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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.6(2008年6月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ スペクトル拡散超音波を用いた屋内測位の計測精度

創価大学・鈴木彰真,ヤマハ・山根章生,
     創価大学・伊与田健敏,久保田 譲,渡辺一弘

 本論文では,狭指向の送信器によって生成されたスペクトル拡散超音波を用いて三次元測位実験を行い,送・受信器の位置関係によって計算される測位劣化指数(DOP)と,おもに送信器の狭指向性によって発生する測距誤差の観点から測位誤差の因子を検討した.実験で用いる測位システムは,測位空間の四隅に設置された送信器から測位対象に設置されている受信器までの距離計測を行い,4つの送受信器間距離を用いて厳密解を導出し,測位計算を行っている.実験の結果,測位誤差は地面と水平方向の測位劣化指数(HDOP)よりも垂直方向の測位劣化指数(VDOP)からの影響を受け,平均RMS測位誤差は3.43cmとなった.実験により,スペクトル拡散超音波を伝播媒体に用いることでcmオーダーでの屋内三次元測位が実現可能であることがわかった.また本論文により,広範囲にわたり高精度な測位を行うためには,距離計測時に発生する誤差を考慮するだけではなく,送・受信器の幾何学的位置関係によって与えられるDOPを考慮する必要があることが示唆された.


■ 衛星光学系への有機系汚染物質の影響/有機分子吸着による光学硝材の透過率変動

三重大学・伊藤信成,徳島大学・加藤雅裕,岡野伸章

 軌道上で運用されている地球観測センサの多くで、打ち上げからの時間経過とともに出力信号が低下するという現象が報告されている.本論文では,この劣化原因として,衛星から放出された有機ガスの光学系への吸着による透過率低下の可能性について検討した.測定では,衛星で一般的に使用されている5種の硝材に対し,いずれも塗料の溶剤として使用されている2-プロパノール,酢酸エチル,ジクロロメタンの3種のガスを吸着させ,透過率への影響を評価した.その結果,2μm以上の赤外域ではガス吸着の影響は無視できるものの,紫外-可視域では吸着ガス分子内のσ,π結合の違いにより,ガス種ごとに分光透過率の低下量が異なることがわかった.さらに,実際に打上げられたセンサの軌道上データとの比較から,π結合を持たない2-プロパノールあるいはジクロロメタンが吸着した場合の透過率低下とセンサの軌道上での出力低下特性が類似していることがわかった.合わせて,センサの信号低下がガス吸着による光学系の透過率低下であると仮定し,分子吸着膜の成長率を推定したところ,分子吸着膜の成長速度は打ち上げからの時間とともに減少していることを示唆する結果が得られた.


■ 3値のPWM 型制御入力に基づく安定化

リコー・冨田健太郎,大阪大学・浅井 徹

 本論文は,3値の記号入力を有する線形な制御対象に対して,PWMを用いることを前提とし,さらに,その状態遷移を厳密に扱うことにより,システムを安定化する状態フィードバック則の設計法を提案した.安定化状態フィードバックゲインの存在条件は線形行列不等式 (LMI) を用いて与えられている.また,連続時間システムが可安定であれば,ほとんどすべてのPWM周期に対して得られたLMI条件が可解であることのほか,離散化されたシステムに対して原点を指数安定化する定数状態フィードバックが存在すれば,原点は連続時間システムの意味においても指数安定化されることも示した.さらに,速応性に関する条件のもとで不変集合を大きくするための手法を与え,数値例によって有効性の検証を行った.


■ パラメータに対し区分線形なスケジュールドゲインの設計法

宇宙航空研究開発機構・濱田吉郎,大谷 崇,
     電気通信大学・木田 隆,長塩知之

 本論文では,制御対象の持つ変動パラメータに対して区分線形となる,簡便なスケジュール則を持つゲインの設計法を提案する.本手法はスプライン型のパラメータ依存二次形式を用いたゲインスケジューリング手法を基にしており,Lyapunov関数はパラメータ依存関数として得られる.そのため従来法と比較しても遜色のない制御性能を持ち,かつゲインの区分点が少ない簡便なゲインが得られる.区分線形なスケジュール則は搭載計算機に対する演算負荷が小さく,ゲインの区分点の数は搭載時の必要メモリ量に直接関係するため,本手法で導出されるゲインは実装に適したものとなっている.設計条件は伸張補題(dilation lemma)を用いてラインサーチパラメータを含む行列不等式で記述されるため,標準的なLMI(Linear Matrix Inequality; 線形行列不等式)ソルバを用いたラインサーチを行うことで,簡便なスケジュールドゲインを導出することができる.本手法によるゲインの設計例を示し,他の手法を用いた場合の結果と比較することで,その有効性を確認する.


