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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.42 No.4(2006年4月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]

[論  文]


[論  文]

■ 人間・ロボット共有制御に基づいた複数協調ロボットの操作性評価

東大・黄 吉卿,橋本秀紀

 本研究では完全自動化が困難である,3D微細部品のアセンブリ,試作を応用先とする人間の操作による遠隔微細作業の実現を目指す.従来手法による限られた作業の器用さ,自由度,操作性の改善のため,新たに人間・ロボット内力共有制御に基づいた,シングルマスタ・マルチスレーブ(SMMS)遠隔微細作業システムを提案し,現在注目されているRT-Middlewareネットワークプラットフォームにて実機実装を行う.特に本論文では,開発したSMMSシステムにおける操作性向上の手法として適した力フィードバック戦略の紹介とその有効性の検証のため評価実験を行う.実際のPick-and-placeタスクの際,操作性の評価基準として,最小内力制御性,失敗率,内力分布の安定性や実行時間を設定し,それに基づいて本提案手法が有効であることを確認した.


■ 業種に基づくWebページ検索における視覚的類似性の利用可能性に関する検討

首都大・高間康史,都立科技大・中原啓介
   大日本印刷・三橋憲晃,首都大・山口 享

 本稿では,近年注目されつつあるWebページの視覚的類似性の新たな応用分野として,業種・提供サービスに基づくWebトップページ検索における視覚的類似性の利用可能性について検討する.業種ごとに共通する視覚的特徴が存在するか否かについては,Webから実際に収集した11業種,856のWebサイトトップページについて被験者アンケートを行い検証する.視覚的類似性に基づくWebページ検索の可能性については,被験者アンケートの結果に基づいて作成したテストコレクションに対し,カラーヒストグラムに基づく比較手法,および本稿で新たに提案するレイアウトに基づく視覚的類似性比較手法を適用して評価実験を行う.
 被験者アンケートの結果,平均46%以上のトップページにおいて視覚的類似性が見られることを示す.また,Webページ検索に関する評価実験の結果,業種によっては67%のクエリーで視覚的類似性に基づく検索が有効であることを示す.


■ キーワードマップを用いたWeb情報検索インタフェースのためのキーワード配置支援手法の検討

都立科技大・梶並知記,首都大・山口 享,高間康史

 自宅や職場を問わずPCを用いてインターネットへ接続できる環境が整ってきた現在,われわれは膨大な情報の奔流に身をおいている.しかし,膨大な数のWebサイトから,自分にとって有益な情報を見つけ出すことは難しい.人間が多量な情報の中から自分にとって必要な情報を見つけだし,有益なものとして取り出す作業を支援する技術の1つに情報可視化があり,自動グラフ描画法の1つであるバネモデルに基づくインタラクティブな情報可視化システム「キーワードマップ」が,Web情報検索のためのインタフェースに応用されることが提案されている.キーワードマップからユーザの意図を推測するために階層的クラスタリングが用いられるが,クラスタを抽出する際の閾値については十分に検討されていない.本稿では,適切な閾値設定を被験者実験によって確かめる.さらに,キーワードマップの拡張に必要な追加の自動グラフ描画法について,被験者実験によって明らかにされるユーザの意図とキーワードマップの配置パターンとの関係に基づいて考察する.


