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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.46 No.8(2010年8月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]


[論  文]

■ 方位制御システムに基づく航路制御システムにおける潮海流の推定と制御

東京計器・羽根冬希

 本稿は航路制御システム(TCS)が方位を介して制御され,計画航路が直線レグと円弧レグとから構成されることに着目し,方位制御システム(HCS)に基づき潮海流に起因する航路誤差を制御する方法を提案する.HCSは参照方位および2自由度制御系からなり,保針モードと変針モードとの機能をもつ.
 本提案方法は,TCSの制御系を方位制御ループと航路制御ループとに分離し,参照方位と船速とから生成した参照針路を採用したことに基づき,直線レグモードおよび円弧レグモードの航路制御ループの設計に関する.直線レグモードにおいて,一定の潮流は参照針路からの航路誤差によって推定され,推定した潮流から斜傾角を求めフィードバック制御する.
一方円弧レグにおいて,推定した潮流から斜航角および旋回角速度を求め変針モードを通して修正する.斜傾角はフィードフォワード制御して,法線方向の潮流成分を相殺する.旋回角速度は半径を一定にするため,潮流と船速との和である対地速度の変化に対応する.加えて,円弧レグ手前から変針を開始する距離であるリーチを参照方位とフィードフォワード制御とから見積もる.
 本提案方法をシミュレーションで検証したところ,その有効性を確認した.


■ 快適性と省エネを両立させる連携省エネ空調制御技術

東芝・木康夫,米沢憲造,村山 大,
     西村信孝,花田雄一,山崎謙一

 京都議定書が2005年2月に発効したのに伴い,日本は温室効果ガスの排出量を,基準年の総排出量の6%削減を求められている.温室効果ガスの中で,事務所ビルが属する業務その他部門は2005年度で約45%増加と,主要部門では最大の増加となっている.この事務所ビルの消費エネルギーの40%以上は空調に係るエネルギーであるので,ビル空調システムの省エネ性能は温暖化ガス排出量を抑制するための大きな要素となっている.
 空調システムの本来の目的は,快適な空調空間の提供であるので,快適性の確保と省エネルギーの達成という二律背反の目標を克服することが必要である.本システムでは,従来固定とされた給気温度などのパラメータを,快適性指標(PMV)を制約条件としてきめ細かく変化させることにより,空調空間の快適性と省エネルギーの両立を図る.また,温度と湿度を独立に制御する新機能空調機を開発した.この新機能空調機と,快適性と省エネルギーの両立を実現する連携省エネ空調制御を組み合わせて,次世代空調システムを開発し,空調システムシミュレーションにより20%を上回る省エネルギー効果のある見込みが得られた.


■ 学習/多目的最適化機能を組み込んだ空調制御技術の実験的研究

山武・上田 悠,太宰龍太,綛田長生,
     慶應義塾大学・伊香賀俊治,
     東京ガス・加藤彰浩

 大規模オフィスビルの空調制御に対する省エネルギーの要求が高まっている.しかし,過剰な省エネ施策はオフィス環境の快適性・知的生産性の悪化を招く恐れがあり,両立が難しい.このような室内環境の快適性と省エネルギーとのトレードオフ問題,さらに建物運用時のさまざまな環境変化や運用変化への対応という課題を解決するためには,対象の挙動をモデリングし,そのモデルに基づいて自動チューニングを行う機能,および自律的に学習してモデルを更新する機能が有効である.
 本報では,トレードオフのある問題を解決する多目的最適化機能と,環境変化・運用変化に追従するための学習機能を組み込んだ空調制御のフレームワークを提案する.また,提案するフレームワークに基づき,事例データモデリング手法と多次元スプラインによる応答曲面法を利用することによって,学習/多目的最適化機能を組み込んだ空調制御システムを開発した.本システムを実際の大規模オフィスビルに実装し,温熱快適性制御,居室ゾーン間温熱快適性制御,冷凍機送水温度最適化制御を事例として実証実験を行い,省エネと快適性の両立,建物運用変化への追従などの効果を検証し,空調制御における学習/多目的最適化機能の有効性を検証したので報告する.