■ きく8号(ETS-VIII)のロバスト姿勢制御系設計−DVDFBの特徴を活かした二自由度制御系の適用−

電気通信大学・長塩知之,木田 隆,
     宇宙航空研究開発機構・濱田吉郎,大谷 崇

 本稿では,2006年12月に宇宙航空研究開発機構によって打ち上げられた技術試験衛星「きく8号」(ETS-VIII)のロバスト姿勢制御系設計について検討する.ETS-VIIIを姿勢制御の観点から見た場合,大型柔軟宇宙機に共通した問題として,大型展開アンテナ,および,太陽電池パドルの柔軟構造化に伴う弾性振動周波数の広帯域化や,太陽指向のためのパドルの回転に伴うダイナミクスの変動,といった課題が存在する.そこで,本稿では,制御対象のパラメータ誤差や変動に対して,非パラメトリックな優れたロバスト安定性を持つことが知られている DVDFB (Direct Velocity and Displacement Feed-Back) 制御器の適用を試み,外乱抑制性能をH∞制御理論の枠組みの中で最適化する一設計法について提案する.また,ETS-VIIIに搭載された通信機器の校正を高精度に実施するために,目標値追従性能を制御仕様としたフィードフォワード制御系をDVDB制御系に加えて二自由度制御系を構築することにより,異なる制御仕様のそれぞれに対して,要求される姿勢精度を保証することができる制御系の設計法を提案する.


■ きく8号(ETS-VIII)のロバスト姿勢制御系設計−ゲインスケジューリング制御の適用−

宇宙航空研究開発機構・濱田吉郎,大谷 崇,
     電気通信大学・木田 隆,長塩知之

 筆者らは,将来の大型柔軟構造衛星に必要となる高精度姿勢制御技術を確立するべく,現在運用中の大型柔軟構造衛星「きく8号(ETS-VIII)」を用いた次世代姿勢制御実験を計画中である.本稿では,制御実験で用いる制御則の1つである,ゲインスケジューリング制御則の新しい設計手法について論じ,きく8号へ適用するための設計手順について述べる.柔軟構造物を有する人工衛星の姿勢制御では,振動モードのうち低次のものだけが制御される場合に,制御されない高次の振動モードの干渉によって不安定化する現象(スピルオーバ不安定)がしばしば問題となる.提案する設計手法では,高次の振動モードは制御対象に対する「摂動」として扱われ,摂動に対してロバストな制御則が導出される.また太陽電池パドルの回転による振動特性の変動に対処するため,導出される制御則はパドル回転角によりスケジュールされるゲインを持つ.
 このスケジュール則は,少ない区分点を持ち,単純な線形補間によって実現されるため,搭載計算機に対する計算負荷が小さく,実装に適したものとなっている.設計した制御則により,高次振動モードとパドル回転による特性変動に対するロバスト制御性能が保証されることを,軌道上実験を想定したシミュレーション結果によって示す.


■ 加速度計出力を用いた柔軟構造衛星のシステム同定−インパルス加振によるモードモデルの回帰的同定−

宇宙航空研究開発機構・山口 功,葛西時雄,井川寛隆

 軌道上でのシステム同定に有効な,単発のインパルス加振により衛星本体に搭載された加速度計出力から,衛星システムを1入力多出力系として同定する手法を提案する.本アルゴリズムでは,インパルス加振を行い,得られた加速度情報に対して,通常のERA法を適用することで,システム行列を同定する.さらには,最小2乗法を用いた回帰法により,モードモデルの型を有する入出力行列を高精度に同定する.計測された加速度はインパルス入力後から,計測されたものを利用するため,システムが有する並進・回転に関する6つの剛体モードは同定できない.技術試験衛星VI型の数値解析モデルを用いた数値シミュレーションによる数値計算例では,14個の弾性振動モードを持つノミナルモデルに対して,すべての弾性振動モードの固有振動数,モード減衰比が高精度に同定され,衛星本体との干渉が低く観測性の低いピッチ軸以外の振動モードシェープも本稿の提案する手法により,十分な精度で同定され,本手法の妥当性を数値的に確認した.本法では,加速度計のみのデータを用いて位置と姿勢の6自由度運動を同時に同定できるため,ジャイロと加速度計といったような異種間のセンサの同期を取る必要がなく,軌道上同定には好都合の手法と考えられる.


