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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.10(2008年10月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]

[論  文]


[論  文]

■ 事象関連電位N400計測に基づく日本手話理解における意味処理分析

工学院大学・田中久弥,沖電気工業・宮本一郎,工学院大学・長嶋祐二

 本論文はろう者の言語処理過程を分析するために,ミスマッチ反応を引き起こす手話例文収集を行い手話動画映像による実験方法を検討し事象関連電位N400計測による実験を行った.その結果,ろう者が意味的に逸脱する日本手話を聞き取る場合でN400電位が確認され,検討した実験方法とN400電位による評価が意味処理分析で有用であることが分かった.次に,この実験方法を用いてろう者の意味処理機構について,手話と文字の呈示方法が処理過程に与える影響について検討した.3名のデータから,同じ意味を持つ単語であっても文字で呈示した方がN400電位が増大し,手話で呈示した方がボタン反応時間が増大した.また,1組のデータであるが言語野近傍の推定電位についてろう者と健聴者の比較を行った.その結果,ろう者は単語に対する選択的注意がみられ無意味語の処理過程で意味処理過程と類似した反応が見られた.以上より,ろう者特有の意味処理機構を調べる実験手法が検討されその解明の可能性が導かれたと考える.


[ショート・ペーパー]

■ 不快音および快音に対するα波の振幅・位相応答

山口大学・西藤聖二,宮原伊代

 不快音および快音に対するα波の振幅と位相の時間的な応答を調べた.その結果,α波の振幅は不快音(歯ぎしり,単一周波数音など)および快音(クラシック音楽,小川のせせらぎ)の両方の場合に安静時よりも有意に減少した.不快音の場合,このような振幅の不安定化は,刺激停止後も少なくとも100sは継続することがわかった.位相の時間変化率は,不快音の場合,刺激呈示中から呈示後に渡って増加するが,快音の場合は安静時と有意な差が見られなかった.このことから,不快音はより長時間にわたってα波に不安定化の効果をもたらすことが考えられる.


■ 引きつれ効果を考慮した生体粘弾性パラメータのアクティブセンシング

大阪大学・田中信行,東森 充,金子 真

 生体組織には,力印加時に力印加点のみならずその周囲も引きつれて変形する引きつれ効果と,力印加時と遮断時とで応答が異なる方向依存型特性がある.本稿では,これらに対応した単層構造の粘弾性モデル構築し,既知の印加力分布と変位分布の時系列データからモデルの粘弾性パラメータを推定する粘弾性計測手法を提案する.また,100〜200[ms]間で変形応答が収束するヒト肌を対象として1[ms]の応答性を持つ空気噴流によって力を印加し,2[kHz]のフレームレートを持つ高速度カメラから取得した変位分布データをもとに粘弾性モデルパラメータ推定実験を行った.シミュレーションとの比較から,生体組織変形に対するモデル特性と粘弾性センシング手法の有効性を確認した.


■ 状態量子化に基づく線形システムの離散状態近似とその最適制御への応用

東京工業大学・田崎勇一,井村順一

 連続状態システムの最適制御や可到達性解析に対する数値解法は多くの場合大きな計算量を要する.これに対し,連続状態システムを有限状態システムに近似することで元の問題を有向グラフ上の経路計画問題に帰着し,効率的に解くことが可能となる.本論文では,近似双模倣性の概念に基づき離散時間線形システムの離散状態近似モデルを設計する手法を提案する.さらに,離散近似モデルを用いて最適制御問題の準最適解を構成する方法を示す.


■ 離散時間系に対する最適追従制御問題の解析解

熊本大学・岡島 寛,大阪大学・浅井 徹,
     熊本大学・川路茂保

 追従制御問題において,制御対象が非最小位相系の場合には追従誤差の限界が存在することが知られている.そのため,制御出力と参照信号との偏差を考え,その2ノルムの最小値を解析的に求めることが従来より行われている.このような最小値を求めることは,制御対象とその制御対象によって達成しうる制御性能との関係を明らかにする上で有効である.
 本研究では,1自由度制御系および2自由度制御系の2つの制御系に対して,追従偏差のl2ノルムの最小値およびそれを達成する制御器の解析解を導出する.導出においては,制御系が安定となり,かつ参照信号に追従する出力信号の集合を求め,その集合を利用した計算によって最適値と制御器を求める. 本論文で導出する結果は,l∞有界かつそのz変換が有理関数で表わされるさまざまな参照信号を扱える点,制御対象の相対次数が制御性能に与える影響を扱える点に特徴がある.


■ 通信遅延を有する異構造バイラテラルテレオペレーションの同調制御

金沢大学・河田久之輔,吉田航瑛,滑川 徹

 本稿では,通信遅延を有する異構造テレオペレーションに対して安定性を保証した新しい制御手法を提案する.まず,マスタ及びスレーブロボットに対して作業空間の手先座標でのダイナミクスを導出する.このダイナミクスに対して,フィードバック受動化を行うことで,位置と速度を含んだ出力信号に関してシステムが受動的となるようにする.つぎに,無視できない遅延とスケーリング要素を有した同調制御則によって,マスタとスレーブロボットをお互いに結合する.ただし,制御則の個々のゲインを, 異構造を考慮して独立に設計できるようにする.提案する制御手法は,手先の位置と力のスケーリングを個別に任意の大きさに設定することができる.受動性解析を行うことでシステムの安定性を示す.さらに,リアプノフの安定法を用いることで,提案するテレオペレーションの位置誤差が遅延とスケーリング要素に対して独立に漸近安定となることを示す.最後に,構造とスケールの異なる2台の2自由度アームを用いた実験により提案手法の有効性を示す.