■ アクティブタイプ弾性表面波皮膚感覚ディスプレイ

埼玉大・高崎正也,小谷浩之,遠藤 大
   東大・奈良高明,埼玉大・水野 毅

 近年,バーチャルリアリティやロボットなどの遠隔操作等の分野で体性感覚のひとつである皮膚感覚の再現の重要性が注目されている.この皮膚感覚を提示するデバイスとして超音波振動の一種である弾性表面波を用いた皮膚感覚ディスプレイの開発が行われている.ある粗さをもった固体表面をなぞったときの粗さ感覚を提示するには,なぞり動作に応じた振動を皮膚に与えることが有効であり,弾性表面波を用いて擬似的にその振動を与えることによりざらざら感やつるつる感といった粗さ感覚の提示が可能となる.本論文ではアクティブタイプ弾性表面波皮膚感覚ディスプレイにおいて,現実感の高い感覚提示を行うためのディスプレイの試作およびなぞり動作に応じた粗さ提示を行うための制御系を製作した.なぞり動作に応じた制御を行うことにより,より現実感の高い感覚の提示を行うことができ,その際に出力される振動の評価を行った.また,ディスプレイの左右で異なる感覚を提示することも可能であるため,感覚提示実験を行い,明示的に異なる2 つの感覚を提示した場合における制御パラメータの調整が感覚の弁別能に及ぼす影響について検証した.


■ ローカルルールに基づいた理論回路の自己組織化アルゴリズム

早稲田大・金 天海,京都大・尾形哲也,早稲田大・菅野重樹

 近年,ニューラルネットワーク(NN)を用いたロボットの自律制御は大きな発展を遂げており,NNはロボットに関する主要な制御手法のうちの1つとなっている.しかし,現在使用されているNNの多くは教師信号を必要とする,または,タスク・環境ごとに人の手によるトポロジーやパラメータの構成を必要とするといった問題,さらには,計算時間の問題等がある.
 本稿では,オンラインに強化信号を受け取り,より多くの強化信号を受け取る構造への自己組織化をリアルタイムに行うネットワークを作成するために,自己組織化回路素子Self-Organizing Network Elements(SONE)という枠組みを提案した.さらには,SONEの枠組みを用いた自己組織化論理回路によって,基本的な回路生成実験,ロボット制御実験を行い,リアルタイムかオンラインな学習によるネットワーク構造の好適化と,知識再利用による学習を確かめ,SONEの実現可能性と有効性を明らかにした.


■ 人間の五感を利用したロボットとのコミュニケーションへの没入の実現

慶應大・今井倫太,鳴海真里子

 本稿では,ロボットとのコミュニケーションへと人間を引き込むためのコミュニケーション戦略を提案した.本コミュニケーション戦略は,2つのステップで構成される.ステップ1は,飲食物を飲んだり,食べたり,嗅いだり,触ったりするように人間を促すためのロボットの発話・ジェスチャである.もしくは,実世界の状態(気温,湿度)に注目させる発話・ジェスチャである.これらの発話・ジェスチャは,五感を通して人間の感覚を誘発することを狙っている.ステップ2で,誘発された感覚に関連する感覚的発話をロボットが生成する.人間は感覚的発話を与えられると,ロボットも人間と同一の感覚をもつと推測し,推測を通して徐々にロボットの立場でロボットの意図や知覚対象も推測しはじめる.結果,人間は,ロボットの発話を真剣に捉えるようになり,コミュニケーションへの没入が実現される.
 さらに,感覚的発話は,人間の感覚をダイレクトに表現したものであるので,ステップ1の内容に応じて簡単にデザインすることができる.つまり,個別のシナリオを容易にデザインできることを意味しており,コミュニケーションロボットのコンテンツ作成の基本的な設計論としても優れている.
 また,本稿では,被験者実験によって本コミュニケーション戦略の効果を検証した.実験の結果,感覚的発話を与えられた被験者は,ロボットの発話を真剣に捉え,コミュニケーションへと没入することが確かめられた.