■ 空気圧マニピュレータの特性を考慮した運動学習システムの提案

大阪大学/ERATO JST・池本周平,
     ERATO JST・港 隆史,
     大阪大学/ERATO JST・石黒 浩

 近年の多くのロボット研究における関心は,人間とのコミュニケーション相手としてのロボットの実現に集まっている.それらの研究で想定されるタスクにおける人間とロボットの距離は,従来の産業用ロボットにはありえない近距離である.そのため,人間と予期しない接触を起こす可能性が高く,安全性の確保が重要となる.この問題に対し,空気圧アクチュエータによってロボットの関節を駆動することは,空気の圧縮性を利用した高い安全性の実現という利点を有する.しかし,空気圧アクチュエータは駆動系として無視できない複雑な動力学を有するため,目標軌道を高精度で実現することが非常に困難である.そこで,本研究はロボットの運動学習手法に注目し,この問題の解決を目指す.特に,空気圧アクチュエータが有するむだ時間を含む大きな応答の遅れによって,フィードバック制御器の出力を用いた学習器の出力評価が不適切となる問題に注目する.この問題に対し,本研究では学習器の出力評価に追従誤差の時系列平均値を用いる手法を提案し,空気圧駆動マニピュレータを用いた実験によってその有効性を示す.


■ 柔軟拇指ロボットの3次元回転接触を利用した“Blind Touching”

九州大学/理研BMC・田原健二,
     立命館大学/理研BMC・有本 卓,
     理研BMC・吉田守夫,神戸大学/理研BMC・羅 志偉

 本研究では,拇指の構造および機能について注目し,柔軟な半球形状指先を有する5自由度拇指ロボットを用いた,外界センサーレスによる指先と作業平面との接触力および位置の同時制御を“Blind Touching”として定義し,その実現を目的とする.
 指先が柔軟かつ半球形状であることから,作業平面と面接触を行いながら,指先が作業平面上において滑ることなく転がることにより,3次元回転接触拘束が生じる.本研究では,面接触を考慮した3次元回転拘束条件をモデル化し,これらを巧みに利用することにより,目標接触力を満たしながら接触面中心を目標位置へ移動することを目的とする.導入する制御則は,視覚や触覚などの外界センサーを必要とせず,リンク長や指先半径などの拇指ロボット自身が有する幾何学的な物理情報のみによって構成し,作業平面上における目標位置は,固有感覚情報としてあらかじめ与えられるものと仮定する.
 はじめに,非ホロノミックな3次元回転接触拘束のモデル化を行い,それらを陽に含んだ5自由度拇指ロボットのダイナミクスを導出する.その後,外界センサーレスによるBlind Touching制御則を構築し,全システムの挙動を表す閉ループダイナミクスの収束性証明を行う.そして数値シミュレーションにより,指先の接触・非接触状態に関わらずBlind Touchingがただ1つの制御則によって実現できることを示す.



[ショート・ペーパー]

■ Fictitious Reference Iterative Tuning の最適性に関する考察

大阪大学・金子 修,新日本製鐵・宮地 誠,
     福井工業大学・藤井隆雄

 本論文では,著者らの一部によりすでに提案・開発されている,1組の実験データのみを用いて最適な制御器パラメータを調整する手法Fictitious Reference Iterative Tuning(FRIT)において制御器の分母と分子がともにパラメタライズされた一般の場合に対し,最適なパラメータを保証するための一般的条件を導出した.そして,得られた一般的な条件が,著者らが以前に得たある制約をもつ制御器に対するFRITの最適性条件,および,Virtual Reference Feedback Tuning(VRFT)の最適性条件を特別な場合として含むことを示した.そして,FRITとVRFTにおいて,制御器の構造を決めて,おのおの最適性を保証するようなフィルタを施すとこの2つの手法は等価となることを示した.


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