SICE 社団法人 計測自動制御学会
Top
新着情報
学会案内
入会案内
部門
支部
学会活動
学科行事
お知らせ
会誌・論文誌・出版物
学会誌
論文集・バックナンバー
英語論文集
産業論文集
新 英文論文集 JCMSI
JCMSIバックナンバー
学術図書のご案内
残部資料頒布のご案内
リンク
その他
サイトマップ お問い合わせ
 会誌・論文誌・出版物
 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.44 No.12(2008年12月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 身体接触作業用ロボットハンドの開発

東北学院大学・梶川伸哉

 本論文では,人に接することを目的としたロボットハンドの開発を行った.開発したハンドは任意方向からの外力を効果的に吸収し,なおかつその大きさと方向を推定できる機能を有する.上記の機能は,指先部とMP関節内部に,空洞を有するシリコーンゴム製のクッションを装着することで実現している.クッションの変形と内圧変化を利用し,指先部では指関節の回転方向の力を,MP関節では横方向とねじり方向の力の吸収と推定を行う.いずれの推定も非常に簡便な方法であり,推定結果も良好な精度であることを実験により確認した.
 また,上記の柔軟性とセンシング機能を利用し,人の体表面をなぞる実験を行った.その結果,ロボットの指先と体表面の接触力,あるいは摩擦力を一定に保つという異なる条件でのなぞり作業が実現できることを確認した.この結果から,マッサージやスキンケアといった作業への適用の可能性が示された.


■ 空気圧受動要素を用いた短下肢装具の歩行相フィードバック制御システムの開発

立命館大学・中村彰利,小澤隆太,堀場製作所・後藤 智,
鈴鹿医療科学大学・畠中泰彦,立命館大学・川村貞夫

 脳梗塞,脳出血などの後遺症により体の片側に麻痺が生じたり,筋力が低下したりすることで,爪先が垂れ下がり正常な歩行ができなくなることがある.短下肢装具は,この爪先垂れなどを防ぎ,歩行を補助するための装具であり,一般に足関節を完全に固定したり,ダンパやワンウェイクラッチを内蔵した回転軸を持たせることで歩容を改善する.これらの装具は,足関節部分の特性を大きく変えることができないため,症状の改善などによって装具を作り直す必要が生じ,費用の面など患者への負担が大きくなってしまう.また人間の歩行周期は少なくとも4相に分けられるが,これらの装具では底屈と背屈の補助パターンを変えるという,たかだか2種類のみで対処している.そのため患者それぞれ歩行の仕方が異なるにもかかわらず,これらの補助パターンが足関節の姿勢に依存しているため,調整が難しく,適用できる患者が限られるなどの問題点が考えられる.
 そこで本稿では,拘束力が可変な回転型空気圧受動要素と足裏につけた接触センサを用いて,歩行状態をフィードバックし,その拘束力を制御できる装具の開発を目指す.これにより症状の差などによる装具の作り変えが不要となり,また歩行差や個人差などへの対応が容易となると考えられる.


■ レスキュー用アレイアンテナ搭載レーダシステム

慶應義塾大学・竹内敏夫,斎藤英雄,筑波大学・大矢晃久,
  慶應義塾大学・青木義満,電気通信大学・松野文俊,
  湘南工科大学・秋山いわき

 本論文では,瓦礫の下に埋もれた生存者を素早く発見することを目的として,アレイアンテナにより構成されるレスキュー用レーダを改良することにより開発したレーダシステムを提案する.本システムでは,呼吸変動の統計的な性質を利用して,SNRの低い受信信号から要救助者の呼吸変動を検出する.また,5つのアンテナからなるモジュールを9つ用い,3次元位置を推定することも可能である.本システムの有効性を確認するために,地上3m,縦横4mの室内実験塔を構築し,施設上部から要救助者に向けて電波を送受することにより,要救助者の存在と位置を推定する実験を行った.この結果,モジュールから3メートル離れたところにいる要救助者の存在と位置の推定が十分に可能であることを確認した.


■ 3次元ヘビ型ロボットの冗長性を利用した制御

電気通信大学・田中基康,松野文俊

 生物のヘビを模倣したヘビ型ロボットはそのアクチュエータ数から超冗長システムとなる.ヘビ型ロボットは冗長性をうまく利用することで動作時に生じる諸問題を解決し,さまざまな環境に対して適応的でかつ効果的な推進を実現することが期待できる.本研究では3次元ヘビ型ロボットの運動学的冗長性を利用した軌道追従制御について考える.3次元ヘビ型ロボットの運動学的冗長性の特徴を解析し,これを形状可制御点として表現することで動力学モデルに導入する.運動学的冗長性の特徴を利用することでメインタスクであるロボット先頭の軌道追従および複数のサブタスクを同時に実現する制御器を提案し,シミュレーションによりその有効性を示す.