■ 外界と相互作用する生体神経回路網

産総研・工藤 卓,田口隆久

 人工環境下に再構成された培養神経回路網は脳組織においてと同様に自発的神経活動を行っており,その時系列パターンには緩やかな周期性があるように見える.このように再構成された生体神経回路網に,環境と相互作用する媒体を与えたならば,外界を反映したなんらかの機能構造が新たに出現するのではないかという仮説を検証するために第一段階として,相互作用する外界としてリアルタイムでフィードバック刺激を行う刺激装置を開発し,生体神経回路網に適用した.その結果,分散培養され,培養皿上に再構成された生体神経回路網であっても,自己組織化によって情報処理に適した構造が自律的に形成されていくこと,外界と相互作用して情報処理様式を動的に変更する機能を十分有していることが示唆された.つまり,培養神経回路網に脳情報処理の非常に基本的な部分が備わっているということである.今後は,この再構成培養神経回路網を解析プラットホームとして,神経情報処理様式を記述する手法と,制御技術を模索していく.これら試みから,Brain-mimeticな新しいソフトコンピューティングの手法が見つかるのではないかと考えている.



■ 生物型ロボットによるインタラクティブ情動コミュニケーションの基礎研究

福井大・前田陽一郎,田辺奈々

 本論文では,生物型ロボットを用いて,特定の人物の主観によらない感情行動評価の一手法を提案する.本手法ではまず,舞踏学においてよく知られているラバン理論に基づいてロボットの身体動作の評価を行い,そこから抽出された身体的特徴量を用いてファジィ推論により基本的心理尺度値を求め,ラッセルの円環モデルに基づき,感情評価を行う.本手法を用いることによりロボットの動きを観測して,客観的な感情評価を与えることが可能となる.このロボット行動を見た感情の外的評価手法と従来の内的な感情行動生成手法を組み合わせることにより,たとえばロボット同士のインタラクティブな情動コミュニケーションの実現等が可能となる.
 本論文で提案した手法を用いて,実際の生物型ロボットを用いて,さまざまな身体動作から感情を推定した評価実験を行ったので,その結果についても報告する.
 さらに,本研究で得られた手法を人間とロボットに適用することにより,人間とのインタラクティブな情動コミュニケーションも可能となる.このようなロボットを開発することによって,たとえば,老人看護や精神療養などの福祉分野における癒し効果を有する介護用ペットロボットへの実用化なども可能になると考えられる.


■ 空間メモリ:知識活用を支援する空間知能化

東大・新妻実保子,東京工科大・橋本洋志,東大・橋本秀紀

さまざまな知的活動において,その要となるものは人間の経験や記憶からなる知識である.特に,文書や画像,Webページなど外在化された知識は関連する知識を想起し,客観的な観察を通して考察を行うことは新たな発想や問題解決につながる.したがって,知的活動の本質的な作業を妨げることなく知識の蓄積と閲覧を行えることは知的活動支援につながるものと考える.これより本論文では,人間の高度な知的活動に不可欠な文書や画像,Webページなどを外在化された知識と位置づけ,人間の身体を用いてこの知識の蓄積と閲覧を瞬時にかつ直感的に処理する空間メモリを提案し,その有効性について論じる.


■ 上肢動作補助用マッスルスーツの肩機構開発と姿勢制御手法の提案

東京理科大・小林 宏,鈴木秀俊,伊庭雅弥,長谷川 翔

 マッスルスーツは,日常生活での使用を考え,金属をほとんど使用しないため軽量で脱着が容易である.また,着用により原理的にはあらゆる動きが可能となり,筋力の補助や反力の発生ができる.そのため,要介護者,動きが困難な身体障害者の筋力補助,肉体労働者の姿勢保持や筋力補助,リハビリテーションなどに適用できる.マッスルスーツが従来の人間を物理的に支援するロボットと異なる点は,「装着」するのではなく「着用」することである.これにより,関節の厳密な位置合わせが不要となり,マッスルスーツ内部で人間が動けるため,おおよその大きさが合っていれば所望の動きが得られる.着用者は筒の中に入っているような状態で面で力を受けるため,局所的な負荷を受けないという利点がある.
 これまでのマッスルスーツの開発により,上肢の全7動作(屈曲,伸転,外転,内転,外旋,内旋,肘曲げ)は実現できている.しかし,肩関節の自由度が足りなかったため,外転から屈曲への連続的な動作ができなかった.そこで本論文では,半円弧のリンクを用いた新しい肩関節構造を提案する.あわせて,肩関節の姿勢計算法を提案し,その精度を検証する.さらに,マッスルスーツにより所望の姿勢を実現するための制御方法を考案したので報告する.