■ 多変数外乱オブザーバによるモデル予測制御の外乱抑制

富士電機システムズ・丹下吉雄,松井哲郎,
     松本宏治,西田英幸

モデル予測制御は産業分野への適用が進んでおり,制約付き多変数制御問題を扱えるなど大変有用な制御方式であるが,非観測外乱に対して制御応答が悪化する問題が指摘されている.
 本稿では,従来のステップ応答モデルに基づくモデル予測制御が有する,ランプ状外乱によって追従性能が低下するという特性について解析し,この特性を克服するための多変数の外乱オブザーバ機構を提案する.提案手法は,プラントの操作量に加わる非観測外乱を外乱オブザーバを用いたフィードバックにより補償することで,モデル予測制御の予測誤差を低減し,外乱による追従性能の低下を抑制する.
 外乱オブザーバは,予測制御量と観測制御量との誤差検出とオブザーバゲインによるフィードバックで構成され,オブザーバゲインはプラントの定常ゲインの特異値分解に基づき設計される.
 モデルゲインの変動に対する影響について解析し,操作量の制約条件を保証するためのオブザーバゲイン調整方法についても提案する.また,提案手法の有効性をシミュレーションによって検証した.
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■ ディーゼルエンジン吸気システムのモデリングとモデル予測制御による制御系設計

本田技術研究所・岩垂光宏,上野将樹,
     慶應義塾大学・服部泰治,足立修一

 近年,世界各地でディーゼルエンジンにおける排ガス規制はますます厳しくなり,排出有害ガス成分の低減が非常に重要になってきている.排出有害ガス成分を低減するために,研究されているさまざまな燃焼技術の実現にはシリンダ吸気状態の緻密な制御が必須となる.ところが排気再循環(EGR)バルブ,スロットルバルブ,可変ノズルターボチャージャなどによるエア制御は制御対象が多入出力系かつ干渉系であり,これらはPID制御器を用いた従来手法での制御系構築はきわめて困難である.一方,多入出力系アルゴリズムとして知られるモデル予測制御(MPC)はハード演算速度の高速化,演算アルゴリズム改良による進展が著しく,比較的速い系への適用の目処が立ちつつある.そこでわれわれはディーゼルエンジン吸気制御系に対してMPCを適用した.MPCは制御対象モデルに基づく実時間最適化制御である.われわれは外乱オブザーバを用いたフィードバック機能,そしてアクチュエータ部分の非線形性補償をその基本部分に加えて制御器を構築した.その制御器を実際の車両でテストした結果,われわれはスロットルバルブ,EGRバルブの2入力かつ新気とEGRの2出力のシステムへ適用し,そして2つの出力を独立したそれぞれの目標値に迅速に制御することができた.


■ 熱延冷却帯内の注水環境下における鋼板温度測定手段を用いた巻取温度制御

住友金属工業・中川繁政,橘 久好,
     本田達朗,植松千尋

 熱延ミルにおいて,鋼板の品質は,仕上圧延機と巻取機の間にあるランアウトテーブル冷却設備における冷却過程の影響を大きく受ける.したがって,鋼板の品質を一定に保つには,鋼板の巻取温度を高精度に制御することが重要である.そこで,高精度な巻取温度制御を実現するために,冷却帯内の注水環境下において鋼板温度を直接測温し,その鋼板温度の情報に基づいて,注水冷却ヘッダーをフィードフォワード制御する巻取温度制御を開発した.
 開発した巻取制御制御の特徴は以下である.
1)冷却途中の注水環境下で直接測温した鋼板温度情報から巻取温度を予測し,目標巻取温度との偏差が解消するように冷却ヘッダーの使用数をフィードフォワード制御する.
2)フィードフォワード制御は,ダイナミック制御機能を用いて実現し,多段階に渡って冷却注水量の調整を行う.
 開発した巻取温度制御は,2008年から鹿島製鉄所熱延ミルで実機適用しており,新制御導入後,ハイテン材などの低温巻取材の制御精度が大幅に改善され,品質安定化・歩留向上に大きく寄与している.


