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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.43 No.10(2007年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ CdSセルをもとにした光・電気統合型センサによる非接触材質厚さ検出

佐賀大・辻 聡史,木本 晃,信太克規

 本研究の最終目的は,非接触で物体の距離情報を含めた材質や形状等の複数の情報を検出するシステムを確立することである.そのための測定手法として,電気・光統合型センサを提案した.本手法は,平面型静電容量センサの電極としてCdSセルを用いることで単一センサにより,測定対象の電気特性と光特性を測定しようとするものである.
 本稿では,提案した光・電気統合型センサを用い,対象までの距離,材質識別および材質厚さの検出を試み,提案センサの有用性について考察した.実験として,複数の光の状態で8種の測定試料の静電容量を測定することで,導電性および絶縁性の材質識別と測定試料までの距離のおよび厚さ検出を試みた.測定試料として,導電性材質としてのアルミニウムと絶縁性材質としてのアクリルについて,それぞれ4種類の厚さを用意した.結果として,提案センサにより,導電性および絶縁性の材質識別と測定試料までの距離(1mm〜4mm)およびその厚さ(2mm〜10mm)の検出の可能性を示しえた.


■ 逐次一対比較法の提案

名古屋大・鳥海不二夫,学位授与機構・小林 彬,
     東工大・高山潤也,大山真司

 官能検査などのあいまい量の測定において有効な手法の1つに一対比較法がある.一対比較法は一対の試料を比べその刺激の大小関係のみを判断すればよいため,被験者が専門家でない場合でも比較的良い結果を得ることができる.しかしながら,一対比較法の問題点として比較回数の多さがある.一対比較法では,1組ずつ試料を提示しそれらを比較判断してもらうため,順序効果がない場合で1/2N(N-1)回の比較が必要となる.そのため,実験を行うパネルにとって多大な負担となり,疲労などによる検査精度の劣化が無視できなくなる.そのため,刺激対が増えた場合への対策が必要となる.帯関数モデル型一対比較法(Band function model paired comparison: 以下BMPC 法と略記)においては,必ずしもすべての対について比較判断を行わなくても解領域を得ることができるという特徴がある.そこで本論文では,BMPC法によって作られる不等式のうち冗長不等式を排除することにより,情報を欠落させることなく比較回数を減らす逐次一対比較法を提案する.本論文では解領域を更新する不等式,すなわち必要不等式がどのようなものなのかを明らかにするとともに,具体的な比較順序を含む逐次的一対比較のアルゴリズムを提案し,その効果を確認した.


■ Fraunhofer回折光による音圧勾配計測

佐賀大・寺本顕武,高坂祐顕,
   ムハマド タウヒダル イスラム カーン,植木原睦人

 本論文は,レーザ光束が音場を横切るとき,光路と直交する向きの音圧の勾配の影響を受け波面が偏向される現象を用いて音圧の勾配分布を計測する光音響計測系を提案している.本研究は音圧勾配計測の原理を定式化し,従来「一次回折光による位相変化を検出する」とされていた解釈を改め,「ゼロ次回折光の偏向にもとづく波面の傾きを検出する」計測系として改めて提案している.提案システムでは,偏向された平行レーザ光束の波面の傾きをシャック=ハートマン波面検出光学系を用いて検出しており,その特徴はつぎのようにまとめられる.(1) レーザ光束のフラウンホーファ0次回折光が,光路と直交する向きの音圧勾配によって偏向を受けることを利用している.(2) 音圧勾配の光路に沿った経路積分値の焦点面に対する正射影ベクトルの成分を計測することができる.(3) その結果,一方向から音波が到来する場合,光学系の焦点面上で,直交する2方向の値を計測することにより,音の到来方向の焦点面に対する正射影ベクトルを検出することができる.また,以上の特徴を理論と実験により明らかにした.


