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 論文集抄録
  

論文集抄録

〈Vol.49 No.11(2013年11月)〉

論 文 集 (定 価) (本体1,660円+税)

年間購読料 (会 員) 6,300円 (税込み)

  〃   (会員外) 8,820円 (税込み)


タイトル一覧

[論  文]
SSI2012 特集 −つながる/つなげるシステム・情報技術−

[ショート・ペーパー]


[論  文]

■ 排他機構を組み込んだコンセンサス制御による協調的自動駐車システム

名古屋大学・能登 紀泰,奥田 裕之,田崎 勇一,鈴木 達也,
三重大学・早川 聡一郎,豊田工業大学・三田 誠一,
名古屋大学・片山 正昭,大日方 五郎

コンセンサス制御と排他機構にもとづく協調駐車システムを開発した.複数車両間の所要駐車時間の平等化を図るために,近年マルチエージェント制御の分野で活発に研究されているコンセンサス制御を導入した.さらに,交差点などにおける車両同士の衝突を回避するために,排他領域の仕組みを新たに提案した.数値シミュレーションおよび無線通信システムを搭載した小型電気自動車による実車試験を通じて提案手法を評価し,その有効性を確認した.


■ 加速度センサ内蔵枕を用いた機械学習に基づく離床行動予測

秋田県立大学・間所 洋和,下井 信浩,佐藤 和人

 本論文では,簡易的かつ非拘束のセンサシステムによる離床行動の早期予測を目的として,3軸加速度計を枕に内蔵する離床予測センサを提案する.また,センサから得られるデータから,離床及び離床予測に結びつく被験者の姿勢を,機械学習により判定する方式を開発した.臨床現場を模した実験環境において,3名の被験者を対象にデータを取得し,提案手法の有用性を検証した.その結果,7パターンに対する判別性能は,56.3%に留まったものの,離床の一歩手前の姿勢である端座位では94.4%の判別率が得られた.誤判別は,座位と臥位の姿勢間での誤判別に留まっていたため,3パターンによる大局的な判別について検証したところ,94.4%の結果が得られた.


■ 複雑二重ネットワークモデルによる知識教授シミュレーションに関する研究

 筑波大学・國吉 啓介,倉橋 節也

 教育において,各学習者の理解の状態を把握し,その理解状態に応じて教授内容を設計することは重要である.e-learningという学習環境のデジタル化により,学習者の膨大な学習履歴が蓄積されるようになり,その履歴を分析することで,各学習者の理解の状態を逐次把握する技術が生み出されてきている.また教授対象となる知識は知識間に関係があり,その関係を構造化して,その構造の従属関係を考慮して教授を行うことは重要であると考えられており,学習者同士の協調効果についても,有用性が明らかになってきている.
 一方で,各学習者の理解の状態の把握という点については,一人ひとりへのアプローチが中心で,教室という集団空間でのアプローチは開拓の余地があり,学習者同士の協調効果についても,効果の計量化手法には開拓の余地がある.また教室という空間での教授効果の実態を把握するためには,各学習者の理解の状態,知識の構造,協調効果を統合して,考察を行う必要があるが,そういった統合アプローチについても開拓の余地がある.
 そこで本研究では,学習者の知識理解状態,知識の構造を踏まえた「内部ネットワーク」と,学習空間を踏まえた「社会ネットワーク」からなる「複雑二重ネットワークモデル」で構築した教授シミュレーション手法を考案し,教員の教授を支援する仕組みを考え,教授方略が学習効果にどのような影響を与えるか,学習者の配置が学習効果にどのような影響を与えるかということに対して,考察した.
 前者については,教授方略が異なると,学習効果も異なり,シミュレーション最適教授手順に沿った教授は教授効果が高いという結果と,1知識につき1回の教授で授業を進めると,積み残しを抱えた学習者が発生してしまう傾向があるという結果を得た.また後者については,集中配置するより,分散配置した方が,教授が効果的に作用する傾向があるという結果を得た.