■ 制約付き局所回帰モデルを用いた鋼材の平面形状制御

JFEスチール・茂森弘靖,南部康司,長尾 亮,
     荒木 義,水島成人,
     京都大学・加納 学,長谷部伸治

 本論文では,対象の物理特性に関する先見情報を制約条件として局所回帰モデルのパラメータ同定を行う一手法を提案する.鉄鋼プロセスでは,非常に複雑かつ非線形な制御対象へ局所回帰モデルを用いた自動制御を実用化する研究が活発に行われており,製品品質向上,製造コスト低減などに貢献している.局所回帰モデルを用いた自動制御を行うためには,操作変数と制御変数の間の関係を適切に表現することが不可欠であるが,操作変数の間に強い相関関係が存在する場合,または十分に多くのデータを得ることができない場合には,実績データのみからその関係を求めることは困難である.局所回帰を用いた自動制御をさまざまなプロセスへ適用拡大するために,その課題を解決する手段が求められていた.提案手法により対象の物理的先見情報に反しないモデルパラメータを安定的に計算することができる.この方法を鋼材の平面形状制御に適用し,実機圧延データを用いた制御シミュレーションにより,平面形状制御精度の向上,ならびに,先端部平面形状の不良部分の低減に対する有効性を確認した.


■ ネットワークによる欠損補償型PIDコントローラ−パケット欠損による応答悪化の改善−

横河電機・岡野竜太郎,大谷哲也,永島 晃

 本論文は,PIDコントローラを用いたネットワーク化制御システムを対象とする.パケットロスによりアクチュエータへ操作量が送信できなかった場合に,復帰後の応答を改善する方法を提案した.パケットロス発生中,アクチュエータは通常前回値を保持するが,PIDコントローラは操作量がプロセスに正しく入力されて応答することを前提に調整されている.たとえば,設定値変更後にパケットロスが発生して操作量が保持されると,プラント出力が変動せず制御偏差の積分値が余計に蓄積されて,パケットロスから復帰後に大きなオーバーシュートを起こしてしまう.そこで,実際にプラントに入力した操作量のトレンドを,アンサーバックとしてコントローラへ送信し,コントローラではすでにプラントに入力した操作量が計算されるように,パケットロス時の設定値を変更する.それに従い,PIDコントローラの内部状態も修正して,パケットロスが発生したのではなく,設定値が変更されていたことにして,PIDコントローラを正常な状態にする.さらに,前回値保持動作が設定値変更後の微分動作により過大な操作量を保持しないよう,改良手法も提案した.以上の有用性を,パケットロスの頻度を変えた多数のシミュレーションにより示した.


■ 保守性を低減化したロバスト制御による発電用風車のピッチ角制御

信州大学・鷹合仁司,千田有一,
     荏原製作所・櫻井希美,磯辺剛司

 環境問題の観点から注目されている風力発電では,風速変化が出力変動の要因となるため,発電機回転速度を最適に保つことが必要とされる.そこでピッチ角制御により,発電機回転速度の変動抑制を行っている.通常は,可変ゲインPI制御等が用いられるが,固定ゲイン制御器の方が制御設計に要するエンジニアリングコスト削減,および信頼性向上の観点で望ましい.そこで,H∞制御等の適用が考えられるが,その保守性のために制御性能の向上が難しい.そこで,本稿では保守性低減化H∞$制御により性能向上を目指す.その結果,想定した風速変動に対してロバスト安定であり,かつ可変ゲインPI制御に遜色ない性能を示す制御系が設計できることを確認した.設計した制御系の評価は,風車の設計で標準的に用いられている動解析ソフトBladedを用いた非線形シミュレーションにより行った.いくつかの風速変化に対する性能評価を行った結果,保守性低減化H∞制御器は,可変ゲインPI制御系よりやや劣るものの,良好な制御性能が得られた.これにより,保守性低減化設計法が風車制御設計に有効であることを示すと共に,広範囲な風速変化においても,固定ゲイン制御器によって可変ゲインPI制御系とほぼ同等の性能をもつ制御系が構成できることを実証した.