■ モデル予測機能を有するパフォーマンス駆動型PID制御系の一設計

山工業高等専門学校・八木秀幸,下西二郎
     広島大学・山本 透,雛元孝夫

 近年,高品質維持と運用コストの低減の観点から,システムの稼動データより制御性能の良さを評価する制御性能評価に関する研究が盛んに行われており,実際の現場では制御性能評価の観点でコントローラを調整する方法の確立が望まれている.そこで本稿では,長時間にわたり稼動させるプラント制御においてそのほとんどがPIDコントローラを使用していることから,制御性能評価と制御系設計を融合したセルフチューニングGPC-PID制御系の一設計法について提案する.定常状態における制御性能の観点から,代表的なPIDパラメータ調整則との比較を通してGPC-PID制御則の優位性を示し,現場オペレータにとって直感的に理解できるパラメータを用いてGPC-PID制御則の設計パラメータを調整する方法について考察する.さらに,所望の制御性能が得られない場合にシステムパラメータ同定を含めPIDパラメータを再調整する方法について提案する.数値例では,時変システムと非線形システムに対して,従来法であるセルフチューニングコントローラと比較することで,定常状態における制御性能の改善やシステム同定回数の大幅な削減などの観点から本手法の有効性を検証した.


■ 2台の車両型移動ロボットから構成される協調搬送システムのパラメトリック曲線を用いた経路追従フィードバック制御系の設計

青山学院大学・山口博明,森 将人,河上篤史

 本論文では,2台の車両型移動ロボットから構成される協調搬送システムのパラメトリック曲線を用いた経路追従フィードバック制御系の設計方法を提案した.具体的には,パラメトリック曲線の大きな特徴であるパラメータを変化させることで曲線の始点から終点まで辿れることにより,直交座標系における本協調搬送システムの位置と姿勢から,経路を1つの座標軸とし,この経路の接線に直交する直線をもう1つの座標軸とする座標系における本協調搬送システムの位置と姿勢を数値計算的に探索する座標変換の方法を提案した.また,経路の曲率の2階微分の近似値を求める数値計算的な微分の方法を提案した.そして,これら2つの数値計算を組み込んだ経路追従フィードバック制御系の設計方法を提案した.特に,これら2つの数値計算を高速に実行することができることから,有効な制御周期内に制御入力を計算することが可能になっている.さらに,パラメトリック曲線の1つであるベジェ曲線により計画した経路への追従による車庫入れ動作を開発した実験機を用いて行い,設計した制御系の有効性を確認した.


■ 複数の入力むだ時間を有する系に対するH∞ループ整形設計法の導出

首都大学東京・児島 晃,横河電機・市川洋資

 複数の入力むだ時間を有する系に対して,ギャップ距離に基づくロバスト安定化問題を考察し,Riccati 作用素方程式の解析解からロバスト安定余裕と制御則の構成法を明らかにした.本稿で用いられた手法は,集中定数系に対して展開された状態空間における接近法に対応するものであり,得られた制御則は集中定数部分のオブザーバと予測制御を併合した簡明な構造を有していることが示された.また数値例により,入力むだ時間とループ整形の関係を調べ,集中定数部分の最小位相性が性能改善にそれほど効果がない場合があることを紹介した.


■ Hodgkin-Huxley モデルにおけるパラメータと外部電流の同時推定

総合研究大学院大学・川合成治,石黒真木夫,
     兵庫医科大学・越久仁敬

 HodgkinとHuxleyは単一ニューロンモデルとして4変数の非線形常微分方程式のモデル(Hodgkin-Huxley モデル:以下HHモデルと略す)を考案した.われわれは活動中の神経回路のニューロンの動きを解析するため,HHモデルを非線形離散確率過程ととらえ,計測値である膜電位の時系列データからモデルパラメータと未知外部電流の推定を試みた.
 最初にHHモデルの留意すべき非線形特性について相平面解析を用いて述べる.非線形確率微分方程式の離散化は,尾崎が提案した局所線形化法を採用し,HHモデルでの精度を検証した後,Kalman Filterの適用を行った.その結果,多変数で非線形性の強いHHモデルにもKalman Filterが適用可能なことを示す.さらにHHモデルで外部入力電流が未知な場合について,離散型のトレンドモデルを仮定し,局所線形化で求まった状態方程式の状態変数に外部電流を組み込んだ新しい結合して状態方程式を再構成し,Kalman Filterの平滑化を用いて外部入力電力を推定する方法について述べる.最後にモデルパラメータが未知の場合でも,最尤法によりトレンド入力電流とモデルパラメータの同時推定が可能なことを示す.


copyright © 2003 (社)計測自動制御学会