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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.46 No.5(2010年5月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 人の動線情報に基づく個人識別と人間関係の可視化

奈良先端科学技術大学院大学・栗田雄一,
小林純也,末永 剛,小笠原 司

 本研究では個人識別・位置情報計測を非接触・非拘束で行う方法として,環境に設置されたカメラにより得られた位置情報を利用し,あらかじめ学習した各個人の行動軌跡データから隠れマルコフモデルを用いて個人識別を行う手法を提案する.つぎに計測した個人識別情報・位置情報に基づき,人と人との物理的距離情報を利用してオフィス内の人間関係を可視化する手法を提案する.近接学(proxemics)と呼ばれるパーソナルスペースに関する文化人類学研究にヒントを得て,人と人との物理的距離情報を継続的に記録することで各個人の他者との親密値を定義し,親密さを定量化する.アンケート評価の結果,主観的に感じている他者との親密さと提案手法により計算した親密値との間に統計的に有意な関連性があることを確認した.また位置情報から推定した個人識別結果に基づき親密値を計算し,個人識別の真値より計算した親密値との間に統計的に有意な相関があることを確認した.


■ 周期ダイナミクスの解析に基づく2リンク三叉ヘビロボットの制御

大阪大学・石川将人,滋賀医科大学・藤野隆弘

 三叉ヘビロボットとは,受動車輪型のヘビロボットを正三角形のベースリンクを介して三叉状に接続したものである.本研究では,これまでは十分に制御方法が確立していなかった,各足が2リンクをもつ三叉ヘビロボットについて推進制御と形状制御の問題を扱う.このロボットは,3入力9状態の非ホロノミック対称アフィンシステムとして記述され,可制御性接分布の構造において2階のLie括弧積までが関与してくるため,制御がきわめて難しいシステムである.
 本研究では,1階のLie括弧積だけを考慮したホロノミーの原理に基づく周期入力を与えた場合に,直接は制御できない3自由度分の運動について,安定な周期解への収束現象がみられる場合があることに着目する.そこで,周期入力下のシステムの振る舞いをポアンカレ断面上の平衡点の安定性の問題と捉えて近似的に解析し,この性質を利用して望ましい状態へ到達させる方法を提案する.これにより,推進制御においては推進方向に応じて決まるある安定な形状を持って持続推進させることを実現する.また,形状制御(ロボットの位置を保持して形状だけ変化させる問題)については,まず安定平衡点からなる不変集合にいったん収束させ,そののちに目標形状へ到達させるという二段階の制御方法を提案する.


■ 強化学習における最適政策の信頼性を保証するサンプリング政策

京都大学・泉田 啓,
金沢大学・岩崎祥充,藤井信治

 推定確率から導かれる最適政策が真の遷移確率に対しても正しいことを指定した信頼度で保証するcertification samplingを定義し,それを効率的に得るサンプリングの政策を検討している.まず,サンプリングにより遷移確率を推定し,最適政策を導く.他方,最適政策が正しいことを指定した信頼度で保証するために必要な遷移確率の推定精度が求まる.提案するサンプリング政策により,必要な遷移確率の推定精度のcertification samplingを効率的に達成する.提案手法は,選択すべき状態行動対を自動的に選択するとともに,要件を満たすとサンプリングを停止するので,サンプル数が少なく効率的である.


