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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.41 No.5(2005年5月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 自己組織化マップを用いたハーブ種の判別

鳥取大・尾崎知幸,大島直也,齊藤剛史,小西亮介

 水晶振動子型センサや半導体センサなどを用いたセンシングシステムは,ニオイやガス種の流量変調をステップ応答や矩形波で行い,その過渡応答特性を用いて,主成分分析法やファジィ推論等を用いて識別が行われている.本稿では,水晶振動子法を用いて5種類のハーブ種(リンデン,カモミール,ローズヒップ,ラベンダー,レモンバーム)の香りを測定し,識別を行った.センサとして水晶振動子にウレタン樹脂のWS-4000を塗布したものを用いた.香りは,緩やかな吸着や脱離から香りの特徴量を得るために,ハーブ種導入装置の電磁バルブの開閉を三角波で周期的に行ことで流量変調を行った.識別は,バルブ開閉時の包絡線データ(谷の強度,山と谷の強度差:脱離量など)を用いて,階層型誤差逆伝搬法(BP法)と自己組織型マップ(SOM:Self organizing Map)を用いて行った.その結果,SOMによる識別は,複雑な木構造のBP法を用いた識別率(96.7%)と同程度であったが,識別の複雑さは改善され,ハーブ種の特性を反映したクラスタリングが可視化され,直感的,視覚的にも理解しやすいと考えられる.また,ハーブ種の香りを三角波で流量変調を行うことで,1個のセンサからの特徴量でも識別が可能であり,有用であることがわかった.


■ 時空間勾配解析に基づく局所位相速度計測

佐賀大・寺本顕武,鶴田浩輔

 検査対象の厚さが波長以下になると,薄板に沿って伝搬するラム波の存在が卓越する.ラム波は,音速が周波数と板の厚さによって変化する分散性の波である.そこで本研究は,腐食によって板厚が薄くなった領域を抽出することを目的とし,波動の局所位相速度を計測する手法を提案している.提案手法は,時空間勾配解析に基づくものであり,ゼロ次反対称モードのラム波によって発生するつぎの3信号:(1) 検査対象表面の法線方向(z軸方向)の粒子速度,(2) z軸方向と検査対象表面に沿う方向(x軸方向)に関する面外せん断ひずみ,(3) z軸方向と表面に沿う方向(y軸方向)に関する面外せん断ひずみ,の間の線形従属性を利用し,波源の唯一性と再放射源の不存在が保証できる領域において,周波数とは独立に局所的な波面の位相速度を計測できることを特徴としている.また,概念実証モデルを用いた実験により,S45C鋼板材裏面の欠損個所のシルエットを表面から特定できることを実証した.


■ 3次元ヒト腕運動における手先軌道・腕姿勢の予測規範の検討

長岡技科大・和田安弘,露木公孝,曽我洋輔,山中和博,ATR・川人光男

 ヒト腕2点間到達運動の手先軌道の特徴を説明する最適化原理によるモデルとして,手先躍度最小規範,関節角躍度最小規範,トルク変化最小規範,指令トルク変化最小規範が提案されている.実際の軌道がどの程度これらの軌道計画規範によって予測できるかの定量的検討によって,指令トルク変化最小規範がもっとも2次元空間のヒトの運動に近い軌道であることが報告されている.しかしながら従来の研究は,2次元平面でのヒトの手先の運動軌道に関する研究であって,3次元運動空間での手先運動軌道およびヒト腕の姿勢に関する議論は行っていない.本論文では,上述した最適化規範によるヒト腕の3次元運動計画において,手先の運動軌道と終点での腕の姿勢について定量的にその妥当性を議論する.つまり,3次元空間での,上記の最小化規範に基づく軌道の計算を行い,計測したヒト腕の2点間到達運動と比較検討し,手先軌道・終端での腕姿勢のどちらもが指令トルク変化最小規範によって予測される軌道・姿勢にもっとも近いことを報告する.今までに,手先軌道と腕姿勢の両方が1つの最適化規範によって予測できる可能性を定量的に示している研究はない.


■ 微細加工技術によるスリット型流路を用いた圧力微分計の開発

東工大・川嶋健嗣,五十嵐康一,小玉亮太,加藤友規,香川利春著者

本文 極微小な圧力変動を対象とする制御空気圧サーボシステムにおいては,圧力の微分値を高分解能かつ高速に計測する要求がある.著者らは過去に,容器内の状態変化をほぼ等温化できる等温化圧力容器を応用した圧力微分計を提案した.圧力微分計の動特性の向上には差圧を実現する流路が重要であるが,その際に使用した層流抵抗管の流路では動特性の向上,センサの小型化に適していない.
 そこで本研究では圧力微分計の差圧を実現する流路に微細加工技術によるスリット型流路を用いることで小型化・高応答を実現する方法を提案し,その設計方法を示した上で実際にセンサを試作する.本報ではまず圧力微分計の構成・測定原理について説明し,つぎに最適なスリット型流路を設計するための方法と製作工程を説明する.さらに,充填・放出実験により,実際に製作した圧力微分計の信号を圧力センサ信号を不完全微分した値と比較し,圧力微分計の優位性を確認した.最後に非定常流量発生装置を用いた周波数応答実験を行い,試作したセンサの有効性を明らかにした.


