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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.40 No.12(2004年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ プローブ型RTA(Recovery Temperature Anemometry)

産総研・石橋雅裕

 空気を含めた一般的な気体の等エントロピー流れでは,回復温度とよどみ点温度の差が流速の自乗に比例する.RTAはこの原理に基づき,細線熱電対線をトラバースして回復温度分布を測定し,これから流速分布を求める.RTAは,見かけ上は熱線流速計によく似ているが,センサとして用いる熱電対線の感度が接点に集中しているため,熱線流速計に対していくつかの利点をもつ.
 本論文では,直径50mmの細線熱電対線をその接点で折り返したプローブを製作し,これを用いたRTAが,流れに沿って張られた細線熱電対線によるRTAと同じ結果をもたらすことを示し,細線の回復温度係数が流れの入射方向に依存しないことを明らかにする.これにより,細線熱電対線を用いたRTAにさまざまな形態のセンサとトラバース機構の使用が許されれ,その応用性が格段に広がった.


■ 球殻内金属球の位置計測による全加速度方向の検出

新潟大・岡田徳次,ナナオ・鈴木則幸,三洋電機・黒崎賢一

 本論文は,重力加速度と運動加速度を合成した力に関するすべての方向を計測するための基礎技術として,3次元空間にある金属球中心位置の検出原理について述べる.金属球は,球容器内に閉じ込められ,かつ,転動自由である.高周波発振形近接センサの前面から金属球までの距離は演算器を介して常時収集される.金属球の材質,構造,大きさの属性が固定されると金属球中心を定める式は,互いに直角に取り付けられる3つのセンサから個別に生成される回転楕円体を使って導出される.製作したセンサヘッドのアクリル製容器と鉄球の半径はそれぞれ,25mm,24mmである.基礎実験の結果は,検出原理の妥当性と計測誤差が容器内壁寸法の精確さに支配されることを示す.後半では,提案する方法が全加速度方向検出に有効なことを実測データを使って明らかにする.


■ RI-Splineウェーブレットおよびその画像処理への応用

豊橋技科大・章 忠,岡山県立大・戸田 浩,岡山工技センター・藤原久永

 本研究では筆者らが提案した複素型RI-Splineウェーブレットによる複素多重解像度解析を2次元に拡張し,それを用いる2次元複素型離散ウェーブレット変換(CDWT)を提案した.本拡張法の手順は以下の通りである.1) レベル―1において,横→縦の順に,実数→実数(RR),実数→虚数(RI),虚数→実数(IR),虚数→虚数(II)の4種類の分解を並行して行う.2) レベル―1で得られた4種類のRR,RI,IR,II係数画像のLLサブバンドに対して,係数画像のRR,IR,IIに対応し実数(R)と虚数(I)の分解を組み合わせて分解を行う.レベル―2以後の分解はレベル―2と同じように行う.そして,提案した2次元CDWTを画像ノイズ除去や織物表面の検査問題に応用した.得られたおもな結果は以下の通りである.1) 複素型のRI-Splineウェーブレットによる2次元CDWTを構築するためのアルゴリズムを確立した.また,それをモデル信号に適用し,従来の実数型2次元DWTのシフト変動が2次元CDWTにより改善されることを確認した.2) 実例としてRI-Splineウェーブレットによる2次元CDWTを医療用画像のノイズ除去とに織物表面の傷検出に応用し,本手法の有効性を明らかにした.今後,提案した2次元CDWTをもっと広い画像処理へ応用することが課題である