■ 変調器のモデルベースド設計によるDC/ACインバータの高効率化

京都大学・東 俊一,吉村僚太,杉江俊治

 本論文では,DC/ACインバータの高効率化のための,変調器のモデルベースド設計を考える.変調器としては,平滑回路や制御器の情報を反映しやすい動的量子化器を考える.そして,DC/ACインバータに必要とされる仕様をパラメータ依存の線形行列不等式条件として表現し,その解を数値的に導出することで変調器のパラメータを決定する.提案手法の有効性は数値シミュレーションによって示される.


■ 離散時間弱結合大規模確率システムにおける動的ゲームの特徴

広島大学・向谷博明,筑波大学・徐 馬華

 本論文では,離散時間弱結合大規模確率システムのための動的ゲームを考える.状態方程式の係数行列に含まれるノルム有界型時変不確定要素を状態および制御入力に依存する確率的ノイズとして表現するため,従来の結果と比較して,これらのノルム有界型時変不確定要素に対してロバストな戦略を構築することが可能である.本論文では,離散時間弱結合大規模確率システムを扱うことで,弱結合パラメータに依存しない確率LQ準最適制御則から得られる近似確率分散戦略が,近似確率Nash均衡状態を満足するだけでなく確率Pareto準最適性を満足することを新規に示す.また,近似制御則が,弱結合パラメータに依存しない低次元のLMIを解くことによって構築できることを示す.その結果,弱結合パラメータが未知であっても,十分小さければ構築された近似確率分散戦略は近似確率Nash均衡状態を達成し,かつ各プレーヤのコストの総和が準最適となることが示される.


■ MOESP型閉ループ部分空間同定法の漸近的性質について

大阪工業大学・奥 宏史

 閉ループ同定法の一つであるMOESP型閉ループ部分空間同定法(CL-MOESP法)が著者らにより提案され,シミュレーションや複数の実機実験などを通じて有効性が示されてきた.しかしながら,本手法の漸近的性質や最適性についてはまだ未解明な部分が多い.本発表では,閉ループ同定のいわゆるTwo-stageアプローチの観点から,CL-MOESP法の漸近的性質および推定値の最適性に関する諸性質を明らかにする.


■ 集積回路用マイナス容量発振器の開発

ジェピコ・中村哲夫,成蹊大学・栗原陽介、
     法政大学・渡辺嘉二郎,ジェピコ・前田雄佐

 通信用同期回路等に多用されるセラミック振動子を用いた電圧制御型発振器(VCO)は,並列容量を負荷として可変させることにより発振周波数を可変させるため,VCOとしての発振周波数は,セラミック振動子の並列共振周波数よりも低域側にしか可変させることができなかった.その結果,PLLシステムのVCOとして用いた場合,PLLの自然周波数はセラミック振動子の物性値では決定されず,負荷される容量の1/2付近を自然周波数として,発振周波数を上下可変させることを余儀なくされた.
 本提案では,回路的に発生させたマイナス容量回路をプラス容量回路に組み合わせることにより,等価的に負荷容量を+C〜±0〜-Cの範囲で可変させることが可能となり,セラミック振動子の物性値である並列共振周波数を中心に,高低両側に発振周波数を可変させると同時に,VCOとしての発振周波数範囲を拡大させることができた.本技術をPLLシステムのVCOとして用いた場合,周波数基準として半導体よりも優れたセラミック振動子の物性値によってPLLの自然周波数が決定されるため,ロックレンジを狭帯域化することが可能となり,雑音帯域の縮小や雑音レベルの低減などが可能となる.


 
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