■パラメータ依存Lyapunov関数を許容する拡張空間での制御系設計

阪府大・下村 卓

 本論文では,連続時間系において,H2/H∞問題に代表される多目的制御系,LPVシステムに対するゲインスケジューリング制御系,ポリトープ型不確かさに対するロバスト制御系の各設計問題をLyapunov非共通解で解くための新しい設計手法が与えられる.消去補題の逆適用により,与えられた問題が補助変数を用いて拡張空間で記述される.これによりLyapunov変数と制御器変数が分離され,各設計問題がLyapunov非共通解で解けるようになる.ロバスト制御系やゲインスケジューリング制御系の設計問題ではロバストH2性能が考慮される.ポリトープ型不確かさやLPVシステムを表現する凸包のどの端点でH2性能が最悪になるかは一般には事前予測できないが,提案法では,そのような場合でもH2性能が最悪となる端点のH2コストが自動的に最小化される.また,ゲインスケジューリング制御系では,スケジューリング変数の変化速度とスケジューリング変数の比の上限を考慮して設計が行われる.最後に提案手法の有効性が二慣性系の数値例を用いて検証される.


■主緩和双対法を用いた双線形行列固有値最適化−探索領域限定と部分問題低減による効率の改善−

神戸大・川西通裕,伊藤忠・大元伸一

本文 主緩和双対法(PRD法)による双線形行列不等式(BMI)の数値解法では,双線形の特定変数について,探索領域の体積が計算負荷全体に大きく影響する傾向がある.本研究では,まずこのようなPRD法によるBMI求解アルゴリズムの特性を,厳密解の下界値制約として用いられるラグランジュ関数の性質から,解析的に明らかにする.
 つぎに,この解析結果に基づき,上界値を併用してBMI最適化問題の変数領域を限定し,ラグランジュ関数による下界値の精度の悪化を低減する手法を提案して,変数領域の増大に伴う保守性の増加を抑制する.
 また,PRD法による解法では,主問題における最適化変数の数に対して,下界値を求める際の子問題の数が指数オーダで増加するため,この変数の数が増加した場合には,効率の悪化が顕著になる傾向を有している.本研究では,ラグランジュ関数による下界値制約の有効条件を利用し,子問題が派生する際の条件分岐を回避して,BMIの下界値計算における部分問題数の増加を抑制する手法についても提案する.
 最後に,提案するアルゴリズムについて数値実験を行い,アルゴリズムの働きについて示すとともに,提案手法の有効性を確認する.


■弱結合システムのH∞状態フィードバック制御

広島大・向谷博明

 本論文では,弱結合システムのためのH∞状態フィードバック制御問題を研究する.特に,数値計算アルゴリズムに基づく高いオーダーの近似を達成するH∞コントローラの設計手法に焦点をあてる.新奇な貢献は,ニュートン法と再帰的アルゴリズムを結合することによって,新しい反復アルゴリズムが得られるということである.結果として,H∞コントローラがサブシステムの同じ次元で設計可能である.また,提案されたアルゴリズムが二次収束を保証することを新たに証明する.さらに,提案されたコントローラが最適なH∞コストと比較して高いオーダの近似を達成することを示す.もう1つの重要な貢献として,もしカプリングパラメータが未知であるとしても,パラメータに依存しない分散コントローラが提案される.さらに,提案された分散コントローラが準最適性を保証することを示す.



■ 切換に起因する外乱応答のL2ゲイン解析に対する必要十分条件

阪大・浅井 徹

 動作中の制御系に切換が発生すると,切換直後に応答が大きく乱れることがある.このような応答は制御系の制御性能を損なうだけでなく,制御対象に物理的な損傷を与えるなどの危険を伴うこともあるため望ましくない.これに対し,最近,切換に起因する応答の乱れを切換前の外乱から切換後の応答へのゲインとして定式化し,さらに不確かさの存在を陽に考慮して,その上界をLMIを用いて解析する手法が提案されている.しかしながら,そこで得られている結果は十分条件であり,一般には保守的な結果を与える.また,下界を与える手法が知られていないため,保守性の程度を見積ることもできない.これに対し本論文では,不確かさのない場合を考えることによって,切換前の外乱から切換後の応答へのゲインを解析するための必要十分条件を与える.本論文の結果を用いれば,不確かさがない場合のゲインを厳密に評価することができるだけでなく,不確かさを適当に固定した対象のゲインを解析することによって,不確かさが存在する場合のゲインの下界を得ることも可能となる.さらに,数値例を用いて有効性の検証を行い,実際に切換に起因する応答の乱れの大きさを評価できることを示す.


