SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
新 英文論文集 JCMSI
JCMSIバックナンバー
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.8(2008年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 爪先装着型センサによる階段昇降を含む歩行時消費エネルギー推定

弘前大学・佐川貢一,大久保憲祐,
     ケーヒンエレクトロニクステクノロジー・佐藤知子

 今日のカロリーカウンタは階段登り時の消費エネルギーを求めることが困難である.そこで本研究では,平地歩行と階段昇降時の消費カロリーを推定する方法を提案する.エネルギー消費量は,階段昇降を含むさまざまな歩行実験で測定した酸素摂取量を利用して構築した代謝モデルから計算する.代謝モデルは,水平および上下方向歩行速度(2次元歩行速度)を多項式近似して構築したエネルギー需要量を入力とする1次遅れ要素として定式化する.2次元歩行速度は,爪先に取り付けた3次元歩数計で測定した加速度を積分して求める.3次元歩数計は,3軸加速度センサと3軸角速度センサによって構成され,推定した爪先の3次元移動量から2次元歩行速度を求める.また,酸素摂取量はエネルギー需要量モデルを構築するため測定する.本研究で構築したエネルギー需要量推定モデルは,2次元歩行時の酸素摂取量とよく一致し,相関係数は0.93となった.平地歩行,階段登り,階段下りを含む歩行実験の結果,階段登り時の推定エネルギー消費量は平地歩行と比較して大幅に増加することを確認した.さらに,推定エネルギー消費量と実測エネルギー消費量との相関係数は平均0.91となり,本研究で提案する方法によりエネルギー消費量の定量的推定の妥当性が確認された.


■ 手すり加速度を用いたエスカレーターチェーンの弛み異常診断

三菱電機・蔦田広幸,平位隆史,鷲見和彦,伊藤 寛,
   三菱電機ビルテクノサービス・志賀 諭

 エスカレーターの品質・信頼性向上を目的として,手すりチェーンの弛み異常を検出する新しい手法を提案する.本手法は,手すり上に加速度センサを仮設し,反転起動時における加速度波形を測定して分析することで,エスカレーターを分解することなく,手すりチェーンの弛みを検出するものである.本論文では,反転起動時における手すりチェーン挙動を分析した上で,起動から手すり動き出しまでの遅延時間である起動遅延時間の変化から,チェーン弛みが検出できることを示す.つぎに,反転起動時における手すり上の加速度波形を信号処理することで,起動遅延時間が算出できることを示す.最後に,提案システムで算出された起動遅延時間に基づいて,さまざまな手すりチェーン弛みが検出可能かどうか,複数の実機エスカレーターを使用して評価を行った結果について述べる.


■ 電磁波レーダを用いた埋設管の被りおよび径の計測

山口大学・田中正吾,若林正樹,大出康貴,岡本昌幸

 ガス管や水道管を始めとする多くの地中埋設管の被り(深度)や径を計測することは,ライフラインの維持管理を始め,建設や道路工事などに際し重要なことである.このような観点から,現在までさまざまな被りと径の計測法が提案されてきており,被りに関しては比較的高精度な計測が可能となったが,径に関しては最新の方式でも計測値が真値の3倍になるなど,依然大きな計測誤差が生じている.
 本論文では,電磁波レーダによる電磁波伝播に関し,先に著者の1人が開発した信号伝播モデルを適用することにより,埋設管に限定するものの,金属管では管表面からの反射波を,また非金属管では管の表面および底面からの反射波を正確に分離・抽出することにより,計測伝播時間と物理モデルによる予測伝播時間とをパターンマッチングすることにより,被りおよび径を共に高精度に計測できる探査システムを提案した.そして,本システムを,コンクリートに埋設された金属管(鋼管),非金属管(塩ビ管)および地中に埋設された非金属管(陶管)の3ケースに対し適用した結果,被りに関しては平均6%以内の誤差で,また径に関しては平均12%以内の誤差で,共に高精度な計測が可能であることを示した.


■ ループ整形のための1入力1出力PID制御器のモデルを用いない最適化

広島大学・佐伯正美

 制御系設計では数式モデルに基づく方法が強力で主流であるが,しばしば,モデルの同定に多くの労力を必要とし,同定と設計の反復や評価関数の重みの選定などに専門知識を要する.本稿では,1入力1出力線形時不変な制御対象に対して,数式モデルを同定せずに制御対象の入出力応答データを用いて直接にPID制御器を設計する方法を提案する.すなわち,ループ整形のために最大感度のゲイン制約条件下でPID制御器の積分ゲインを最大化する問題設定を与え,非反証制御の概念を用いて最大感度制約条件の必要条件をPIDゲインを用いて表わす.この条件は凹制約であるのでこれを線形制約条件で近似し,線形計画問題に帰着して解を効率よく求める.さらに,プラントのひとつの入出力応答から各周波数での制約条件を得るために,多数のバンドパスフィルタを用いる方法を与え,その処理がウェーブレット変換として解釈できることを示す.数値例では,提案法によりループ整形が達成され,提案法が測定雑音に対し比較的ロバストであることを示す.提案法は多入出力系のPID制御器設計に拡張できる.