■ 円筒閉容器の圧力応答特性を利用した非定常流量の簡易計測方法

東医歯大・稲岡秀検,東工大・清水優史,東医歯大・石田明允

 われわれは,管路内の非定常流量を計測する簡易計測手法を提案する.本手法では管路に空気室が設置され,流れの非定常成分は空気室の体積変化として吸収される.この体積変化に伴う空気室の圧力変化のみを利用して非定常流量計測が行われる.空気室内の圧力波形の振幅および位相は空気室内の熱力学的状態変化に伴い変化する.空気室内の熱力学的状態は,空気室の形状および体積変化周波数に強く影響される.本論文では,空気室の熱力学的状態変化に伴う圧力波形の振幅・位相の変化を記述する簡単な実験式を求め,この実験式を利用した簡易非定常流量計測方法を提案する.実験では,空気室の半径,高さおよび体積変化周波数を実験パラメータとして変化させ,空気室の熱力学的状態を等温変化から断熱変化までの広い範囲で変化させる.そして計測圧力波形と,空気室が断熱変化と仮定した場合に得られる圧力波形との間の振幅比および位相差を求める.実験の結果,実験パラメータから得られる無次元数である振動フーリエ数と,振幅比・位相差との関係を記述する簡単な実験式を得た.またこの実験式を利用して断熱圧力波形を求め,空気室の体積変化を算出し,その時間微分から非定常流量を計測した結果,高精度に非定常流量を計測可能であることが示された.


■ 四元スペクトル係数のリアルタイム計算用アルゴリズム

科学警察研・山本広樹,筑波大・青島伸治

 四元数による信号表現とそのスペクトル変換は,三次元の計測信号処理に有効である.しかし,リアルタイム処理が必要なデジタルシステムへの応用では,実装に際して計算負荷が問題となる.そこで,四元スペクトル係数値を高速に計算するためのアルゴリズムを提案した.このアルゴリズムは,スペクトル変換の遅延に関する性質とインパルス信号の性質を利用したものである.変換対象となるデータ数をNとしたとき,スペクトル変換の定義式そのままに計算する場合と比較して,提案アルゴリズムは四元数の乗算回数を2/Nに軽減することができる.また,比較的簡単な構成で実装することが可能であり,マイクロコントローラを使用した低廉なリアルタイム処理システムへの応用も考えられる.


■ FMCW方式電磁波レーダを用いた複数物体位置遠隔計測システム

山口大・田中正吾,原田直樹

 遠隔計測手法として最も一般的な方法は,FMCW方式電磁波レーダを使用することである.遠隔計測の対象としてはさまざまなものがあるが,現在注目を浴びているものに,ITSの一環としての車間自動計測装置がある.つまり,前方走行車輌までの距離を瞬時に計測するシステムである.このFMCW方式では,送波する電磁波の周波数を連続的に変化させ,このとき得られる受信波と(受信波が戻ったときの)送信波をミキシング(mixing)することによりビート波を発生させ,その周波数を求めることにより,対象物までの電磁波の往復伝播時間を求め,距離を計測する.
 しかしながら,これまでの方法では,周波数分析を単にFFTにより行っていたため,周波数分解能が悪く,距離計測に大きな誤差が生じてしまう.また,これまでは対象物が1つの場合についてしか距離計測を考えておらず,2つの対象物が近接している場合には,対象物の分離・識別は困難であった.
 本論文では,遠方の近接したいくつかの反射境界面をもつ対象にFMCW方式電磁波を照射したとき,各境界面に対応してそれぞれビート波が生じ,これらが加算された受信信号がレーダ出力として得られることに着目し,このビート波をダイナミックモデルで表わし,これにカルマンフィルタ,最尤法を適用することにより,それぞれの境界面までの位置や対象物の厚みなどを高精度に計測するシステムを提案する.


■ 多連秤による改良型連続秤量法

京都工芸大・田崎良佑,小山高専・山崎敬則新光電子・大西秀夫,小林政明,クロテック・黒須 茂

 近年,物流,食品業界などにおいて,コンベアライン上に搬送される秤量物の質量測定に対する高速,高精度化が要求されている.そこで,ロードセルにより秤量された計測データから,質量をいかに効率よく推定するかが重要な課題となっている.
 本研究では,複数個の計量コンベアを連動させて質量測定を行う多連秤における実用上の問題点について,その改善を目的としている.すでに,多連秤からの出力をFIR,一次系フィルタによって平滑化した測定データの最大値から,質量を推定する方法を提案している.
 本報告では,多連秤の高速,高精度(要求精度±0.7%)での質量測定を実現するために,多連秤におけるつぎのような問題点を明らかにし,新たな測定方法を改良,検討している.
(1)多連秤によって秤量物の質量を連続測定するさいに,秤量物の間隔が高速化に影響する.秤量物の最小間隔に関する幾何学的条件を明らかにしている.
(2)多連秤の出力波形にいくつものピーク値が発生し,測定精度を低下させた.その原因を不等分布荷重によるものと考え,特定の範囲内における最大値をもって質量を推定する方法に改良している.
(3)秤量物の長さ20〜130[cm]に対して多連秤による連続秤量を実施し,新しい測定方法を用いて概ね平均誤差率±0.7%以下が保証されることを確認している.



