバナの設計法

京大・畑中健志,鷹羽浄嗣

 本論文では,あるクラスの有界外乱を受ける拘束システムに対する,リファレンスガバナの2つのオフライン設計法を提案する.両手法とも,参照入力の整形終了時刻において状態変数を最大CPI(Constrained Positively Invariant)集合の内部に整定することによって,すべての時刻での拘束条件の達成を保証する.また,過渡応答を向上させるために,L1ノルムおよびL2ノルムにもとづく2つの評価関数を導入する.そして両手法とも,リファレンスガバナの設計を,指定されたクラスに属する任意の有界外乱に対して状態を最大CPI集合の内部に整定するという拘束条件の下で,最悪ケースでの評価関数値を最小化する問題に定式化する.L1ノルムおよびL2ノルムにもとづくリファレンスガバナの設計はそれぞれ線形計画問題と凸計画問題に帰着され,既存の数値計算アルゴリズムを用いて効率的に解くことができる.数値例を用いて提案法の有効性を実証する.


■ Minimal Order Bilinear Observer for High Performance Control of Induction Motor Taking Core Loss into Account

Kitami Inst. of Tech.・Mohammad Abdul MANNAN,Toshiaki MURATA, Junji TAMURA,Hokkaido Inst. of Tech.・Takeshi TSUCHIYA

 本論文は,鉄損をうず電流損として考慮したモデルを用いて,間接形ベクトル制御法における2次鎖交磁束と2次電流のオブザーバについて,最小次元オブザーバの構成について述べている.誘導電動機は入力と状態の積が非線形性に依存する双線形系として記述され,リアプノフの安定法により,非線形オブザーバの推定誤差は安定にゼロに収束し,良好な推定が行われることが確認される.
 鉄損を考慮したことにより,ベクトル制御法は複雑となるが,磁化電流を考慮することにより,間接形ベクトル制御システムが構成され,d軸とq軸の磁化電流比を最適に制御することにより,最大効率運転が可能となることが示される.多入力−多出力系の最適レギュレータ理論を応用した効率最適化制御系構成法において,測定不可能な2次電流,2次鎖交磁束の推定は,誘導電動機のトルク評価に利用できることが予想され,今後のベクトル制御法の展開に貢献することが期待される.


■ 空気圧式調節弁固着現象のモデル化と固着検出法の開発

京大・丸田 浩,加納 学,住友化学・久下本秀和,東芝・清水佳子

 制御性能監視は,生産プラントの高効率運転を実現するために重要な技術である.制御性能が劣化する原因は,コントローラの調整不良や機器の不具合などさまざまであるが,プロセス産業において発生頻度の高い原因は空気圧式調節弁の固着である.調節弁の固着はプロセス変数の周期振動を引き起こすため,早期に固着を検出し,制御性能を向上させるためにオペレータが適切に対応することを促す仕組みが必要である.本研究では,調節弁に固着が発生するメカニズムについて検討し,調節弁固着現象のモデル化を行うとともに,固着検出法を提案する.提案法と既存手法を,開発した固着現象モデルを用いて発生させたシミュレーションデータおよび複数の化学プロセスの運転データに適用した.その結果,提案する固着検出法は,優れた固着検出性能を実現できるとともに,固着とコントローラの調整不良や外乱とを識別できることを確認した.


■ 区分的線形システムの可観測性とモードシーケンス推定可能性

東工大・白根一登,井村順一

 連続状態と離散状態の混在するシステムはハイブリッドシステムと呼ばれる.区分的線形システムはこのハイブリッドシステムの1つのクラスであり,近年盛んに研究が進められている.本論文ではこの区分的線形システムの可観測性について解析的な知見を与えることを目的とする.
 まず,区分的線形システムにおいては線形システムと異なり可観測性と可再生性は等価でないことを示す.また,可観測性および可再生性は出力からシステムの連続状態量を推定できるための性質であることに注目し,出力から離散状態を推定できるための性質として,モード推定可能性,モードシーケンス推定可能性をそれぞれ定義する.その後,システムが可再生,およびモードシーケンス推定可能となるための必要十分条件をそれぞれ導出し,これらの条件を用いて,システムが可観測であるための必要十分条件はシステムが可再生かつモードシーケンス推定可能であることを示す.
 さらに,区分的線形システムに対して逆時間システムを定義し,可再生性と逆時間システムの解の唯一性によってシステムの可観測性を特徴づける.