■ リズム音刺激を用いた歩行訓練における歩容の変化メカニズムの解析

青山学院大学・武藤 剛,金井哲也,佐久田 博,
東京工業大学・三宅美博

 本研究では,運動技能の獲得プロセスを工学的に支援する技術の開発においてこれまで着目されてこなかった運動スキーマに注目し,それを訓練により学習してゆくメカニズムの実験的解析を行った.具体的には,関節固定装具により関節が固定された擬似障害者を対象として,一定テンポのリズム音刺激が提示される定常的な環境下での歩行訓練過程の計測と,そこで下肢関節運動の時間秩序が変化し,歩容が補正されてゆくプロセスの計測を行った.その結果,このような歩行訓練環境では,脚接地運動の周期ゆらぎの時間構造は即時に変化するが,外部環境からの影響を受けやすい不安定な系であることが明らかとなった.一方,足首軌道は,外部環境からの影響を受けにくい安定な系へ再構成されるが,そのためには少なくとも1分程度の訓練が必要であった.このことから,歩行運動における運動スキーマの学習に基づく歩容の変化は,外部環境の特性に依存した数秒程度の短い時間スケールの即時的な変化メカニズムと,1分程度の長い時間スケールの履歴的な変化メカニズムの間の拘束関係に基づく階層的なメカニズムにより実現されていることが示された.


■ 衝突リスクと注意配分特性に基づく先急ぎ運転行動の解析

香川大学・和田隆広,吉田 誠,土居俊一

 安全運転支援をめざした,先急ぎ運転の特徴付けの研究である.先急ぎ時にはリスキーな運転行動をすると言われているが,運転操作の荒さによる特徴付けや検出手法に関する研究が散見される程度であった.本研究では先急ぎ心理という高次認知機能の変化を,注意配分特性の観点から特徴づける手法を提案する.特に車線変更時には先行車や後続車などへの注意を適切に切り替えながらリスクマネジメントを行う必要があり,心理的負荷が高い状態である.それにも関わらずこのような状況では先急ぎ心理が生じやすく,危険である.そこで追越時の周辺車両との衝突リスクと注意配分の関係を調査する.その結果から,通常運転における先行車への衝突リスク指標と後側方車に対する連続視認時間の分布を求め,そこからの逸脱によって先急ぎ運転を特徴づけられることを示す.さらにこれを,急ぎ検出への応用手法の一構成例を提案する.


■ 往復伝播時間測定による小天体の自転運動およびローバ位置の推定法

京都大学・金田さやか,中西弘明,椹木哲夫

 これまでに筆者らは,天体上のローバの位置同定を単一電波源により実現する手法を提案した.この手法は天体規模を問わず適用可能であり,特に既存手法の適用が困難であった直径1000m未満の小天体上のローバの位置同定も実現可能である.しかし,この方法では探査天体の自転運動を既知と仮定していた.本稿では,高精度のローバ位置同定を実現するために,探査天体の自転運動を推定する手法を提案する.一定区間の観測値に対してその予測誤差の和を評価関数として定義し,最適化問題として解くことでローバ位置と小天体の自転運動を同時に推定する手法を提案する.直径600mの小天体を想定した数値実験により,提案手法による推定精度を検証した結果を示す.さらに,提案手法の感度方向を定義し,推定結果が真値か局所解かの評価指標として有効であることを数値実験により示す.



[ショート・ペーパー]

■ 移動車両の可変速経路制御

神奈川大学・江上 正,天野桂介,西川昌宏

 移動車両は,速度の非ホロノミック拘束をもつ.このような非ホロノミックシステムに対しては多くの手法が提案されているが,三平らによって提案されている時間軸状態制御形を用いた制御手法は全体の指数安定性などは保証されていないものの構造の簡単さ,拡張の容易さなどの点で優れた方法であり,線形システムに対して開発されている手法を容易に取り込める利点がある.しかし,この手法を移動車両に用いた場合,一定速度が必要で追従できる経路も限定されていた.
著者らはすでに,最短目標点探索と回転移動座標および総移動距離軸への変換を組み合わせた経路制御手法を提案し,これを時間軸状態制御形に用いることにより,任意経路目標値への対応が可能になる移動車両の経路制御手法を提案してきている.しかし,この手法も速度は一定速である必要があり,さらに経路誤差を低減するためには,経路誤差の大きなところでは低速にし,あまり影響のないところで高速にするような可変速制御が望ましいと考えられる.
 このため,本論文ではこの総移動距離軸に伸縮座標変換を行うことにより,移動車両の可変速による任意経路への追従を可能とする手法を提案している.そして,これを3輪移動車両に適用してシミュレーションによる有効性を示している.


 
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