■ 独立成分分析を用いた自己回帰モデルの未知入力同定法

奈良先端大・新田益大,杉本謙二,佐藤 淳

 近年,統計的独立性を利用した信号の分離・解析の手法である独立成分分析が注目されており,音声信号処理をはじめとするさまざまな分野で応用されている.本論文は,これをシステム同定に適用する試みである.
 独立成分分析では,もし入力信号が独立であるならば,これらの値を用いることなく,出力信号のみを用いて伝達関数行列を推定することができる.ただし,既存の算法は主として定数行列の推定か,あるいは周波数領域における推定であった.
 制御の分野では,過渡特性が問題になったり,また同定に用いる帯域があまり広くない場合など,既存の算法では不便なことがある.そこで本論文では,多項式行列の既約分解を用い,ある限定されたクラスの多入力多出力系に対して拡大状態空間表現を用いることにより,静的な(定数行列の)独立成分分析に帰着させる手法を提案する.
 適用対象は限られるものの,入力が未知という厳しい条件下でのシステム同定を達成している.


■ 1リンク柔軟マニピュレータの力制御問題と指数安定性

電通大・遠藤孝浩,東工大・松野文俊

 本研究では,一端が対象物と接触している1リンク柔軟マニピュレータの力制御問題を,分布定数モデルに基づいて考察する.この力制御問題を解くために,非常にシンプルな制御則を提案する.この制御則は柔軟アーム根元の曲げモーメントとその時間微分からなっており,構造的に非常にシンプルである.特に,モータの回転角と接触力に関する情報を必要としない点に注意されたい.そして,閉ループ系が指数安定となることを Energy Multiplier Method を用いて示す.ここでは,有限次元近似モデルではなく無限次元モデルに基づいて安定性を示しているので,スピルオーバなどのモデルの有限次元近似化による影響を受けない.


■ Self-Sensing Magnetic Suspension Using an H-bridge Type Hystersis Amplifier Operating in Two Quadrants

Saitama Univ.・T. Mizuno, Y. Hirasawa, M. Takasaki, Y. Ishino

 常電導電磁石の吸引力を利用した磁気浮上系では,浮上用電磁石のコイルに流す電流は一方向で十分である場合が多いことを考慮して,2象限動作をするHブリッジ型ヒステリシスアンプを開発し,これを用いてセルフセンシング磁気浮上を実現した.開発したHブリッジ型ヒステリシスアンプでは,1対のMOS FETと1対のダイオードからブリッジ回路を構成した.このヒステリシスアンプのスイッチング特性を測定し,従来のヒステリシスアンプより高いスイッチング周波数で動作していることを確認した.さらに,ヒステリシスアンプのスイッチング信号から浮上対象物の変位を推定するときに,スイッチング信号の周期から変位を推定する方式を採用し,従来のものより制御周期の短いディジタル制御系を実現した.また,推定信号の周波数特性を測定し,渦電流型変位センサの出力信号に対して100Hzまでは位相遅れがほとんどない変位推定が行われていることを実証した.


■ モータと減速機を考慮したロボットマニピュレータ制御

日産自動車・小坂裕紀,職業能力大・島田 明

 本論文は,弾性を有する減速機を介して,サーボモータにより駆動されるロボットマニピュレータの振動抑制制御に関する.サーボモータは,構造的に,ステータ側とロータ側に分けることができる.通常,ステータはアームに固定される.ロータは減速機を介して隣り合うアームに接続されるが,減速機が弾性を有する場合,回転角度はアームの回転角度の減速比倍とは必ずしも一致しない.そして,ロータの並進運動については,ステータが固定されているアームと共に移動する.本論文では,それらを陽に表わしたロボットの運動方程式を導出すると共に,逐次同定法と周波数解析の実測結果とから物理パラメータを求め,その結果を基にして正確な数学モデルを獲得する.
 ついで,同モデルを基に,狭い作業領域の下での線形化を前提として状態方程式を得た後,状態空間表現の外乱オブザーバを構成し,未知外乱の下での全状態変数を推定し,その推定値を最適サンプル値サーボ系に利用する.さらに,同制御系を実際のロボットマニピュレータに実装し,サーボ加速度計等を用いて振動抑制性能を評価し,提案する制御系の有効性を示す.


■ ロバスト音声認識とそのLSI化について

北大・早坂 昇,吉澤真吾,和田直哉,宮永喜一,日立製作所・畑岡信夫

 実環境で音声認識を行った場合,雑音などの影響により認識率が低下する.本論文ではパワースペクトル,対数パワースペクトルの両時間軌跡に対しFIRフィルタを適用した後,ケプストラムに変換し振幅最大値で規格化を行う雑音に頑健な特徴抽出法を提案する.単語認識実験を行い提案手法の効果を示し,広く用いられているSS+RASTA法に比べ高い認識が可能であることを示す.また提案手法を組み込むことによる群遅延問題やフィルタリングによる処理時間増加の問題を解決する専用LSIの概要について紹介する.


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