■ 介護老人保健施設におけるロボット・セラピー−実験一年目における効果の応用−

産総研・和田一義,柴田崇徳,首都大・谷江和雄

 2003年8月より,アザラシ型ロボット「パロ」を介護老人保健施設へ導入し,入所者を対象とした長期Robot Therapy を行っている.パロは,セラピーを目的にわれわれが研究開発を行っているロボットである.入所者は週2回,1時間程度,パロとの触れ合い活動を行っている.本論文では,長期実験1年目における効果の評価結果について報告する.入所者に対する心理的影響を評価するため,気分を表情のイラストで表現したアンケート:Face Scale,および,うつ状態を評価するアンケート:Geriatric Depression Scale(GDS)を使用した.また,観察や介護職員のコメントにより社会的影響を調査した.実験の結果,パロとの触れ合いにより,入所者の気分やうつ状態の改善,ならびにその効果の持続が確認された.さらに,パロは入所者同士や介護職員との共通の話題となり,コミュニケーションを活性化させることが確認された.



[ショート・ペーパー]

■ 脳動制御システムにおける判別パターン作成アルゴリズムの開発

電通大・田中一男,松永和之

 現在,重度障害者など意思を外部に伝えることが困難な人のために,生体信号を利用したさまざまな意思伝達システムが提案されている.とりわけ,生体信号として筋電位信号を用いた身体補助装置の研究は幅広く行われている.一方,脳波を利用するシステムの研究事例はそれほど多くはないが,最上位の生体信号の活用という点で期待されている.また,脳波を利用したシステムはその高次性や神秘性という観点から,アミューズメント分野などを含めて,健常者への応用も期待できる.われわれは脳波の工学的利用の観点から,脳波によって左右の方向感覚(方向思考)を判別する手法を提案し,脳波のみでさまざまな機器を操作する脳動制御の実現を目指している.とくに,電動車椅子の方向制御実験では,限定された実験フィールド内ではあるもののある程度満足のいく結果を得ることができた.しかし,方向思考判別に用いるパターン作成は試行錯誤的に行われており,パターン作成まで多くの労力が必要であった.本論文では,試行錯誤的な手順を経ることなく判別パターンを作成する繰返しアルゴリズムを開発する.さらに,開発したアルゴリズムを2足歩行ロボットの歩行制御実験に適用し,その有効性を検証する.



[論  文]

■ 2フレキシブルリンクマニピュレータのエネルギ修正法によるモード振幅の修正を考慮した制御

東大・菅原佳城,大同工大・尾形和哉,名古屋大・早川義一

 近年,機械システムの制御系設計手法として受動性に基づく手法が注目されており,このような手法の1つにIDA-PBC(Interconnection and Damping Assignment - Passivity Based Control)法がある.IDA-PBC法では制御入力印加後の閉ループ系が仮想的な機械システムとなっており,制御性能の評価が行いやすい.しかし,制御則導出のために偏微分方程式を解く必要があり,一般に解析的な制御則導出が困難である.また制御性能の評価法についても理論的なガイドラインはまだ確立されていない.
 本研究では2フレキシブルリンクマニピュレータに対してIDA-PBC法を適用することを試みる.このとき,修正後のシステムのクラスについて従来の提案手法とは異なるクラスを仮定する.その結果,従来の提案手法よりも設計の自由度のより大きな制御則が導出される.さらにその自由度を十分に活かして,モードごとの振幅の修正を考慮した制御性能の評価法および設計パラメータ決定についてのガイドラインを提案する.シミュレーションおよび数値的な解析によって提案した手法の有効性を示す.