■ 全身の押し付け力を検出できるロボット競技評価用の小型レスキューダミーの開発

宇部工業高等専門学校・沖 俊任,
     石川工業高等専門学校・藤岡 潤,
     神戸大学・森 和也,ADAPTEX・大西 諒,
     大阪電気通信大学・升谷保博,
     大阪府立大学・小島篤博,
     岡山県立大学・山内 仁

 大規模都市災害時のロボットによる救命救助活動を題材としたロボットコンテストにレスキューロボットコンテスト(以下レスコン)がある.この競技では,1/6スケールの模擬災害現場でロボットから送られてくる映像を頼りに遠隔操縦ロボットを用いて被災者を救助する.ダミーはロボットが被災者をやさしく救出できているかどうかを評価するために,内蔵した各種センサの測定値を無線でPCに送ることができる.このダミーで検出されたセンサ値は「苦痛」として数値化され,この値が小さいほど「やさしい救助」と評価される.
 レスコンでは第1〜6回競技会までは基本的に同じダミーを用いていたが,第7回競技会において新たなコンセプトのダミーを設計・製作し,それを用いて救助活動の評価を行った.このダミーには,頸部にかかる負荷を計測できるようにしたこと,2種類の大きさを準備したこと,本体はウレタンをシリコーンでコーティングすることによりやわらかさを実現したこと,無線仕様をBluetooth に変更することで同時運用数の増加を図ったことなどの特徴がある.
 本論文では,この新しく設計・製作したダミーについて,その構造,製作方法,計測値による苦痛の評価方法,および,記録されたデータの例を示す.


■ 自己の内的テンポを考慮した二者間の協調的リズム生成のモデル化

東京大学・緒方大樹,竹中 毅,上田完次

 音楽や会話に見られるように,人間は,感覚情報処理や運動制御における時間遅れを乗り越えて他者と協調的にリズムを生成することができる.本研究は,自己の内的なテンポを考慮した二者間のリズム生成のモデル化を試みるものである.心理学の分野では,人間がメトロノームと同期してリズムを生成するメカニズムとして,2つのタイミング修正機構(同期誤差修正機構と周期修正機構)が提案されてきた.本研究では,モデルの構築に際して,それらのメカニズムに加えて,自己の基準とする内的なテンポによる新たな修正機構を提案した.また,提案モデルを用いた計算機実験によって,これまでわれわれが二者間交互タッピング課題を用いて観察してきた二者間の協調的リズム生成を再現できるか検討した.その結果,これまで提案されてきた修正機構だけでは感覚情報処理などの時間遅れの効果が蓄積され,行動実験に見られる二者間の協調的なリズム生成は達成されないことが示された.また,提案した修正機構はその時間遅れの効果の蓄積を防ぎ,他者との協調的なリズム生成の達成に寄与することが示された.この結果は,他者との協調的リズム生成において,他者への追従に加えて自己の内的なテンポの保持が重要な役割を果たしていることを示唆する.


■ 次世代ロボット共通プラットフォーム技術

東京大学・佐藤知正,東芝・松日楽信人,
     産業技術総合研究所・大山英明

 総合科学技術会議は,政府各府省の科学技術施策を統合的に推進し,効率化を図るという観点から,国家的・社会的に重要で,かつ関係府省の連携の下に推進すべきテーマを定め,関連施策等の不必要な重複を排除し,連携を強化した上で,科学技術連携施策群として推進している.その中の1つである次世代ロボット連携群では,次世代ロボットの研究開発を加速化し,さまざまなロボットサービスの創出を可能にする基盤・インフラ技術を「次世代ロボット共通プラットフォーム技術」と位置づけ,社会に提供することを中核ミッションとして活動を展開している.ここで,次世代ロボットとは,家庭や街等,工場の外で活躍するロボットを指している.本稿では次世代ロボット共通プラットフォーム技術の概念を明確化し,ハードウェア・プラットフォーム,ソフトウェア・プラットフォーム,ロボット・システム・プラットフォーム,環境プラットフォームに分類し,その現状をサーベイする.さらに次世代ロボット連携群が研究開発を推進している共通プラットフォームであるロボット・ワールド・シミュレータOpenHRP3と3つの環境プラットフォームについて紹介する.