■ 有限周波数位相・ゲイン特性に着目した連続時間制御対象の制御しやすさの特徴づけ

CREST,科学技術振興機構・管野政明
     東大・大西政彦,原 辰次

 本論文では,一入力一出力連続時間の(限界)安定な系に対して,制御のしやすさの特徴づけを行う.その特徴づけは,系の有限周波数領域での位相・ゲイン特性に基づくもので,H∞ループ整形設計における達成可能性能を調べることにより行う.本論文で定義する位相・ゲイン特性条件は,低周波帯域での位相条件と高周波帯域でのゲイン条件とからなり,条件(π)と呼ばれる.この条件(π)を満足する2次系に対して,達成可能性能が必ず√4+2-√2以下となることを厳密に証明し,その条件が制御のしやすさを特徴づけていることを示す.さらに,より高次の系に対しても条件(π)と達成可能性能の関係が近似的に成り立つという事実に基づき,条件(π)を考慮し整形重み関数を選択し帯域幅を定める,ロバスト設計手法を提案し,その有効性を数値例で確認する.注 ルートの中に4+2√2が入る


■ 保守性を低減したゲインスケジューリング制御系設計

大阪府大・下村 卓,木口祐一郎,大久保博志

 本論文では,ポリトープ型動作領域をもつシステムに対し,パラメータ依存Lyapunov関数を許容した,LMIに基づくゲインスケジューリング制御系設計問題を考えている.この問題の問題点の1つであるBMI項を拡張型LMI表現を用いて解消し,さらに,Lyapunov変数の時間微分項の取り扱いに関して,従来の問題点を回避した新たな設計手法を提案し,その有用性を数値例により検証している.その結果,単一Lyapunov関数に基づく設計や,Lyapunov変数の時間微分項の取り扱いに関して従来法を用いた設計に比べ,提案手法は,保守性を大幅に改善し,良好な制御性能を与えることがわかった.


■ 2段階部分空間同定法によるソフトセンサー設計

京都大・リ スンヒョン,加納 学,長谷部伸治

 現実の生産プロセスにおいては,製品品質のような重要な変数が必ずしもオンラインで測定されているわけではない.このため,不良品をなくし,生産性を高く維持するためには,高精度なソフトセンサー(バーチャルセンサー)の開発が不可欠である.ソフトセンサーを利用することにより,測定されていない重要な変数を推定し,その推定値に基づくフィードバック制御(推定制御)を実現できる.本研究では,推定すべき重要変数に非観測外乱が与える影響を考慮できる,2段階部分空間同定法を提案する.提案法によるソフトセンサー設計手順は,1) 観測入出力変数による状態空間モデルの同定,2) 出力残差変数からの非観測外乱の推定,3) 非観測外乱推定値と観測入力変数から重要変数を推定する状態空間モデルの同定,からなる.提案する2段階部分空間同定法では,カルマンフィルタに基づく従来型ソフトセンサー設計法の前提条件を置くことなしに,非観測外乱を推定する.すなわち,非観測外乱が白色雑音によって生起されておらず,その動特性が変化するような場合であっても,精度の高い推定を実現できる.本報では,数値例を通して,提案法の有効性を示す.


■ 射影型反復学習による連続時間閉ループ同定法

奈良高専・酒井史敏,京都大・杉江俊治

 本論文では,反復学習制御を利用した連続時間システム同定法に基づき,フィードバック制御により安定化された制御系から制御対象の連続時間モデルを直接同定する手法を提案する.学習更新則および学習ゲインの選択に関しては著者らがこれまでに提案してきた手法をそのまま適用することができ,開ループ同定と閉ループ同定を全く同様の枠組みで扱うことができることを示す.
 また,学習更新則に,観測雑音等の事前情報を一切必要とせず逐次的に雑音の影響を減少させる効果をもつ学習ゲインを採用し,モデル化誤差をもつ不安定かつ非最小位相系の制御対象に対して連続時間閉ループ同定を行った数値例に基づき提案手法の有効性を確認する.