■ 感染症実用シミュレーションにおける仮想都市構築法の違いによる結果への影響分析 -日常生活スポット内包セル型仮想都市モデルの必要性-

東京工業大学・市川 学,出口 弘

 近年,都市で起こりうる社会現象を理解・分析する方法として,エージェントベースモデリング&シミュレーションの技術を利用する研究が多く行われている.そのような中で,都市における社会現象を再現するモデルは,格子状に表現された仮想都市の上に,対象とする社会現象を実装する手法が標準的な手法として広く使われている.そのような中で,本研究では格子状に表現される仮想都市の構築法をふまえ,世帯や事業所,教育機関などの,人が日常生活の中で存在する場となる生活空間を考慮できる新たな仮想都市の構築法を模索してきた.本稿では,架空の感染症の拡大モデルを例に,従来の格子上の仮想都市の構築法と生活空間を考慮した仮想都市の構築法において,シミュレーション結果にどのような違いが生じるかを分析した.また,仮想都市の構築法の違いが,表現した社会現象の解釈の違いにも影響することを示し,社会で起こりうる社会現象を表現するシミュレーションモデルを構築する際に,仮想都市の構築法を考慮すべきであることを説明する.


■ 環境変化に適応するためのピボット型一般化

電気通信大学・佐藤 圭二,佐藤 寛之,高玉 圭樹

 本稿では,環境変化への適応を目的として,複数の解を1つの解で表現する学習分類子システムの一般化の"#"概念を拡張し,新たに"s#"の一般化表現とそれを用いたピボット型一般化を提案する.ピボット型一般化の性能検証のために多目的ナップサック問題と実データを用いた河川舟運の最適化問題を用いて検証した結果,(1)ピボット型一般化を用いて2目的ナップサック問題と路線網最適化問題の解を一般化が可能になったこと,(2)一般化解をピボット部と一般化解が持つ解同士の距離をSharp distanceで評価し,一般化解をコントロール可能になったこと,(3)得られたピボット型一般化解を分析することによって,問題の解空間の分析が可能になったことが明らかになった.


■ 血流依存性血管拡張反応検査中の動脈壁粘弾性特性の推定

広島大学・木原 大輔,平野 陽豊,平野 博大,栗田 雄一,
日本光電工業・鵜川 貞二,高柳 恒夫,森本 陽香,
広島大学・中村 隆治,佐伯 昇,東 幸仁,河本 昌志,吉栖 正生,辻 敏夫

 血流依存性血管拡張反応(Flow-Mediated Dilation : FMD)検査は,熟練した超音波検査技師のもとで非観血的に血管内皮機能を評価することが可能である.しかしながら,FMD検査では,駆血解放後の血流増加にともなう血管径拡張時の最大血管径を評価するのみにとどまっており,FMD中の血管粘弾性特性がどのように変化するのかという問題についてはこれまで明らかにされていなかった.そこで,本論文においてはFMD検査中の血管径と動脈血圧を同時計測し,一拍ごとに血管粘弾性特性を推定するという新たな評価法を開発し,FMD検査中の血管粘弾性特性の変化を明らかにした.実験では,健常者6名に対してFMD計測を行い,超音波装置と連続血圧計を用いて,血管径と動脈血圧の計測を行った.計測データから血管粘弾性特性を推定した結果,駆血前と比較して駆血後,一時的に剛性値は減少し,粘性値は増加傾向を示した.さらに,駆血前後の各粘弾性指標の変化率と%FMDとの間に中程度の相関が得られたことから,本指標を用いて%FMDに近い血管内皮機能評価ができる可能性が示された.


■ カスケード故障に耐性のある複雑ネットワーク設計

千葉大学・中本 遼,岡本 卓,小圷 成一,平田 廣則

 設計者にとって所望の特性を持った複雑ネットワークを見出すネットワーク設計手法は,大規模システム設計の強力な手段となると期待される.フローをもつ複雑ネットワークにおいては,カスケード故障の発生が大きな問題となっている.本研究では,成長を伴う複雑ネットワーク設計手法を用いて,設計者にとって所望の特性を有し,カスケード故障に耐性のあるネットワークを設計する手法を提案する.提案手法の有効性を,設計者の望む特性を平均経路長を用いて表現した場合とサバイバルネットワーク設計として表現した場合について,計算機実験を通して確認する.


■ 運転時系列のベイズ二重分節解析によるチャンク抽出

立命館大学・谷口 忠大,山下 元気,長坂 翔吾,
デンソー・坂東 誉司,竹中 一仁,トヨタ・人見 謙太郎

 本稿では二重分節構造を推定する機械学習手法を導入し運転挙動データに適用し,ドライバの単位運転動作をマイニングするとともに,マイニング結果の中から安定して抽出される,まとまりある単位運転挙動である頑強チャンクの抽出法を提案する.また,頑強チャンクの有無がドライバの外部環境認識を反映したものであることを被験者実験を通して示す.