■ 4輪車自動駐車システムの開発―理論と実験―

千葉大・ダオ・ミン・クアン,劉 康志,大形明広

 4輪車自動駐車制御技術はITSシステムの必要な技術の1つである.また,この問題は非ホロノミックシステムの1つの例としてよく取り上げられているが,実用上避けることのできない操舵角の制限,駐車空間の制限などの問題を解決できていないため,まだ実用化に至っていない.本研究では車両の操舵角の制限を考慮した,比較的に簡単な駐車制御方法を提案する.基本的な考え方は車両の方向角を円周族の接線方向に追従させることである.そして,操舵角に制限がある場合,本方法で駐車できるために初期状態に対する条件を明らかにした.さらに,この初期条件が満たされないときの切り替えのアルゴリズムも提案した.本方法は実用的な駐車システムを実現可能にした.


■ 電磁弁と等温化圧力容器を用いた流量サーボに関する研究

神奈川工科大・吉満俊拓,明治大・小山 紀,東工大・香川利春

 流量を連続的に制御して機器に供給する流量制御弁や流量サーボ弁では,流体が通過する絞りの有効面積,すなわち弁開度を調整している.制御されるのは弁の開度であるため,目的の流量が直接制御されるのではない.
 一方,オンオフ動作で駆動する電磁弁は高速で開閉させたとき制御弁やサーボ弁のような連続制御が可能であり,圧力変動も浮動制御を行えば大幅に抑制が実現できることを著者らは示している.ところで圧力変動は負荷と出力される流量によって変化することから,圧力変動から出力流量を認知することが可能である.すなわち,電磁弁ON-OFF動作により連続的な流量制御を行えば,動的な流量変化を小さな圧力変化から検出でき,供給が目的の流量となるよう直接制御する流量サーボの実現が可能となる.
 本研究では,電磁弁と等温化圧力容器を用い,容器内に生じる小さな圧力変動から流量を計測しながら,動的に目的の流量を供給する空気圧流量サーボを提案する.その精度や応答性などについて示すと同時に,電磁弁の開閉により発生する圧力変動を極力抑制する方式を検討する.さらにその性能確認のため,子供の玩具である「吹き上げ装置」を使い,微妙な流量調整で可能になる球の浮遊位置制御を試み,この流量サーボの有効性について確認する.


■ ラジアル基底関数ネットの高速追加学習アルゴリズム

神戸大・岡本圭介,小澤誠一,阿部重夫

 ニューラルネットでは,過去に獲得された入出力関係が結合荷重に分散して記憶されるため,新しい訓練データの学習により,過去の記憶を蓄えた結合荷重も同時に修正されやすい.この現象は追加学習にともなう「干渉」と呼ばれ,これを軽減する追加学習法として,これまでResource Allocating Network with Long-Term Memory(RAN-LTM)を提案してきた.しかし,学習アルゴリズムが最急降下法に基づいており,局所的最小解への収束や収束スピードなどの問題が以前から指摘されていた.一方,ラジアル基底関数ネットの学習では,基底中心を固定し,隠れ層−出力層間の結合荷重を線形回帰で求める方法が提案されている.本論文では,この手法をRNA-LTMに取り入れた高速追加学習法を提案する.この学習法では,訓練時に用いる擬似データを近似関数の複雑さに基づいて生成し,1回の追加学習で用いる訓練データ数を有効なものに限定する.これにより,線形回帰で用いる特異値分解の計算量を減らすことができ,学習時間と記憶データ量に対する効率性を高めることが可能となる.シミュレーション実験では,訓練データが偏って発生することの影響や学習領域の拡大に対する影響を考察し,さらに実用的な予測問題に適用することで,提案モデルの有効性を確認した.