[ショート・ペーパー]

■ 脳波による車椅子の自動操縦実現のための2つの試み

電気通信大学・田中一男,大竹 博,坂本博一

 本論文は脳波による車椅子の自動操縦実現のための2つの試みを提案する.1つは,トレーニングを一切行わずに,脳波による車椅子の自動操縦の成功率を高めるための工夫であり,もう1つは車椅子の自動操縦の成功率を犠牲にせずに,なるべく多くの電極数を削減する試みである.前者は被験者の負担軽減を,後者はシステム構成を簡単化することを狙ったものである.本論文で提案したこれらの試みの有効性を10人の被験者実験を通して明らかにした.さらに,脳波マッピングを用いた検討も加え,実験結果の妥当性を検証した.


■ 群ロボットレスキューシステムの非接触型給電ネットワーク

大阪市立大学・杉山久佳

 基地局と群ロボットからなるレスキューシステムにおける,非接触型給電ネットワークについて検討した.検討した給電ネットワークは,最近提案された非放射電磁界中の磁気的な共振機構を基盤とする.給電ネットワークの概要を示し,2対1の基本的なネットワーク給電システムの解析を行った.この結果,特に2台の給電ロボットの配置を並列型とするときに,直列型に比べて伝送距離増大の効果のあることがわかった.


■ 冗長ロボットの構造階層化を用いた運動制御

横浜国立大学・黄 健,中村裕介,
     山田大輔,原 正之,藪田哲郎

 人間の上肢運動において指や腕の自由度を活かし,対象とする動作や目的に合わせ,指や腕の使い分けをスムーズに行うことができる.著者らは,人間のこのような動作を手係りとして,従来の研究でフィンガの可操作度を閾値以上に保つことを目的としたフィンガ・アームロボット協調制御の手法を提案した.本論文では,従来の研究を発展させることで,冗長マニピュレータの構造階層化を行い,可操作度の指標を用いて冗長マニピュレータの運動制御を実現するという新しい手法を提案する.本提案手法は,多数の関節を有する直列型マニピュレータに対し,構造の簡単な運動ブロックの概念を取り入れることによってマニピュレータの自由度の構造階層化を行い,可操作度の指標を用いて構造の軽い先端ブロックから,重たい根元の運動ブロックまでという順序で運動を生成する.また,本提案手法は,なるべく軽い運動ブロックを動かすため,消費エネルギの軽減や応答特性の改善に有利であると考えられる.さらに,本提案手法では,各運動ブロックが目標値以上の運動ポテンシャルを有するため,予想外の障害物を素早く回避できるという長所も考えられる.


■ リアルタイムに形状計測可能な布状デバイス

東京大学・星 貴之,篠田裕之

 布の形状計測は,カメラで撮影し,模様などから再構成する方法が一般的である.それに対してわれわれは,新しい形状計測法を提案する.それは布に微小センサを多数分布させ,それらの協調によって全体形状を再構成する方法である.近年センサの微小化が進んでおり,またわれわれの研究室では無配線での通信と給電を可能にする二次元通信を開発中である.提案手法はこれらの技術革新の流れを受けて考案されたものである.布自身がデバイスとして機能するため,遮蔽の問題や外部装置を設置する手間などがない.この布状デバイスは,バーチャル物体表面とのインタラクション,モーションキャプチャスーツなどの応用が期待される.布を複数の剛体リンクからなる正方格子として離散モデル化し,各リンクには三軸加速度および三軸磁気センサを搭載する.それらが計測した重力と地磁気のデータから,リンクの三次元空間中での姿勢が算出できる.すべてのリンクについて姿勢を求め,それらを結合することで全体形状が再構成される.この再構成問題は形状を表わす変数と同程度の冗長自由度をもち,それを利用することによってノイズの影響を低減することもできる.本論文ではその再構成問題の定式化を行い,原理検証のため市販の6軸センサとマイコンを用いて試作機を作成した.



[論  文]

■ 離散時間線形系の分解と低次元化モデル予測制御への応用

大阪府立大学・原 尚之,首都大学東京・児島 晃

 モデル予測制御は,制約を有する系に対する有力な制御手法の一つであり,各サンプル時間ごとに有限時間区間の最適化問題を解くことにより,制約条件を満足する制御入力を決定する.しかしながら,各サンプル時刻において最適化問題を解く必要があるため動特性の速い系や大きな予測区間をもつ系などへ適用することが困難な場合がある.
 本稿では,はじめに離散時間LQ制御問題を考察し,LQ制御と相補的になり影響力をもつ初期状態と入力の関係を明らかにした.この結果に基づき,低次元化した最適化問題からモデル予測制御を構成する方法を導いた.最後に数値例に本提案手法を適用し,得られた結果について考察した.