■ マクロ設備負荷調整と連動する分散スケジューリング方法の素材加工工程への適用

神戸製鋼所・井本 考亮,梅田 豊裕,水野 満信

 本稿では,最初にバッチ焼鈍炉を含む素材系工場に対する2種類の負荷調整方法を提案する.まず,設備能力を考慮せずに納期を遵守するように負荷の山積みを行う.次に,生産量最大化と仕掛量最小化を目的とし,処理時間帯・処理設備を変更する事で負荷の山崩しを行う.本手法は特に,負荷山崩しの優先度を仕掛量と納期から決定する.これにより,リードタイム最小化を達成する生産計画が立案可能となる.さらに,工程ごとの分散スケジューリング方法について提案する.本手法は前述の設備負荷調整結果との整合性を取りつつ,各設備での最大効率化を実現するスケジュールを立案するために,設備負荷調整結果に基づき,処理時間帯に制限を与える.さらに本稿では,計算機実験の結果から提案手法の有効性を示す.


■ レーシングカート操縦シミュレーション・モデルとドライビング・エージェントの構成

神戸大学・大美 裕志,兵庫県立工業技術センター・松本 卓也,神戸大学・玉置 久

 本稿では,レーシングカート操縦者の熟練度や熟練過程をシミュレーションベースで議論することを目的として構築した,カート操縦シミュレーション・モデルおよびドライビング・エージェントについて論述する.特に,結果としての走行のみならず,最終的な操作に至るまでの操縦過程の理解につながるようなモデルの枠組みを提案する.具体的には,エージェント構築の際,実際の操縦者の情報の処理に着目し,これを観測・認識・判断・操作の大きく4つの処理段階からなるものと考え,操縦者の内部状態を明確に表現することに留意する.また,操縦者の処理可能な情報の量や処理にかかる時間などといった人間らしさをモデルに反映させることにも留意し,モデル内のパラメータにより操縦者の技量を表現する.さらに,多様な操縦者による走行の差異をシミュレーションベースで議論するため,計算時間を抑えつつ必要最低限の精度を持った独自の車両モデルの構築を図る.また,構築したモデルを用いた走行シミュレーションにより,モデルの妥当性・可能性を調べる.その結果,操縦者の技量を特徴づけるパラメータを設定することで実際の操縦者に見られる典型的な走行が再現可能であることが確認できている.


■ 時系列信頼性モデルを用いた運転支援によるディストラクション低減効果の評価

香川大学・望月 誠,新居 良紀,鈴木 桂輔,大同大学・山田 喜一

 見通しが悪い交差点における衝突防止システムを例にとり,筆者らの提案するドライバモデルである,時系列信頼性モデルを用いて,ドライバの運転行動のシミュレーションを行い,システム導入時の事故低減効果を分析可能な手法を提案した.
 具体的には,時系列信頼性モデルによるシミュレーション手法を用いて,交差点接近時,音声による情報提示に加えて,αピネン(森林の香り)をドライバに供給することにより,前方不注意による出会い頭事故を削減可能であることを示した.
 過去に筆者らが提案しているドライバモデルである,状態遷移確率モデルを用いて事故低減効果の定量化を行い,時系列信頼性モデルおよび,状態遷移確率モデル双方の特徴を比較した上で,両モデルの適用シーンについて考察を行った.


[ショート・ペーパー]

■ テラヘルツ波による分子マシンシステムのコントロールに向けて- ソリトンを利用したバイオナノネットワークの制御 -

NICT・平林 美樹,東京大学・川又 生吹,萩谷 昌己,NICT・小嶋 寛明,大岩 和弘

 自然界にはナノサイズのコンポーネントを有し,DNA を利用して様々なタスクを実行するファージやウィルスのような巧妙な天然ナノマシンが多数存在する.われわれは,このような天然ナノマシンが活躍する微小世界を人間に代わって制御するDNAナノ構造体を用いたインテリジェントな分子マシンの開発に取り組んできた.通常このような分子マシン間の通信は,分子通信により行われる.ここでは,この分子通信に加えて,未開拓の電磁波として注目が集まっているテラヘルツ波による分子マシンネットワークの制御方法を提案し,シミュレーションモデルを用いて解析を行った.ここで提案したのは,テラヘルツ波により誘導されるDNA 二本鎖の乖離を利用した分子マシンネットワークの制御で,システムの効率改善に一定の効果をもたらすことが示唆された.生体内でも膜の活動などにより発生するテラヘルツ波を利用して転写制御を行っているという説があり,テラヘルツを利用した分子マシンのコントロールに関する研究は,生体システムの未知の制御メカニズムの解明に役立つだけでなく,天然のナノマシンが実現しているような高度なシステムを構築するための重要な基盤技術を提供するものと期待される.


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