■ 位置決め装置における入力部非線形特性補償を考慮に入れたロバスト適応制御系の設計と実験による検証

佐賀大学・佐藤和也,九州産業大学・鶴田和寛,
     佐賀大学・菊地賢洋

 本稿では産業界で広く使われている位置決め装置において,駆動源であるモータとテーブルの間に介するカップリングやボールねじナット部がテーブルの入力部における非線形特性であるとして,位置決め制御性能に影響を及ぼすと考え,その影響を補償するため連続関数のみを使って適応H∞制御系を構成する方法の有効性を検証する.
 制御対象の入力部に存在する非線形特性を未知なパラメータを有する部分と有界な外乱部分とに分解して考え,未知パラメータは適応的に推定し,外乱が制御性能に及ぼす影響をH∞ノルムの制御の規範で抑制する手法を示す.
 提案手法は連続関数のみを用いているので高周波振動やチャタリング現象などを引き起すことなく良好な制御性能が得られることが実機実験により確認された.
 またカップリングの変更,動作途中でのおもりの付加,あるいは除去という大幅なパラメータ変動に対しても推定則が有効に働き,良好なテーブル位置追従制御性能が保持されることが示された.また,その際に制御則の変更や設計パラメータの再チューニングも必要ない.
 本論文により,現実の産業界で広く用いられている位置決め装置に対する適応制御法のひとつの有用性が示された.


■ 線形時不変不確定システムの可制御不変性と可観測不変性

信州大学・橋本智昭,摂南大学・雨宮 孝,
     日本大学・藤井裕矩

 本稿は,任意の大きさの不確定要素から構成される線形時不変不確定システムの可制御性および可観測性について考察している.任意の大きさの不確かさを許容する場合,不確定要素の位置が重要な役割を果たす.システムがGASCと呼ばれる幾何学的構造をもつことが,任意の大きさの不確定要素に対して可制御であるための必要十分条件であることがすでに証明されている.本稿では,従来のGASCを包括する新しい幾何学的構造を導入し,システムがその構造をもつことが,任意の大きさの不確定要素に対して可制御かつ可観測であるための必要十分条件であることを示す.


■ マルチエージェントシステムの合意問題とそのフォーメーション制御への応用

金沢大学・吉岡 愛,滑川 徹

 本稿では,線形システムとして表現される複数の同一のダイナミクスをもつエージェントの合意問題に対し,新規の合意制御則の設計法を提案する.この制御器の設計法は,Lyapunovの安定定理に基づいており,従来法に比べ,設計の見通しが良い.
 つぎに状態推定を含む出力合意問題に対して,情報交換を行うエージェントの数に依存しない状態推定方法を用いた合意制御則を提案する.先行研究ではエージェントの数に依存して計算負荷が増大していた.
さらに,定常合意偏差をなくすために,積分器を加えた合意制御則を提案する.
 最後に提案した出力合意制御則をマルチビークルのフォーメーション制御に応用し,制御実験により提案法の有効性を検証する.


■ 確率ポート・ハミルトン系の受動性に基づく制御

名古屋大学・佐藤訓志,藤本健治

 本論文の目的は,確定システムの分野で提案されているポート・ハミルトン系を,確率ポート・ハミルトン系として伊藤型確率微分方程式で記述される確率システムへ拡張し,さらにこの系が持つ以下の性質を明らかにすることである.
 第1に,ポート・ハミルトン系の構造は任意の時不変の座標変換のもとで不変であるが,確率ポート・ハミルトン系の構造は不変であるとは限らないことを示し,これを満たす座標変換の必要十分条件を導く.第2に,確率ポート・ハミルトン系が確率受動性を有するための必要十分条件を導く.第3に,ポート・ハミルトン系の性質を保存する座標変換とフィードバック変換の組である一般化正準変換を確率システムへ拡張した確率一般化正準変換を提案する.
 さらに,変換後のシステムが確率ポート・ハミルトン系の構造を保存するだけでなく,確率受動性を持つための必要十分条件も導出する.本論文で示すこれらの性質は,確定システムにおける結果を特別な場合として含んでいる.最後に,確率受動性に基づく確率安定化手法を示す.この方法は制御対象に確率一般化正準変換を施し,確率受動性を持つ新たな確率ポート・ハミルトン系に変換した後,出力フィードバックにより確率漸近安定化を達成するものである.
 非線形確率システムの安定化は一般に困難であるが,提案手法を利用すれば出力フィードバックという非常に簡単な制御器で確率安定化が達成できることを示す.