■ 離散時間システムに対する最適な不変集合―有界入力に対する可到達集合の近似―

阪大・新銀秀徳,太田快人

 本論文では,離散時間線形システムの有界入力に対する可到達集合を,楕円体の不変集合を用いて近似する方法を示す.ここでの不変集合は,有界入力の集合とそれを受けるシステムに対して定義される不変集合である.離散時間システムの可到達集合を求める方法として,状態が各時刻までで到達可能な領域を逐次計算してゆく方法には,つぎのような問題点がある.一般に,計算すべきパラメータ数は指数的に増大してゆき,有限で打ち切っても可到達集合の内側の集合しか得ることができない.内側の集合では,外乱の影響を小さく見積もることになってしまう.不変集合は可到達集合を外側から覆い,楕円体は少ないパラメータで表現することができるので,楕円体の不変集合を用いて近似することは有用である.このような近似に関して従来の研究では,楕円体が不変集合になるための十分条件や,L1ノルムの精度良い近似値を与える楕円体の計算法が得られている.本論文では,必要十分条件を求めることにより,すべての楕円体の不変集合をパラメータ化する.その上で,このような楕円体の可到達集合に対する近似度を表わす評価関数として,軸長の自乗和および体積を考え,それらが凸最適化により最小化できることを示す.


■ 強化学習のための矩形基底による自律分散型関数近似

理化学研・小林祐一,東大・湯浅秀男名古屋大・細江繁幸

 強化学習をより複雑・大規模な問題に適用するためには,問題に即した分解能を少ない設計パラメータで安定的に実現する関数近似が求められる.本研究では,自律分散システムに基づいた矩形基底の逐次分割・統合のアルゴリズムを提案し,TD学習およびDynaにおける状態価値関数近似への適用法を示した.局所近傍の情報から得られる曲率を利用し,分割と統合により近似曲面の曲率に応じた分解能を分散並列的なアルゴリズムで実現する.従来と同様のTD学習への適用に加えて,矩形基底を利用した状態遷移および報酬を同定するDynaの枠組みへの適用法を示した.矩形基底を局所情報に基づいて処理することで,省設計パラメータ,局所近傍の判断に要する計算量の低減並列分散アルゴリズム化,などを実現することができる.強化学習の共通課題として知られる,振子振り上げ問題とAcrobot安定化問題への適用を通じて有効性を示した.



■ 瓦礫跳躍高度の向上を目指した空圧ジャンピングの特性解析

東工大・塚越秀行,佐々木正志,北川 能,田中崇裕

 本論文では,瓦礫環境で高い踏破能力を生成する人命探査用ジャンピングロボットの開発を目指し,実際の設計制約条件のもと,跳躍高度を最大化するための空圧シリンダ設計法について論ずる.そのためまず最初に,1)空圧ジャンピングの過渡特性に関する基礎式を誘導する.つぎにその基礎式に基づいたシミュレーション結果より,2)シリンダの内容積またはストローク長を一定に保った条件下で,跳躍高度を最大化する最適受圧面積の存在を明らかにし,その導出法を提案する.さらに 3)ロッドに対するシリンダチューブ側(持ち上げられる側)の質量配分を高くするほど跳躍高度が高まることを指摘し,上記解析結果を基礎実験により確認する.最後に,提案した解析手法をもとに最適設計された空圧シリンダをロボットに搭載して走行・跳躍実験を行い,本論文で述べた設計手法の有効性を検証する.なお,開発したロボットの動作ビデオは下記で常時ご覧いただける.
  http://www.cm.ctrl.titech.ac.jp/study/jump/home.html



[ショート・ペーパー]