■ Performance Measures in Model Predictive Control with Non-Linear Prediction Horizon Time-Discretization

Tokyo Inst. of Tech.・Ravi GONDHALEKAR,
Jun-ichi IMURA

Model predictive sampled-data control of constrained, linear, time-invariant, continuous-time plants is considered. The time-discretization of the prediction horizon may be non-linear, in order to reduce the computational complexity of online MPC methods by lowering the number of optimization variables for a given prediction horizon length. The main contribution of this paper is to propose two closed-loop performance measures in order to evaluate the salient performance properties of non-linearly time-discretized prediction horizons. A numerical motivating example comparing two prediction horizon time-discretizations with an order of magnitude difference in the number of optimization variables is discussed, and subsequently the results of a sensitivity analysis of the two proposed performance measures with respect to the prediction horizon time-discretization are presented. The use of non-linearly time-discretized prediction horizons is also shown to be relevant for complexity reduction in offline MPC strategies.


■ 連続時間線形周期システムのKalman正準分解に関する一考察−システムと同じ周期での状態空間の可制御・不可制御部分への分解

名古屋大・軸屋一郎,穂高一条

 Kalman正準分解の定理は,線形システムの理論における最も基本的な事実の1つであり,不可制御な線形時変システムの状態を可制御な部分と不可制御な部分に分解するような座標変換行列が存在することを主張する.線形周期システムの場合は周期的かつ実行列値をとる座標変換行列を選ぶことが重要であり,Bittantiらによる従来研究ではこのことが可能であると主張したが,実際には誤りであり,筆者らにより反例が示された.
 引き続き,本研究では線形周期システムのKalman正準分解の存在条件,とくにシステムと同じ周期をもつKalman正準分解の存在条件を調べる.
 このために,まず線形周期システムの可制御部分空間と可到達部分空間が満たす性質を求める.とくに,一般の線形時変システムと比べ不変性に関して強い性質が成り立つこと,周期性が成り立つこと,両者が一致することなどを示す.
 これらの結果をふまえ,システムと同じ周期をもつKalman正準分解の存在条件を調べる.すなわち,システムと同じ周期をもち連続微分可能かつ実行列値をとる座標変換行列を用いて,線形周期システムの状態空間を可制御部分と不可制御部分に分解できるための必要十分条件を導出する.
 得られた結果は,可制御性グラミアンの分解可能性に帰着され,Bittantiらによる従来研究では自明とされていた分解が必ずしも可能でないことに対応する.


■ 放物型分布定数系の適応オブザーバを用いた状態フィードバック安定化

北海道大・大室 朗,山下 裕,島 公脩

 分布定数系において,適応制御と状態推定問題は,それぞれ個別に研究されてきたが,適応オブザーバの研究は,集中定数系を中心に研究が進む中,分布定数系への拡張はあまり述べられてこなかった.そこで,われわれは分布定数系(無限次元系)での適応オブザーバを提案した.この手法により,分布定数系においても,未知パラメータと状態を同時に推定しうる1つの道筋を示すことができたが,この推定値を用いた状態フィードバック制御においては,依然,課題が残されていた.なぜなら,制御対象が線形系である場合でも、適応則を付け加えた閉ループ系においては,系全体が非線形系になり,観測と制御の分離が大域的に成り立たなくなってしまうためである.そこで,本論文では,PE性が仮定された場合において,推定値による状態フィードバック系が,有限発散時刻をもたないことと,大域的に漸近安定になることを考察する.


■ 区分的リヤプノフ関数を用いた不確かさを含む線形システムに対する可変ゲインコントローラの構成法

湘南工科大・大屋英稔,
      電通大・萩野剛二郎,嘉陽宗石

 本論文では,上界値が未知であり,かつマッチング条件を満たさない不確かさを有する線形システムに対する適応ゲインコントローラの構成法を提案する.
 提案する適応ゲインコントローラは,ノミナルシステムを利用して設計された LQ 最適ゲイン行列,可調整パラメータ,および可変ゲイン行列からなり,可調整パラメータ,および可変ゲイン行列は,不確かさの及ぼす影響を補償するように設計される.
 本論文では,区分的リヤプノフ関数を利用し,適応ゲインコントローラが存在するための十分条件を示し,最後に数値例を通して提案するコントローラの有効性を検証する.


