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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.47 No.9(2011年9月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

<特集 産業応用分野に貢献する制御技術の最前線>
[論  文]


[論  文]

■ ステレオ誤対応に頑健なモデルベース物体位置姿勢計測

産業技術総合研究所・渡邊 征春,富田 文明,丸山 健一,河井 良浩,
ファクトリービジョンソリューションズ・藤村 恒太

 測定対象物表面の反射特性等により測定対象物の外形輪郭しか画像エッジとして得られない撮像条件においてかつオクルージョンのある幾何条件で発生するステレオ誤対応(虚像生成)問題は,実際の製造現場では当然発生すると考えられ,この問題に対応できる物体認識技術が実用化には必要不可欠である.実利用において物体認識を最終目的とする場合,3眼画像に対する各ステレオ対応の正誤判別を実施せずとも,多峰性関数最適化を考慮したモデルベース認識(モデルベース検証)手法を用いることで,上記状況下でも正確な物体認識が可能になることが本研究により示される.本手法は,オクルージョンが発生しやすい幾何形状の部品や外形輪郭しか画像エッジとして得られない反射特性を有する部品に対しても従来より安定して位置姿勢を計測できる技術として,部品のピッキング作業自動化等への実用化が期待できるものである.


■ 一般化ガウス関数を用いたSVRによるセンサーレスガントリークレーンのロバスト右既約分解によるロバスト非線形制御

東京農工大学・温 盛軍,ケ 明聡,岡山大学・井上 昭

 本論文では、振れ角センサーレスの走行クレーンの走行トローリ―位置と振れ角の制御を提案している。振れ角の推定には、サポートベクターマシン(SVM)によるサポートベクタ回帰(SVR)を用い、カーネル関数として従来のガウス関数を一般化した一般化ガウス関数を用い、さらに、データの時間的変化に対応するために、一般化ガウス関数の分散と形状パラメーター(Shape parameter)の2つをリアルタイムで推定して用いる方法を提案している。
 制御系には劣駆動系で、また、制御対象の特性は非線形系であり、さらに、予備実験で実測した走行摩擦力、弾性摩擦係数からの変動、振れ角の推定誤差、ケーブルの変形などの非モデル化誤差等不確かさを含んでいて、制御が困難な制御対象である。これに対して、非線形右既約分解のオペ―レ―ター表現を用いた2重のフィードバックループを持つ制御則を提案している。内側のフードバックで、系を安定化し、外側のフィードバックループで走行トローリ―位置のロバストトラッキング制御を行い、トラッキング制御に対して、ロバスト安定の最適化の条件を導出した。
 実験装置により、従来のガウス関数をカーネル関数に用いる方法に比べて、一般化ガウス関数を用いる方法は振れ角をオンラインでよく推定していること、および、推定値を用いたセンサーレスの制御により、センサーによって振れ角を実測して制御した結果と同様の制御結果を得て、有効性を示した。


■ 多段工業晶析プロセスの最適化制御系の設計

東京工業大学・関 宏也,三菱化学,江本源一

 多段工業晶析槽プロセスの高度制御系の設計について述べた.ダイナミックプロセスモデルをもとに,まず,制約条件付き最適問題を解くことにより制御目的を確定した後,これを実現するための閉ループ制御系を設計した.マルチループ制御系および多変数制御系を構成し,シミュレーションにより制御性能を比較し,変数間の干渉のため,多変数制御系がとくに有効であることが明らかになった.また,運転条件が<BR>
変更になった場合,アクティブとなる制約条件の組み合わせが変化することも明らかになった.以上より,このプロセスに対して,制約条件付きモデル予測制御の導入が特に有効であると結論づけた.


■ モデル予測制御のための外乱抑制機構の最適調整方法

富士電機システムズ・丹下吉雄,中澤親志

 モデル予測制御は産業分野への適用が進んでおり,制約付き多変数制御問題を扱えるなど大変有用な制御方式であるが,非観測外乱に対して制御応答が悪化する問題が指摘されている.
筆者らは,従来のステップ応答モデルに基づくモデル予測制御に適用するための,ランプ状外乱に対応するための外乱抑制機構を提案した.
今回,上記で提案した手法について,ランプ状以外の外乱への拡張を行うため,新たに低域通過フィルタを組み合わせた外乱抑制機構を提案する.
 外乱抑制機構とプラント間の閉ループに関し,安定性と外乱抑制性能を外乱抑制機構の持つパラメータと関係づけて解析する.
 さらに,閉ループ安定性を保ちつつ,ランプ状以外の外乱に対する外乱抑制性能を向上させるためのパラメータ調整方法について提案する.
 また,提案手法の有効性を石油蒸留塔のプラントモデルを用いたシミュレーションによって検証した.