■ プレチスモグラムを利用した血管状態モニタリング

広島大・坂根 彰,辻 敏夫,田中良幸,佐伯 昇,河本昌志

 本論文では,血管の力学特性を機械インピーダンスを用いてモデル化し,beat-to-beatで血管状態を推定する新しい手法を提案する.本手法は生体信号から血管インピーダンスを推定することより,人体に大きな負荷をかけることなく,血管の力学特性を定量的に解析できる.したがって,時々刻々と変化する血管状態を長時間に渡って把握する必要がある手術現場などに応用することが可能である.提案法では,まず,心電図,動脈血圧,プレチスモグラムを同時に計測し,血管の半径,血管に作用する力をそれぞれプレチスモグラム,動脈血圧を用いて近似的に表現する.そして,心電図のR波のタイミングで各信号を切り出し,最小自乗法を用いて1拍ごとにインピーダンスパラメータを推定する.本論文では,提案法の有用性を検証するため,腕の上下運動中に計測した生体信号を用いてインピーダンスを推定し,Voigtモデルと提案モデルによる推定精度を比較した.最後に,胸部交感神経遮断術中のインピーダンスモニタリング実験を行い,提案法の有用性を示す.



[ショート・ペーパー]

■ IDA-PBC法による2フレキシブルリンクマニピュレータのコントローラのクラス

名古屋大・菅原佳城,大同工大・尾形和哉,名古屋大・早川義一

 近年注目されている受動性に基づく制御系設計法の1つにIDA-PBC(Interconnection and Damping Assignment-Passivity Based Control)法がある.IDA-PBC法では制御入力印加後の閉ループ系が仮想的な機械システムとなり,制御性能の評価を行いやすい.しかし,制御則導出のためには偏微分方程式を解く必要があり,解析的な制御則導出は困難である.
 本論文では,劣駆動系である2フレキシブルリンクマニピュレータに対してIDA-PBC法を適用した際の制御則を解析的に求めることを試みる.このとき,アクチュエータをもたない座標系であるたわみ量を表わす座標が,閉ループ系においてどのような性質を有するかは非常に興味あることである.そこで,修正後のシステムのクラスについて,たわみ量を表わす座標に関するエネルギ関数を修正することを目指した仮定を行い,その一般的な解の導出を行う.


■ 高ゲイン出力フィードバック定理の一般化と証明

慶應大・志水清孝

 本小論は非線形アフィンシステムの高ゲイン出力フィードバックについて述べている.制御対象は相対次数1で,その線形化系は最小位相と仮定する.このとき,リヤプノフ安定定理(直説法)に基づき,多入力多出力系の高ゲイン出力フィードバック定理を簡潔に証明している.同時に漸近安定化のためのゲイン値の決め方も明示されている.


■ 遺伝的アルゴリズムによる自律移動ロボット用プログラムの進化

金沢工大・蜷川 繁

 自律移動ロボットの制御方式として用いられているサブサンプションアーキテクチャ(SA)においては,並列に動作するモジュールとそれらの優先順位をロボットが動作する環境に応じて設計する必要がある.したがって,環境の同定が困難な場合は,SAを設計するということは不可能になる.本研究では,このような場合を想定して,環境への有効性は考慮せずに,60種類のモジュールを準備しておき,それらの順列を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて最適化する実験を,実機を用いて行った.具体的には,あらかじめの60種類のモジュールの中から,遺伝子型で指定された8つのモジュールを優先順位に従って選び,ロボット用のプログラムを生成し,そのロボットを環境で動作させることによって適合度を求め,GA操作を行う.実験は2通りの環境において行った.いずれも910mm×1820mmの薄青色の平板で,端は50mm幅で黒く塗ってあり,いくつかの障害物がある.環境は,得点が付されたいくつかの区画に分かれており,180秒後に到達した区画の得点に応じて適合度が決まる.いずれの環境においても平均数世代でゴールに到達するプログラムを生成することができた.



 
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