■ ブースティングアルゴリズムを用いた自律移動ロボットの制御ルール獲得

名古屋市工業研・井谷久博,
       名古屋大・古橋 武

 ロボットの幅広い分野での利用促進を目指して,ロボットの機能を高める研究が盛んに進められている.行動ルール獲得の自律化は,ロボット利用促進の重要な技術の1つであるが,現在のところその進歩は十分でなく,人間の教示によるロボット作業実現の効率化が見直されている.本研究ではルール教示の高い汎用性の利点とティーチングプレイバック教示の高い精度の利点を生かした教示の実現を目指して,ブースティングアルゴリズムによる制御性能向上ルール獲得手法と,獲得ルールによる既存ルールのチューニング手法を提案する.本知識獲得手法は,ティーチングプレイバック教示の結果を利用して,単純な構造の制御ルールを順次組み上げて性能の良いルールセットを探索する過程で,制御性能の向上に寄与したルールの抽出を容易にする.抽出した制御性能向上ルールは,暗黙知に基づく優先的適用法により既存ルールに付加し,既存ルールのチューニングをすることができる.本手法をロボットの通路通過問題に適用し,従来法と比較して,制御性能向上ルールの抽出が容易であること,獲得したルールの付加により既存ルールの限定環境下での性能向上が実現できること,また,通路の変化に対しても既存ルールの働きにより制御性能の劣化を抑えられることを示す.


■ Risk Compensation due to Human Adaptation to Automation for System Safety

Univ. of Tsukuba・Makoto ITOH,
ANA Information Systems・Daisuke SAKAMI,
Univ. of Tsukuba・Kenji TANAKA

 本稿では,自動化システムが導入されることによるリスク補償的な行動の変容と,自動化レベルの変化に伴う行動変容の違いについて,2つの実験を通じて考察する.1つ目の実験では,(1) 支援なし,(2) 警報支援,(3) 警報支援とシステムによる安全制御,の3つを比較して,被験者の行動とそのリスクがどのように異なるかを調べた.実験の結果は,警報だけではなく,必要に応じてシステムが安全制御を行うタイプの支援において,リスク補償的な行動の変容が顕著に起こりうることが示された.また,システムが適切に動作しているとしても,人間行動の変容によって新しいタイプの事故のリスクが高まりうることも確認された.2つ目の実験では,自動化のレベルが変化する場合に,各レベルでの行動パターンにどのような変化が起こりうるかを調べた.実験の結果,自動化のレベルが低下する際,リスクを減少させるべく行動変容が起こるが,自動化レベルが上昇する際のリスク補償ほどには顕著にはなりにくい可能性が示された.


■ 同期タッピングの周期誤差制御に関わる2種類のタイミング機構−内的時間生成に基づくインタフェース構築に向けて−

東工大・野弘二,三宅美博

 人間は常に変化する外界に適応しつつ生活している.特にタイミング同期に関わる人間の内的時間の生成機構は,人間と人工物の間での親和性の高いインタフェースを構築する上で有用な情報を提供すると考えられる.そこで本研究では,同期タッピング課題を用いて実験的な分析を実施した.具体的には,タイミング同期および,その基盤となる内的時間の生成機構を明らかにするために,周期誤差を人為的に制御する実験を新たに開発し分析を行った.その結果,2種類のタイミング機構の存在が確認された.ひとつは従来のモデル研究で提案されてきたフィードバック型の周期誤差訂正に基づくタイミング機構であり,本研究はそれを初めて実験的に示したこととなる.もうひとつは従来モデルでは説明できない機構であった.特に,二重課題法を用いた実験により,前者の機構には注意資源が必須でないが,後者の機構は注意資源が必須となる認知的な機構であることが示された.これまで人間のタイミング機構は運動制御を中心に捉えられてきたが,これらの結果は,タイミング機構において認知的機構も同時に考慮する必要性を示すものであり,タイミング機構の研究に新たな観点を与えるものである.


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