■ 超音波画像を用いた皮下脂肪・筋・骨境界の自動判別

佐賀大学・井上雅洋,
     産業技術総合研究所・福田 修,ト 楠,上野直広,
     佐賀大学・奥村 浩,新井康平

 客観的,科学的根拠に基づく健康管理を考える際に「体組成」は最も基本的な評価インデックスの1つと言える.そこでわれわれは,ヘルスケア用の簡易型超音波エコー装置を開発し,画像を利用した皮下脂肪厚や筋厚の計測を実現してきた.しかしながら,知識や経験の乏しい使用者が超音波エコー画像から組織判別を手動で実施するのには困難な場合があり,その点の改善が期待されていた.そこで本論文では,脂肪組織や筋組織の境界を自動判別する手法を提案する.提案する処理は,3ステップの処理から構成される.まず,皮下脂肪および骨の解剖学的位置情報に基づいて画像上に探索範囲を設定する.つぎに,輝度情報に基づいて境界の候補点を抽出し,最後にテンプレートとの形状マッチングにより境界を判別する.本手法は,処理を段階的に進めることで,効率良く高速に実行できる利点を有する.提案手法の有効性を確認するために,男女9名から抽出した135枚の画像を対象に判別精度を評価した.また,自動判別のパラメータの設定方法についても,パラメータが判別精度に与える影響について実験的に解析を行った.実験の結果,提案する自動判別手法の有効性が確認できたとともに,パラメータ設定の基本方針についても考察できた.


■ 非線形Receding Horizon制御の自動操船システムへの適用

川崎重工業・浜松正典,加賀谷博昭,河野行伸

 本稿では,近年,海洋調査船,海底ケーブル布設作業船などへの搭載が増加している自動操船制御システムの制御系において,非線形Receding Horizon制御を適用したルートトラッキング制御方法,冗長アクチュエータの最適推力配分方法,さらに,実適用上課題となるウェーブフィルタ,状態推定オブザーバの構成方法について提案する.また,実際の海底ケーブル布設工事に,本稿で提案した制御則を実装した二重化自動操船制御システムを適用し,厳しい気象・海象条件下においても良好な運動性能を確保できることが確認でき,工事期間を通しての連続運用実績からその信頼性の高さを実証することができた.



[ショート・ペーパー]

■ 周期外乱に対して内部モデル原理を利用した制振制御のアンチワインドアップ化

近畿大学 小坂 学

 圧縮機やポンプなどでは,周期外乱による振動や騒音が発生することがある.周期外乱を有する系に対して,繰り返し制御などの内部モデル原理を利用した制振制御が有効であることが知られている.しかし制振制御系の制御入力が飽和されるとき,制振性能は劣化する.本稿では,周期外乱に対して内部モデル原理を利用した制振制御のアンチワインドアップ化を行う.本法はつぎの2つの条件のうち,1つでも満足されるとき,外乱を除去できる周期信号を発生する.その条件の1つは制御対象が既知であること,もう1つは入力が飽和されないことである.その周期信号の山部と谷部が均等に飽和され,制御入力として制御対象に印加される.DCモータのシミュレーションにより本法の有効性が検証される.


■ 連続時間線形周期システムのKalman正準分解に関する一考察−システムの倍周期での状態空間の可制御・不可制御部分への分解

名古屋大学・軸屋一郎,宮崎大学・穂高一条

 一般の線形システムが与えられたときに,時変な座標変換行列が存在して,システムを可制御な部分と不可制御な部分に分解可能であるという事実はよく知られている.しかし,この事実を用いても,実係数をもつ線形周期システムが与えられたときに,実数値をとる周期的な座標変換行列の存在を保証することはできず,実際,そのような座標変換行列が存在しない例が存在しないことをわれわれが示した.そこで,本稿では,座標変換行列のクラスを緩和することにより,実数値をとる周期的な座標変換行列が存在するか議論し,システムの倍の周期をもつ座標変換行列であれば必ず構成できることを示した.これにより,実係数をもつ線形周期システムが与えられたときに,実係数をもちシステムの倍の周期をもつようなKalman正準分解が必ず存在することを示した.


copyright © 2003 (社)計測自動制御学会