■ 脈波と体動による睡眠指標の定義と睡眠段階の推定

法政大・渡辺嘉二郎,真鍋宗広,吉川 崇

 睡眠の深さを無拘束・無意識に計測する方法を提案した.筆者らが提案したエアマットレス方式で計測される脈波をフーリエ変換し,脈波基本波スペクトルと脈波以外のスペクトルの平均値の比をデシベル表示した量を睡眠深さの指標とした.また睡眠においてNR4の出現率は年齢の線形関数で近似できかつ上記の睡眠指標の標準偏差がNR4の出現率と0.81程度の相関をもつ.これより睡眠指標の標準偏差と年齢の関係を求めた.この関係から求まる年齢は実年齢とは異なり,その睡眠の質を表わすもので睡眠年齢と定義した.これらの2つの指標よりR-K法流の睡眠段階を推定した.
 本方法とR-K法による結果の平均一致率は37.3%,睡眠段階誤差はほぼ1段階である.睡眠段階における一致率は高くはないが.睡眠時間全体におけるパターンは似ている.
 R-K法による睡眠段階から読み取る情報は入眠潜時や一晩全体を通してのR-NRのリズムを見ることが多く,この範囲で本方式の結果を利用する限り医療現場で使える.また,従来のポリグラフを用いた方法では拘束性が強く,在宅健康管理には応用できない.したがって,本論で提案した無拘束・無意識に計測できる睡眠指標,睡眠年齢および睡眠段階推定法は健康維持・増進,疾病予防の取り組みに寄与できる.


■ エネルギー制御法による劣駆動ロボットの振り上げ制御とその動きの解析:Acrobotの場合

岡山県立大・忻 欣,兼田雅弘

 本論文では,劣駆動システムの代表例である2リンク劣駆動ロボットAcrobotを対象とし,Acrobotを任意の初期状態から真上平衡点の任意の近傍まで振り上げる制御則の設計と,Acrobotの動きに関する大域的解析を目的とする.まず,Lyapunovの安定性理論に基づき,エネルギー制御法による振り上げ制御則を提案するとともに,その制御則に特異点が存在しないための制御パラメータに関する必要十分条件を与える.また,Acrobotのエネルギーの収束値とその動きを大域的に解析する.その解析により,提案した制御則で,Acrobotは,任意の初期状態から,真上平衡点の任意の近傍まで振り上げられるか,あるいは,ある平衡点集合に属する1つの平衡点に収束するかのいずれかになることを明らかにする.また,その平衡点集合が真下平衡点のみをもつように制御パラメータをいかに選ぶかを示し,その点が閉ループ系の不安定な双曲型平衡点であることを証明する.したがって,Acrobotは,ある測度が0である集合を除いた任意の初期状態から,真上平衡点の任意の近傍まで振り上げられることを解明する.これにより,エネルギー制御法がAcrobotの振り上げ制御に有効であることを理論的に示す.
 上述の解析法は,多自由度の劣駆動システムのエネルギー制御法による閉ループシステムの振る舞いに関する解析に新たな糸口を与える.


■ 多軸駆動電動射出成形機の圧力制御での位置同期制御用SFCプログラム

久留米工専・赤坂則之,大崎邦倫

 中大型射出成形機に,従来の油圧駆動に代わって導入されたACサーボ駆動では,機械コストの点から一般的に2軸駆動が採用されている.多軸駆動法では射出成形機に過度の応力を与えないためには,多軸サーボモータの位置同期制御が不可欠である.本報は,圧力制御での多軸位置同期制御が実現できる制御方式を明らかにし,さらに射出成形機の運転操作の特徴である速度制御と圧力制御の切り替えおよび両者のバンプレスな移行を可能とするロジック制御を含むハイブリッド制御を実現できるSFC(Sequntial Function Chart)形式で記述した制御プログラムを明らかにし,市販制御装置で実現できることをシミュレータ装置で検証した.