■ プラント制御診断技術の開発と適用展開

住友化学・久下本秀和,吉村誠司,橋爪 悟,影山 孝,広島大学・山本 透

 プラントの制御性を改善し、高い生産性を維持する仕組みとして、制御診断技術を開発した。
制御診断技術を実装した制御診断システムは、制御性能の低いコントローラの不具合原因を診断し、診断結果をWebファイルに出力する。一方、PIDチューニングツールは制御診断システムから得られた制御不具合ループのチューニングに用いられ、プロセスに変動を与えることなく、チューニングができるといった特長がある。これらのシステムは、人と協調しながら、一歩ずつプラントの制御性能を改善するのに有用なツールで、本論では、その技術的概要と実プラントでの適用状況について述べる。


■ 船舶の低速航行時における操舵応答性を改善する一般化最小分散制御の設計

広島工業大学・土井正好,弓削商船高専・永本和寿,
首都大学東京・出縄憲一,森 泰親

 船舶は出入港時における低速航行において操舵する機会が多い.しかしながら,船体運動は慣性が大きいため操舵応答性が鈍くなる.特に低速航行では操舵角入力から数十秒程度かけて旋回角速度が増加する.また操舵系にはむだ時間が存在する.そこで,本研究は船体運動をARMA(Auto-Regressive Moving Average)モデルにより表記し,予測制御法の一手法である一般化最小分散制御を操舵系に適用する.ただし,理論設計されたGMVCを操舵系に適用すると,運用上許容できない操舵角を算出する.本稿では,操舵角の運用制約条件を加味したGMVCを新たに設計する.提案GMVCは従来のPID制御と比較して速応性に優れた操舵応答性を実現する.速応性を有した操舵応答は突発的な障害回避動作においても有効である.


■ 過渡特性改善のためのディーゼルエンジン吸気系のモデリングと制御

富士通研究所・江尻 革,トランストロン・佐々木 順,木下 友介,
富士通研究所・藤本 純也,丸山 次人,トランストロン・下谷 圭司

 近年のディーゼルエンジン吸気系では,可変ノズルターボ(VNT)により必要な新気量(MAF)・吸気圧(MAP)を維持して粒子状物質(PM)の排出を防ぎつつ,排気循環器(EGR)により燃焼室内の酸素濃度と燃焼温度を下げ,窒素酸化物(NOx)の低減を図っている.現行制御系は,EGRバルブ開度によりMAFを,VNTノズル開度によりMAPをそれぞれ独立にPID制御しているが,EGRとVNTの排気の共用による制御干渉や,低負荷・低回転領域におけるVNT飽和などの問題があり,特に過渡運転状態においてPID制御器を用いた試行錯誤的なゲイン調整では十分な目標値追従性能を得ることが難しくなっている.
 そこで本論文では,ディーゼルエンジン吸気系にモデルベース制御を適用し,第一原理に基づく物理モデリングと,過渡運転状態における過渡モデルを含む制御志向モデルの導出,モデル同定を行い,最適レギュレータによるMIMO制御系や操作量飽和を補償する飽和補償器,モデル化誤差対策としての外乱オブザーバ,即応性向上のための過渡モデルを用いた動的フィードフォワードの設計を行い,量産エンジンを用いた過渡モード試験により,即応性向上とオーバーシュート低減による目標値追従性能の改善とエミッションの低減を確認したので報告する.


■ 半導体搬送用台車のモデリングとキャリブレーション−フープ積載量に対するモデル精密化−

電気通信大学・澤田賢治,富士ゼロックス・田中香介,<BR>
電気通信大学・新 誠一,村田機械・熊谷賢治,米田尚登

 半導体製造の生産性向上を目的として,半導体の基盤となるウエハーの大口径化が予定されている.それに伴い,ウエハー搬送用の自律無人搬送車(AGV)も巨大化する.巨大化するAGVをより効率的かつ安全に運航する監視・制御方式の構築のためには,精密な数学モデルが必須となる.一方,精密化により複雑化する数学モデルは制御系全体も複雑化し得るため,数百台のAGVが稼働する半導体搬送装置には必ずしも適切とは限らない.以上より,本論文は制御系設計側からみたAGVの統計モデリング,さらにキャリブレーションを通してモデルを複雑化せずに信頼性を高めることに着目する.<BR>
まず,統計モデリングにおいては,AGV機械系の積載量別統計モデルを算出可能な手順を提示する.具体的には(1)入出力信号組の選択,(2)システム同定モデルの選択,(3)離散連続変換の選択である.つぎに,キャリブレーションにおいては,プラントモデルを得るための統計モデルと近似物理モデルの統合を非線形最適化問題として定式化する.この際,「AGVに関連する物理法則を部分的に守るため,如何にして物理情報を制約条件化するか」という問題に対する幾つかの知見を与える.


 
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