■ ロバスト最適化のための逐次的ランダマイズドアルゴリズム

神戸大学・和田孝之,藤崎泰正

 本論文では,すべての不確かさについて制約条件を満足しつつ,目的関数値を最小化するロバスト最適化問題を取り扱っている.制約条件は決定変数について凸な問題を対象としているが,不確かさがあるため,現実的な時間で解を得ることは一般に困難である.そこで本論文では,目的関数値の上界に関する制約を加えたロバスト可解問題を導入し,この上界を逐次厳しくすることで最適化を行うランダマイズドアルゴリズムを提案している.このアルゴリズムは,必ず有限ステップで停止し,確率的な意味で制約条件を満足する解を高い信頼度で出力する.この解に対応する目的関数値は,ある確定的な意味で準最適性が保証される.また,最悪ケースでの計算手数は非可解なロバスト可解問題を1つ解くための計算手数と等しい.


■ 高次チェインドシステムに対するオブザーバと安定化補償器の設計−座標変換とサンプル値制御に基づいた手法 −

名古屋工業大学・山田 学,アークレイ株式会社・太田 進一, 中京大学・舟橋 康行

 本稿では,高次チェインドフォームで記述された非ホロノミックシステムの安定化問題について状態フィードバックによる手法とオブザーバに基づいた出力フィードバックによる手法について提案する.本手法は,座標変換とサンプル値制御法を組み合わせた,新しく有用性と実用性の高い手法である.本手法のアイデアは,サンプラと零次ホールダにより離散化されたチェインドシステムを,適当な座標変換により,線形時不変離散時間システムに変換する点である.このアイデアを利用して,第一に高次チェインドシステムを安定化する状態フィードバック補償器の設計法を与える.設計問題を,ある線形時不変離散時間システムに対するよく知られた極配置問題に帰着させ,設計法を簡単化する.第二にオブザーバに基づいた出力フィードバックにより,高次システムを安定化する補償器の設計法を与える.設計問題を,ある線形時不変離散時間システムに対するオブザーバの設計問題に帰着させ,設計法を簡単化する.さらに,分離定理が成り立つことを示し,オブザーバーゲインとフィードバックゲインを独立に設計でき,オブザーバーゲインで状態の推定速度を,フィードバックゲインで,システムの状態の収束速度を指定できることも示す.また提案法は,サンプル値制御法を利用していることから,サンプル値制御理論特有のデッドビートオブザーバやデッドビート応答の実現など,数多くの興味深い制御問題への拡張が容易であるなどの利点を持つ.最後に数値シミュレーションにより,提案法の有用性を実証する.



[ショート・ペーパー]

■ 線形行列不等式を用いた特異点回避を伴う冗長マニピュレータの制御

東北大学・岩谷 靖

 冗長マニピュレータの制御において,特異点近傍での制御には過大な入力が必要となるため,特異点近傍へ接近する動作は避けなければならない.そのため,特異点回避問題に対して,冗長性を利用した方法や,タスク関数の収束を緩和する手法など多くの議論がなされてきた.しかし本論文の数値例で示すように,これら従来手法は入力の大きさ・変化量やタスク関数の収束速度の面で問題が残る.そこで本論文では,これらの問題を解決するために,特異点回避問題を線形行列不等式 (LMI) を用いて定式化する.提案手法は冗長性を利用し,タスク関数が収束する方向と直行する方向に対して補助入力を設計する.補助入力は,ヤコビ行列の最小特異値の最大化問題,入力飽和条件,入力変化の拘束条件に関する連立LMIを各時刻で解くことで導出する.



■ 時変入力飽和を有するシステムの安定化−飽和レベル依存可変ゲインフィードバックによる方法−

広島大学・和田信敬

 本稿では,入力飽和を有するシステムに対するフィードバック制御器の設計法を示す.本稿では,入力飽和の制限値がある与えられた範囲内で任意に時間変化する場合について考える.そのような,制限値が時間変化する入力飽和を含むシステムに対する制御器設計法として,ある漸近安定領域内に状態量が属する場合に,制限値を最小値に固定した飽和要素について入力信号が飽和しないように,固定ローゲイン制御器を設計する方法が考えられる.しかしながら,この方法により設計した制御器を用いると,制限値が大きい場合には,過度に小さな制御入力しか用いることができず,制御性能は保守的なものとなる.そこで,本稿では,飽和要素の出力の制限値が小さい場合にはローゲイン,制限値が大きくなるに従いハイゲインとなる可変ゲイン制御器の構成法を示す.これにより,制限値が大きい場合に,固定ローゲイン制御器と比較して,より高い制御性能を達成することが可能となる.


copyright © 2003 (社)計測自動制御学会