■ 視覚誘導システムのための事前知識の自動獲得

九州大・田中完爾,山野健太郎,岡田伸廣,近藤英二
   ISIT・木室義彦

 視覚誘導とは,作業環境に固定されたビジョンシステムを用いて,移動ロボットを誘導するタスクである.視覚誘導システムにとって,ロボットを検出し追跡することは重要であり,その検出・追跡を行う有効な手法も実現されつつある.しかしながら,従来の枠組みでは,ロボットの属性(色,形状,模様など)は既知であるとしていた.本論文では,ロボットの属性の統計的な性質を視覚誘導システムが自動的に学習する手法を提案する.そのために,視覚誘導システムとロボットが協調しあう能動認識のアプローチを用いる.この手法は,学習がうまく行えたかどうかを評価することができるため,個々の作業環境に応じてシステムを最適化することが可能である.


■ 知覚量に基づく制御系設計−蛇型ロボットの方向の知覚量を用いたフィードバック制御−

法政大・伊藤一之,岡山大・福森嘉孝

 本論文では,複雑な未知環境において機能する多自由度ロボットの制御方法について考え,これを実現する際に問題となる情報量の指数的増加の解決を目標に新しい制御系の枠組みを提案する.
 まず,従来の枠組みにおいて情報量が指数的増加してしまう原因が,物理量を基にして世界を記述しているところにあることを述べ,これに代わる量として概念量を提案する.
 つぎに,概念量を生成するための受動知能と,概念量を制御量として制御則の計算を行う能動知能の2つの異なる性質をもった知能から構成される制御器の枠組みを提案し,提案した枠組みを用いることで,実世界の多数の情報を少数の概念量に抽象化し,この少数の情報でロボットが制御できることを示す.
 最後に,障害物の存在する環境における蛇型ロボットの光源への移動を例に,方向の概念を被制御量とする制御系を構成し,実験により議論の妥当性と有用性を示す.


■ 社会シミュレーションによる安全規制の評価

東大・長瀬雅也,古田一雄

 世界的な規制緩和の流れに沿って安全規制制度の再検討が行われている一方,頻発する事故や事件が社会的な不安を喚起する状況にある.そこで,安全規制制度の評価を行うために,生産活動と安全管理の両者を考慮できるなんらかの評価手法が必要である.そこで本研究では,安全規制が社会効用に与える影響を評価するための,社会シミュレーションを提案する.本研究でシミュレーションに用いるモデルは,多数の企業がある共通の環境下で活動を行い進化していくようなマルチエージェントモデルである.各企業のモデルは,生産性と信頼性に関る属性をもち,安全規制は環境条件として全企業の活動を制約する.本モデルは柔軟性が高く,単純なモデルから複雑なモデルへの拡張が容易である.結論として,安全規制制度を評価するために有用な手法を開発し,さまざまな規制スタイルや規制手法を比較するシミュレーションによって数々の有用な知見が得られた.


■ 動的多指可操作度に基づくサブゴールの優先的選択によるマニピュレーション計画手法

防衛大・八島真人

 本論文では,対象物を任意の位置・姿勢に操るために必要なロボットハンドに対する目標関節駆動トルク軌道を決定するためのマニピュレーション計画について議論する.筆者が以前提案したランダム手法に基づく計画手法では,操り系の可操作性などサブゴール固有の情報を利用せず探索空間内においてランダムに新しいサブゴールを構築していくことで計画を進行させるため,効率の良い探索が行えなかった.この問題点を克服するために,本論文では多指可操作度の優れたサブゴールを優先的に選択し,最終目標の方向にバイアスされた探索領域に逐次新しいサブゴールを構築していく3次元動的マニピュレーション計画手法を提案する.シミュレーション実験によって,本手法はランダム手法に比べて解の発見率等の探索能力が高いことを示す.本手法はアルゴリズムが単純であるため,特定のクラスのロボットシステムに依存せず,多様なシステムに対する動的な動作計画への適用が期待できる.


copyright © 2005 (社)計測自動制御学会