■ Realization-Independent Condition for Dissipativity of Descriptor Systems

Hiroshima Univ.・Izumi MASUBUCHI

  This paper proposes a generalized KYP-type matrix inequality that provides a necessary and sufficient condition of dissipativity of descriptor systems. While known bounded or positive-real inequalities are only valid for descriptor systems with particular realization of them, the proposed inequality condition is independent of the realization of descriptor systems. Thus the new inequality is used for analysis of descriptor systems with freely selected realization. Further, the proposed inequality is applicable not only to bounded and positive-realness but to dissipativity with respect to supply rates given by an arbitrary quadratic form of the input and the output.


■ Bounded Rational Online Bin Packing Solution Using Garbage Can Model

Kyoto Univ.・Qiang WEI, Tetsuo SAWARAGI, Y. TIAN

  Bin Packing (BP) problem is one kind of typical combinatorial optimization problems concerned about packing a certain amount of different items into the minimal number of bins under specific constraints. In this paper, an organizational model called Garbage Can Model (GCM) is adopted to deal with a relaxed online BP problems. In GCM, the organizational structure and fluidities of problems and resources provide many optimization and re-combination opportunities for arriving items in stream. Different from traditional online BP algorithms, which usually result in a less-optimal solution in pursuing an extremely online executing speed, GCM-based algorithm achieves finding a bounded optimal solution for a relaxed online BP in a reactive fashion through seeking for a solution as optimal as possible as far as the time is allowed.


■ 歩行介助における共創出プロセスの解析

東工大・武藤 剛,三宅美博

 人間は運動を相互に適応させあうことで,状況に応じたさまざまな協調機能を創り出すことができる.われわれは,このような人間同士の協調運動の共創出プロセスの具体例として,障害者の歩行訓練の現場で広く用いられている協調歩行に注目し,そのモデル化を進めてきた.本研究では,その一例である歩行介助ロボットウォークメイトによる片側性麻痺の歩行障害を有する患者の歩行介助過程の解析を行った.その結果,ウォークメイトの構成要素である身体モデルと内部モデルによる相互拘束プロセスと,それに対応する人間側の相互拘束プロセスの稼動タイミングが同調すること,そして,その同調性が,障害者の歩行運動の非対称性の緩和とともに,向上することが明らかになった.これらの結果は,歩行の非対称性の緩和過程と相互拘束の同調過程がともに時間発展するプロセスであり,両者の間に時間的相関があることを意味している.したがって,このことは相互拘束プロセスの同調性を向上させるメカニズムと歩行運動を改善させるメカニズムの間に関係があることを示唆しており,ウォークメイトの歩行介助ロボットとしての妥当性を支持するものである.


■ 音楽アンサンブルにおけるタイムラグの影響

東工大・小林洋平,永田洋一,三宅美博

 音楽アンサンブルには,演奏者間のタイムラグが大きな影響を及ぼすといわれている.これまで,特殊なプロトコルや楽譜を用いることにより,タイムラグのある状況下でもアンサンブルは実現されていたが,一般的なアンサンブルへの適用は困難であった.本研究ではより一般的なアンサンブルを実現するための第一歩として,ラグがどのように2者間のアンサンブルに影響するかを調べた.ラグが50ms以下と小さい状態では,ラグがない場合とほとんど差がない演奏が実現された.しかし,ラグが増大するにしたがって,先行する演奏者と追従する演奏者とに分かれる非対称な状態がみられた.さらに80ms以上の大きなラグでは,このような役割分化の状態でも対応しきれず,最終的に演奏が不可能となり破綻する様子が観察された.最終的に破綻が起こることから,ラグの小さい対称な状態では双方の演奏者が,よりラグの大きい非対称な役割分化の状態では先行側の演奏者が,予測しながら演奏を行って演奏を成立させていることが推測された.このような人間がラグに対応する予測機構を解析すれば,その結果を応用することによりラグを克服できるアンサンブル支援システムの実現の可能性がある.


 
copyright © 2004 (社)計測自動制御学会